家具の基礎知識 無垢板と突板の家具の違いについて

中嶋美幸
中嶋 美幸

「突き板(ツキイタ)」「無垢板(ムクイタ)」と「プリント合板」
一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

特に日本人は「日本人の無垢信仰」と言われるくらい、日本では無垢材の家具の方がいいと思われているのですが、実はそうでもないんです。無垢板にも突き板にもいろんな種類があり、「無垢板だからいい家具」とか「突き板だからよくない」と言う考え方は間違いです。

また、一見、木に見える家具でも、実は日本で一番多いのが「プリント合板」の家具。木目をプリントした紙を合成材に貼り合わせ、木に見せかけた「プリント合板」という家具もあって家具の世界も奥が深いんです。

今回は、本物の木を使った「突き板の家具」と「無垢板の家具」、そして、木に見えて実は木ではない「プリント合板」の家具についてご紹介します!

そもそも無垢板とは?

無垢材という言葉を日本の方だったら必ずと言っていいほど聞いたことがあると思います。
「純真無垢」という言葉もあるように、木材における「無垢材」とは、何も加工していないそのままの「木」のこと表しています。

森林から丸太を切って、住宅建材や家具などに使用するために四角や板状に加工したものが「無垢材」です。
その無垢材を板に仕上げて作った家具が「無垢板家具」です。

無垢板

無垢の板の欠点は反ることです。
板の巾が広くなればなるほど木目も美しく見え、価格も高額ですが、逆により反りやすくなります。高級な家具に使われている無垢板は板の巾も広く、反らないような工夫や加工が施してあります。

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木目は人間でいう「指紋」と同じ。 根を張り育った場所や年月によって、木目の入り方は同じものが二つとありません。 そのため、無垢板家具は形やデザインは同じでも微妙な色の入り方や、木目の出方などは全て違い、1つ1つがオンリーワンの家具です。

仕上げや塗料によって違いはありますが、使えば使いこむほどにどんどん風合いが増し、味わい深く変化していきます。

無垢板と言っても、いろんな無垢板があるんです

一言で無垢板と言っても実はいろんな無垢板があります。

ここまで聞くと無垢板はとても高級で素晴らしいもののように思えますが、無垢板と言っても安価な無垢板の家具は、「無垢の集成材」と言われるものを使っています。

確かに無垢ですが、細かくカットされている小さな破材の無垢をボンドでつなぎ合わせて板に仕上げているので、確かに無垢材と言えますが、無垢と言っても無垢材のよさは全くありません。木目もなければ、風合いもありませんので、無垢材が持つ本来のよさを楽しむことは出来ないんです。

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突き板とは?

突き板とは、板を薄くスライスした板のことです。
薄くスライスしているので、そのままで家具を作ることはもちろん出来ません。

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突き板を家具を作るための芯材に貼り付け造ったものが突き板の家具です。

突き板は薄くスライスしてあるため、反る事はありません。また、同じような模様の突き板を得ることが出来ます。
表面に見える木目は、本物の木を薄くスライスした突板そのものなので、パッと見た目は無垢材のものとさほど見分けがつきません。

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実は本物の木じゃない木の家具・プリント合板


現在作られている突板家具は、無垢板家具に比べ価格も安価につくることができ、重量も軽く取り入れやすい家具として人気がありますが、実は突き板に見えて突き板じゃないものもあります。それがプリント合板と呼ばれるもの。

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紙に木目をプリントしたものを芯材に貼り付けて造られた家具は、一見、本物の木のようにも見えますが、いろんな家具を見ていくと本物の木で造られた突き板の家具とプリント合板の家具では全く違うものだと言う事が分かります。

プリント合板の長所と短所


プリント合板の長所は、安価で手軽に取りいれることができること、プリントされている紙を使用するため、木だけにとらわれず、色んな色やデザインの家具や建具を作ることができることです。

そのため、自分の好みに合ったデザインの家具や建具を取りいれることができます。身近なアイテムではカラーボックスなどの安価な家具や、賃貸マンションなどのフローリング材、建具などにはこのプリント合板が使われています。

安価で気軽に取りいれることができる反面、プリント合板の短所としては、印刷しているものなので無垢板や突き板のように本物の木目のような素材感が薄れること。
また、紙を貼り付けているため、湿気などには弱く、表面が剥がれやすいことです。このように経年変化で表面のプリント紙が剥がれ落ちてしまいます。

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無垢材・突板・プリント合板どの家具をとっても、長所短所があるので、それらを理解した上で取りいれてみてはいかがでしょうか?

アンティークの家具は全部が無垢材?

なんとなく日本では「無垢材=高価でいいもの」というイメージがあります。

「アンティーク家具は値段も高価で、昔のものだから無垢材だろう」と言われる方も多いですが、実は決してそうではありません。

突き板家具の製法は古く、アンティークの家具でも多く使われています。
逆に、日本のように機能性を重視するのではなく、デザインを重要視するイギリスやフランスでは、その時代のデザインや家具の種類、木材の違いによって、無垢板、突板それぞれの良さを生かしながら家具が造られてきているんです。

一般的な家具とアンティーク家具の違いについて

「家具」と言っても、いろんな家具がありますが、僕たちが扱っている「アンティーク家具」と「一般的な家具」は、どう違うでしょう?

美しさを求めて使われた突き板

突板の技術は17世紀頃から発達し、美しい木目を切り出すことができるようになったことで、木目を生かした美しい家具が多く誕生しました。

もともと突板のことを英語で「ベニヤ」といいますが、日本でイメージされる「ベニヤ板」とは意味が全く異なります。

日本でイメージされるベニヤ板のような薄い板を交互に重ねて厚くした合板は英語で「プライウッド」。「ベニヤ」にはクオリティが低いイメージは全くなく、逆に「家具の表面に使われるくらい美しい木目の木材」という解釈がされているんです。

特に、ウォルナット材やマホガニー材などの家具は、美しい木目を活かした突き板の家具が多く残っています。 わざわざ凝った彫刻をしなくても、木目そのものが装飾になりうるような美しい家具ばかりです。

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→木目が美しいマホガニー材の家具を見る

→木目が美しいウォルナット材の家具を見る

実は日本の無垢材は欧米の突き板

突板自体の解釈も日本と欧米では違いが大きいんです。

もともと、日本の家具に使われている突板は、0.2mm以下の紙のように金箔のように薄いものが多いのですが、英国ではどんなに薄い突板でも1mm 以上。分厚いものだと何ミリにもなるんです。
日本では2mm以上で無垢材と記入するところもあるくらいなので、英国の突板は分厚く丈夫で日本では無垢板と言ってもいいくらいのものが多いです。

木の種類で見る家具の作り方

今も昔も変わらずに、自然の中で生まれ育ってきた木にはそれぞれの特性があります。
昔から、その木が本来もつ特性をキチンと理解し、活かしながら家具がつくられてきました。

次に主な木の種類別で見ていきましょう。

パイン材

柔らかく温かみのある木目が特徴的な「パイン材」は、昔から庶民が使うなじみ深い木材として使われてきました。
アンティーク家具におけるパイン材の家具はほとんど無垢材です。
テーブルやチェア、チェストなども全て無垢材で作られたものが多く、ナチュラルで素朴な雰囲気によく合っています。

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逆に言うと、パイン材は柔らかく大きな節もあり、伸縮性も高く突板にはむいていない木材のため、無垢板でしか造れなかったともいえます。

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手に触れても柔らかく温かみのあるパイン材は独特の節の入った木目で、使いこむほどにどんどんと風合いが増し経年変化を楽しむことができます。

→パイン材の家具を見る

オーク材

どっしりと力強く重厚なデザインが多い「オーク材」の木目は大きくはっきりとして、無垢材で使用されることが多くあります。

オーク材ならではの「虎斑(とらふ)」という模様が見れるのも特徴的で、虎斑がある木材は上質で貴重なものである証拠とも言われています。

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カットの仕方やと塗装のかけ方によって印象は変わってきますが、それぞれでオーク材の木目を楽しむことができます。 また英国アンティーク家具ではオークの家具が多く、昔から愛されていた木材になります。

→オーク材の家具を見る

マホガニー材

現代でも高級材として知られている「マホガニー材」は、アンティーク家具が作られていた当時からも高級材として使われていました。
マホガニー材は木目がつまっており、繊細な表情をだすのに向いている木材です。
突板の技術が発展した頃からマホガニー材も注目され、テーブルの天板やチェストやキャビネットの前板などに、その美しい木目を活かした家具が多く作られるようになりました。

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収縮や歪みも少なく、軽くて丈夫なことから加工にも適していたため、象嵌などのデザイン性のある繊細な装飾も取り入れられてきました。

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このように当時から高価で希少価値の高いマホガニー材は突き板で使用されることが多く、家具全てがマホガニーの無垢材というものは滅多に見られません。
逆に、ものすごく贅沢な家具の中には、ウォルナットの無垢材で造られた家具にマホガニーの突き板を貼って仕上げてある究極の家具も見つかります。

→マホガニー材の家具を見る

ウォルナット材

現在でも人気の高い「ウォルナット材」、現代の家具で使われているウォルナット材とアンティーク家具で使われているウォルナット材では、同じウォルナットと言えども種類が違います。

現代使われるウォルナット材は、堅くてテーブルやキャビネットなどでも無垢板で使われることが多いのですが、アンティーク家具で使用されていたウォルナット材は柔らかく、木目が詰まっているのが特徴的なので、無垢材には向かずほとんどが突板で作られています。

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マホガニー材と同じく、収縮が少なく繊細な加工に向いており、寄木細工などの細かい細工や彫刻などが施しやすいため、大きく美しい彫刻の家具などに使われてきました。
また、ウォルナット材独特の美しい木目を活かした家具も多く残っています。

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こんな大きなテーブルの天板も突板の技術で、一枚の木目のように美しくカットされ作られています。

→ウォルナット材の家具を見る

まとめ

このように、当時からそれぞれの木の特性や性質を理解し、それぞれの木がもつ良さを存分に引出しながらアンティークの家具がつくられてきたことがよく分かります。

テーブルや椅子など負荷がかかるものは強度を保つために無垢板が使用されていたり、突板を使用することで、美しい木目や装飾や細工を施したりと、アンティーク家具では、当時の職人さんの知恵と技術がつぎ込まれています。

実は家具作りの裏には、こんな木材の話が隠されていたことを知っておくと「無垢材だからいい家具」と言う日本的な考え方は、アンティーク家具の場合は間違えていると言う事が分かると思います。

無垢板、突板それぞれの良さを知って、目で見て楽しんでアンティーク家具をお使いください。

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中嶋 美幸

アンティークショップHandle編集ライター

短大で生活デザインを学び、そこで得た住宅の内装や家具の知識をもとに、Handleでお客様担当係を長く務める。
結婚を機に、愛知県に移住。現在、在宅スタッフとして、2人の子育てをしながら、リモートでHandleの編集ライターとして、アンティークに関する知識を中心に執筆中。

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