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富の象徴とも言われたウォールナット材の家具について
- 水野 友紀子
世界三大銘木の中の一つ、ウォルナット材は現代作られる家具でも人気の木材です。ゆっくりと何年もかけて成長するので、木目は細かく締まってとても堅く、家具にした時にゆがみや収縮が少ない木材です。
ヨーロッパでは16世紀から17世紀にかけて「富の象徴」と言われ、家具や調度品に使われた人気の高級木材ですが、日本で家具としてウォルナット材が使われ始めたのは、実はここ最近の話なんです。
そんなウォルナット材のことをお話ししますので、家具選びの参考にしてみて下さい。
ウォールナット材とは、クルミ科属の落葉広葉樹、クルミの木のことを言います。
秋になると美味しいクルミの実がなる木のことですが、「ウォルナット材」と言っても、実はいろんな種類があります。
アンティークの家具で使われているウォルナット材と、現代の家具で使われているウォルナット材とでは種類が違っているので、使い方も表情も違っています。
1.ブラックウォルナット
現代の一般的な家具で使われているウォルナット材は、主にアメリカやカナダなど北米が産地のブラックウォルナット材です。とても衝撃に強く、銃床材に使われていた程の硬い木材です。
ブラックウォルナット材と言うだけあって、もともとの木肌が黒っぽい茶色が特徴的です。
高級家具や、工芸用の木材、ドア材、フローリング材、内装材、楽器の材料、また、アメリカ大統領の指揮台やアメリカの最高裁判所のベンチ、ミラノ大聖堂などなど、いろんなものに使われています。
また、現代の家具ではとても堅い性質を活かした無垢材のダイニングテーブルが人気です。
2.クルミ(西洋胡桃)
ヨーロッパ東部のカルパチア山脈周辺が原産のクルミの木のことを言います。西洋胡桃(Emglish walnut)や、日本名で樫胡桃と呼ばれるクルミの木です。
16世紀から17世紀にかけて、マホガニー材が有名になるまでの間、高級家具材としてオーク材と供に人気だったのクルミ材がウォールナット材です。
ブラックウォルナット材と違って、赤茶色の木肌が特徴的で、木目が詰まっていてあたたかみがあり、柔らかい表情をしているので、現代の家具とは違い、その表情をさらに豊かに見せることが出来るよう、多くが突き板で家具に使われてきました。
また加工しやすいので、寄木細工などの細かい細工や彫刻などを施した大きな高級家具に使われています。
今も昔も、たくさんの人から支持されるウォルナット材の特徴。人気のヒミツをまとめてみました。
ウォルナット材は、とにかく堅い!ウォルナット材の木片をもらって、彫刻刀で彫ってみたことがあるんですが、刀が負けてしまうくらい堅いんです。
なので、衝撃にも強く、ちょっとぶつけたくらいでは凹まないので、現代、作られる家具の中で、ウォルナットの無垢材で造られた高級なダイニングテーブルが人気です。
堅い分、ネジもしっかり締まり、釘もしっかり固定されるので、丈夫で壊れにくい家具が造れます。
なんとなく、木は茶色ってイメージがあると思うのですが、ウォールナット材は木の切り口を見るとビックリ!
実はウォルナット材(特にブラックウォルナット材)の心材と言う中心部分の色は、とっても濃いこげ茶色をしています。
よく見かける安価な家具には「ウォルナット色」と表記がしてあるものは、着色をしてウォルナットの色にしたもの。
なので、削ると下から白っぽい色の木が見えてきますが、本物の無垢材のウォールナットで作られた家具は、もともとがこの色の木なので、彫っても彫っても濃いこげ茶色です。
ウォルナット材は、堅くて重い樹種なので、木材をカットした時や乾燥させた時に生じる「反り」や「ねじれ」などの変形がとても少ないのが特徴です。
通常、木は木を伐ってからも呼吸をし、水分を含んだり乾燥するので、無垢材の家具の場合は、家具に形を変えてからも、お部屋の環境によって、反ったり割れたりします。
ウォルナット材は狂いが少ないので、家具になっても反りやねじれが少なく扱いやすく、強度もあるので、毎日使う椅子にも向いている木材です。
「ウォルナット材」を使った家具と言っても、アンティーク家具のウォルナット材と、現代造られている家具のウォルナット材では、樹種が違います。アンティーク家具では西洋胡桃材を、現代の家具ではブラックウォルナット材のことを指し、木目や特徴も違うので、家具に使う時の使い方も違います。
アンティーク家具ではウォルナット材の多くは「突き板」で使われています。逆に、現代の家具では「無垢板」の家具が人気です。それぞれの特徴に合わせて家具作りされているので比べてみると面白いんです。
アンティーク家具のウォルナット材とは西洋胡桃のこと。少し太めの導管が作り出す美しい木目が特徴です。
そのウォルナットの美しい木目を「模様」として使っているのがアンティーク家具です。
華やかな装飾をしなくても、杢目そのものが美しくて華があるので、ウォルナット材を突板に加工してその美しい木目を生かしたシンプルで洗練されたデザインの家具が多く造られました。
仕上げ材として美しい木目を模様として家具に貼って使うことが目的だったので、アンティーク家具で使われるウォルナット材の多くは、貼ることが出来る突き板が使われました。
現代の家具で使われるブラックウォルナット材は、とても堅くて丈夫なことが特徴です。
なので、その堅さを活かした家具作りとして、現代の家具では無垢板で使われることが多いです。
分厚い板に加工し、それを繋ぎ合わせて作るダイニングテーブルは、とても堅くて丈夫。さらに狂いも少ないので、反りも少なく人気があります。
また磨けば磨くほど美しく光沢を出してくれるので、せっかくウォールナット材のテーブルを購入されるのであれば、オイルやワックス仕上げのものがおススメです。
ただ・・・堅い木材なので、足をぶつけたりするとイタイ!お気をつけ下さい(笑)
ウォルナット材は、とても堅い木材なんですが、加工性がとてもいいことも特徴です。
ウォルナット材の表面は、塗装が馴染みやすく、接着剤もしっかり定着して強度が保たれるので、アンティーク家具でよく見かける象嵌の細工に使われました。
金箔を貼るのにも向いていたので、ロココ調のゴージャスな装飾などにもよく使われているんです。
普通、木材は年月を経ると色が少しずつ濃くなっていくんですが、ウォールナット材は逆!光、特に紫外線が当たると、濃いこげ茶色がどんどん薄くなっていくんです。
最初は黒っぽい茶色ですが、使っていくと少しずつ色が抜けた感じになって木目が目立つくらいの茶色に変化します。
これはブラックウォルナット材の特徴。なので出来る限り濃い色のまま使いたい方は、直射日光が当たらないようご注意下さい。
ウォールナット材の家具の色には、いろんな色のものがあります。現代のウォルナット材の家具はブラックウォールナット材なので、心材がとても濃い茶色。なので、着色せずにそのままの色で家具に加工されていることが多いです。
アンティークのウォルナット材の家具で使われている西洋クルミ材は、少し明るめのピンク色がかったナチュラルな茶色。なので、木目がより美しく見えるよう着色をして家具に使われてきました。
なので、現代のウォルナット材の家具は、経年変化で色が明るく変色していきますが、着色され、年月も経てしまったアンティークのウォルナット材の家具は色が変わることはありません(笑)
17世紀に家具を造るための道具、特に、のこぎりが発達したことで、ウォールナット材のような堅い木を薄くカット出来る技術が誕生し、「突き板」が作れるようになりました。
突き板が誕生したことで、実は家具のデザインも大きく変化しました。と言うのも、それまでは、家具のデザインは、重厚な彫りでしか表現できなかったんですが、彫りの代わりに、ウォルナット材の美しい杢目を模様として家具の表面に貼ることで、家具のデザイン自体もシンプルで洗練されていきました。
なんとなく「突き板」と言うと、日本ではベニヤ板のイメージがあり安価な家具と思われがちですが、ヨーロッパでは日本の突き板とは考え方が全く違い、決して安価なものではなく、ウォルナットなどの高級材の美しい木目を活かして素敵な家具をたくさん作るための工法と考えられています。
なので、突き板のカットの仕方も日本とは違いますし、無垢材のウォルナット材の上に、さらに模様としてウォルナット材の突き板が貼られているアンティーク家具が見つかることもあります。
上品で美しい木目のウォルナット材の家具は、高級家具の装飾として、大人気!英国の上流階級の人たちが使う家具に多く使われました。
また、ウォールナット材は狂いが少なく、しかも堅くて丈夫。さらに接着剤もしっかり定着して保たれるので、象嵌細工の下地にも使われました。下地材は見えないからと、安価な木材が使われることももちろんありますが、時間が経つと下地が動いて使えなくなるものも多かった中で、狂いが少ないウォールナットを下地にし家具は、長く残っています。
ウォールナット材を使って造られたアンティーク家具には、いろんな種類があります。
1950年代 ウォルナット材のカクテルキャビネット
日本ではあまり見かけない家具、カクテルキャビネットも、ウォルナット材の木目を活かしたデザインです。
扉面の迫力のある木目はまさにウォルナット材の家具の華やかさが強調されています。
1850年代 ウォルナット材のティルトップテーブル
最上級に贅沢なティルトップテーブル。なんと、マホガニー材の上にウォルナット材が貼ってあるテーブルです!
天板の表面全体につぎはぎが見えないように貼られた美しいウォルナット材の木目。突き板を貼る技術にも脱帽デス。
1960年代 ウォルナット材のチェストオブドロワーズ
家具の前面にウォルナット材の突き板を幾何学模様になるように貼ってデザインされたハーフムーン型のチェストです。
突き板の模様が芸術品のように美しい・・・職人の技術の高さも感じられるアンティークです。
1900年代 ウォルナット材のウォッシュスタンド
ウォルナット材の無垢材の鏡板の部分に、さらにウォルナット材の突き板を貼って仕上げたアンティークのウォッシュスタンドです。
グリーンの鮮やかなタイルとウォルナットの美しい木目から高級感があふれています。
1940年代 ウォルナット材のビューロー
前板のダイナミックなウォルナット材の木目も、無垢材のウォルナット材の上に突き板を貼ってデザインされたもの。
なかなかない美しい杢目の突き板。高級なので貼ってあるのは、一番目立つ前面だけです。
1930年代 ウォルナット材のサイドキャビネット
引き出しの部分と、両サイドにウォルナット材の突き板で幾何学模様がデザインされたサイドキャビネットです。
さらに象嵌でお花の模様が描かれているので、あまりの美しさに誰もがうっとりです。
ウォルナット材のアンティーク家具を普段の生活にプラスすると、どんな雰囲気のお部屋が出来上がるのか、お部屋別にご紹介します!ぜひあなたのお家でも真似して贅沢な時間を過ごしてみて下さい。
書斎
ウォルナット材のデスクを使って書斎を作ってみましょう。ちょっと贅沢なウォルナット材のデスクは、自分だけの時間を大切にしたい方におススメです。
お揃いで隣りにガラスのキャビネットを置いて本棚にすれば、お部屋全体がウォルナット材の美しさで包み込まれて、いつもの仕事や本を読む時間も、なんだか特別な時間になります。
リビング
ソファを使わなくても、ウォルナット材のキャビネットとバルーンバックチェアを合わせれば、極上のサロンが出来上がっちゃうんです。
アンティークのウォルナット材を使った家具の色はそれぞれ違いますが、同じウォルナット材でトータルコーディネイトすれば統一感あふれる落ち着いた大人の空間が出来上がります。
寝室
ウォルナット材のチェストとオケージョナルテーブルで作った寝室。
ベッドサイドに並べたウォールナットのチェストには、お気に入りの雑貨を飾ったり、鏡を乗せてドレッサーとして使っても、自分だけの時間を過ごせる優雅な空間になります。
ウォルナット材の上品なデザインの家具に囲まれて、朝の目覚めも気持ちのいい華やかな寝室です。
和室
ウォルナット材のサイドバイサイドとナーシングチェアを畳の上に置いた和室。
ウォルナット材のの上品な木目は畳にもよく似合うので、英国クラシックスタイルの家具を和室で使っても素敵になります。
いかがでしたか?アンティーク家具屋を始める前、天然木の家具を扱っていた私にとって、ウォルナット材は慣れ親しんだ木材。なので、自分ではとても詳しいと思っていました、
・・・が!!今回、さらにウォルナット材のことを詳しく調べてみると、その奥深さに驚きました。
とても堅く、色の濃いウォルナット材は、現代、製作されている家具の中でも人気の木材です。
だからと言って、ウォルナット材の家具=いい家具ではありません。
ウォルナット材の特徴を知って、自分なりにウォルナット材のよさを生かした造り方だなと納得出来るウォルナット材の家具を選んでもらいたいな・・・と思います。
以上、Handleの水野友紀子でした!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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