ルネット
- 水野 友紀子
フランス語で「小さな月」という意味のルネット。半月のように弧を描いた形の装飾のことです。
よく見ると、いろんな家具にこの半月のような装飾が使われていて、その装飾の名前が「ルネット(小さな月)」と知ったときは、なんて素敵な名前!と、それだけでさらに好きになってしまいました(笑)
家具の中にある小さなお月さまルネットについてお話します。
Handle 水野 友紀子
lunette
ルネットとは
「ルネット(lunette)」とは、フランス語で「小さな月」という意味です。 建築では、壁面の半円形の部分のことをさしています。
アーチの土台になっている柱の最上部に水平な柱を渡し、丸く描かれたアーチと水平に渡した柱の間にできる半円形の部分をルネットと呼んでいます。 建築物のルネットには絵画を描いたものや、窓として使われているものなどがあり、入口のポーチや玄関、高窓の上につくる明り取りの窓として使われいるものあります。
また、アンティーク家具においては、ゴシック様式が盛んだった頃に、家具の装飾として用いられるようになり、18世紀中ころから再び人気となりその時代の家具に多く見られます。 家具のルネットでは、半円形の中にアカンサスの葉をモチーフにした、お花のようなデザインが彫刻されたものが多く残っています。
キャビネットやチェストなど、どっしりとした英国の家具に使われていることが多く、ルネットと合わせて、様々な装飾が施された重厚感のある家具となっています。
architecture
建築で見るルネット
家具の装飾はそもそも建築で使われていたデザインを使うことが多いんです。ルネットもその一つ。
今まで、買い付けの旅でイギリスやフランスのいろんな場所に訪れましたが、改めて見返してみるといろんな場所にルネットを発見!
家具で見るルネットと、建築物で見るルネットはまた違った美しさがあるのですが、どちらもそれぞれをよりよく際立たせてくれる存在です。
これまで見てきたイギリスやフランスで発見したルネットをご紹介します。
パレ・ロワイヤル
ルイ14世が幼少期に過ごしたと王宮パレ・ロワイヤル。
「ベルサイユ宮殿を造った太陽王、ルイ14世が幼少期を過ごした王宮」として有名な場所ですが、今は国務院=最高裁判所として使われているので、建物の中に入ることは出来ません。
これはパレ・ロワイヤルの中での一番人気の写真撮影スポット、通称、ビュランの円柱(Colonne de Buren)から撮影した一枚です。
白と黒の石柱に目が行きがちですが、ここにもルネットを発見!
このように窓枠の上部にルネットがある建物が多く、パレロワイヤルだけでもたくさんのルネットが使われていました。
ヴィクトリア&アルバート博物館
大英博物館と並んで有名な博物館ビクトリア&アルバート博物館。
「あらゆる人々に美術作品を鑑賞する機会を与え、労働者の教養を高め、国内のデザイナーや製造業者に創造的刺激を与えること」を目的として造られた博物館は、建物もすごく凝ったデザインになっています。
ここにもいろんば場所にルネットを発見!
ビクトリア&アルバート博物館の正面入り口は、圧倒される美しさです。 入り口の上部にもルネットの窓が使われていました。
エントランスの上を見上げると、豪華な木製の天井になっています。 ここにも中央の四角い天窓を囲むようにルネットが四方に並んでいます。
昔から建物にもアーチを使うことが多いヨーロッパでは、それに合わせて必然的にルネットが使われることが多くなります。
このほかにも、歴史の深い建物が多く残されておるイギリスやフランスには、いろんな建物でルネットを見つけることができるので、ぜひ、訪れた際にはいろんなルネットを見つけて楽しんでみてください。
Item
家具の中のルネット
ルネットはゴシック様式が盛んだった16世紀頃の家具に多用され、その後の18世紀中頃からネオクラシカルスタイルの流行によりいろんな家具に使われてきたで装飾デザインです。
今までHandleでご紹介してきたルネットを使ったアンティーク家具をご紹介します。
1960年代 コーヒーテーブル
幕板に美しく並ぶルネットが印象的なコーヒーテーブルです。
バルボスレッグが重厚感たっぷりで、アンティークらしい雰囲気の家具です。
1960年代 ブックケース
ブックケースの中央扉に大きなルネットの中に小さなルネットが入っためずらしいデザインのルネットです。
1930年代 ワードローブ
いくつものルネットを重ね合わせてデザインされたワードローブです。
ゴシック様式らしい重厚なデザインを楽しむことができます。
1930年代 コンソールテーブル
ルネットの中に施されたお花の模様が美しいコンソールテーブルです。
幕板に施されたルネットが目を引くコンソールテーブルは何も置かなくても絵になる存在感です。
1930年代 ゲートレッグテーブル
天板をぐるりとルネットが囲むデザインのゲートレッグテーブルです。
脚を閉じて、天板をおろしてもルネットが際立って素敵です。
1930年代 ガラスキャビネット
ガラスキャビネットの下をルネットが重ね合わせてデザインされたガラスキャビネットです。
重なったルネットがまるでフリルのようで、重厚感の中に可愛らしさがあるデザインです。
Room
ルネットがあるお部屋
特別豪華だったり、派手な印象はないのに、高級感のある品と存在感を感じるデザインのルネット。 ルネットがあるの家具を取り入れて、お部屋の中で小さなお月様を楽しんでみましょう。
ROOM01ダイニング
ルネットがある家具と相性抜群のバルボスレッグのダイニングテーブルで組み合わせた大人な雰囲気のダイニングです。
オープンタイプのキャビネットの上部にデザインされたルネットが、シンプルな造りの家具に重厚感と高級感をプラスしてくれています。
オープンタイプのキャビネットは使い方も自由。普段使いのお皿やカトラリー、調味料など入れても便利!
中が雑多になりがちなオープンタイプも、家具に施された装飾が目をひき、何を入れても素敵に見せてくれます。
ROOM02リビング
天板にルネットが装飾されたゲートレッグテーブルを中心に置いたリビングです。
リビングだけど、あえてソファは置かずにテーブルと椅子で作ったリビングは、まるでイギリスのパブのような雰囲気。
オーク材で揃えたリビングは、落ち着いた大人の空間です。
ゲートレッグテーブルの脚を閉じて天板を下げて、コンソールテーブルとして使っても素敵。
天板をぐるりと囲むように施されたルネットが表面に見えて、お部屋のアクセントになってくれます。
ROOM03書斎
テーブルの幕板にルネットが並んだデザインの伸長式テーブルをデスクに使った大人の書斎をコーディネートしました。
ダイニングテーブルはサイズが大きいので、がっつり仕事をする書斎におすすめ。
伸長式のテーブルなので、さらに大きく使うこともできて便利なんです。
ルネットとバルボスレッグの重厚感たっぷりのデザインのテーブルと、仕事用の機能的なチェアでも不思議と違和感がなく相性ピッタリ。
アンティークと現代の家具のミックスがおしゃれな書斎の完成です。
ROOM04和室
ルネットが施された家具と和室は相性抜群。
和室にアンティークらしいゴシック様式のキャビネットと、曲線が美しいエレガントなサロンチェア、さらにシャンデリアを合わせたお部屋は、
家具の色合いを合わせただけで、テイストは全部バラバラなのに落ち着きのある空間が完成です。
キラキラ輝くシャンデリアや、赤い座面が印象的なサロンチェアと、それぞれ主役級の存在感の家具にも負けないルネットの家具。
個性ある家具たちを、重厚感ある落ち着いた魅力で、他の家具たちを一つにまとめてさらに素敵な空間に仕上げてくれています。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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