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1脚投入でお部屋が変わる「椅子の宝石」サロンチェア
- 水野 友紀子
アンティークのことにドンドン詳しくなっていくにつれて、私が買い集め始めたもの。それがサロンチェアです。
言ってしまえば、椅子。なのに、高級な木材を使って、驚くほどの手間と時間をかけて造り上げられた美しい椅子は、一脚を置いただけで、お部屋全体の雰囲気を変えてしまうくらいの魅力があるんです。
お家に招いたお客様に自慢するために造られた、芸術的に美しい宝石のような椅子、サロンチェアの魅力をお話しします。
Handle 水野 友紀子
そもそもサロンとは・・・
18世紀初期のフランスでは、貴族達がパリ市内や郊外に別宅を構え、その客間や書斎にお客様を招き、自由に談話を楽しむ「サロン」と呼ばれる社交界が流行しました。
主人が文化人や学者、作家などを招いて知的な会話を楽しむ場所。そんな場所で使うために使われた椅子が、サロンチェアです。
招いたお客様たちに使ってもらうために造られた椅子なので、自慢できるよう、思いっきり贅沢な素材を使って、芸術的に美しいデザインで仕上げられました。
Handleでは、フランスから届くアンティークの椅子の中で、座面と背もたれにクッションが入った布地張りのアーム付きの椅子のことをサロンチェアと呼んでいます。
フランスのサロンチェアは、女性らしいフレンチカブリオルレッグの脚で、優雅な雰囲気が特徴です。
背もたれや座面、アームの部分に、フランスらしいお花や貝殻、エンジェルなどの彫が入っているものが多く、優雅で女性らしいデザインが特徴的です。
サロンセットの基本は2~3人掛けのソファと1人掛けのアーム付きの椅子が大小1脚ずつ造られました。豪華なものは、さらにアームなしの椅子が2~6脚ほどお揃いで造られましたが、全部がお揃いで見つかることはほとんどありません。
また、フランスの代表的なサロンチェアが鮮やかな刺繍が施されたプチポワンチェアです。
フランス語で「小さなステッチ」という意味のプチポワンは、マリーアントワネットも大好きだった、まるで絵画のような細かい刺繍が特徴です。
1人掛けのチェアが基本ですが、まれに、同じデザインのセティが見つかることもあります。
Handleでは、英国から届くアンティークの椅子の中で、座面が生地張りで、背もたれに透かし彫りや象嵌などの贅沢な細工が施されたものをサロンチェアと呼んでいます。
イギリスのサロンチェアは、座面が貼り座ですが、フランスのサロンチェアのように、ふかふかとしたクッション性があるものは少なく、ソファのようにくつろぐと言うわけではなく、どちらかと言うと、きちんと座るイメージの椅子です。
横から見ると、ダイニングチェアは背筋が伸びる角度ですが、サロンチェアの背もたれは、角度がゆるくカーブして、ラクな姿勢が取れるようになっています。
英国でサロンチェアは、ヴィクトリア時代にパーラー(客間)やリビング(居間)で、家族が集まって趣味を楽しんだり、音楽やコンサートなどのホームパーティーを楽しむ時に使われてたもの。
なので、基本は2~3人掛けのセティに、大小2脚のアームチェア、6脚から10脚のシングルチェアがセットで置かれていました。
また、1人掛けのサロンチェアの中には、同じデザインでも座面の高さが低く、さらに若干、広めの「ナーシングチェア」が見つかることがあります。
座面の低いナーシングチェアとは、もともと乳母用の椅子。赤ちゃんにおっぱいをあげる際、背の低い女性でも、床に足をピタッとつけて楽に座ることが出来るように造られた椅子です。
なので、女性でも背もたれを持ち上げて引っ張りながら移動が出来るよう、脚先にキャスターが付いているものも多く見つかります。
同じくサロンに使われたセティは、17世紀に誕生した、肘掛と背もたれが付き、生地張りの座面になっている椅子のことを言います。
置いておくだけで見る人みんなを惹きつける力を持っているセティは、アンティークでしか見つけることが出来ない、椅子の形をした「芸術品」です。
また、背もたれや肘掛の木の部分には、透かし彫りや象嵌などの華やかな装飾が施されており、まるで芸術品のような美しさです。
また、18世紀中期にトーマス・チッペンデールなど家具デザイナーたちの誕生によって椅子のデザインが進化し、ロココ様式を基調とした細身で優雅なシルエットが魅力の、新しいデザインのサロンチェアが作りあげられました。
当時、ダイニングとリビングが1部屋になってる一般家庭では、丈夫でしっかりした造りのダイニングチェアのみが使われたので、サロンチェアは裕福なお屋敷でのみ使われた、お部屋を飾るための宝石のような椅子。
その美しいシルエットは今でも多くの人たちに支持され続けています。
サロンチェアと言っても、いろいろな種類があります。
「装飾」「脚のデザイン」「木材」に分けて、特徴を見てみましょう。
まずは装飾。
サロンチェアの背もたれの装飾は、とにかく美しいんです。
堅い木を彫りぬいて向こう側が見えるようにしたデザインの「透かし彫り」
その中でも華やかで立体感のある透かし彫りは「ピアスドカービング」と呼ばれ、見る人みんなを魅了します。
上品で細身のシルエットのサロンチェアの背もたれで見かける装飾が「象嵌細工」です。
木材の表面に模様を彫り、切り出した別の木片をはめ込んで模様を描く、職人の高度な技術と時間が必要な技法です。
年月が経っても収縮しない、質のよい高級な木材が使われた椅子のみに使うことが出来る装飾。
象嵌が施されている=とても貴重で高価な椅子とも言えます。
はじめにいくつかのベニヤを重ねてその上にデザインを転写し、フレットソー(糸のこぎり)で切り取ります。
切り分けたベニヤはバラバラに分けて、慎重に使うパーツを選び、残りは次に使う分として保管されます。
色を付けたい部分の木を染料で染めたり、熱くなった砂に沈めて熱で木材を焦がしたり・・・苦労しながら木の色を変化させます。
紙を敷いて、木片を並べて接着し、デザインを作ります。
本体にデザインの輪郭を貼り付けて、切り抜いて作ったくぼみに、組み立てたデザインをはめ込みます。
最後に表面が平らになるように削って完成。とても面倒で細かい作業を繰り返して象嵌細工が出来上がります。
風船のような丸い背もたれのバルーンバックチェアは、産業革命の頃の技術の向上により、華奢な見た目でも座り心地のいい頑丈な椅子として誕生し、大人気でした。
美しい背もたれのバルーンバックは、サロンチェアとしてだけではなく、ダイニングチェアでも使える椅子として多くの人から支持を得ました。
お部屋の角にピタッと付けて置くことの出来るコーナーチェア。
座って使うのはもちろん、魅せるために造られた椅子なので、装飾がとても豪華で華やかなものが多いです。
象嵌や透かし彫りの両方が施されている贅沢なものも多く、置いておくだけで見映えする椅子です。
サロンチェアを選ぶ上でポイントになるのが脚のデザインです。
一般的に脚全体のデザインを「レッグ」、脚先のデザインを「フット」と言います。
サロンチェアでよく見かけるのは、曲線を帯びた優雅な猫脚「カブリオールレッグ」。
このデザインはアン女王の時代に作られたクイーンアンチェアから使われるようになりました。
カブリオールとは、フランスのバレエ用語で「はずむ」とか「飛び跳ねる」という意味で、脚先が動物のモチーフになっているものが多いです。
カブリオールレッグの脚先には、いろんなデザインがあります。
ヤギをモチーフにした「フレンチカブリオールレッグ」、獅子や竜の爪がボールをつかんでいるような「クロウ&ボウル」、ゴルフパッドの先のような「パッドフット」など。
脚先のデザインでチェアの印象もガラッと変わります。
→カブリオールレッグのサロンチェアはコチラ
次第に細くなっていくという意味の「テイパードレッグ」は、名前の通り、脚の付け根から先にかけてだんだん細くなるデザインです。
シノワズリやゴシック様式が流行した18世紀後半頃に、洗練された直線的でシンプルなデザインが増え、その頃に現れたヘップルホワイトやシェラトンのようなデザイナー達が、テイパードレッグをチェアに取り入れました。
ゴシック様式のようなドッシリとした雰囲気とは真逆で、スッキリとしたテイパードレッグのデザインは、現代の私達が日常的に使っているモダンな家具スタイルの礎になっています。
トランプのスペードを逆さにしたようなデザインの「スペードフット」は、イギリスを代表する家具デザイナーのチッペンデールが流行させたと言われています。
また、反った剣という意味の「セイバーレッグ」と呼ばれる脚も、同じ時代に生まれました。
→テーパードレッグのサロンチェアはコチラ
細かな装飾が施されたデザイン性が高いアンティークのサロンチェア。
華奢なデザインの椅子なのに強度を持たせることが出来るのは、丈夫で高級な品質の高い木材が使われていることが理由です。
サロンチェアに使われている木材は、主に「マホガニー材」「ウォルナット材」「ローズウッド材」などの高級木ばかり。
高級な木材を使ったからこそ、美しいデザインのサロンチェアが出来上がりました。
赤みを帯びた木肌が特徴のマホガニー材。
本物のマホガニー材は、現在、手に入れることが出来ない木材なので、本当の意味でマホガニー材のチェアはアンティークでしか手に入りません。
加工がしやすく、耐久性があるマホガニー材が使われているので、美しい透かし彫りや華やかな象嵌細工を施すことが出来ます。
→マホガニー材のサロンチェア一覧を見る
堅くて反りやねじれも少ないウォルナット材は加工もしやすく強度もあるため、毎日使う椅子に適しています。
バルーンバックチェアやナーシングチェアなどでもよく使われているウォルナット材は、細かい彫が入った装飾の椅子に使われています。
→ウォルナット材のチェア一覧を見る
シンプルなデザインが流行したリージェンシー時代に多く使われた木材がローズウッド材です。
日本名で紫檀(シタン)と呼ばれるマメ科の広葉樹は、ほんのりバラのような香りがする高級材。
現在はワシントン条約によって輸入が規制されているので、ローズウッド材のチェアは数がとても少なく、出会えた時は宝くじに当たったくらいラッキー☆とても貴重です。
→ローズウッド材のチェア一覧を見る
Handleには、2ヵ月に1度、イギリスやフランスに直接、買い付けに行って女性目線で集めてきた、日本最大級の豊富な品揃えのサロンチェアが揃っています。
スタイルにこだわらず、「素敵!」と思ったサロンチェアを集めてきているので、きっと気になるデザインが見つかります。
また、同じデザインのものをセットで見つけることが出来た場合は、全てを買い付けるようにしていますので、お揃いのチェアでお部屋の中を統一できるのも魅力です。
椅子の中でも、優雅なラインを作るために特に線が細いサロンチェアは、しっかり修復していないと安心して座っていただくことが出来ません。
Handleでは、アンティーク家具専門の職人が、全てバラバラに分解しキレイに組みなおしをし修復を行ったものしかお送りしていません。
また、お使い頂いた後、不具合が出てきた場合は、何年後でも修復させて頂いています。
修復の際、座面の中の詰め物も、そのまま使えるかどうかを確認しています。
なので、もともと使われていた古い座面の貼り地は必ず剥がし、組みなおした後、それぞれのサロンチェアに一番似合うと思う新しい生地を選んで張り替えていますので、ご安心下さい。
お客様からご要望があれば、ご希望の高さに合わせて、サロンチェアの脚をカットしてお届けしています。
専門の職人が、しっかり水平をとってカットしているので安心です。
Handleからお届けする椅子の足先には、必ずフェルトキーパーを付けています。
椅子をわざわざ持ち上げなくても、スーっと引っ張って移動させることが出来るので、ご安心ください。
チェアを選ぶときにやっぱり気になるのは座面の高さ。
靴を履いて生活する西洋で造られたアンティークのチェアは、靴を脱いで生活する日本人には、高さが少し高いと感じるものが多いんです。
Handleではお客様のご希望に合わせて、脚をカットしてお届けしていますが、足先のデザインによって、カット出来るものと出来ないものがあります。
クロウ&ボウルのように脚の先端、いわゆる「足」の部分、全体が装飾になっているものはカットが出来ません。
フレンチカブリオルレッグと呼ばれる、足先が小さな台に乗っているタイプのものは、台の部分をカットすることが出来ます。
テイパードレッグのような装飾のないストレートの足は、どこでも好きな場所でカットすることが出来ます。
実は布張りのチェアの場合は、そのまま置いて使うときと、座って使うときとでは座面の高さが変わります。
座面の高さを測るときは、メジャーを床から垂直に伸ばして、座面の一番高い部分を測っています。
革や布張りの座面の場合は、座面にクッションが入っているため、座ったときにぎゅーっと沈み込んで座面の高さは少し低くなるんです。
どのくらい座面が沈み込むかは、個人差があるため図ることができません。
クッションのついたチェアを購入するときは、座って使うときの高さが少し下がることを頭に入れて選ぶと、使いやすいピッタリのチェアを見つけることが出来ます。
置くだけでお部屋を華やかにしてくれるサロンチェアは、もちろんリビングで使われることが一番多い椅子。
いろんな家具が並ぶリビングの中で使う場合は、小ぶりなテーブルと組み合わせるのがオススメ。
気軽に上品な雰囲気が楽しめるコーナーが出来上がります。
玄関で「魅せる椅子」として、サロンチェアを一脚、置いてみましょう。
お家に遊びに来た方、みんなを魅了しちゃう美しい背もたれの装飾は、まさに「見せるための椅子」。
広い玄関であれば、コンソールテーブルを真ん中に2脚で挟みこむと、お家の中まで格上げされた気分になります。
サロンチェアの座面は生地張りのものが多く、また装飾も優雅で美しいので、自分だけの部屋で優雅な時間を過ごすのにピッタリです。
ちょっとだけ贅沢な自分だけのリラックスな時間を過ごしてください。
カッコいいデスクを選んだら、一緒に使う椅子にもこだわりたいもの。
背もたれが華やかな椅子と一緒に組み合わせて、よりオシャレな書斎を作ってみましょう。
デスクの高さに合わせて、ちょうどいい高さにカットした椅子を組み合わせて使えば仕事もはかどります。
実は和室にも、とても似合うサロンチェア。特に座面が低いナーシングチェアを畳みの上で組み合わせる使い方がオススメです。
座面が低いので、お年寄りや背が低い女性でも掛けやすく、また、畳の上に置くだけで、よりオシャレな雰囲気が作れます。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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