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バルーンバックチェアの魅力とは?選び方・使い方
- 水野 友紀子
バルーンバックチェアとは、ヴィクトリア時代にサロンで使う椅子として大人気だった、背もたれが丸い形の椅子のことです。
バルーン=気球のような形の背もたれのバルーンバックチェアを初めて見た時、見た目そのままのあまりに単純な名前の付け方に、思わず笑ってしまった私(笑)
ですが、チッペンデールも好んで使ったバルーンバックチェアの素晴らしさを知れば知るほど、もっとたくさんの方にこの椅子の魅力を知ってもらいたい!と思うようになりました。
今回は、ビクトリア期を代表するサロンチェア、バルーンバックチェアについて、詳しくお話します。
Handle 水野 友紀子
~ バルーンバックチェアの目次 ~
1.バルーンバックチェアとは 2.バルーンバックチェアの特徴 2-1 いろんな形のバルーン 2-2 脚の形 2-3 高級木材 3.気球から生まれた形 4.バルーンバックチェアの座面 5.バルーンバックチェアのある暮らし
Balloon back chair
バルーンバックチェアとは
英語で風船や気球をあらわすバルーン(Balloon)が名前についた椅子、バルーンバックチェアは、背もたれがバルーンのように丸い曲線を描くデザインの椅子のことです。
19世紀のヴィクトリア時代を代表する椅子、バルーンバックチェアは、サロン(応接室)やパーラー(客間)、ダイニングなどで使われ、大流行しました。
バルーンバックチェアが誕生した1830~60年頃の英国では産業革命が起こり、機械を使って、過去の様式のリバイバルや装飾的なデザインの家具や椅子などがたくさん造られた時代。
機械に頼った粗悪な家具や椅子が増えている中、高級な木材を使い、高度な技術を必要としたバルーンバックチェアは、頑丈で座りやすく、それでいて見た目がエレガントな椅子として人気を集めました。
主に、客間や応接間で、お客様を呼んでおもてなしをするサロンチェアとして使われていた椅子。
なので、ラクな姿勢で座ることが出来るよう、バルーンバックチェアを横から見てみると、背もたれに角度がつき、緩くカーブを描いています。
正面から見た時に、バルーンのような曲線ラインの枠を作り出すだけでもムズカシイのですが、後ろにもゆるくカーブさせ、三次元の曲線を描くバルーンバックチェアは、産業革命で機械化が進む中で、当時の家具職人の高度な技術が詰め込まれた椅子です。
高級材を使った英国家具職人の技が光るバルーンバックチェア。ぜひ、ここからアンティークのある暮らしを楽しんでみませんか?
Balloon back chair
バルーンバックチェアの特徴
バルーンの形をしたビクトリア朝を代表する椅子、バルーンバックチェアの人気のヒミツを紐解いてみましょう。
Point 1
いろんな形のバルーン
一番の特徴は、やっぱり丸いバルーンの形をした背もたれ。
基本はまん丸ですが、少しオーバル形になっているものから、中央に貫の入ったもの、アレンジが加えられた独特なシルエットまで、ベースになっている風船の形を活かしながら、個性的なデザインの背もたれを見つけることが出来ます。
アンティークの場合、ダイニング用として複数脚がセットで造られたもの以外は、過去に出会ったバルーンバックと同じデザインのものを見つけることも出来ないくらい、いろんな形のものがあります。
design1 バルーンの形
丸い背もたれの先が、まるで雲の形のように、ふわふわ~っと柔らかな曲線になっているバルーンバックチェア。
女性らしく優しい柔らかい雰囲気の、個性的な形のバルーンがおしゃれです。
まるでお花がパッと開いたような、めずらしいお花の形が可愛いバルーン。
バラのイバラのような彫がめずらしいバルーン。おとぎ話に出てくるようなデザインです。
ハートの形が美しいバルーン。植物の模様が透かし彫りされた、華やかなデザインです。
design2 透かし彫り
バルーンのトップや貫の部分に、透かし彫りや浮き彫りが立体的に施されているものも多く、まるで芸術品のような職人技が感じられます。
まるで一本のツタが背もたれに絡まったような繊細な彫のデザインはバリエーションも豊富。英国家具職人の技を見比べてみて下さい。
丸い形のバルーンのトップの部分にアクセントになる透かし彫りが入ったバルーンバック。
一見シンプルなバルーンをよく見ると、蔦の立体的な見事な浮き彫りが施されています。
全体に彫りが入ったバルーン。キュッとくびれた女性らしいフォルムも上品です。
Point 2
脚の形
バルーンバックチェアの脚に一番よく使われているのが、カブリオールレッグと呼ばれる猫足。
フランスから流行したカブリオールレッグは、イギリスで少しシンプルな形になって使われていることが多いです。
曲線的な背もたれのデザインに、同じく曲線的な猫足が合わさることで、より女性らしく華やかな雰囲気を醸し出してくれる椅子です。
英国らしい重厚感が感じられるターニングレッグのバルーンバックチェアは、猫脚の曲線に比べて、ストレートで男性的な印象。
同じような丸い背もたれでも、脚のデザインが変わるだけで、雰囲気も大きく変化します。
Point 3
高級木材
まん丸の形を繰り抜いているように見えるバルーンバックチェアの背もたれ。実は、大きく分けて4つのパーツを組み合わせて造っています。
それぞれのパーツをピッタリ組み合わせるためには、職人さんの技術はもちろん、年月が経っても狂いが出ない上質な木材を使うことが必須。
さらに、透かし彫りや浮き彫りなどの繊細な装飾を施すため、ヴィクトリア朝時代の初期はローズウッド材が、ローズウッドがなくなった後は、マホガニー材やウォールナット材など、狂いが少ない上に加工がしやすい高級木材が使われて造られました。
French
気球から生まれた形
実はバルーンバックチェアがイギリスで流行したヴィクトリア時代より前の、18世紀頃のフランスでも、背もたれが気球のような形をした椅子が造られていました。
当時、フランスで熱気球を飛ばす実験を行っていたモンゴルフィエ兄弟が1783年に、当時のフランス王、ルイ16世と王妃のマリーアントワネットが見守る中、ベルサイユ宮殿に集まったたくさんの人たちの前で、動物を乗せた飛行実験に成功!モンゴルフィエ兄弟の熱気球に、多くの人の関心が集まりました。
同じ年の11月21日に、とうとう熱気球で初めての有人飛行が成功☆
人が空を飛んだことへの驚きから、フランス中で熱気球への関心が高まり盛り上がります。
この成功を讃えようと、記念の版画や陶器、置き時計などがいろいろ作られ、その中に「モンゴルフィエール・チェア(montgolfier chair)」と呼ばれる、背もたれが気球の形をした椅子も造られました。
当時、フランスで有名だったデザイナーのジョルジュ・ジェイコブ(George Jacob)が原型を造ったモンゴルフィエールチェアは、気球の形をそのまま背もたれにしたようなデザインの椅子。
他にも、熱気球ブームのフランスでは背もたれが丸い椅子がいろいろデザインされていきました。
その後、様々な様式デザインがリバイバルされたヴィクトリア時代に入ったイギリスで、気球の形をしたモンゴルフィエールチェアがバルーンバックチェアとして形を変えて誕生。シンプルで美しい姿の椅子は英国全土で大流行しました。
バルーンバックチェアの座面
バルーンバックチェアを横から見てみると、クッションがとても分厚く、座枠の木の部分がほとんど見えないことが分かります。
それまでの椅子とは違い、座面にバネなどを入れてクッション性があって座り心地がよくなったバルーンバックチェアは、座った時に少し座面が沈み込むため、置いただけの場合と座面までの高さが少し違います。
座る人の体重や使っているクッション材によって個体差があるため、正確に何センチと表記することは出来ませんが必ず沈み込むため、板座の椅子と比べると座面までの高さは必ず高めです。
Handleでは椅子の座面までの高さを採寸する際、体重をかけない状態で測っているので、実際に座った時は少し低くなることを想定して選ぶようにしましょう。
Balloon back chair
バルーンバックチェアのある暮らし
ここからは、置くだけでお部屋を華やかに魅せてくれるバルーンバックチェアを使ったお部屋のコーディネートをご紹介します。
step1 まずは、1脚
まずはバルーンバックチェアを1脚、お部屋に取り入れてみましょう。
どこに、どうやって使うか悩んでしまう方にオススメの場所が・・・玄関!
玄関の空いているスペースにバルーンバックチェアを1脚置いてみましょう。
ここに座って靴を履き替えたり、荷物を置く場所として機能的に使うのはもちろん、1脚あるだけで、まるでコンシェルジュが待っていてくれているような感じ(笑)玄関を華やかに格上げしてくれます。
書斎コーナーのビューローブックケースの椅子としてバルーンバックチェアを1脚、組み合わせてみましょう。
美しい曲線を描くバルーンバックチェアは、正面からはもちろん、後ろや横からなど、どの角度から見ても素敵。
デスク前に置いて使えば、おしゃれなだけじゃなく気分も上がります!
リビングに1脚置いて、ソファと組み合わせて使ってみましょう。
クッション性がある椅子バルーンバックチェアは、もともとサロン用で優雅な時間を過ごすために造られた椅子。
派手すぎない上品な装飾は、いろんなスタイルのインテリアにも似合って、リビングに華やかさをプラスしてくれます。
step2 2脚コーデ
お揃いのバルーンバックチェアを見つけた時は、2脚使ってコーディネートを楽しんでみましょう。
サイドテーブルを真ん中に置いて、バルーンバックチェア2脚、組み合わせるだけでおしゃれなサロンコーナーが出来上がります。
畳との相性もバツグンにいいので、和室をサロンコーナーにして、なんだか背筋が伸びるような西洋風の空間を楽しんでみましょう。
壁面に置いたコンソールテーブルの両サイドに、バルーンバックチェアをシンメトリーに2脚置いてみましょう。
ミラーやお気に入りの絵を飾って、ディスプレイを施せば、パッと目を惹くディスプレイコーナーが完成。
玄関やリビングの一角で「魅せ場」を作ってみましょう。
リビングのちょっと空いたスペースにサイドテーブルとバルーンバックチェアを2脚置くだけで、簡単におしゃれなサロンコーナーを作ることが出来ます。
くつろぐ時はソファや長椅子、本を読んだり、お茶を楽しみたいときには、バルーンバックチェアに座ってサロンコーナーで。
同じお部屋でもくつろぎ方の違いで椅子を代えて楽しんでみましょう。
step3 複数脚で使う
バルーンバックチェアは、もともとサロンで使うためのサロンチェアとして造られた椅子ですが、座面のクッション性が高いので、ダイニングチェアとしてテーブルと一緒に組み合わせても、もちろん実用的にお使い頂けます。
丸い形の背もたれが特徴的な椅子ですが、基本の形はシンプルなので、どんなインテリアスタイルのテーブルにも似合います。
素敵な椅子を組合わせるだけで、ダイニングルームが格上げされます。
2脚のバルーンバックチェアと、ベンチを組合わせてダイニングルームをコーディネートしてみました。
お揃いのバルーンバックチェアと組み合わせるのはもちろん、形が違うベンチと組み合わせてもおしゃれダイニングルームがコーディネート出来ます。
シンプルな家具と組み合わせる場合、透かし彫りが入ったバルーンバックチェアを使うことで、一気に華やかさが増します。
同じテーブルでも、椅子が変わるだけで、まるでダイニングルーム全体を模様替えした気分になるので、試してみて下さい。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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