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お手入れもカンタン!木の宝石と呼ばれるチーク材の家具
- 水野 友紀子
最近、日本でも注目され人気を集めているのが、1960~70年代にたくさんデザインされた、北欧スタイルのシンプルな家具です。ヴィンテージと呼ばれるデザイン性の高いオシャレな家具で使われているのがチーク材。
なんとなく家具に使われ始めたのは最近のような気がしますが、マホガニー材やウォルナット材と並ぶ世界三大銘木の一つと言われるチーク材は、実は、2000年以上も前から愛されている歴史の長い木材なんです。
「木の宝石」とも言われるチーク材を使った家具の特徴や歴史をお話ししますので、家具選びの参考にしてみて下さい。
そもそもチーク材とは、シソ科チーク属の落葉性高木の総称です。ミャンマーやインドネシアなど主に東南アジアの熱帯気候の地域に生育している高級木材のことです。
東南アジアやインドでは、国々の宮殿や寺院などを建てるのに古くからチーク材が使われてきました。
チーク材には木製タールの油分(オイル)が含まれているので、水に強く、耐久性に優れ、腐りにくい特徴があります。
海水でも腐りにくく、虫にも強い特長を活かして船の甲板や内装材に使われてきた木材。20世紀を代表する豪華客船クイーンエリザベス2号の内装や、高級列車で有名なオリエント急行などにもチーク材が使われています。
そんなチーク材ですが、実は伐採したばかりのものは、水分を多く含んでいて反りや割れが激しいので、家具には向いていない木材です。
時間をかけて十分に乾燥させることで安定性が高まり、耐久性も高くなるチーク材は、古いものの方が価値があり、価格も高価。古い建造物や船などを解体した際に高級木材として市場に出回るのですが、最近は解体するものが少なくなっていることから、なかなか手に入りません。
現代、チーク材の家具を作る場合は、伐採してすぐにオーブン(木材乾燥機)などを使い、短期間で人工的に乾燥させて安定性を高めているものが多いです。チーク材の家具は水に強いので、ガーデンやアウトドア用、テーブルなどが作られています。
自然乾燥されたものと人工的に強制乾燥したものでは、やはり重厚感や存在感が違うので、チーク材を使って造られた英国のヴィンテージ家具は、現代、幅広い方から人気があります。
天然のオイルが含まれているチーク材の家具には、以下の3つの特徴があります。
チーク材は、よく乾燥させることで収縮率が小さく、狂いが少なくなるので、家具用として加工しやすいと人気の木材です。
水分を多く含む樹齢の若いチーク材よりも、十分に乾燥された古いチーク材の方が堅く、頑丈なので価格も高値。
とても堅いので、薄くスライスして家具の表面に突き板として用いられることも多い木材です。
チーク材はオイルを含んでいる木材なので、水に強く、ダイニングテーブルやコーヒーテーブルなど、水を使う家具に向いています。
オイルを含んだ木肌は、ロウのような滑らかな手触りがするので「木の宝石」と言われるほど。普段のお手入れも簡単です。
チーク材は経年変化が楽しめる木材です。一般的に木目の色はだんだん濃く変化して落ち着いた金褐色へと変化していきます。
また、新品のチーク材にはオイル成分による黒い縞模様が出ているものもがあるのですが、時間が経ってオイルが蒸発していくことで薄くなり、全体が飴色に変化していきます。
最近、大人気のシンプルな北欧スタイルのヴィンテージの家具は、ほとんどがチーク材で造られたものです。なぜ、この年代の家具にはチーク材の家具が多く使われているんでしょう??
そもそもチーク材の歴史は古く、2000年以上前からローマ帝国で船の材料として使用され、原産の東南アジアでは、宮殿や寺院などの豪華な建物を造るのに使われてきました。
18世紀に入ると、大量に伐採して採れなくなってしまったマホガニー材の代わりに、英国は植民地だった東南アジアに生育するチーク材を輸入しはじめました。
当時は、海水に強く、堅くて銃弾にも強い頑丈なチーク材は、植民地を拡大するために重要な木材。船を製作するにも最適だったので、世界中にチーク材が広がっていきました。
ところが20世紀になって、英国がチーク材を輸入していたビルマとシャム(現在のミャンマーとタイ)が、第二次世界大戦で日本軍に占領され、その後、独立したことで、英国への輸入がストップ。
さらに、第二次世界大戦中から1952年まで、イギリスでは「ユーティリティー・スキーム」という政府の規制があり、家具のデザインや木材が限定されます。
国策のもと規制が入り、オーク材やマホガニー材でしか家具が造れなかった英国は、この間、家具のデザインに関して遅れをとっていくことになります。
同じ時期、デンマークやスウェーデンなどの北欧で、家具のデザインブームが起こります。
デザイナーの巨匠と呼ばれたアルネ・ヤコブセンやハンス・ウェグナー、フィン・ユールなどが、戦後の物資がない中で「一般市民の人たちが気軽に使える家具を造りたい」という想いで、シンプルでスタイリッシュな家具をデザインしはじめました。
デザイナーが作り出す、独創的なデザインの家具を造るのに選ばれた木材がチーク材。
フィン・ユールが戦後の復興のために、機械で大量生産できるチーク材の椅子(Model 133 Spadestolen chair)を発表したことをきっかけにチーク材の家具が人気になります。
その後、デザインで遅れをとった英国でも、それまで見たことがない北欧デザインのスタイリッシュな家具が大人気に。
シンプルな北欧デザインは、それまでの英国家具と違って、大量生産することが出来たので、家具作りの技術に定評がある英国のメーカーが、北欧デザインで家具作りを始めました。
当時、イギリスの人口はデザインを作ったデンマークの約10倍。しかも品質の高い家具工場も多かったため、北欧で造られた家具より、イギリスで造られた北欧デザインの家具の方が数も多く、クオリティが高いことが、現代「ヴィンテージ家具」として手に入れやすい理由です。
今、日本で最も注目を集めている「G-PLAN」
E.Gomme社が発表したブランドで、男性的でクールなデザインが特徴です。
シンプルで、使いやすく、スタンダードなデザインの「マッキントッシュ」。
日本のお家にも取り入れやすいデザインが人気です。
1910年代にイギリスで生まれた「ネイサン」
日本ではあまり知られていませんが英国では人気の歴史がある老舗家具メーカーです。
「収納」を最優先に特化したデザインが多い「アヴァロン」
お片付けが楽しくなるデザインの家具が揃っています。
シンプルで飽きのこない「AustinSuite」
無駄のないシルエットが、ビンテージ家具のチーク材の良さを存分に引き出しています。
チーク材を使って造られた北欧デザインの英国ヴィンテージ家具には、いろんな種類の家具が揃っています。
1950年代 G-PLANのチェスト
英国を代表するG-PLANには独創的なデザインのものが多いんです。特に「サニーオーク&チャイニーズホワイト」と呼ばれるシリーズ。今の時代に見てもオシャレです。
1970年代 マッキントッシュのサイドボード
テレビ台にもなるビンテージ家具として人気なのが北欧デザインのサイドボード。サイズも大きいものが多いので、一台でリビングがカッコよく決まります。
1960年代 ガラスキャビネット
北欧デザインのガラス扉は、日本人でも使いやすい引き戸タイプのものがほとんど。数も少ないのでとても人気があります。
1960年代 伸長式エクステンションテーブル
天板を左右に動かすと、中から新たな天板が出てサイズが大きくなるエクステンションテーブル。簡単にサイズを変えながら便利に使えます。
1960年代 G-PLANのコーヒーテーブル
天板にガラスがはめ込まれたコーヒーテーブルは、見た目のオシャレさはもちろん、使い勝手もバツグンにいいんです。
1970年代 ダイニングチェア
デザイン性が高いので、ダイニングチェア1脚だけでもスゴイ存在感。食卓で使うのはもちろん、置いておくだけでオシャレな空気に包まれます。
チーク材のビンテージ家具は、シンプルな北欧デザインなので、どんなお部屋でも、どんな家具と組み合わせても、驚くほどすんなり馴染んでしまうんです。
「私の部屋の家具とは似合わないかも・・・」と不安な方。大丈夫です!どんなお部屋にも似合うので、ぜひ、貴方のお家でチーク材の家具を楽しんでみて下さい。
戦後、物資がない中で作られた北欧スタイルの家具は、トータルコーディネイトが出来るよう、同じデザインでいろんなアイテムが造られているものが多いです。
ビンテージ家具の場合、なかなか全部をお揃いで集める事はムズカシイですが、同じようなデザインで揃えれば、お部屋全体がスッキリとまとまってトータルコーディネイトされた北欧らしいお部屋が出来上がります。
英国らしい伝統的なデザインの家具の中に、シンプルな北欧デザインの家具を組み合わせてみると、ちょっとだけ息抜きが出来る雰囲気のお部屋が出来上がります。
素材もデザインも違うけれど、どちらも英国の伝統的な家具作りの技術で造られた家具。一緒に組み合わせて時代を超えた英国らしいカッコよさが漂うお部屋を楽しんでみましょう。
シンプルな北欧デザインの家具は、全く雰囲気が違うスタイルのペイントの家具とも、すんなり似合うデザインです。
パッと見た目、似合わないかもと心配される方も多いんですが、どんなデザインにも似合っちゃう包容力の大きさです。
和室の畳の部屋にもカッコよく似合ってしまう北欧デザインの家具。
スタイリッシュなデザイン力の家具は、それだけで存在感たっぷり。むしろ、和室をオシャレに見せてくれる力があります。
いかがでしたか?今、人気のチーク材の家具の特徴や歴史が少し分かってもらえて家具選びの参考にしてもらえると嬉しいです。
先ほどお話しした通り、現代、本物のチーク材で造られた家具を手に入れようと思うと、
①東南アジアの民芸家具のような、表面が少しラフに仕上げてある新しく作られた家具
②1960~70年代にたくさん作られた北欧デザインの英国ビンテージの家具
のどちらかがメインです。家具選びに正解はないので、正直、好みの問題(笑)どちらにしてもチーク材は世界の三大銘木に選ばれるくらいの高級木なので、本物のチーク材で造られた家具であれば、満足して頂けること間違いナシです!
使えば使うほどに味わい深くなってくるチーク材の家具。豪華客船の内装に使われていたチーク材の家具を実際にあなたのお家で使えば、まるで世界中を旅している気分で楽しんで使って頂けると思います(笑)
以上、Handle水野友紀子でした!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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