ヨーロッパを魅了した「IMARI(イマリ)」

水野友紀子
水野 友紀子

伊万里パターン(imari)


伊万里パターン

アンティークの食器の中で、私が最近、一番気になって集めまくっているのが「IMARI(イマリ)」と呼ばれる模様。

イギリスで初めてイマリのアンティークカップ&ソーサーを見つけた時「なぜ、日本のものがココにあるんだろう・・・?!」とビックリしたのを今でも覚えています。

だって、日本の三大陶磁器の一つとして有名な有田焼にとってもよく似ている~!!

それもそのはず、そもそも英国でIMARI(イマリ)と呼ばれているモチーフは、もともと有田焼を模したもので、藍色で絵付けした「染付」や赤、緑、金色などのカラーパレットで美しく絵付けされたデザインの陶磁器のことなんです。

まるで有田焼じゃない?と思っちゃうソックリのものから、英国生まれらしい可愛いリボンやお花で有田焼のような絵が描かれているものまで、いろんな模様があって、見れば見るほど気になる~(笑)

伊万里市

そもそもIMARI=伊万里とは、佐賀県西部にある有田焼を輸出する港町の地名「伊万里」のこと。

1600年代中頃から、有田焼が伊万里湾から出島を通り、ヨーロッパに向けて輸出されたことからイマリ(IMARI)と呼ばれるようになりました。

ちなみに現在は、佐賀県有田町で製造されているものを「有田焼」、佐賀県伊万里市内で製造されているものを「伊万里焼」、さらに江戸期に作られたものは「古伊万里」と区別されています。

IMARIの誕生秘話


1600年代前半に、有田を中心とした一体で生産されるようになった、日本の三大陶磁器として有名な「有田焼」。

当時、まだ磁器を焼く技術がなかったヨーロッパでは、中国の磁器「景徳鎮」が大人気でしたが、明清王朝の交代に伴う内乱の影響でヨーロッパへの輸出量が激減してしまいました。

そこで、景徳鎮に代わる磁器を探していたオランダの東インド会社が見つけたのが有田焼!

金襴手様式の有田焼の美しさに、すっかり魅了されたヨーロッパの人たちに向けて、江戸時代、1659年から有田焼のヨーロッパへの輸出が本格的に始まりました。

伊万里港から運ばれてくることから「イマリ(IMARI)」と呼ばれるようになったことから、有田焼=イマリとして世界中に広く知れ渡るようになりました。

古伊万里の食器

土質の違いから白い磁器を作ることが出来なかったヨーロッパでは、真っ白な美しい磁肌に色鮮やかに絵付けされた有田焼は「白い金」と呼ばれ、憧れの的。

17~18世紀、東洋からやってくる真っ白な磁器は、ヨーロッパの王族貴族や富裕層のステイタスシンボルとなり、趣味の良さをアピールする道具として大人気でした。

そんな美しい陶磁器を収集し、装飾品として飾るためだけの広間が作られるようになり、ヨーロッパでは東洋の磁器が大ブレイクします。

ちなみに・・・この装飾品を飾るための広間が、気軽に使えるように小ぶりになったものが、チャイナキャビネットです。



IMARI×マイセン


東洋の磁器「IMARI」に魅了されたたくさんのヨーロッパの人たちの中で、特に有名なのがアウグスト2世

彼は、自分が持つ大勢の兵士と東洋の磁器を交換したと言われているほど、熱烈なコレクターでした。

その美しい磁器を、ヨーロッパでも作りたいと言い始めたアウグスト王の命令で、試行錯誤の末、1710年にヨーロッパ初の磁器窯「マイセン」が誕生しました。

アウグスト2世

大きく分けると「古伊万里様式」「柿右衛門様式」「鍋島藩窯様式」の3つの様式に分けられる有田焼の中で、特にマイセンの誕生に影響を与えたのが「柿右衛門様式」です。

「濁し手(にごしで)」という透明感と暖かみのある乳白色の素地の余白をたくさん残しながら、繊細な黒い線と色鮮やかなで色で絵付する「色絵(いろえ)」が特徴的な柿右衛門様式の技法を模倣した美しい磁器が、今でもマイセンには多く残っています。

柿右衛門様式

マイセンだけでなく、その後、ボーンチャイナの技術が開発されたヨーロッパ各地で、憧れだった有田焼を模した「IMARIパターン」がたくさん作られました。

「エインズレイ」「ウェッジウッド」など、有名な窯が日本のデザインを取り入れる中、「ロイヤルクラウンダービー」には「オールド・イマリ」というシリーズがあるほど!

そんな風にヨーロッパの人たちに影響を与えたイマリパターンを見てみると、なんだか日本人であることを誇りに思ってしまうんです(笑)

もちろん、海を渡り、ヨーロッパ仕様になったことで、より華やかさを増し、それでいて気軽に使いやすくなった白い金「イマリパターン」のアンティーク陶磁器と一緒に、素敵な時間を過ごしてみませんか?



【ご紹介したアイテム】

イギリスで直接買い付けたイマリパターンのアンティーク食器をご紹介しています。



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水野友紀子

水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

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(水野商品館 株式会社)

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