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幻の青いアンティーク食器「フローブルー(FLOW BLUE)」
- 水野 友紀子
フローブルー(Flow Blue)
「好きな色は?」と聞かれたら、迷わず「青!」と答える私にとって、白地に青で絵付けされているアンティークの「ブルー&ホワイト」は大好きすぎる陶磁器(笑)
ブルー&ホワイトの中には、悲恋物語が描かれた「ウィローパターン」も含まれているんですが、「幻の青い食器」と呼ばれているアンティークがあります。
それが・・・「Flow Blue(フローブルー)」です。
初めてフローブルーのウィローパターンを見つけた時、一瞬、自分の目がおかしくなったのかな?と思ってしまった私(笑)
だって、いつも見ていて慣れ親しんだウィローパターンの輪郭が、ぼんやりして滲んで見える~!!
よく見ると、確かにウィローパターンなんだけれど、まるで、絵の具で描いた絵の上に水をこぼしてしまって、滲んでしまったような雰囲気。
一体、どうしてこんな風になってしまっているんだろう??と、不思議そうに眺めていた私にディーラーが
「これは幻の青い食器だよ」と教えてくれました。
日本では、まだ知っている方が少ないフローブルーの始まりは、1820年代のスタッフォードシャーにあった陶磁器メーカーが作った・・・失敗作!(笑)
当時、ブルー&ホワイトの陶磁器には青い色の顔料「コバルト」を使って銅版転写で絵付けが行われていましたが、今とは違って、当時のコバルトは成分がとても不安定。
しかも、当時は石炭を使っていたため、窯の温度も不安定。
不安定な成分のコバルトの陶器を、不安定な窯で焼いた時、白い陶器に青いコバルトの色が流れてしまったことで、絵がにじんでしまったブルー&ホワイトが出来上がりました。
「流れる(Flow)青(Blue)=フローブルー」の誕生です。
不安定なコバルトと不安定な窯の温度。
その2つの不安定さは毎回、同じ状態にはならないので、その都度、違う雰囲気のものが出来上がるフローブルー。
その日の窯の温度で、色のグラデーションも変化するため、毎回、色も違えば、滲み方も違うフローブルーは、同じような絵柄が出来上がることがないことから「幻の青い食器」と呼ばれるようになります。
偶然が重なったことで出来上がるフローブルーの神秘的な模様ですが、イギリスでは失敗作として扱われたため評価されることがありませんでした。
その結果、英国国内では検査落ち商品としてアメリカに輸出されることになりました。
ところが!アメリカでは流れるような青色の食器がとても美しいと大人気!
英国の貴重な陶磁器「幻の青い食器」として販売されるようになり、1920年代までイギリスで商業用の食器として製造されました。
アメリカで高い評価を得たフローブルーは、再び、イギリスでその価値を見直されることになります。
・・・が!ほとんどがアメリカに輸出されてしまったので、イギリスには残っていない・・・(涙)
ないとなると、さらに人気が高まり、アンティークマーケットでも争奪戦!
と言うことで、さらに幻の青い食器となっているフローブルー。
神秘的な模様の幻の青い食器を見つけた時は、ぜひ、ご自宅で楽しんでみませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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【南青山オフィス】
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-41
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第521010008980号
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