ウィローパターン

水野友紀子
水野 友紀子

ウィローパターン(Willow Pattern)

ウィローパターン

アンティーク陶磁器の買い付けをしていると
「本当にイギリス生まれなの?」
と思うくらい、私たちが慣れ親しんだ、東洋柄のものを見つけることがあります。

その中でも特に人気があり、今も世界中で愛されている文様が「ウィロー・パターン(Willow Pattern)」

ブルー&ホワイトで描かれているので、ブルーウィローとも呼ばれるウィロウパターンとは、英国の人が中国の風景をイメージして英国の陶磁器に描いた柳文様のことです。

ウィローパターンが誕生した1780年頃、英国の上流階級の間では、東洋のものが大流行!

遠い東洋から輸入された、美しく高価な陶磁器に憧れる人がどんどん増えていきました。

そこで、英国のいろんな窯では、東洋の陶磁器に描かれている絵の真似をした陶磁器を作り始めます。

そこで誕生した模様の一つが、柳(willow)文様=ウィローパターンです。

ウィローパターンには、英国の人が憧れていた遠い東洋の風景画、いわゆる中国の典型的な山水画を真似たものが描かれました。

柳を中心に、山水や樹木、岩石など景観を描かれたので、窯によって文様が違っていましたが、19世紀に入るといろんな窯で作ったウィローパターンの図案が、ほぼ同じように統一されて描かれるようになりました。

柳に松、垣根、楼閣や塀、さらに橋に小舟、そして2羽の鳥・・・



統一されて描かれるようになったきっかけは・・・悲恋物語。

ウィローパターンの模様をもとに、中国の2人の若者の悲しい恋物語が語り継がれるようになったことで、ウィローパターンの人気はさらに高まり、1849年には雑誌に紹介されるくらい有名になりました。

その後、ブルーウィローは海を渡って世界中で人気になり、モンゴメリーの大人気小説「赤毛のアン」の中でも紹介されるようになります。

「アンの青春」の中で、教会の婦人会が募金集めの催しをする際、昔の台所を再現した模擬店を作ることに。

そこでアラン牧師夫人が 「本物の柳の青い大きなお皿を使いたい」 と言っていることを知った主人公のアンが探し出すんですが、この「柳の青い大きなお皿」は、ブルーウィローです!

こうやって、ウイローパターンは世界中に広がっていき、今も英国の陶磁器を代表する人気のパターンになっています。

ちなみに・・・アラン夫人が 「本物」のブルーウィロー と言っている理由は、本物と偽物があったわけではなく、この当時、あまりにブルーウィローが人気だったため、質の悪い商品が出回っていたので、質のいい 「本物」のブルーウィローを探していたようです(笑)

さて、ここからは雑誌の紹介をもとに、ヴィクトリア朝に語り継がれた中国の悲恋物語をご紹介します。

ウィローパターンの図案と照らし合わせながら見てみると、さらに好きになると思いますので、ぜひ読んでみてください!

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昔、中国に、権力と富を持った官吏がいました。
彼の一人娘は年頃になり、彼の家来と恋に落ちてしまいます。
そのことを知った父は激怒!
家来が家の中に入って来れないよう、娘の家の横に高いを建てます。
それだけではなく、家の隣に別棟の塔を建てて、2人が会わないよう娘を幽閉してしまいました。

さらに父は、位の高い、年の離れた大公と娘の結婚を勝手に決めてしまいます。
結婚式の日は、幽閉された塔の横に植えられた桃の花が満開になった日。

悲しみに明け暮れる娘は、ある日、川を流れてくる笹舟を見つけました。
中には、なんと!恋人からの手紙が!

「柳の花が落ち、桃のつぼみが開くころ、僕は蓮の花とともに水底に深く沈んでいるでしょう・・・」

その手紙を読んだ娘は
「私をここから救い出してください」
と返事を書き、笹舟に乗せて流しました。

桃の花が満開になり、結婚式がやってきました。

大公が贈り物として持ってきた、たくさんの宝石の入った箱を父は大喜びで娘に渡します。

華やかな宴の最中、恋人が屋敷に忍び込み、父と大公が飲み過ぎてうたた寝をしている間に、宝石を持って、娘と一緒に逃げ出します。

大きな柳の木の下にある橋のたもとまで逃げたところで、父に見つかってしまいますが、橋を渡ってなんとか逃げ切った2人。

花嫁に逃げられた大公は怒り狂い、2人を宝石泥棒として死刑にすると決めました。

逃げた2人は侍女の家に逃げ込み、結婚式を挙げました!・・・が、追手がやってきます。
2人は大慌てで小舟に乗り、何日も揺られて、島にたどり着きました。

宝石を換金し、島を買い取った2人は、貧しくも幸せな生活を始めました。
夫は農業指導書を書き、農民を指導したことで、多くの農民の命が救われ、大評判に!
ところが、その評判を大公の耳に入り、居場所が分かってしまいます。

大公は群を引き連れて、娘のいる島へ。
勇敢に戦いましたが、娘の前で大公に殺されてしまいました。

絶望した娘は、屋敷に火を放ち、炎の中に身を投げてしまいました・・・

そんな2人のことを哀れに思った神様が、2人の姿を鳥に変え、鳥になった2人は離れることなく遠い彼方へ飛んでいきました。
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と言う悲しいお話・・・ですが、実は、このお話は後付け!
ブルーウィローを販売するための販促用のお話しだったようです(笑)



【ご紹介したアイテム】

ブルーウィローパターンの食器を集めました。


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水野友紀子

水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

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