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バニキンズとは?子どものために作られたロイヤルドルトンの魅力

- 水野 友紀子
バニキンズ(Bunnykins)とは、イギリスを代表する磁器メーカーロイヤルドルトン(Royal Doulton)が手掛ける、ウサギをモチーフにした陶磁器のことです。
子ども用にデザインされた、ウサギが描かれた可愛い食器やフィギュリンは、英国王室の子育てで使われていたものとして、英国内で人気になりました。
今回は、英国王室御用達ロイヤルドルトンのウサギ「バニキンズ」についてお話します。
バニキンズ(Bunnykins)とは
バニキンズ(Bunnykins)とは、英国を代表する陶磁器メーカー、ロイヤルドルトン(Royal Doulton)が、1934年に発表した、ウサギの家族をモチーフにした陶磁器のシリーズのことです。
いろんな作品を作り出したロイヤルドルトンの陶磁器の中で、最も長く愛されてきたデザインがバニーキンズ。
バニキンズのアイテムは大きく分けると2つ「子ども用のテーブルウェア」と「フィギュリン」に分かれます。
ウサギの家族をモチーフにした、ほのぼのとした日常を描く、ロイヤルドルトンを代表するシリーズです。
子ども用のテーブルウェア
バニキンズが人気になった理由の一つが、子ども用の食器を作ったことです。
可愛らしいウサギが描かれているのはもちろん、見た目だけではなく子どもの使いやすさを考えてデザインされた子どものための食器でした。
例えば、小さな子どもが持ちやすいように、取っ手がカップの左右に2個付いたダブルハンドルタイプのマグカップや、子どもが最後まで残さず食べれるように深さがある、ちょっと重いベビーボウルなど、使い勝手がいいと評判に。
さらに、英国王室の子育てにも愛用されたことで「ロイヤルベビーの食器」と注目されるようになり、出産祝いとしても人気でした。
ウサギ一家のフィギュリン
バニキンズを代表するもう一つのアイテムがフィギュリンです。
ウサギの一家をモチーフに、英国の日常がフィギュリンで表現されているので、大人から子どもまで人気です。
今は、フィギュリンは作られていないので、アンティークでしか手に入らないことから、世界中のコレクターから人気です。
絵本の中に描かれている物語りを見ているような、英国の田園風景や、ウサギ一家の何気ない日常が描かれていて、誰が見てもなんだか懐かしく、心があたたまるおとぎ話のようなところがバニーキンズの人気のヒミツです。
バニキンズ誕生ストーリー
1934年に誕生したバニキンズのデザインを手がけたのは、バーバラ・バーノン・ベイリー(Barbara Vernon Bailey)。
実は彼女は、ロイヤルドルトンのデザイナーではなく、なんと!修道院で暮らす修道女「シスター」!(驚)
イギリスの田園地帯で育ち、幼い頃から絵を描くことが大好きで、いろんな動物の絵を描いていたバーバラに、当時、ロイヤルドルトンのゼネラルマネージャーだった父、カスバート・ベイリー(Cuthbert Bailey)が、新しく発売する子ども用の食器のデザインを依頼しました。
バーバラが夜遅くまでロウソクの灯りで描いたのが、特に大好きだったウサギの絵。
砂場で遊んだり、ピクニックをしたり、お母さんとお菓子を焼いたり・・・イギリスの日常生活をウサギの家族で表現したほのぼのとしたバーバラの絵が「バニーキンズ」として誕生しました。
幼い弟たちがおかゆを食べるのに苦労していたことを思い出したバーバラは、小さな子ども達が、食事を最後まで食べれるように、シリアルボウルの底にバニーキンズの絵を描いて欲しいと主張。
1937年にボウルの底にバニキンズが描かれるようになります。
窯から焼きあがったばかりのロイヤルドルトンの新しいデザイン、バニキンズは、エリザベス女王とマーガレット王女に直接届けられ愛用されるように。
その後、イギリスだけではなく、日本やオーストラリアなどの皇室にも届けられましたが、実はバーバラはロイヤルドルトンから印税を受け取ることはありませんでした。
ちなみに、バーバラがデザインしたバニキンズには、バーバラのサインが入っていますが、初期型のため今はとても貴重でなかなか見つかりません。
1936年に、ドルトンを代表するデザイナーだったCharles John Noke(チャールズ・ジョン・ノーク)が、バーバラのウサギの絵をモデルに立体化。
ビリー、メアリー、ファーマー、マザー、フレディ、レジーと名前が付けられたバニキンズのフィギュリンが6個、誕生します。
ところが、第二次世界大戦に突入したため、フィギュリンの生産が中止され、しばらくの間は、作られることはありませんでしたが、1969年にロイヤルドルトンがフィギュリンが得意なBeswickを買収したことで、1972年からバニキンズのフィギュリンの製造を再開しました。
その後、2025年に英国国内での製造は終了したため、今は古いものでしか手に入れることが出来ないバニキンズのフィギュリンは、コレクターズアイテムとして、世界中で人気です。
バニキンズのバックスタンプ
テーブルウェア(食器)
英国のテーブルウェアらしく、バニキンズの食器の裏面にも、製造メーカー保証の意味を込めた窯印が入っています。
バニキンズのバックスタンプをよく見てみると、「BUNNYKINS」の文字とウサギちゃん達。
そして、ウサギちゃん達が背負っているのは・・・王冠とライオンマークが入ったロイヤルドルトンのバックスタンプ☆
ロイヤルドルトンらしさは残しつつ、バニキンズらしく可愛らしいバックスタンプです。
フィギュリン
テーブルウェアとは違って、バニキンズのフィギュリンのバックスタンプは「DB+番号」で、それぞれにシリアルナンバーが付けられるようになりました。
製造数を限定したものも多く、番号を見れば、何番目に作られたものか分かるので、よりコレクターアイテムとして根強い人気です。
バニキンズコレクション
ここからは代表的なバニキンズのアイテムを、テーブルウェアとフィギュリンに分けてご紹介します。
プレート

可愛らしいバニキンズの絵を飾って楽しむ絵皿として、集めるコレクターも多いプレート。
縁の部分は草原をのびのびと飛び跳ね回るウサギが描かれています。
中央に描かれた日常の何気ない風景から、ほっとするあたたかみが感じられます。
ちなみに、
バニキンズの生みの親、バーバラ・バーノンのサインが入っている初期の作品は、なかなか手に入らないためかなり高額です。
ダブルハンドルマグ

子どもが両手で持てるよう、カップの左右にハンドルが付いたダブルハンドルタイプのマグカップ。
子ども用の食器として誕生したバニキンズらしく、子どもが使いやすいデザインの食器です。
コロンとした丸い形のマグカップには、インディアンと西部劇ごっこをして遊ぶバニキンズのイラストが描かれています。
ベビーボウル
一番特徴的な食器が、深みのあるボウル「ベビーボウル」
弟たちが幼かった頃、なかなかおかゆが食べれなかったことを思い出して、深さはもちろん、重さも重視したベビーボウルが作られたことで、バニキンズはさらに人気になりました。
私も子育て中にバニキンズを使って、自分でご飯を食べてもらいたかったな・・・なんて思い出しながら集めています。
日常のフィギュリン

バニキンズのフィギュリンにはいろんなモチーフがありますが、一番多いのは日常の何気ない生活を切り取ったモチーフ。
「SHOPPER BUNNYKINS」と名前が付いたお買い物している女の子をモチーフにしたフィギュリンの右手に持っているお買い物バックには「Royal Doulton」のロゴマ―クが描かれています。
何気ないお買い物の風景に、ちょっとこだわりが隠れているところも魅力です。
限定生産

「Town Crier Bunnykins(タウン・クライヤー・バニキンス)」と名前が付いた限定生産のシリーズのバニキンズ。
「TOWN CRIER」とは、昔、街頭でニュースや法令を声高に伝えていた伝令人のこと。
黒いマントを着て、右手にはベル、左手には巻物を持って町の人たちにニュースを伝えている伝令人の様子がうかがえます。限定数2500体が作られました。
マザーグース

The Nursery Rhyme Collection(ナーサリー・ライム・コレクション)の「Jack and Jill(ジャックとジル)」をモチーフにしたフィギュリンです。
マザーグースの童話に出てくる、ジャックとジルが水のバケツを取りに丘を登ている様子を描いているんですが、子どもたちに「おてんばをすると怪我をするよ」という教訓を教えている歌なんです。
2000年のミレニアム記念に発売された特別品です。

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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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