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おしゃれなチェストの選び方・コツとポイント
- 水野 友紀子
いろんな収納家具がある中で「チェスト」と聞くとなんとなく寝室に置いてお洋服を入れるために使う収納家具というイメージを持つ方が多いんですが、リビングやキッチン、玄関など、いろんな場所でいろんなものを収納しながら、インテリアとしても楽しめる便利な家具です。
収納するものやデザイン、さらに大きさなど、注目してみるといろいろある、おしゃれなチェストの選び方を紹介します。
~ チェストの選び方の目次 ~
1.チェストとは 2.おしゃれなチェストの選び方 2-1 大きさで選ぶ 2-2 使い方で選ぶ 2-3 お部屋で選ぶ 2-4 素材で選ぶ 2-5 構造で選ぶ 3.日本と西洋のチェストの違い
Chest
チェストとは
チェストとは引き出し付きの収納家具のことを言います。
日本で一般的にタンスや整理ダンスと呼ばれる家具のことです。
タンスと聞くと引き出しの中に衣類を収納するイメージが強いんですが、使う場所やサイズ、デザインや種類によっていろんな場所でいろんな使い方が楽しめます。
例えば、リビングチェストとして、リビングで使う薬箱やティッシュなどの日用品を入れたり、ダイニングで食器棚としてカップ&ソーサーを収納したり・・・
いろんなものを引き出しに入れて、お部屋をスッキリとオシャレに片づけてしまう収納家具です。
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大きさで選ぶ
チェストと言うと、なんとなくお洋服を入れるチェストをイメージしがちですが、実は、コンパクトなものから大きなものまでサイズは様々。
またお部屋の広さに対して、どれくらいの大きさになるのかを考えながら、チェストを選びたい方もいらっしゃると思います。
6畳の広さに、一般的な3つのサイズのチェストを置いて、実際にお部屋に置いた時、どんな感じになるか比較してみました。チェストをサイズから選んでみましょう!
小さいサイドチェスト
どこにでも気軽に置いて使える幅55cm以下のコンパクトなサイズのサイドチェスト。
細々としたものを収納したり、ソファやベッドの脇に置いてサイドテーブルとして便利に使える人気のチェストです。
チェストを収納するための道具と考える日本では、あまり見かけない小さなチェストですが、実際に使ってみると、置く場所を考えなくてもいいので、気軽にいろんな場所で使えて便利!いろんな使い方が楽しめます。
使いやすいリビングチェスト
一番よく見かける、幅が60~85㎝、高さが70㎝前後の腰高サイズのチェスト。
収納力もあり、高さがない分、圧迫感もないので、どんなお部屋に置いても使いやすいチェストです。
背が高くないので、空いている壁に絵やミラーを掛けて、天板の上にディスプレイすれば、収納として使うだけじゃなく、リビングや玄関などでコンソールテーブル代わりに使って、おしゃれなコーナーを作ることが出来ます。
オシャレ空間を作ってくれる「リビングチェスト」はこちら >>
大きい整理ダンス
日本で整理ダンスと呼ばれる、たっぷりお洋服を収納できる、幅が90cm以上の背の高いチェスト。
いろんなものをたっぷり収納することが出来ますが、その分サイズが大きく、狭いお部屋に置くと圧迫感が出るので、広いお部屋向きのチェストです。
チェスト自体、存在感があるので、お部屋のインテリアイメージに合うデザインを選ぶことがポイントです。
収納力を比べてみましょう
小ぶりなサイドチェストと、使いやすいリビングチェストにいろんなものを収納して、実際にどれくらい収納できるか比べてみました。
【入っているもの】
箱ティッシュ
リモコン
印鑑
文具用品
メモ帳
小さなサイドチェストは細々としたものを収納するのにとても便利です。
文具やティッシュなど、仕切りを使いながらキレイに収納できます。
【入っているもの】
Tシャツ×10枚
パーカー×2枚
シャツ×2枚
ポロシャツ×3枚
リビングチェストの引き出し1段の中に、お洋服を収納してみたところ、意外にたっぷり収納することが出来ました。
ハンカチや靴下など、毎日使うものをおしゃれに収納することも出来ます。
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使い方で選ぶ
チェストに収納する場合、引き出しの中に入れて収納するため、中に入れたものは人目に触れることがなく、またホコリを被ることがありません。
なので、お部屋の雰囲気を壊さないよう、隠しておきたい日用品や、お洋服などの収納にピッタリです。
まずは、中に入れるものや使い方を決めてから、チェストを選んでみましょう。
item1洋服を収納する
チェストに収納するものと言えば、最初に頭に浮かぶものは、やっぱり衣類。
毎日使う洋服を収納して使うのはもちろん、衣替えで使わなくなったシーズンオフの服を長期間、収納しておくために使います。
衣類を収納するチェストを選ぶ時は、引き出しの深さが選ぶ時の重要ポイント。
たとえば、厚手のセーターやパーカーを入れる際は、畳んだときに厚みが出るので、深さがある引き出しが必要です。
逆に、Tシャツなど厚みのないものを入れる際は、引き出しが深すぎると下のものが取り出しづらく使い勝手が悪くなってしまいます。
実際に収納したい洋服や畳み方を考えて、どれくらいの深さの引き出しが自分に合っているかを確認して選びましょう。
服を収納するためのチェストは、ついつい寝室に置きがちですが、実は、一番おススメしたい場所はリビング!
私も子どもたちの洋服は、リビングに置いたリビングチェストの中に収納しています。
と言うのも、取り込んだ洗濯物をいつもリビングでテレビを見ながら畳んでいる私。そのままリビングチェストの中に収納してしまうので、移動する手間が省けて合理的。
畳んだ服を片付けるのが面倒で置きっぱなし・・・ということがなくなりました(笑)さらに、まだ小さい末っ子が汚しても、すぐに着替えが取り出せて便利なんです。
リビングはいろんな人が集まる場所。それだけにリビングチェストは自慢したくなるくらいおしゃれなデザイン性の高いものを選びましょう。
item2食器を収納する
普段、なかなか使う機会がない、お客様用やお正月用の食器を押し入れの中に入れていませんか??
いざ、使おうと思っても、押し入れの奥から取り出すのが面倒で、使わない・・・と言う方も多いと思います。
そんな方にオススメなのが、ダイニングやリビングに置いたチェストの中に食器を収納すること。
普段は使わないような特別なティーセットも、引き出しの中にしまっておけば、ホコリを被ることもなく大切に収納することが出来ます。
カップやおわんなどの高さのあるものを収納したい場合は、引き出しの中にきちんと納まるか、引き出しの高さにも注意して選んでみましょう。
大抵、お客様用の食器は、箱の中に入れて収納していることが多いので、フタをとって、そのままチェストの引き出しの中に入れるだけで、使い勝手が断然よくなります。
また、他の引き出しは、食器以外に文房具やカトラリーなど、いろんなものを収納出来るので、とても便利!
デザインが素敵なチェストの中で、お気に入りの食器を大切に保管しながら収納してください。
item3日用品を収納する
ついつい生活感が出てしまう、日用品や小物、本やおもちゃなどの収納場所に、チェストを使ってみましょう。
チェストの引き出しを閉じてしまえば中が見えないので、急なお客様が来た時や、急いで片付けしたい時などの強い味方です。
散らかしがちな子どものおもちゃも、チェストの引き出しの中に収納すれば、自分で片付けが出来るようになります。
サイドチェストなど、引き出しが小さなチェストには、細かいものを整理してキレイに収納することができます。
また、カギが付いたチェストの中に、大切なアクセサリーや通帳、印鑑などを収納しておくこともおススメです。
あまり人に見られたくないものは、チェストの引き出しの中に収納してしまいましょう。
item4テレビ台として使う
幅がある高さの低いローチェストは、テレビボードとして使うのにもピッタリです。
引き出しの中に、DVDやリモコンなど、生活感の出るものをなんでもお片付けできちゃうので、お部屋もスッキリ片付いて、おしゃれなお部屋をコーディネートすることが出来ます。
テレビ台として使うチェストを選ぶ際、ポイントになるのが高さ。
見る場所とテレビ台の距離にもよりますが、基本的にテレビが目線と同じ、もしくは目線より少し下になる高さがおススメです。
高さの目安は、床に座る場合40cm以下、ソファに座る場合40~60cm、
ダイニングで食事をする場合は60cm以上です。
テレビだけでなく、いろんな電化製品を置く場所として、チェストを選んでみましょう。
無機質な素材の家電も、天然木で出来たチェストの上に置いて使うと、柔らかい雰囲気のお部屋を作ってくれます。
サイドチェストの上に電話を置いて、電話台として使ってみたり、先ほど紹介した食器を入れたチェストの上に、炊飯器やミキサー、電子レンジなどの調理家電を乗せたり・・・
天然木のチェストの上に乗せて使えば、ダイニングが優しい雰囲気になって、いつもの家電までちょっとオシャレに見えてきます。
item5サイドテーブルとして使う
ベッドやソファの横に小ぶりなチェストを置いて、サイドテーブル代わりに使ってみましょう。
寝る時に、携帯電話やテーブルランプ、目覚まし時計などを置いて使うベッドサイドチェストや、ソファの横に置いて飲み物や本、リモコンなどを置いて使うソファサイドチェストなどの使い方もおススメです。
チェストをサイドテーブル代わりに使えば、天板にものを置いて便利に使えるのはもちろん、引き出しの中に、いろんなものも収納も出来るので、もれなくお部屋もスッキリ片付きます。
日本ではリビングでソファの前にコーヒーテーブルを置くのが主流ですが、ヨーロッパではソファの横にサイドテーブルを置いて使う方が主流。
手を横に伸ばすだけで、欲しいものがすぐ手に取れて、デザイン性も高い家具を置けば、インテリア性の高いお部屋をコーディネートすることが出来ます。
その際、選ぶ時のポイントは高さ。お使いのベッドやソファの横に置いて、ちょうどいい高さのチェストを選ぶようにしましょう。
引き出しが付いているチェストだったら、引き出しの中にいろんなものを収納することが出来ます。収納が付いたサイドテーブルとしてとても便利に使えて、お部屋の中もスッキリ片付くので、オススメです。
どんな使い方をしてもオシャレな「チェスト」収納はこちら >>
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お部屋で選ぶ
チェストを置いて使うお部屋によって、選ぶチェストの仕様が違います。
使いたいお部屋を決めて、チェストを選んでみましょう。
room1リビング
ソファの横に小ぶりなサイドチェストを置いてソファサイドチェストとして使ってみましょう。
天板にテーブルランプや携帯の充電器、飲みものなどを置いてサイドテーブル代わりにも使えて便利。引き出しの中には、リモコンや本、ブランケットなどソファ周りで使うものを収納できるので、お部屋もスッキリ片付きます。
たっぷり洋服などを収納できる整理ダンスは、リビング収納として便利に使えます。
整理ダンスをリビングに置くことが想像できない方も多いようですが、デザインが素敵なチェストであれば、収納はもちろん、リビングをおしゃれに魅せるインテリアとしてお部屋を華やかに彩ってくれます。
横長のおしゃれなチェストは、テレビ台として大活躍してくれます。
引き出しの中に、DVDなどテレビ周りで使うものをたっぷり収納するのはもちろん、リビングでついつい雑多になって散らかるものを収納できるので、お部屋もスッキリ片付きます。
room2ダイニング
キッチン・ダイニングでは、食器やカトラリーを収納するのにおススメのチェスト。
毎日使うカトラリーはもちろん、あまり使うことがない、おもてなし用の食器や大きなお鍋などを入れておくのにピッタリ。
押し入れやクローゼットに入れておいて、ついつい使わないものを入れておけば、出し入れもしやすく便利です。
天板の上はキッチンでの作業台や家電置き場としても使えます。
電子レンジや炊飯器など、無機質な冷たい雰囲気がする電化製品も、天然木のチェストの上に置けば空間を柔らかい印象にしてくれます。
room3寝室
寝室に置くチェストの代表選手がベッドサイドチェスト。
テーブルランプや携帯の充電器、目覚まし時計など、就寝前の時間に使う細々としたものをまとめて置くための場所として、誰もが利用しやすく、便利に使えるチェストです。
お洋服を収納するためのチェスト、整理ダンスも、寝室の必須アイテム。
クローぜットの中で使う場合、プラスチック製のチェストを使って収納する方も多いと思います。
お部屋の雰囲気を素敵に変化させたい方には、プラスチック製のチェストをインテリア性の高い見た目がステキな木製のチェストに変えることをおススメしています。
たかがチェストですが、お部屋の中が一気に格上げされます。
room4玄関
お家の顔になる玄関に、コンソールテーブルのように使う、コンソールチェストがおススメです。
天板はお花やディスプレイなどを楽しむコンソールテーブルとして使い、引き出しの中には、玄関で使うカギやハンコ、筆記用具や靴のケア用品などをたっぷり収納して便利に使えます。
room5洗面所
毎日つかう洗面所には、タオルや下着などを入れるチェストがおススメです。
他にもシャンプーや洗剤、石鹸や歯ブラシなどの買い置きなどなど、いろんなものをチェストの中にたっぷり収納して使いましょう。
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素材で選ぶ
同じようにチェストと呼ばれる家具でも、使っている素材によって、価格も使い方も大きく異なります。
チェストに使われている素材の違いを知って、自分に合うチェストを選んでみましょう。
木質ボード
量販店などでよく見かける安価なチェストの本体や引き出しを裏側から見てみるとパーティクルボード(木質ボード)が使われているのが分かります。
パーチクルボードとは、木材を繊維状にほぐし、接着剤で固めて板状に加工したものです。
極めて安価ですが、水や湿気に弱いので、家具として使う際は表面処理をしっかり行わないとカビが生えやすいです。
強度がないので、強度をそれほど必要としないチェストなどの家具に多く使われています。
パーティクルボードの家具の表面に一番多く使われているのがプリント合板と呼ばれるものです。
パッと見た目は木に見えますが、実は木目がプリントされた紙。いわゆるコピーなので、いろんな色や木目など種類が豊富で、軽いのが特徴です。
学生さんの一人暮らしや、とりあえず収納が必要な方のカンタンなチェストにオススメです。
プラスチック
クローゼットや押し入れの中に入れて、カンタンに収納する際、よく使われるのが、ポリプロピレンなどのプラスチック製チェストです。
お手頃価格で使い勝手がいいですが、透明のものが多く、中に入れたものが見えてしまうため、人目につかない押し入れやクローゼットの中に隠して使うチェストとしてオススメです。
ただし、プラスチックは湿気を吸わないので、クローゼットの中で使う際は、空気が循環するよう、こまめに引き出しを開けて換気しましょう。
天然木
家具専門店などで販売されている高額なチェストは、天然木を使った木製のチェストです。
引き出しの素材や、天然木の厚み、種類、剥ぎ枚数、塗装などによって違いますが、基本的に吸湿性があり、結露やカビが発生しにくいです。
湿気が多い日本では、衣替えなどで長期間、お洋服を保管するために使ったり、大切なものを収納するためのチェストに向いています。
また、天然木のチェストは、何と言っても見た目が高級なので、お部屋のインテリアの一部として楽しめる収納家具です。
無垢板とは、丸太からそのまま伐り出した、厚みのある板のことを言います。
厚みがあるため丈夫で、キズがついても、自然素材の塗装の家具であれば、修復しながら長く使うことが出来ます。
突き板とは丸太を薄くスライスしたものを言います。
日本では一般的にコストカットするために、突き板を使うチェストを多く見かけます。
表面は天然木ですが、中身はパーチクルボードのため、無垢板と比べて弱く、キズが付いたときは容易に直すことが出来ません。
ヨーロッパのアンティーク家具にも突き板はよく使われていますが、コストカットが目的の日本とは使い方が違い、美しい木目をチェストのデザインとして使うことが目的です。
なので一般的に販売されている日本の家具とは違い、今では手に入らない高級材の無垢板の上に突き板を貼ると言う、今の家具では信じられないような贅沢な造りのチェストです。
日本の桐ダンス
日本の伝統的なチェストと言えば、桐ダンスです。
着物を収納する総桐箪笥と聞くと、とても高級なイメージがしますが、実は桐を使うのは日本だけ!桐はとても柔らかいので、家具には適していない素材として、日本以外の国で家具に使われることはありません。
実は、桐は木ではなくゴマノハグサ科という草の一種です。
桐は吸湿性が高く防虫効果もあるので、絹で出来た着物を収納する、湿気が多い日本の箪笥に最適な素材です。
桐箪笥も、価格に幅がありますが、高級な桐ダンスには、寒い地方で育った目の詰まった桐を使っているため、吸湿効果が高いのですが、安価な価格の桐箪笥は、中国や東南アジアなど暖かい地方で育った目の粗いもの。
さらに、引き出しの一部が桐の突板やボードになっているものも多いので、高級な桐ダンスと同じような吸湿性は期待は出来ません。
そもそも、日本の桐箪笥は気密性を重視して造られているので、日本の職人技が光る桐箪笥は、引き出しを閉めると、隣の引き出しが開くくらい密閉性が高く造られています。
そのため、中に収納したものを虫や湿気から守ってくれるので、毎日使うことがない高級な着物や、衣替えで半年ほど使わない衣類などをしっかり収納しておく場所に最適です。
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構造で選ぶ
チェストの引き出し部分に注目してみると、いろんな造りのものがあることが分かります。
造りの違いや構造の違いで価格に差も出てくるので、チェストを選ぶ時のチェックポイントにしてください。
引き出しの構造
引き出しをチェックする際、まずは、取っ手が付いている前板に注目してみましょう。
四方を箱のように囲んだ後、前板を取り付ける箱型タイプと、コの字型に作った引き出しの枠に、直接、前板を取り付けるコの字型タイプの2種類があります。
湿気が多い日本では、着物などを収納するタンスの引き出しは、湿気をしっかり吸って気密性が高い、四方を桐で囲んだ箱型タイプの構造がおススメです。
毎日、気軽に出し入れする、デザイン性が高いリビングチェストには、造るのに技術が必要なコの字型タイプの引き出しを見かけることが多いです。
引き出しの組み方
引き出しを横から見てみると、台形にカットした前板と側板が組まれているものを見かけることがあります。
これは蟻組み(ダブテール)と呼ばれる職人技。引き出しを引っ張っても前板が外れない技法です。
世代を超えて長く使う文化のある西洋の家具や、総桐箪笥でよく見かけるあり組は、釘などを使わずにとめているので、丈夫でずっと長く使い続けることが出来ます。
引き出しの裏
普段、気にかけることはありませんが、高級なチェストを購入する際のチェックポイントの1つが、引き出しの裏!
底板に注目してみると、一般的に気軽に購入できるチェストの底板は、タッカーと呼ばれる大きなホッチキスみたいなものでとめてあるのが分かります。
また、長く使うことを考えて造られている西洋のアンティーク家具は、湿気などで底板がダメになった際、新しいものに取り替えが出来るよう、側板部分に底板をスライドさせてはめ込む構造になっています。
日本の婚礼家具などの桐箪笥は、使っている釘に注目してみましょう。一般的に引き出しには金属の釘が使われていますが、桐の引き出しの場合、湿気を吸うため錆やすいので、錆びないプラスチック釘を使っている引き出しの方がおススメです。
さらに高級な桐箪笥には、木で出来た木釘が使われています。長年、引き出しを開け閉めすることで、引き出しの底板が摩耗した場合、木釘を使っていれば、一緒に摩耗するので、タンス本体にキズがつく心配がありません。
引き出しのスライドレール
最近、チェストの引き出しの横にスライドレールが使われているものを見かけるようになってきました。
レールが付いていれば、高い職人の技術がなくても、引き出しの開け閉めがスムーズに出来るので、力の弱い子どもや、ご年配の方が使うチェストにオススメです。
ただし、スライドレールは必ず壊れるもの。なので、壊れた際、パーツの修理や交換ができるかどうかを確認して、選ぶようにしましょう。
スライドレールを使わずにスムーズに開け閉めしやすいチェストを造るためには、職人技が必要です。
安価なもので簡単な造りのため、隙間が空いていて開け閉めしやすいチェストもありますが、調湿に優れている天然木で造られたチェストの引き出しは、きちんと密閉されながらもスムーズに引き出しが出し入れできる工夫が施されています。
職人のこだわりが感じられる分、西洋のデザイン性が高いチェストは前板にも分厚い板が使われ、美しい彫りが施されたものが多いです。
チェストの脚
脚の有無で、チェストの印象が違って見えます。そもそも、日本は畳を敷いた和室で、靴を脱いで生活していたので、チェストのような箱物家具に、足はありませんでした。
ところが最近、フローリングのお家が増えたことや、西洋デザインの家具を取り入れるお家が増えたことで、足が付いたデザインのチェストが増えてきました。
脚がついていないデザイン=台輪の場合、ホコリがたまりませんが、足が付いているものと比べると湿気がこもりやすいです。
脚付きの場合、ホコリはたまりますが、掃除がしやすく、デザインがスッキリカッコよく見えます。
最近、人気の自動掃除機などを使う場合、足の高さを確認して選びましょう。
アンティークの豆知識
チェストのいろんな名前
日本では一口に「タンス」と呼ばれるチェストですが、西洋ではチェストの種類やデザイン、使い方や使う場所によってそれぞれ名前がつけられていたんです。
そのため、アンティークのチェストには、チェストごとに名前がつけられているものが多く、いろんな意味があって面白いんです。
そんなアンティークのチェストといろんな名前についてご紹介します。
ドゥロワーズ
日本では整理タンスと呼ばれるような、主に衣類などを収納するための大きな引き出しが何段か付いている家具のことをドゥロワーズ(Drawers)と言います。
ドロワーとは引き出しのこと。ドゥロワーズは正式にはChest of Drawers(チェストオブドゥロワーズ)と言いますが、略してドロワーズと呼ばれることが多い家具です。
ちなみにフランスではコモードと呼ばれます。
サイズも形もいろいろ
たくさんあるアンティークチェストの中で「ドゥロワーズ」とは、引き出しだけの収納で、衣類などが収納出来る大きめの引き出しが何段か付いている家具のことを言います。
日本でいわゆる整理タンスと言われる家具がチェストオブドゥロワーですが、日本のものと比べてサイズが小ぶりで場所をとらず使いやすいのが特長です。
始まりはヨーロッパの宮廷
アンティークのチェストオブドゥロワーズは、17~18世紀にヨーロッパの宮廷で使われていた応接室や寝室に置くために作られた飾りダンスのことです。
フランスでは、コモードと呼ばれ、1740年代から流行しました。
どちらも衣類などを収納するための収納家具のことですが、ドロワーズにはいろんなサイズのものがあり、中でもコモードは2~3段の引き出しが付いた背が低い脚付きの整理ダンスのことだけを指します。
知ると面白い!チェストのいろんな名前
初期ジョージア王朝様式の時代に、寝室に好まれて置かれた「トールボーイ」と呼ばれるチェストがあります。
高脚付きでタンスの上にタンスを置いたような重ねダンスのデザイン。チェストを二段重ねにしたような形は「チェストオンチェスト」とも呼ばれました。
幅はそれほど広くなく、背が高めで引き出しが6~8杯くらい付いているものが多いです。
18世紀初めのアーリージョージアンの時代に誕生し、ベッドルームに置くための家具として上流階級で流行してきたトールボーイは、上流階級の人が好んで使っただけのことはあって、上質な木材が使われたデザインが美しいものが多く、アンティーク家具の中でも人気のチェストです。
名前の「トールボーイ(Tall boy)」の由来については諸説ありますが、ペアで「ローボーイ(Low boy)」と呼ばれるチェストが製作されることも多く、まるで可愛い兄弟のようなチェストです。
男性にも人気のある「バチェラーズチェスト」バチェラーズチェストとは、チェストの天板がパカッと開いてアクセサリーなどが収納できるようになっていたり、ミラーが付いていて、まるでドレッサーのように身だしなみをチェック出来たりする機能を持ったチェストなんです。
そもそも「バチェラー(Bachelor)」とは英語で独身の男性のこと。だからバチェラーズチェストとは、直訳すると独身男性のためのチェスト。なるほど、カンタンに身だしなみを整える事が出来るようなつくりになっています。
朝、出かける前に、引き出しから洋服を出し、着てから天板をパカッと開けると中にはカフスボタンやネクタイピンなどがキレイに収納されている・・・。
鏡を見ながら立ったままで身支度完了。
そんなことが出来ちゃう面白いアンティーク家具らしいチェストです。身だしなみを整えることを気にする英国紳士ならではの機能性も考えられた、いかにも英国アンティーク家具です。
アンティークのチェストはコチラ >>
カップボードチェスト
扉と引き出し、両方の収納が一つになっている収納家具のことを「カップボードチェスト」と言います。
扉の収納部分は、名前の通りカップボードとして使われていたものなんですが、なんと、このカップボードチェスト、もともとは英国で寝室用のカップボードとして作られた家具なんです。
なんと寝室用のカップボードなんです
寝室にカップボード??日本では考えられませんが、イギリスでは、寝る前や、朝、目覚めた時にベッドルームでお茶を飲むのは当たり前。なので、カップ&ソーサーを収納する家具は、むしろ寝室の必需品だったんです。
ヴィクトリアン朝時代の女性にとっては、既婚者だけに許されたベッドの中で朝食をとる「ベッドティー」が憧れだったところから作られた家具です。
実用的に使いやすい!扉&引き出し
アンティーク家具のカップボートチェストの扉収納はカップボードとしてカップ&ソーサーを収納するために使っていたので、上が扉収納、下が引き出し収納になっているものが通常の形ですが、時々、上が引き出し収納で下が扉収納になっているめずらしい形のカップボードチェストも見つかります。
扉部分は日本のカップボードとは違って、ガラスではなく木製の扉で作られているので、見せるための収納ではなく、中に何を入れても見えないよう実用的に使うための収納家具として使われていました。
どこにでも置けて便利コンパクトなサイズ
カップボードと言っても、食器棚とは違ってカップ&ソーサーを何脚か収納するためだけに作られているので、大きさも食器棚と比べるとコンパクトなものが多いです。
高さは高めのカップボードチェストであっても、1m60cm前後までなので、女性でも日常使いしやすい形になっています。
いろんな寝室で使われていたので、大きさも様々なものがあり、形もサイズもいろいろです。
いずれにしても、カップボードチェストは、使い勝手のなかった日本では、なかなか見かけない形の家具。
輸入家具やアンティーク家具だから見つけることが出来る特有の形のチェストです。
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ドレッシングチェスト
「ドレッシングチェスト」とはドレッサーのことで、いわゆる鏡台のこと。
引き出しが付いたタンスや、デスクの上に鏡が付いていて、お化粧をしたり身だしなみを整えるための場所として、女性ならではの家具のことです。
日本ではタンスの上に鏡が付いたものは化粧ダンスとも言われることも。
ドレッシングチェストには、鏡が姿見にもなるような縦長のものから、後ろ姿が見れるようにと3面鏡のものがあったりと様々です。
どこにでも置けて便利コンパクトなサイズ
ドレッシングチェストにはアンティークならではの引き出しがたくさん付いたチェストの上に鏡が付いたものから、猫脚デザインでホワイトペイントが施されている上品で可愛いタイプ、北欧スタイルでどんなお部屋にも合わせやすいシンプルなタイプや、鏡が姿見になったまで様々です。
オーク材や、マホガニー、パイン材など材質もたくさんあって選ぶ楽しさも魅力の一つです。
サイズも形もいろいろ
ドレッサーというとなんとなく寝室に置くイメージですが、忙しい朝の時間に支度をしたりするのには絶対リビングに置くのがおススメ!
デザインが素敵なドレッシングチェストなら、リビングに置いても違和感なくお部屋も素敵にしてくれます。
人の目に触れる場所には、デザインが自慢できるアンティークの鏡台がオススメ。寝室なんてもったいない、皆に自慢したくなるドレッサーです。
寝室に置くなんてもったいない!
ドレッサーの始まりは、サイドテーブルからということもあり、テーブル(デスク)のようなデザインのものもあるドレッサー。
椅子と合わせて、パソコンデスクにしたりちょっと物書きをする家事スペースにしたりも出来ます。
ドレッシングチェストというように収納力もたっぷりなので、デスクにも収納にも便利に使えるドレッサーチェストです。
ドレッサーチェストはコチラ >>
いかがですか?この他にも現代では見られないアンティークならではのチェストがたくさん。ぜひ名前の由来も楽しみながらお気に入りのチェストを選んでみてください。
日本文化と西洋文化の違いが
「おしゃれ度」の差
いかがでしたか?こうやって見ると、チェスト選びと言っても、いろんな選び方があることが分かると思います。
チェストを選ぶ時のポイントは、どこに置いて、どんな風に使いたいかを考えることが重要。でも、日本では「チェスト=クローゼットの中に隠して使う洋服ダンスのイメージ」が強いので、ついつい、プラスチック製のものを選んでしまう方が多いようです。
それは、いろんな大きさで、いろんな使い方で、いろんなデザインのチェストを楽しむ文化が日本にはなかったことが原因です。
そもそも、昔、日本のお家は、1つの座敷をいろんな使い方で使っていました。
ちゃぶ台を出してご飯を食べる「ダイニング」
座布団を置いて家族が集う「リビング」
お布団を敷けば「寝室」
同じ座敷を何通りもの用途で使ってきたので、置き家具は必要最低限のものしか置かず、着物を収納するための桐箪笥以外、チェストを使う文化がありませんでした。
なので日本でチェストと呼ばれる引き出し収納家具は、着物の幅に合わせた幅1mくらいの「整理ダンス」のイメージが大きいようです。
それに対し西洋では、ご飯を食べる部屋は「ダイニングルーム」、家族が集うための部屋は「リビングルーム」、さらに寝る部屋は「ベッドルーム」と、部屋を分けて生活してきたので、それぞれの部屋で過ごす時に使いやすい、いろんな種類のチェストが造られてきました。
最近になって、日本のお家も西洋化し、ダイニング、リビング、ベッドルームに区切られるようになってきたので、それぞれのお部屋で使いやすいチェストが必要になりましたが、いろんな種類のチェストを使う文化がまだ浸透していない日本では、チェストの種類もとても少ないんです。
なので日本では、チェスト=クローゼットの中に入れて使うイメージが強く、ホームセンターや量販店などでプラスチック製のカンタンなチェストを選ばれる方が多いようですが、お部屋の雰囲気がステキにはならないので、リビングなどで使うことはオススメ出来ません。
また、プラスチック製のチェストは通気性がないので、湿気が多い日本ではカビなどの原因になるり、空気が通る場所に置いて、出来るだけ開け閉めする必要があります。
そのため、毎日、着替えるものを入れて出し入れするのには向いていますが、衣替えで半年ほど使わない衣類を入れておく収納場所には向いていません。
半年ほど使わない洋服を収納する場合は、やはり湿気を吸う桐の引き出しを使ったチェストに入れるのが最適ですが、サイズが大きいものが多いので、リビングなどに置くのは向いていないんです。
こんな風に、置く場所や使い方によって、チェストを使い分けることが必要ですが、日本にはチェストのサイズもデザインも数が少ないので、リビングなど、人が見える場所で使う場合、西洋で造られたデザイン性が高いおしゃれなチェストをオススメしています。
西洋で造られたチェストは、実用的な収納として使うのはもちろん、私達、日本人が今まで使うことがなかった場所や、思いつかなかった使い方で楽しめる、いろんなサイズでいろんなデザインのものをたくさん見つけることが出来るんです。
いろんな用途に合わせたいろんなチェストを、いろんなお部屋で便利に使って、収納と同時に、おしゃれなお部屋作りを楽しみましょう!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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