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コーニスとペディメントとは?アンティーク家具に見る装飾の美学
- 水野 友紀子
コーニス&ペディメント
古代ギリシア時代に生まれた「コーニス」と「ペディメント」とは、家具のトップの部分に付いている屋根のような装飾のことです。
アンティーク家具の装飾は建築物が基になっているものが多いのですがコーニスとペディメントもその一つ。
西洋建築のデザインの一つで、建物をよりおしゃれに魅せるため屋根の上にさらに屋根を設けたような感じの装飾です。
専門用語にすると、なんだかムズカシク思えるんですが、私の中では、家具が王冠を被っているようなイメージ(笑)
手間がかかるので、アンティーク家具独特の装飾ですが、コーニスやペディメントと名前の付いた王冠を被るだけで、なんだか重厚感も高級感もUPして見える~!ぜひ、チェックしてみて下さい。
コーニスとペディメントの歴史
コーニスとペディメントは、古代ギリシア時代の神殿が原型となっていて、紀元前447年に建てられたパルテノン神殿にも残っているくらい、古くから西洋建築のデザインとして使われていました。
その後、中世では建築物にペディメントが使われているものは少なくなりますが、ルネサンスに入ると、再び多用されるようになっていきます。
バロック時代に入ると、三角屋根だけではなく、いろんな形で造られるようになっていったペディメントは、その後、造られるようになった家具のデザインの一部として、用いられて造られるようになりました。
18世紀に入ってクイーンアン様式になると、建築物の窓の高さが高くなり、背が高いブックケースやキャビネット、さらにチェストなどが造られるようになりました。
機能性を重要視したクイーンアン様式のシンプルなデザインの家具を華やかに魅せるために取り入れられたのが、頂上部分を華やかに魅せる装飾「コーニス」や「ペディメント」でした。
コーニスとペディメントの違い
そもそも、コーニスとペディメントはひとくくりにされることも多いんですが、よく似ているようで専門的には異なるものです。
ペディメントとは、西洋建築の切妻屋根で囲われた下の三角形の部分のこと。日本で「破風(はふ)」と呼ばれる部分のことです。
それに対し、コーニスとは、建物や家具の最上部の張り出し部分、日本語で「軒(のき)」と呼ばれる部分のことです。
また、コーニスの下に施されている歯状の装飾は「ディンティル(Dentil)」と呼ばれるものです。アンティーク家具にはたくさんの装飾がありますが、コーニスやペディメント、コーニスの下にある歯状の装飾のディンティルなどもその一つ。
一見、意識して見ないとなんでもないように思えますが、実はこうしていろんな装飾が重なりあって、一つのアンティーク家具が生み出されていることがよく分かります。
ここからはコーニスとペディメントそれぞれについて詳しくご紹介します。
コーニスとは
コーニス(Cornice)とは、建物や家具の頂上部分の水平な張り出し部分=軒蛇腹のことを言います。
コーニスの語源はイタリア語。水平の出っ張りを意味するcornice(コルニーチェ)が由来になっています。
一般的には、建物や家具のトップ部分の装飾的なモールディング(縁)のことを言い、「コーニス・モールディング」とも呼ばれています。
コーニスにも実はいろんなデザインがあります。
家具に対して水平なものが一般的なデザインですが、より家具の装飾性を高めるため、アーチを描いている「櫛形コーニス」と呼ばれるものや、中央が切れているようなデザインの「二重コーニス」や「破れコーニス」と呼ばれるデザインなど、アンティーク家具の中では実にいろんなデザインのコーニスに出会えることがあります。
家具だけではなく、現代の住宅では「コーニス照明」と呼ばれる、天井部分に壁を照らすよう、水平に入れた間接照明などもあります。
これは建物や家具の上部に水平に設けられたものを、同じように「コーニス」と呼んで表現しているモノです。
このように、建築物や家具だけでなく、部屋の中などいろんな場所でいろんなコーニスを見つけることができます。
ペディメントとは
ペディメント(pediment)とは、もともとは建築用語で、西洋建築の切妻屋根で囲われた下の三角形の部分のことを言います。
日本では「破風(はふ)」と言われる部分のことで、古代ギリシャやローマの神殿など西洋建築の切妻屋根の下の三角形の部分のことを言います。
ペディメントにもいろんな種類がありますが、大きく分けると3種類、頂点が尖がった三角形の形の三角破風(Pointed pediment)、頂点部分が断裂した形の破れ破風(Broken pediment)さらに進化して、まるで白鳥の首のような美しい曲線ラインの白鳥破風(swanneck pediment)に分けられます。
18世紀のクイーンアン様式では、建築物の窓の高さが高くなり、背が高い書棚などのキャビネットやチェスト、ブックケースなどが造られるようになりました。
それらの家具の頂上部分を華やかに魅せる装飾として取り入れられたのがコーニスやペディメントです。
大切な陶磁器や装飾品を展示するためのキャビネットに使われることが多く、クイーンアン様式からジョージアン様式のアンティーク家具の中でよく使われています。
コーニス&ペディメントのある暮らし
コーニスやペディメントの家具は、なんといっても王様のように冠をかぶったような高貴で華やかな佇まいが魅力です。
家具に高さも出ることで空間に高低差ができ、お部屋の中にメリハリがつくことで高級感が漂います。
コーニスやペディメントは、正直、家具の構造にはかかわっていないため、必要がない部分です。
逆に、手間や時間がかかるため、最近の家具で使われることがほとんどありませんが、家具をより華やかで美しく魅せるためになくてはならない装飾です。
アンティーク家具でしか見かけることが出来ない歴史ある装飾「コーニス&ペディメント」の家具で、アンティークらしいお部屋作りを楽しんでみませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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