- トップページ
- アンティークの選び方
- アンティークをアイテム別に選ぶ
- ウィンザーチェアの魅力と選び方
ウィンザーチェアの魅力と選び方
- 水野 友紀子
アンティークの椅子にはいろんなタイプがありますが、美しいというより素朴さが魅力のウィンザーチェアと呼ばれる椅子は、私の中でアンティークの基本になっている椅子です。
芸術的なアンティークチェアには憧れるけれど、なんだかほっこり温かみがあって親しみやすく、時代を超えて愛され続けるウィンザーチェア。
今回は、そんなウィンザーチェアの起源から種類、さらにウィンザーチェアを使ったインテリアコーディネート例までご紹介します。
Handle 水野 友紀子
Windsor chair
ウィンザーチェアとは
ウィンザーチェア(Windsor chair)とは、17世紀後半にイギリスの地方で誕生したカントリーチェア(民芸椅子)のことです。
キッチンで使われることも多かったため、キッチンチェアと呼ばれることも多いウィンザーチェアは、普通とは逆に庶民が作り出した椅子が上流階級に広がっていった、ヨーロッパの家具造りの歴史の中で、特にめずらしい経歴を持つ椅子です。
また、イギリスからアメリカに渡り、いろんなデザインや形のものが作られたことにより、明確な定義がムズカシイと言われていますが、ウィンザーチェアの基本の形は以下の2点です。
①ハの字に開いた脚
②背もたれの背棒が、分厚い木製の座面に直接、取り付けられている椅子。
ここからは長く愛され続けているウィンザーチェアの歴史を見てみましょう。
Windsor chair
ウィンザーチェアの 歴史
ウィンザーチェアの歴史は、16世紀頃のイングランドの地方の農家から始まります。
この頃の家具や椅子は、上流階級の人たちだけが持つことが出来る、華やかでデコラティブなもの。
それに憧れた庶民たちは、見よう見まねで家具や椅子を造るようになり、地方の農民たちは、昼は農作業、夜は森林から伐り出した木材を使って、家具や椅子などを造り始めました。
そのうちロンドンの西、バッキンガムシャーのブナやアッシュの森に覆われている地方が家具の産地になり、作業用として造られていた3本足のスツールに背もたれになる板を取り付けた椅子が誕生します。
その後、ウィンザー地方で造られた長い棒が背もたれとして使われるようになったことや、テムズ川でウィンザー城の方から運ばれてくることから「ウィンザーチェア」と呼ばれるようになったと言われています。
17世紀に入ると、ウィンザーチェアの中でもよく見かける「コムバック」に近いデザインの椅子がイギリス中南部の農家で造られるようになります。
ハの字に開いた3本または4本の足に、スティック状の背棒が付いた簡単な形の椅子は、見た目からスティックバックウィンザーとも呼ばれていました。
18世紀初期になると、クイーンアンチェアが登場し、上流階級の間で大流行!
花瓶をモチーフにした背板のシルエットに憧れ、ウィンザーチェアの背もたれも、真ん中に装飾が入ったものが造られるようになります。
その後、産業革命で経済が発展した大英帝国は、たくさんの人が都市部に集まるようになり、それに伴って住居や公共施設が増えていったことで、丈夫で使いやすく、安価なウィンザーチェアは大人気に!
たくさんの家具工場でいろんなデザインのウィンザーチェアが大量に造られるようになっていきました。
この頃、オーストリアから曲げ木の技術が伝わったことで、18世紀半ばにはウィンザーチェアの主流になる「ボウバック」と呼ばれる、弓の形をした椅子が造られるようになります。
同じ頃、コムバックのデザインが進化した、扇形の「ファンバック」も登場。
四角や台形、丸形の座面も造られるようになり、足元の貫の形も、現在、よく見かけるH型が使われるようになっていきました。
19世紀に入ると、掛け心地がよくて丈夫、それでいて安価なウィンザーチェアは、学校や市役所などの公共施設からパブなどの飲食店、さらに一般家庭で使う椅子として使われるようになります。
同時に、それまでとは逆で庶民から上流階級へウィンザーチェアのよさが伝わっていき、作業用の椅子として上流階級の家でもウィンザーチェアが重宝されるようになります。
人気に伴い、背もたれが小さめのローバックタイプや、子ども用のチャイルドチェアなど、いろんな大きさや形のものが造られるようになったウィンザーチェアは、イギリス国民の生活にドンドン溶け込んでいきました。
こうして英国の人たちの生活に根付いたウィンザーチェアですが、20世紀頃になるとパイプ椅子の普及により需要が一気に低下!
イギリスから姿を消し、幻の椅子と呼ばれるほどにまで、なってしまいました。
そんな中、ウィンザーチェアの伝統を元に新たな椅子を生み出したのが、今も椅子作りを続けるアーコール社。
他にもいろんな英国家具メーカーの企業努力により、ウィンザーチェアの伝統が再び広まっていき、現在までずっと愛され続ける椅子となっているんです。
\ちょっと休憩 チェアの豆知識/
曲げ木の椅子
ベントウッドチェア
ウィンザーチェアのように、産業革命の頃に需要が高まった椅子がベントウッドチェアです。
ウィンザーチェアと同じように曲げ木の技術から生まれた椅子は、パーツを分解することで大量輸送が可能で、組み立てて販売が出来るノックダウン方式になっている構造から、世界中で使われるようになりました。
アーコールチェア
曲げ木で有名なアーコールチェアも、実はウィンザーチェアの一つです。
ウィンザーチェアの伝統を受け継ぎ、今もずっと変わらないデザインから進化したデザインまで造り続けているアーコールの椅子は、ビンテージチェアの人気とともに、日本で大流行中です。
Windsor chair
ウィンザーチェアの 特徴
ここからは、長い時を経て、今なお造りづづけられるウィンザーチェアの特徴を「背もたれ」「脚」「座面」に分けてご紹介します。
① 背もたれのデザイン
背もたれのデザインだけでも、いろんなウィンザーチェアがあることが分かります。
よく見かける代表的なデザインの背もたれからご紹介します。
1. コムバックチェア
ウィンザーチェアの歴史の中でも初期の頃に誕生したデザインがコムバックチェアです。
コム=combとは櫛のこと。背もたれの形が、くしの形に見えることからコムバックと呼ばれるようになりました。
背もたれの笠木の部分が扇のように湾曲したファンバックも、コムバックチェアのひとつ。一番よく見かけるウィンザーチェアの背もたれの形です。
フィドルとは弦楽器のこと。特にバイオリンのことを指し、まるでバイオリンのような形の透かし彫りが入った細長い背板が、背もたれの真ん中に付いたウィンザーチェアのことをフィドルバックチェアと言います。
クイーンアンチェアのストラットバックのデザインに影響を受けて作られるようになったと言われています。
スピンドル(spindle)とは、糸を紡ぐための道具、糸巻きなどの心棒のことを言います。
背棒のデザインが、まるで糸をスピンドルに巻いたように、中が太く、両端が次第に細くなっていく紡錘形のウィンザーチェアをスピンドルバックチェアと呼んでいます。
2. ボウバックチェア
背もたれがグルンと丸くなったデザインのボウバックチェアと呼ばれるウィンザーチェア。
まるで、弓(ボウ)をグ~ッと引いたように見えることから名前が付いた、よく見かけるウィンザーチェアです。
輪っかのように見える形から、フープバックチェアと呼ばれることも多く、背板もいろんなデザインのものを見つけることが出来ます。
ホイールバックチェアとは、背もたれに車輪を模った透かし彫りが入っているボウバックチェアのことです。
当時、産業革命が起こったイギリスでは蒸気機関車が登場!
ものすごく注目度が高く、同時にホイールバックチェアも大人気だったようです。
3. ラダーバックチェア
背もたれの笠木と座面との間に横板の入ったデザインの椅子は、梯子(ladder)のように見える形からラダーバックチェアと呼ばれています。
スクールチェアやチャイルドチェアなど、サイズが小さなものも多く、背板の幅や高さもいろいろ。
なので、椅子として座って使うだけではなく、お部屋のワンポイントに飾って楽しんだり、サイドテーブル代わりに使ったり、いろんな使い方で楽しめるウィンザーチェアです。
② 脚のデザイン
ウィンザーチェアの特徴は、ハの字に開いた足の形。
ここからは、特徴的な脚のデザインについてお話します。
作業用の椅子として使われていたウィンザーチェアは、安定感があるよう、脚の先の方が少し外側に広がった「ハ」の字のカタチをしているのが特徴です。
また、脚と脚をつないでいる「貫」のデザインは、安定感のある「H」のカタチ。
それまで椅子の貫は、Hがダブルで付いていたり、曲げ木を利用したカーブのものなど、いろいろな形があったようですが、今は、ほとんどのウィンザーチェアの貫は「H」です。
ハの字の足のデザインは、2つのタイプ、「ターニングレッグ」と「テーパードレッグ」に分かれます。
キッチンでキッチンチェアとして使われていたナチュラルな雰囲気のウィンザーチェアの足は、ターニングレッグ(挽き物細工)がほとんど。
装飾的になりすぎず、優しい印象を残しながらも、とても丈夫なターニングレッグのウィンザーチェアは、見ているだけでほっこりした気分になる椅子です。
足先に向かって、だんだん細くなっていくテーパードレッグ。
テーパードレッグのウィンザーチェアの代表が・・・アーコールチェアです。
装飾が全くなくスッキリとクールな印象のテーパードレッグは、特にビンテージチェアから多く使われるようになったデザイン。
ターニングレッグと比べて、装飾が少ない分、大量に生産することが出来、それでいて優しく丸みを帯びているため、あたたかみも感じられる、クールでおしゃれなデザインが魅力です。
③ 座面の形
産業革命で経済が発展し、椅子の需要が高まった英国で、ウィンザーチェアが重宝された大きな理由のひとつが使い勝手の良さ。
木の座面でも疲れにくいように座り心地にこだわった座面の形もウィンザーチェアの特徴の一つです。そんなウィンザーチェアの座面に関する、2つのこだわりポイントをお話します。
1. 座操り
座りやすい理由の一つが「座繰り(ざぐり)」と呼ばれる彫。
座面をよく見ると、座った時のお尻と太ももの形に合わせて、座面が彫られています。
英国の農家の暮らしの中から生まれた、この小さな気遣いのおかげで、木の座面でも体にフィットしてくれるので、ずっと座っていることが出来ます。
2. 角度
座面を横から見てみると、座った時にラクなように、座面に向かって少し斜めに下がっています。
背もたれも少し後ろに傾いているので、まるで体を木であたたかく包み込まれている感じ。ぬくもりを感じながら座ることが出来ます。
もともとはアームが付いたウィンザーチェアも造られていましたが、作業をする際、アームがジャマになることや、家庭用で使う椅子として普及したことで、サイズがコンパクトになり、アーム付きのものが造られなくなっていきました。
なので、ほとんど見つけることが出来ない、めずらしいアーム付きのウィンザーチェアは、ターニングなどの装飾がしっかり施されているものも多く、存在感もあるので、いつも人気です。
いろんな色にペイントされた「色」もウィンザーチェアの特徴の一つ。
木で造られた椅子なので、もともとは木の色だった?と思いますが、作業場や家庭で気軽に使われていた椅子なので、キズがついたり、汚れがついたり・・・
今の日本とは違い、モノを捨てない英国では、キズを直し、汚れを取り、その都度、何度も上から色を塗り重ねて修理しながら使うため、色を塗り重ねたことで生まれる独特の風合いや、可愛い色が特徴の椅子です。
日本では、ヨーロッパのように色を使った壁が少なく、白い壁に茶色い床のお家がほとんど。
なので、ウィンザーチェアを1脚投入することで、お部屋の中に挿し色がプラスされるので、雰囲気も明るくなりオススメです!
Windsor chair
ウィンザーチェアのオシャレな使い方
気軽に取り入れられる英国の椅子、ウィンザーチェアをお部屋にプラスして、おしゃれなお部屋作りを楽しんでみましょう!
ダイニングチェアとして使う
まずは、ダイニングチェアとして、実用的に使ってみましょう。
素朴な雰囲気のウィンザーチェアは、ダイニングチェアとして造られた椅子ではないので、全く同じデザインのものを複数脚、集めて、お揃いのデザインでダイニングチェアにすることはムリです。
でも、逆に、いろんなデザインや色のウィンザーチェアをテーブルに組み合わせることで、華やかな雰囲気になって、おしゃれなダイニングをコーディネートすることが出来ます。
例えば、重厚な雰囲気の濃いチョコレート色のダイニングテーブルに組み合わせても、挿し色になってステキです。
素朴な雰囲気の椅子だけに、同じくオールドパイン材の家具とはよく似合います。
同じような挽き物細工の足とテーブルは一緒に組み合わせると相性バツグンです。
いろんな形、いろんな色のウィンザーチェアを使って、ほっこりあたたかく癒される、ナチュラルスタイルのダイニングのコーディネートを楽しんでみましょう。
デスクチェアとして使う
もともと作業用の椅子として造られたウィンザーチェアだけに、作業する椅子としてデスクに組み合わせてみましょう。
後ろから見た時の形や色も可愛いので、デスクを使っていない時も、おしゃれに魅せてくれる力があります。
実際に座って使うのはもちろん、置いておくだけでも絵になるウィンザーチェアで、寝室や書斎など、自分だけの特別な空間を彩ってみましょう!
寝室に一脚置いておけば、寝る時はサイドテーブルとして、朝、起きてからはドレッサーと組み合わせてドレッサーチェアとして使えます。
作業用に造られた木の椅子は、学習椅子にもオススメ!素敵な椅子に座れば、勉強する時間も楽しくなります。
サイドテーブルとして使う
見た目もオシャレなウィンザーチェアは、座るだけでなく、サイドテーブルとして使うのもオススメ。
座面の高さは、サイドテーブルとして使うのにちょうどいい高さなので、ベッドから手を伸ばしてスマホを取ったり、スタンドライトを置いておくのにピッタリ!
ちょっとした小さなものを乗せる便利なテーブルとして、気軽に使ってみましょう。
お気に入りのぬいぐるみやお人形、写真立てなどを飾るディスプレイ棚として、おしゃれに使えます。
電話台にも便利に使えておしゃれ。無機質な電話機も、ナチュラルな板座の上に置けば、なんだか優しい雰囲気に見えてきます。
玄関で使う
カラフルな色の見た目がおしゃれで可愛いウィンザーを玄関に置いて、お客様をお出迎えしましょう!
靴を履く時に座って、実用的な使い方で楽しむのはもちろん、花台としても使えるので、お花や植物を置いて楽しめます。
私の場合は・・・カギ置き場!いつもどこかに置いて忘れてしまいがちなカギを、可愛い椅子が預かってくれます(笑)
キャビネットの横に置くだけで、おしゃれなワンコーナーが出来上がります。ウィンザーチェアがあるだけで、なんだか人の気配が出て、まるでディスプレイしているような雰囲気が作れます。
ちょっとしたスペースがあれば、サイドテーブルやキャビネットとウィンザーチェアを組合わせてみましょう!それだけで絵になるおしゃれな場所が作れて、毎日の生活がちょこっと贅沢になりますよ~
いかがでしたか?買い付けに行くと、よく見かける椅子、ウィンザーチェアは、実は長い歴史がある椅子です。
いろんなデザインがあって、一脚一脚に使ってきた人たちの想いが刻まれた椅子だからこそ、置いただけでホッとするあたたかい雰囲気を出してくれるんだなって。
英国の人たちが大切に守り続けてきた伝統ある木の椅子、ウィンザーチェア。ぜひお部屋に取り入れて、アンティークチェアのある暮らしを楽しんでみませんか?
-
水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
-
アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
【店舗&倉庫】
〒910-0019 福井市春山2-9-13
【南青山オフィス】
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-41
古物商 福井県公安委員会許可
第521010008980号
関連商品はこちら
記事をシェアする