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ギャッベの魅力とは?選び方とコーディネートのコツ
- 水野 友紀子
最近、日本のインテリアショップでもよく見かけるようになったギャッベとは、手織りされた草木染めの絨毯のことです。
鮮やかな色を使った、表情豊かなデザインのギャッベ(GABBEH)は、ヨーロッパではアートとしても注目されているインテリアアイテムの一つ。
挿し色として、おしゃれなお部屋のコーディネートアイテムとして使われることも多い、ギャッベについて、詳しくお話します。
GABBEH
ギャッベとは
カラフルな色の毛糸で手織りされた、「ギャッベ」や「ギャベ」と呼ばれる絨毯は、イランの南ペルシア山岳地帯で、羊と暮らす遊牧民の女性が一枚一枚、手織りしたの毛足の長い絨毯のことを言います。
もともとは、遊牧生活をする際、大自然の厳しい暑さや寒さをしのぐために、床に敷いて使われていた、遊牧民には欠かすことが出来ない生活必需品だったギャッベ。
山や原野に張った遊牧民のテントに織り機を設置し、女性たちが丁寧に織り上げたものです。
遊牧生活で一緒に暮らす羊たちから紡いだ羊毛を、自然の中に自生する草や花、樹木などを使って染め、一本一本、手作業で丁寧に織り上げた草木染の絨毯ギャッベは、まさに大自然から生まれたアート作品。
織り方は、母から娘へと、代々受け継がれているため、古くからギャッベを織り続けている遊牧民、それぞれの民族で、デザインの特徴が異なっているところも魅力の一つです。
例えば、テントを張って移動しながら暮らす「カシュガイ族」のギャベは調和のとれたデザインが多め。
イランの北方から移動し、村を作って暮らしている「ルリ族」は、シンメトリーや絵画のように自由なデザインが多め。
こんな風に、ギャッベの織り方やデザインの違いから、長い歴史の中で、それぞれの民族が作り上げた独自性を見つけることが出来るのも、ギャッベの楽しみ方の一つです。
GABBEH
ギャッベの特徴
欧米ではアートとしても人気を集めているギャッベ。
2012年にはギャベの織りがユネスコの無形文化遺産に登録され、日本でも注目されるようになりました。
ドンドン人気が上がるにつれ、ギャッベに似たデザインの絨毯や、手織りではなく機織り機で織られたもの、イラン製ではない、ギャベ風の絨毯がたくさん流通するようになってきました。
ここからはギャッベの特徴についてお話します。
01 一点もの
同じイランで作られている織物、ペルシャ絨毯と比べると、デザインが粗いという所から名前が付けられたとも言われるGABBEH(ギャッベ)。
でも、ギャッベの裏側を見てみると、実はかなり細かく織られていることが分かります。
工芸品として人気のペルシャ絨毯と比べると、粗く表現されているように見えますが、実生活に根付いて織られたギャベは、実用的でとても使い勝手がいいのが特徴。
また、遊牧生活を送る大自然の中から生まれた素朴でぬくもりあるデザインが人気です。
ギャッベをよく見ると、大きさにバラツキがあったり、線が曲がっていたり、モチーフや色が気まぐれに並んでいたり・・・
手作りだからこそ均一性がない、一つ一つ、手で織られた素朴で大らかなデザインは、全てが一点もの。
織った人の愛情がたっぷり詰まった「作品」という所がギャッベの最大の魅力です。
02 一年中 使える実用性
ギャッベは、気温差の大きい高地のテント生活で、足元に敷いて暑さをしのいだり、寒い日に暖をとるために使われていたものです。
上質なウールを使って織られているので、通気性がよく、保温性にとても優れて、日常生活で使いやすい所もギャッベの魅力の一つです。
夏はさらっとした肌触り、冬は暖かい空気をため込んでくれる優れた素材を使ったギャベは、季節を問わず素足で快適に使える絨毯です。
03 100年使える 耐久性
テントの中で、床敷きやベッドカバーとして使われるギャッベは、手織りで丁寧に作られるので、1畳ほどの大きさを作るのに要する時間は・・・約3カ月!
ビックリするほど時間がかかりますが、その分、耐久性があり、親から子、子から孫へと3世代に渡って使われ続け、100年近く使われるものもあるほど丈夫です。
大切に作られたことで、ずっと使い続けることが出来る耐久性も魅力です。
ギャッベのお手入れ
ギャッベに使われている羊毛には上質な油分が含まれ、繊維にも染み込んでいるため、汚れをはじきお手入れが簡単です。
普段のお手入れは掃除機をかけるだけでOK。
飲み物などをこぼしてしまった時も、羊毛に含まれた油分が水気を弾いてくれるので、すぐに拭き取れば中に染み込むこともありません。
もし、汚れが気になる場合は、ぬるま湯につけたタオルを堅く絞って毛並みにそって拭くだけで大丈夫です。
天然ウール100% の証
上質な油分が含まれているため、清潔に使うことの出来るギャベですが、天然のウール100%で作られた織物なので、使っているうちに、どうしても「遊び毛」と呼ばれる毛が出てきます。
羊毛の毛糸などを思い浮かべてみた時、毛先などから出ている細かい毛が「遊び毛」。ふわふわと浮いていることがよくありますが、羊毛の特徴なので、予めご理解ください。
特に使い始めの最初のうちは、遊び毛が出やすいんですが、使っているうちに落ち着いてきます。
遊び毛が気になる場合は、こまめに掃除機をかけて下さい。
また、天然の羊毛100%を使って織っているため、湿気を多く含む場所に長時間放置しておいた場合、敏感な方が匂いを感じる場合があります。
特に、お届け直後は、梱包時に密閉していたことにより、匂いがこもってしまいがちですが、開封して空気を含めば匂いが和らぐためご安心下さい。
匂いに敏感で気になる方は、屋外で陰干してギャッベに空気を通すことで、気にならなくなります。
天然のウール100%の証なので、安心してギャッベのある暮らしを楽しんで下さい。
GABBEH
ギャッベのデザイン
大自然の中で培われた感性で作り出されたギャッベ。ギャッベに描かれているモチーフには、いろんな意味が込められています。
世代を超えて伝えられてきた、伝統的なデザインやモチーフの中から、よく見かける人気の模様をご紹介します。
天高くそびえ立つ大木は、遊牧民たちにとって神秘的な存在です。
「生命の樹」とも呼ばれ、紀元前4世紀に壊されてしまったペルセポリス遺跡の神殿にも使われていた、歴史あるデザインです。
羊やヤギをデザインした文様は、ギャッベの中でも特によく見かけるデザインです。
遊牧生活の中で、羊やヤギは大切な財産。お金に不自由のない生活が続くようにという願いや感謝の想いが込められています。
「ケルマック」と呼ばれる、横向きのSのような模様は、小さな虫を表しています。
ギャッベに描くことで、悪いものを寄せつけない、魔除けや厄除けとして使われるモチーフです。
ギャッベの中に、時々、散りばめられている「X」のマークは、ずっと続く未来を表しています。
家族の健康や幸せがずっと未来まで続くようにと願いを込めたデザインです。
ギャッベの中でよく見かける四角のモチーフは、井戸や水場など、砂漠で過ごす遊牧民の命綱とも言える、大切な水をイメージした文様です。
また、幸せが入って来る「窓」として描かれることもあり、大切なものへの感謝や幸せな未来を願う気持ちを表しています。
子孫繁栄を願う、人のモチーフに描かれているのは、子ども。子どもの健康や健やかに成長するようにとの願いが込められています。
日常的にギャッベを織るため、生まれた子どもの数をギャッベの中に描くこともあります。
GABBEH
ギャッベ のある暮らし
優しい肌触りだけでなく、草木染めの鮮やかな色が特徴的なギャッベは、お部屋の挿し色としても大活躍です。
いろんなお部屋で、いろんな使い方で楽しむ、ギャッベのある暮らしをご紹介します。
「和室」に色をプラス
小ぶりなサイズのギャッべは、座布団として使うのにピッタリ!
上質なウールを使ったギャッベは、ふかふかで座り心地が気持ちよく、ヘタることもありません。
草木染めで鮮やかに発色した、いろんな色のギャッベの座布団は、畳の挿し色に。カラフルで明るい雰囲気の和室づくりにおススメです。
「フローリング」のクッション
フローリングで足先が寒いという方にこそ、ギャッベは最適!
もともと遊牧民がテントの脚マットにしてるだけあって、足元がぬくぬくです。
またクッションにもピッタリ!厚みがなく、どこにでも持ち運び出来て、冬の寒さから守ってくれます。
「玄関」のお出迎えマット
一番、気軽に置けると人気の場所が玄関。玄関マットとして使いやすく大人気です。
玄関のドアを開けて、パッと目に飛び込んでくる鮮やかな草木染めの玄関マットで、お客様を明るくお出迎えできます。
また、ディスプレイマットとしても使えるので、下駄箱の上やコンソールテーブルの上に置いて、お花やディスプレイ雑貨を並べてみましょう。
見た目が華やかなのはもちろん、上に乗せたディスプレイ用品で家具がキズつくのを防いでくれます。
壁を彩る「タペストリー」
欧米では、アートとして楽しまれているギャッベ。お気に入りの1枚を壁に貼ってタペストリーにして、絵画のように楽しむ使い方も人気です。
ちょっと寂しいなと思う壁に貼るだけ。カラフルな草木染めの絵が、お部屋の中をパッと華やかに彩ってくれます。
自分流の使い方で、ギャッベのある暮らしを楽しんでみませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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