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現代でも使われる家具の脚の定番、パンの形の「バンフット」
- 水野 友紀子

あまり聞き慣れない脚のデザイン「バンフット」。でも、意識して見てみると、いろんな家具の足元で見つけることが出来るカタチと言うことに気が付きます。
17世紀に誕生してから少しずつ形を変えて、現在まで長い間使い続けられている定番のデザインバンフットについてお話します。
Handle 水野 友紀子



バンフッドとは、ボールのような球を、少しつぶして平たくしたような形の脚のデザインのことを言います。
英語で「バン(bun)」とは、食パン以外の丸い小さなパンのこと。例えば、ハンバーガー用のパンが「バンズ」と呼ばれるように、丸くて小さな形がパンに似ているところから「バンフット」と呼ばれるようになりました。
17世紀中頃に誕生したと言われるバンフットは、チェストやキャビネットでよく見かけますが、椅子やソファの脚に使われるているデザイン。少しずつ形を変えながら、現代の家具の脚のデザインでも使われ続けている「定番の脚」です。


17世紀に流行したオーク材の家具や、その後、18世紀まで人気だったウォルナット材の家具の脚に用いられたバンフットは、典型的な脚のデザインの一つとして確立しました。
時代の流れとともに少しずつ形が変化し、ボールフットと呼ばれる筒状の形をしたデザインや、チューリップ型や、つぶれた形のものなど、バンフットの丸みのある脚にも、デザインや名前が違うものがいろいろあります。
ハンドルでは、このような丸い形の家具の脚を相称して「バンフット」と呼んでいます。


17世紀に誕生したと言われているバンフットは、現在でも使い続けている家具の脚の定番デザインの一つです。
そんなバンフットが誕生し、流行した17世紀のジャコビアン様式からウィリアム&メアリー様式のまでをご紹介します。


ジャコビアン様式とは、ジェームズ1世時代の建築・家具様式のことを言います。
それまでのエリザベス様式の影響を受けた、直線的で重厚な雰囲気に、華やかな装飾が施されたオーク材の家具が多く造られました。
ジャコビアン様式では、ボビンターニングレッグ(ツイスト)や、挽きもの細工などが代表的ですが、ジャコビアン後期にバンフットが誕生したと考えられています。


カロリアン様式とは、チャールズ2世が王位に就いた頃から流行したスタイルのことです。
王政が廃止されたことで、家具や芸術の発展が停滞していた英国が、王政復古により芸術性が高いチャールズ2世が王位に就いたことで、オランダやフランスなど、いろんな国の影響を受けたデザインの家具が誕生しました。
ウォルナット材の家具も造られるようになり、シノワズリ(中国趣味)が流行したのも、このカロリアン様式です。

ジャコビアン様式やカロリアン様式の家具は王族や貴族のために造られたので、重厚感が漂うクオリティーの高い家具が多く造られました。
その頃のデザインをリバイバルした、バンフットの家具も当時の雰囲気をそのままに、オーク材を使った重厚でドッシリとした家具が特徴的です。


ウィリアム&メアリー様式とは、ジェームス2世の娘、メアリーと、オランダ人の夫ウィリアム3世が共同で王位についた時代に流行したスタイルのことです。
オランダ人のウィリアムの影響で、オランダのデザインや装飾を取り入れ、寄木細工や象嵌などの高度な装飾技術が発展した時代です。
オランダを示す英語Dutchから「ダッチ」様式とも呼ばれています。

ウィリアム&メアリー様式の頃、それまで主流だったオーク材から、ウォルナット材の家具が造られるようになっていき、上品で繊細な女性らしいデザインの家具が多く造られるようになりました。
この時代に作られた、キレイなボール状のバンフットは「ウィリアム&メアリーバンフット」とも呼ばれています。


バンフットは安定感があり、しっかり支えてくれるので、比較的、大型の家具に使われていることが多いデザインです。
長い時間をかけてリバイバルされてきたバンフットには、いろんな形のものがありますが、どれもコロンと丸くて愛嬌ある佇まいが特徴的。今まで、Handleでご紹介したバンフットの家具を見てみましょう。

1930年代 イギリス オーク材
ジャコビアン様式の伝統的なデザインをリバイバルしたチェスト。
ドッシリと大きなバンフットは重厚感があります。

1930年代 イギリス オーク材
挽もの細工の長い脚先に、コロンと可愛いバンフットを重ねたオケージョナルテーブル。
コンパクトサイズでも存在感はたっぷりです。

1930年代 フランス パイン材
フランスらしいペイントのカップボードの足先に使われているコロンとした丸い形のバンフット。
オシャレな雰囲気に可愛さをプラスしてくれます。

1950年代 フランス
ホワイトペイントのオープン棚の足先に平たくツブれた形のバンフットを発見。
足元の、ぽってりとしたフォルムが愛嬌たっぷりです。

1920年代 イギリス オーク材
オーク材で造られたステンドグラス扉の正統派のブックケース。
バンフットが使われることで、重厚感の中に可愛らしさが感じられるデザインに仕上がっています。

1920年代 イギリス オーク材
彫がたっぷり入ったドレッシングチェスト。
重厚感が漂う家具の足先に平たい形のバンフットが花を添えます。


バンフットは、家具の脚のデザインの定番の形だけに、いろんなデザインの家具に使われてきました。でも、見比べてみると、イギリスとフランスの家具では雰囲気が全然違って見えるんです。
あなたは重厚感が漂うイギリス?それとも、華やかな雰囲気のフランス?どちらがお好みですか??


ズッシリと重さのあるオーク材の家具を支えるバンフットのキャビネットを置いたリビングは、重厚感あふれる大人の雰囲気です。

フランスらしいホワイトペイントの家具に使われたバンフット。同じ丸い形でも、なんだか可愛らしい雰囲気です。


バルボスレッグの下に隠れているバンフット。ドローリーフテーブルの上で食べる食事は、なんだか高級感がUP!おいしく見えます。

同じように丸い挽き物細工の脚のテーブルと組み合わせたバンフットの食器棚。まるでパリのアパルトマンのような雰囲気のダイニングで、華やかな食卓に。


重厚感のある、英国のサイドバイサイドの足先にもバンフットが。安定感のあるデザインで落ち着いた書斎が出来上がります。

ホワイトペイントのカップボードをデスクの横に並べて本棚としてデスクの横に並べた書斎。明るく楽しい時間が過ごせます。




5年前にイギリスに旅行に行った際、ハロッズで買ったティーカップ達。飾る場所がなくずっと戸棚の中で眠らせていましたが、ようやく収まる場所が出来晴れてお披露目しました!
チャイニーズガーデンというオリエンタル調のカップが、このサイドバイサイドに飾るのにぴったりと感じ、満足しています。


コンクリートむき出しの我が家に温かさが加わり、何を収納しようかと考える楽しみを与えてくれる素敵なプレゼントとなりました。
これから、家族とともに新しい歴史をともにし、今6歳の娘がいるのですが、娘にも引き継いでいきたいと思います。


素敵なアンティーク家具に囲まれて幸せな気分で過ごしています。
お気に入りの雑貨や食器たちがやっと落ち着ける場所におさまりました。
ありがとうございました。


アンティークと思えない程綺麗にメンテナンスをして頂き、ありがとうございました。
到着したチェストを見て、娘も「きれい!」と喜んでおり、まだアンティークの魅力は分からないかも知れませんが、大事にし繋いで行きたいと思います。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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