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ベーシック派におススメ!オーク材で造られた家具
- 水野 友紀子
「オーク材」は幅広い方から支持される人気の木材です。特に古くから家具の材料として使われていたオーク材は日本ではナラ(ミズナラ)と呼ばれる、秋にどんぐりが生る木のことです。
西洋では、堂々とした佇まいからKING OF FOREST「森の王」と呼ばれているナラの木、オーク材は硬くて彫刻や曲げ木などの細工がしやすいので、中世のころから家具材として非常に好まれて使われてきました。
オーク材のことを詳しく知って、家具選びの参考にして下さい。
~ オーク材の目次 ~
「オーク材」とは、日本ではナラ(ミズナラ)のことを言います。家具に使われるオーク材を分類すると、大きく3種類に分けられます。生育する環境によっても異なる特徴があります。
1.ナラ(ミズナラ)
主に北海道やロシアが産地。比較的寒い地域で生育するので、木目が細かく詰まっているのが特徴です。
世界の最高峰と言われる日本の北海道産ミズナラは、加工がしやすいので、フローリングや壁板、家具など、幅広く取り扱われ、実は、英国のアンティーク家具で使われているオーク材も、英国が北海道から輸入したミズナラ材ものが多いんです。
最近は希少なので代替品としてホワイトオークが使われています。
2.ホワイトオーク
主にアメリカやカナダなど北米産のホワイトオーク材は、日本で採れるミズナラにとてもよく似ています。色が白くズッシリと重くて硬いのが特徴。流通量が減ったナラの代替品として用いられました。
液体を保管するのに適しているので、まだプラスチックやガラスがなかった時代に欧米ではウィスキーやワインなどを入れる樽に使われていました。
3.レッドオーク
ホワイトオークと同じく北米産。よく似ていますが、より色が赤みを帯び、木目がより目立ちやすいものがレッドオークです。また、ホワイトオークと比べると柔らかく、ホワイトオークと違って、木の導管を閉塞させる「チロース」が未発達で液もれが発生してしまうレッドオークは酒樽には使えません。
ナラの代替品として使われたホワイトオークが高額になったことで、さらに代替品としてレッドオークが使われるようになりました。
たくさんの方から支持されるオーク材の特徴をまとめると3つ。人気があるヒミツです。
オーク材はとても堅くて重いので、長く使い続けたい大型家具やフローリングなどの床材によく使われます。
家具として使われるときは、ダイニングテーブルの天板や、引き出しの前板など、強度が必要な部分に使われていることが多いです。
また堅い割に彫りがしやすい適度な硬さなので、たくさん彫が入っている家具にオーク材が使われていることが多いです。
他の木材と比べても高い耐久性と耐水性を持つオーク材は、昔から家具やフローリング、ウィスキーやワイン樽の材料などに使われていました。
オーク材には虫が苦手なタンニンが他の木材よりも多く含まれているので、害虫にも強いんです。
なので、オーク材を使ったアンティーク家具は、現在でも美しい状態のものがたくさん残っています。
木目の美しさ
オーク材は重厚感があるハッキリとした木目の美しさも人気です。オーク材の木目には、3種類あって、それぞれに見え方が違います。
シンプルな真っ直ぐの模様が特徴の「柾目」
力強い模様が特徴的な「板目」
オーク材特有の木目「虎斑」
どれもオーク材らしい模様が美しく、この木目を活かしながら家具が造られていることがよくわかります。
オーク材の丸太を板に加工するとき、挽き方によって「板目」と「柾目」の模様が違う2種類の木目になります。
「板目」とは、丸太をそのまま縦にスライスして板に加工したものです。
1つの木から切り出せる量も多く、柾目と比べると価格はお手ごろ。なので無垢のオーク材の床材は板目のものが多いです。
オーク材の板目は、オークらしい山形の木目がハッキリと力強く現れるので、家具にしたとき重厚感がある雰囲気を作ってくれるところが人気です。
「柾目」とは、木材の中心近くを切り出した板のことです。直線的でまっすぐの美しい木目は、収縮しにくく反りにくい特徴があります。
柾目は切り出せる部分が決まっているので、幅広く切り出すことが難しいです。また幅を広く切り出すためには太い幹の木が必要になりますが、最近は木材も減少し、太い幹の木も少なくなってきているので、幅が広い柾目を手に入れることは難しく、また板目と比べると採れる量も少なく、価格も高価です。
オーク材の柾目を切り出す際、柾目の木目を横切るような縞状の杢目「斑(ふ)」が出てくる時があります。
オーク材には時々、まるで虎の毛のように見える「虎斑(とらふ)」と呼ばれる特徴的な木目が見つかることがあります。
取れる量も少なく、なかなか手に入れることが出来ない大変貴重な虎斑は、上質なオークの証と喜ばれる方が多い木目です。
「オーク材の家具の色は?」と聞かれると悩んでしまうくらい、明るいベージュ色からかなり濃いこげ茶色まで、幅広くいろんな色があるオーク材の家具。
もともとオーク材の木肌の色は、ナチュラルな肌色に近い明るい色です。そのため、塗装で着色しやすく、昔からヨーロッパでオーク材の家具を造る時には、時代の流行に合わせて着色し、明るい色からチョコレートのような濃い茶色まで幅広くいろんな色のオーク材の家具が造られました。
例えば、ヴィクトリア女王の時代には英国全体に暗い色が流行したので家具も濃いチョコレート色のものが多く作られ、その後、アーツアンドクラフト時代になると形も塗装もシンプルで明るく変化したので、オーク材の家具も明るめです。
また、オーク材は経年変化によって、だんだんと色が濃くなって褐色に変化していく木。なので、もともとは明るいベージュ色だった家具も、少しずつ変化していく色を楽しむ事が出来ます。
オークは西洋で多く生育していた木なので、マホガニーが登場する1700年代までのヨーロッパでは家具の材料として盛んに使われていました。
ところが害虫にも強いオーク材が1920年代の英国で集団で病気にかかってしまい激減してしまいました。そこで、イギリスでは日本の北海道からナラの木を輸入し、オーク材の家具を造りました。
なので、Handleでもご紹介している1920年代から作られた英国アンティークのオーク材の家具は、実は北海道産のミズナラが多く使われているんです。だから、日本の畳の部屋に、とてもよく似合います。
特に1500年から1660年ごろに盛んに家具の材料として使われ、家具の歴史上「オークの時代」と呼ばれた様式を見てみましょう
15世紀末~16世紀半ばに誕生したチューダー様式がオークの家具の始まりです。
教会で使われたゴシック様式のデザインや、チューダー家の紋章「チューダーローズ」を装飾として使った家具がチューダー様式です。
メダリオンヘッドと呼ばれる円形の紋、アーチ型の窓が連続してデザインされるゴシック様式のデザイン、チューダーローズなどの浅浮き彫り(ローレリーフ)と呼ばれる彫りでオーク材の家具の前面などに彫られているのが特徴です。
チューダー様式の後、誕生したエリザベス様式は、それまで主人と同じ屋根の下で暮らしていた使用人たちが家を持つようになり、生活スタイルに合わせた家具がたくさん作られるようになりました。
家具のデザインもより装飾的になり、実用性を取り入れた背もたれ付きのダイニングチェアや今も人気の伸張式「ドローリーフテーブル」が誕生しました。
エリザベス様式の代表的なデザインは球根型のバルボスレッグと呼ばれる細工です。
テーブルの脚だけではなく、ベッドの支柱や食器棚の円柱にも彫刻が施され華やかな雰囲気の家具が造られました。
オークの時代を締めくくるジャコビアン様式。この時代の家具は、職人たちが自分たちで技術を向上させよう!と、更に華やかな装飾が生まれた時代です。
ジャコビアン様式の代表は挽きもの細工。まだ機械がない時代に、ろくろや旋盤を紐を使って回して木を削って作った、美しいボールを並べたようなデザインのボビンターニングや女性らしいデザインの挽きもの細工が、この時代にたくさん誕生しました。
徐々に家具の前面、側面にも装飾を施すようになり、16世紀~17世紀に掛けて、「リネンフォールド」と呼ばれる、布を折り返したカーテンのひだのようなデザインの彫りも流行しました。
オーク材を使って造られたアンティーク家具には、いろんな種類があります。イギリスとフランスでデザインも違うので、比べてみてみましょう!
1920年代 英国オーク材のチェスト
この頃の英国チェストは北海道産のミズナラが多く使われています。どっしりとした高級感がある木目がカッコいいです。
1940年代 フレンスのチェスト(コモード)
曲線的で女性らしく優雅なフランスらしいチェスともオーク材。色も明るくエレガントな雰囲気です。
1930年代 英国ドローリーフテーブル
バルボスレッグがしっかり支えているデザインのドローリーフテーブル。天板に虎斑が使われているものも多いです。
1930年代 フランスのドローリーフテーブル
足元がカブリオルレッグで優雅な雰囲気がフランスらしさ。天板もパーケットリーで模様が描かれています。
1930年代 英国ビューロー
足元はツイストやバルボスレッグで、引き出しにも浅浮き彫りで英国らしい彫が入っているビューロー。小ぶりなものが多いです。
1920年代 フランスのビューロー
女性らしい植物やお花の豪華な彫がたっぷり入ったビューロー。オーク材の大胆な木目とコラボして落ち着いた大人な雰囲気が感じられます。
1920年代 英国ガラスキャビネット
イギリスらしいステンドグラスが扉に入ったガラスのキャビネット。大きさも小ぶりなものから大きなものまでいろいろです。
1940年代 フランスのガラスキャビネット
日本のお家でも使いやすい食器棚タイプの形が多いフランスのガラスキャビネット。彫もフォルムもフランスらしく優雅さたっぷりです。
1920年代 英国サイドボード
いろんな場所に彫が施されたオーク材のサイドボード。英国のオーク材の時代を思わせる浅浮き彫りが華やかな雰囲気を作ります。
1940年代 フランシのサイドボード
女性らしいフォルムでみんなを魅了するフランスのサイドボードは幅が広いものが多いので、小さいものを見つけたときはお早めに~。
オーク材の家具を普段の生活にプラスすると、どんな雰囲気のお部屋が出来上がるのか、スタイル別にご紹介します!ぜひ、自分のお家でもプラスしてみて下さい。
英国トラディショナルスタイル
のダイニング
バルボスレッグの装飾が施されたテーブルとチェアを組み合わせるだけで、英国アンティークらしいダイニングが出来上がります!
堅くて耐久性に優れ、古くから親しまれてきたオーク材の家具は、毎日使うテーブルなどの天板にはピッタリ!伝統的なデザインで華やかな食事の時間を彩ってくれます。
フレンチエレガントスタイル
のダイニング
フランスのアンティーク家具、特にダイニングテーブルには堅くて丈夫なオーク材が使われてきました。
ドッシリとした木目を上品に使って、優雅な猫脚で作り上げたダイニングテーブルと椅子のセットは、毎日の食事の時間まで特別な雰囲気に変化させてくれます。
英国×フランス
コラボダイニング
イギリスとフランスでデザインが違うので雰囲気もずいぶん違いますが、同じオーク材の家具同士で組み合わせるコラボスタイルのダイニングもとても素敵です。
色も形も国によって全然違いますが、同じオーク材同士、一緒に並べた時は自然と似合います。
畳×アンティーク家具
オーク材の家具は、日本でも古くから親しまれ使われてきたもの。しかも、英国アンティークの家具は北海道産のミズナラが使われているものが多いので、日本の畳のお部屋に、とてもよく似合います。
日本の和の雰囲気に合わせてアンティーク家具を選ばれるのはもちろんですが、英国らしい雰囲気の家具をそのまま和室で使っても、違和感なく合わせることが出来ます。
和室だから・・・と考えず、気軽に使ってみて下さい。驚くほど似合う空間が出来上がります。
いかがでしたか?オーク材って家具の中で一番、基本の木材だと思っていた私。その認識に間違いはなく(笑)ますます好きになりました。
現代、造られるオーク材の家具と、オーク材で造られたアンティーク家具では、使い方も木目も違っているので、一見、同じ木材?と思ってしまうこともありますが、オーク材の特徴を理解し、自分なりに好きなポイントを決めて家具を選んでもらえたらいいなと思っています。
昔から家具に使われてきた木材だからこそ、間違いのない定番の家具をお探しの方に使ってもらいたいオーク材の家具。ぜひ、あなたのお家で楽しんでみて下さい。
以上、Handle水野友紀子でした!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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