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ジャコビアン様式とは?職人が生んだ美の魅力
- 水野 友紀子

アンティーク家具でも人気のツイストやターニングレッグといった挽き物細工や、装飾、人気のゲートレッグテーブルなどのアイテムが誕生したのが、実はジャコビアン様式なんです。
重厚感の中に軽やかさと華やかが漂う、ジャコビアン様式の家具について詳しくお話します。
Handle 水野 友紀子
ジャコビアン様式とは?
ジャコビアン様式とは17世紀初め、エリザベス1世の後1603年~1625年にイギリス王に即位したジェームズ1世の時代から1660年~1685年のチャールズ2世の時代まで、英国で流行した建築や家具のデザインのことです。
ジェームズ1世の名前「James」のラテン語形が「Jacobus」で、その形容詞が「Jacobean(ジャコビアン)」なので、ジャコビアン様式と呼ばれるようになりました。

チューダー様式、エリザベス様式と続いたオーク材の時代を締めくくるジャコビアン様式の家具。
ゴシック様式の影響を受け、重厚感が漂う中に、軽やかなデザインの彫刻がプラスされて、より豪華な雰囲気になりました。
ジャコビアン様式は、1649年~60年のピューリタン革命を挟んで、革命前の前期ジャコビアンと革命後の後期ジャコビアン(カロリアン様式)に分かれます。
ジャコビアン様式の 装飾
ジャコビアン様式の家具の装飾を前期ジャコビアン様式と後期ジャコビアン様式(カロリアン様式)にわけてご紹介します。
前期ジャコビアン様式の装飾
01 花瓶型のバルボス

ジャコビアン様式までは「ダブルカップ」や「カップ&カバー」と呼ばれる丸い形をしたバルボスレッグが主流でしたが、ジャコビアン様式では、細長い花瓶のような形に変化。
それまでより軽やかで女性らしい雰囲気のバルボスレッグとして人気でした。
→バルボスレッグ商品一覧
02 バラスターレッグ

バラスターレッグ(Baluster Leg)のバラスターとは、階段などの手すりを支える支柱・小柱のことです。
ふわっと膨らんだ曲線的で女性らしいシルエットが特徴的なデザインです。
→バラスターレッグ商品一覧
03 ボビンレッグ

ボビンとは糸巻きのこと。まるで糸を巻いたボビンのように丸い形のボールが数珠つなぎになっている脚のデザインがボビンレッグです。
まれに、ボールの間にリングが挟まれているようなデザインのめずらしいボビンレッグが見つかることもあります。
→ボビンターニングレッグ商品一覧
04 ビーディング

ボビンレッグを造る時の、挽物細工に使った技術を使い、ボビン型の挽き物細工を縦半分に切った、小さな玉が連なっている装飾が「Beading(ビーディング)」です。
Bead(ビーズ)とは玉のコト。ズラっと小さな玉が並んだ姿が男前でカッコいい雰囲気を作ってくれます。
→ビーディング商品一覧
後期ジャコビアン(カロリアン)様式の装飾
05 ツイスト

後期ジャコビアン様式に入ると、今もアンティーク家具には欠かせないツイストレッグが誕生します。
丸い棒をらせん状に挽ける送り台が発達したことで、ツイストのような複雑な挽き物を自由に作ることができるようになりました。
→ツイストレッグ商品一覧
06 ケイン(籐)

東インド会社を通じて東洋から輸入されたケイン(Cane)。日本で籐と呼ばれる素材を、椅子の背もたれや座面に貼ったものが造られるようになりました。
座面に籐を貼ることで、掛け心地がとてもしなやかな椅子になりました。
→ケイン商品一覧
07 高浮き彫り

後期ジャコビアン様式は家具に使われる素材がそれまでのオーク材からウォルナット材へと変化していきました。
ウォールナット材はオーク材に比べて木目が細かく、装飾に適していたので、高浮き彫りと呼ばれる、大ぶりの彫刻が家具に施されるようになりました。
→浮き彫り(レリーフ)商品一覧
ジャコビアン様式の 家具
重厚感の中に軽やかさを感じるジャコビアン様式のアンティーク家具や椅子。代表的なアイテムをご紹介します。
01 ドローリーフテーブル

16世紀後期のエリザベス様式から原型が造られていたドローリーフテーブルは、ジャコビアンの様式になって大流行しました。
エリザベス様式ではダブルカップ型のバルボスレッグのドローリーフが主流でしたが、ジャコビアン様式になると、細くてスッキリした花瓶型のバルボスレッグに変化していきました。
また、ジャコビアン様式では家具の引き出しが出し入れしやすいように工夫され、脇すべり(サイドランナー)が付けられるようになりました。

このサイドランナーの技術を応用して、天板のサイドから補助天板を引っ張りだす伸張式のテーブル「ドローリーフテーブル」がジャコビアン様式ではたくさん造られるようになりました。
エリザベス様式で造られるようになったドローリーフテーブルは、サイズも大きいものが主流でしたが、1900年代に入るとロンドンなど都市型の生活スタイルに合わせて、構造やデザインをそのままにサイズダウンしたものがリバイバルして造られるようになりました。
簡単に天板を伸び縮みさせることが出来るドローリーフテーブルは、今の日本で大人気のテーブルです。
02 ボビンレッグチェア

たくさんのボールを真っ直ぐに並べたような形の、ジャコビアン様式を代表する挽き物細工「ボビンレッグ」の椅子。
当初は、椅子の脚だけにボビンレッグが使われていましたが、だんだんと枠の部分や背もたれの部分、さらには貫など椅子全体にボビン型の挽き物細工が使われるようになりました。
時には、丸いボールの間にリングを挟んだような凝ったデザインのボビン型の挽き物細工も見かけます。
03 チェスト

ジャコビアン様式以前の家具は扉が多く、引き出しと言っても枠の中に引き出しのような箱を入れて出し入れしていましたが、脇すべり(サイドランナー)が工夫され、スムーズに出し入れできる引き出し付きのチェストが造られるようになりました。
それまでは食器棚の下以外には、めったに使われることがなかった大きな引き出しや、小さな引き出しが2つ並んだチェストが人気になります。
その後、扉と引き出しの両方が付いた「騾馬(ラバ)チェスト」と呼ばれる家具が18世紀中頃まで流行します。
04. ゲートレッグテーブル
後期ジャコビアン(カロリアン様式)を代表する家具が、ツイスト足のゲートレッグテーブルです。
テーブルの脚を門(ゲート)のように動かして開閉できる伸長式のゲートレッグテーブルの脚に使われるよう、らせん状にねじった挽き物細工のバーリーシュガーツイストが誕生!
ピューリタン革命後、共和制時代に不満をもっていた貴族たちが喜んだ華美な装飾は、ジェームズ2世の時代まで続きました。
ジャコビアン様式の誕生秘話
ジャコビアン様式の名前の由来となったジェームズ1世ですが、実は・・・芸術や流行には全く関心がなく、ジャコビアン様式の家具やデザインには全く影響を与えていないんです。
その代わり、ジャコビアン様式の家具の発展に貢献したのが・・・職人さんたち!
フランスやイタリアからデザインの影響を受けて、新たな家具造りの手法を取り入れ工夫した職人さんたちのおかげで、ジャコビアン様式が出来上がりました。

ジェームズ1世の後、イギリス王に即位したチャールズ1世は、父親とは違い芸術やデザイン、ファッションなど、いろんなことに関心があり、東インド会社を通して中国の磁器やベネチアのガラス細工、東インド諸島の香辛料や日本の漆塗り・・・など、いろんなものを輸入するようになります。
その結果、貿易や商業が発展し、ガラスなど輸入しためずらしいものがイギリスの家具に取り入れるようになり、家庭用の家具が多様化していきました。
家具が多様化したことで精巧さが求められるようになり、それまではオーク材を使った家具が主流でしたが、より正確に切断できるウォールナット材へと変化していきました。

ところが1649年に清教徒革命(ピューリタン革命)がオリバー・クロムウェルにより勃発。
1660年に王政復古するまでの11年間はオリバー・クロムウェルの意思で質素な生活を送ることを強要されたため、この間、芸術面や家具のデザイン様式など発展することなく、彫刻や装飾がない家具が造られていました。
そんな質素な生活を強いられることに反発した英国民たちは追放されていたチャールズ2世を迎え、王政復古が行われ、後期ジャコビアン(カロリアン)様式が始まります。
後期ジャコビアン(カロリアン)様式

カロリアン様式とも言う後期ジャコビアン様式は、芸術にとても関心が強かったチャールズ2世が、自身が過ごしたオランダとフランスで身につけた新しい様式を英国に持ち帰ってきたものです。
ポルトガルの王女、キャサリン・オブ・ブラガンザと結婚した時、輿入れの際に持ち込んだものの中に、当時は貴重だったお茶や東洋の磁器などが入っていたことで、中国(シノワズリ)やの影響を受けたデザインの家具が多く造られるようになります。
ジャコビアン様式の部屋
ジャコビアン様式のアンティーク家具や椅子を使ってコーディネートしたお部屋をご紹介します。
01. ダイニング

ツイストレッグのゲートレッグテーブルに、同じくツイストの椅子を合わせた、ジャコビアン様式らしいダイニングをコーディネートしました。
ツイストのテーブルにツイストの椅子を合わせるだけで、一気にこの時代を楽しめる空間になります。
02. リビング

書斎のデスクとして、ボビンレッグのゲートレッグテーブルをコーディネートしてみました。
片方の天板は閉じたままにすれば、壁にピタッとつけることができ、片方は広げてゆったり作業スペースをつくることができます。
03. 書斎

オーク材を使った、ジャコビアン様式の家具は和室にもおすすめです。
落ち着いた雰囲気の家具は畳との相性も抜群。
和室に、ターニングレッグのコーヒーテーブルとリネンフォールドの装飾が入ったキャビネット、差し色の赤いサロンチェアを合わせた異色だけど相性抜群の和室の完成です。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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