アンティークと暮らす「楽園」~宮崎県 日高さま~
- 水野 慎太郎
アンティークのある暮らし ~楽園で紡がれる日高様の物語~
「楽園」と聞いて、どんな風景を思い浮かべますか?
宮崎県のほぼ真ん中にある「日本で最も美しい村」綾町。
自然と人が共生する町として、2012年にユネスコエコパークにも指定された綾町にある「楽園」にお母様とご夫婦でお住いの日高さまの暮らしを、日高さまから頂いた美しい写真とともにご紹介します。
「楽園」との出会い ~自然と共に暮らす~
日高さまが楽園を見つけたのは、たまたま目にした不動産のチラシ。
「何かピンとくるものがありました」
山を切り開いた自然に囲まれた広大な敷地の中に静謐に佇む1軒の家。とても気になり連絡することにしたそうです。
その頃、前のオーナーさんは、自然をそのままに住んでくれる方を探されていたそうですが、広大すぎる土地はなかなか買い手がつかず苦戦。
仕方がないので、宅地として分割して販売するために自然を開拓することを決心しよう!と思った矢先に日高様が連絡し、現場で対面すると、お互いに人柄のよさを感じて意気投合。
「自然に囲まれたあまりにも気持ちがいい楽園のような場所だったので、ここに住もう!と決めました。」
とは言え、広大な敷地に広がる自然と向き合うため、日高さまと奥様の千賀子さま、そしてお母様の房子さまは、週末になると楽園に訪れ、草刈りや木の剪定に大忙しです。
夏は汗だくになりながら、虫と格闘して、生い茂った木や雑草をカット。
秋になると落ち葉拾い。落ち葉を集めて作った落ち葉の山で焼くのは…焼き芋だそうです(笑)
お昼ご飯を食べる場所は、パーゴラの下。
自然と調和する、どこか懐かしい雰囲気の建物。リビングの大きな掃き出し窓に設置された、古木のぬくもりを感じさせるパーゴラがいつもランチの場所です。
毎週、朝、にぎったおにぎりを持って楽園を訪れ、庭仕事。お昼ご飯を食べて庭仕事を再開し、日が落ちてから家に入ってお酒と夕食を楽しむ・・・
これが日高さま一家の毎週末の過ごし方です。
高齢ながら、毎週、庭の手入れを欠かさないお母様の房子さん。さぞかし大変だろう・・・と思って訪ねてみると
「ここで庭仕事をしている時が、私にとって、なにより幸せな時間。
ここに来ることがとても楽しみで・・・。
ここにいると元気になります!ここは私の元気の源です」
大変どころか、房子さまの若さの秘訣が庭仕事と言うことを教えてもらい、ボクも庭仕事をやろうかな・・・と思い始めました(笑)
それでは、週末、家族で訪れることを楽しみにしているお家の中を見てみましょう!
初めてのアンティーク家具
「ハンドルさんで初めてアンティークのキャビネットを選んでから、ちょうど10年が経ちました」
と仰る日高さま。もともとアンティーク家具をお使いだったわけではなく、週末を楽園で過ごすようになって、ここに似合う家具を置きたい・・・と思うようになり、毎日、インターネットを検索されていたそうです。
リビングにあるダイニングテーブルはもともとのオーナーが使っていたもの。それに似合う家具が欲しいなと思っていた時、目に飛び込んできたのが、アンティークのガラスキャビネットでした。
気になったのは、アンティークキャビネットの中でも定番デザインの1930年代に造られたオーク材のもの。
通常、ウォールナット材やマホガニー材で造られているものが多いんですが、どうやら特注でオーダーしたオーク材のもの。重厚感がたっぷりの中に、美しい彫が入った女性らしいキャビネットがどうにも気になってしまったと仰る日高さま。
「アンティーク家具を購入すること自体が初めてだったので、かなりドキドキしました。しかもオンラインショップだったので不安でしたが『返品OK』の文字が目に留まり、思い切って購入することにしました。
今、思えば、みなさまの情熱と愛情を感じ取ってのかもしれません(笑)」
そして、ドキドキしながら注文した日高さまの「初めてのアンティーク」ガラスキャビネットを楽園に搬入する日を迎えました。
「ご丁寧な梱包が開封されていくのを、ドキドキしながら見ておりました。
オシャレな英国のガラスキャビネットの美しさに感嘆しますとともに、オンリーワンの個性ながら、周りとも調和しているアンティークの不思議に魅了されました。
情熱と愛情を分かち合える今に至る、不思議なご縁です。」
現在は、楽園のリビングの中心で、家族の大切な思い出を飾る特別な場所となっている、アンティークのガラスキャビネット。
最初は初めてのアンティークにドキドキだったものの、アンティーク家具の美しさにすっかり魅了されてしまった日高さま。
その後、お気に入りのアンティークの家具や雑貨を見つけて、少しずつ集めるように。
少しずつ集めたアンティークの家具や雑貨が集まって、気が付くと、まるでアンティーク家具でトータルコーディネートしたような雰囲気のお部屋に変化していった楽園。
お部屋の中心部分にあるのは、暖かい宮崎県には必要がなさそうな薪ストーブです。
「前のオーナーが使っていたものをそのまま置いていってもらいました。もしかしたら、外してどこかで使いたかったのかもしれません(笑)
宮崎の冬はそれほど寒くはないんですが、薪ストーブの炎を見ながらパチパチと薪が燃える音を聞くと、とても落ち着きます。」
「優美なフォルムにカジュアルなストライプ柄が絶妙にマッチしたおしゃれな椅子」と表現してくれた、日高さまお気に入りの一脚がバルーンバックチェア。
ここに座って、薪ストーブの炎を眺める時間。想像するだけで、心が満たされる感じがします。
薪ストーブの奥には、ミュージックキャビネットが設置。
天板にはテーブルライトを置いて、間接照明を楽しんでいる様子です。
実は、ミュージックキャビネットのバックパネル部分にある鏡はもともと、太陽やロウソクの灯りを反射させてお部屋を明るくするためのもの。
テーブルライトの灯りがバックパネルに反射して、お部屋の中を明るくしてくれています。
本来はロウソクだった灯りを電気スタンドに代え、同じような使い方を楽しまれています。
お気に入りのアンティーク家具
一番気に入っているアンティーク家具について聞いてみました。
「すべてのアンティークさんが子どものようでお気に入りですが、中でも印象深いのは『シノワズリ―のブックケース』です。」
ダイニングテーブルの後ろに設置されたマホガニー材で出来た1910年代英国のアンティークブックケース。
シノワズリデザインの扉で、とってもおしゃれな雰囲気です。
「一晩検討した翌日、『シノワズリーさん、さあおいで』とHPを拝見しますと、すでに『SOLD OUT』に。
一晩、検討しなければよかったと残念な気持ちで…あきらめきれずにHPを拝見し続けると、なんと!見ていたほとんどの商品が『SOLD OUT』に。
その後、願いが通じたのか一番気に入っていたシノワズリ―さんの『SOLD OUT』がキャンセルとなったので、大慌てで注文しました。
おかげで奇跡的に楽園に迎えることが出来て、大満足です。」
到着したシノワズリーのブックケースは、柔らかな自然光に包まれ、「イギリスの風が吹き込んでくるようなダイニング」を演出する一品となりました。
テーブルの上で食事するのはもちろん、お手紙を書いたり、趣味を行ったり…心地のいい時間が流れるので、思わず眠くなってしまうようです(笑)
それ以来、日高さまはアンティークを選ぶとき、その場の直感を大切にしているようです。
「アンティークさんのほとんどは一点もののため、これはと感じたら迷っている暇はありません。『直感と予算』です。」
奥様の千賀子さんは、時折、楽園でサックスを演奏。
ここでだったら、どんなに大きな音を出しても怒られません!
窓からの風景とともに響く音色が、楽園にさらなる豊かさを添えてくれます。
自然溢れる楽園でリフレッシュして、日常の活力に…
ところ変わって、ここは日高さまご夫婦が、平日、生活されているマンション。
平日は2人の仕事場に近いマンションで暮らし、週末は楽園で過ごす、マンションと里山での二重生活を送楽しまれています。
マンションでくつろぐ時に腰かけるのはアンティークのセティ。
そして、サイドにはキャビネットの次に購入されたオーク材のサイドテーブルを置いて、大好きな音楽をすぐに楽しめるようセッティングされています。
「どうやら私は、イギリスのシンプルで上品な直線美が好みのようです。」
マンションと里山でアンティーク家具の使い方が違うところも参考になります。
そして、寝室に置かれているのは、フランスから届いた白いアンティークドレッサーとスツール。
奥様への贈り物として日高さまが選んだものです。
こんなにステキな贈り物をもらった時の奥様は、どんな気持ちだったんだろう…
美しい曲線ラインが、奥様の柔らかな雰囲気と見事に調和しています。
和室で使われているのは、木目が美しいウォルナット材のカップボードチェストとプチポワンチェア。
「木目が美しい『ウォルナット材のカップボードチェスト』は箪笥として毎日活躍しています。
プチポワンは初めてなのが不思議なくらい、そのノーブルさにとても惹かれました。予算オーバーな分は、お仕事ガンバリマス」
思いっきりお仕事を頑張った後、週末は楽園でゆったり暮らしてリフレッシュ…そんな穏やかな日々に憧れます。
アンティークの魅力
平日は思いっきり仕事を頑張ってマンションに、休日になると里山にある楽園で、自然の恵みを味わいながら、日頃の疲れを癒す日高さまの生活をご紹介しました。
「アンティークさんオンリーワンの個性と、周りにも調和する協調性の両立が見事です。
僕のコレクターとしての守備範囲は多岐に及び、特に古いものが好きみたいで、将来は骨董屋かな。」
日高さまの骨董屋さんを見に、宮崎に行く日が楽しみです!
編集後記
僕がアンティーク家具屋を始めて20年近くが経ちます。
オンラインショップで家具、しかもアンティーク家具を販売することが出来るなんて、夢のような世界だと思っていました。
しかも、日高さまのように遠方の方と、まるで昔からお友達だったような気持ちで接することが出来る日がくるなんて、夢にも思っていませんでした。
今年、3人で宮崎からハンドルに遊びに来て頂いたことは、僕にとっての宝物です。
上品でとってもお元気な房子さんのように年齢を重ねることが目標になりました!
本当にありがとうございました。
Special Thanks!カメラマン日高博之さま
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水野 慎太郎
創業明治36年、1903年から続く老舗家具屋4代目。
アンティークショップHandleオーナー。小さい頃から囲まれて育ってきた、家具に対する知識と修復技術力は誰にも負けない自信がある。
30年後に日本の10人に1人がアンティーク家具を使っている文化を作ることを目標にし、日々、アンティーク家具の修復に奮闘中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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