エルム材とは?アーコールに使われたエルム材の魅力と特徴

水野友紀子
水野 友紀子
エルム材

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私の初めてのアンティークは、エルム材で出来たチャーチチェアでした。
その時は、エルム材が何か分からなかったけれど、知れば知るほどドンドン好きになるエルム材についてお話します。

Handle 水野 友紀子


elm

エルム材とは

エルム材とは、英語名でelm(エルム)学名はUlmus Davidiana (ハルニレ)と呼ばれる、ニレ科ニレ属の落葉広葉樹のことです。 日本では楡(ニレ)赤ダモと呼ばれている木材ですが、その種類は数百あるとも言われています。

十分な水があって、排水が良く、作物がよくできる平坦地に自生するハルニレは、昔から人間が住むのに最適の場所の目印とされていました。

また、樹高があり、30mになるものもあるので「世界四大街路樹」の一つとして、街路樹や公園樹として親しまれています。

日本では、北海道の札幌が「エルムの都」と呼ばれたほどハルニレの樹が多い街だった事も有名です。


エルム材

頑丈で粘りがあり曲木にも適しているエルム材の特徴を生かし、ヨーロッパでは「ヨーロピアンエルム」が椅子の材料として使われてきました。

伝統的な曲木の技術を利用したウィンザーチェアや、アーコールチェアの座面にもエルム材が使われています。

他にも馬車の車輪などにも使われていたことから、エルム材が頑丈である木材だということが分かります。


エルム材のウィンザーチェア

同じ仲間であるニレ科の欅(ケヤキ)にも木肌が似ているので、ケヤキに似せて着色したり、ニレの一枚板の上に薄くスライスしたケヤキの突板を貼って使われたりと、日本では高価なケヤキの代わりに活躍してきた裏方での人気者です。

日本ではケヤキが人気ですが、ヨーロッパでは赤みがかったケヤキの色が受け入れられなかったので、エルムの方がポピュラーで人気があります。


point

エルム材特徴


point01 強靭で曲げに強い

エルム材のダイニングテーブル

エルム材は堅さがあり、割れにくく、粘りもあるので曲げにも強いところが特徴です。

特に曲げに強いことから、曲げ木で造られたウィンザーチェアのような椅子、また耐水性もあることから馬車の車輪や庶民や使用人たちがキッチンで使う実用的な家具に使われてきました。

堅すぎるため、細かい彫刻などの加工を施すには不向きなので、デザインはシンプルなものが多く、日本では階段太鼓の胴、まな板などで使われています。


point02古くから愛される木


古代神話にも登場するエルム材

古代ローマ時代から、イタリアでは葡萄を仕立てる支柱にエルム材(ニレ)が使われていたことから、ヨーロッパではエルム材と葡萄は良縁の象徴として愛されていました。

なので、ローマ神話ギリシャ神話には、エルム材(ニレ)が登場する話があったり、葡萄の蔦とエルム材(ニレ)が描かれた絵画が残されています。

日本でも昔から婚礼家具の材料として使われてきたニレ材は、世界中で古くから愛されてきた木材です。


point03 美しい木目

美しい木目のエルム材

エルム材の杢肌は黄白色から淡褐色の優しい色が特徴です。木目に濃淡があり、幹にコブがあるものには美しい杢目として現れます。

肌目が粗いので、触ったときにしっとりと手に吸い付くような優しく柔らかい印象を与えてくれます。

そのため、普段よく肌に触れることが多いダイニングテーブルや椅子にも最適な木材です。



ercol

エルム材アーコール


エルム材がここまで有名になったのも、「アーコール社」の存在が大きかったと言えます。

そもそもエルム材は、しっかり乾燥をさせないと狂いが出たり、ひびが入りやすいので家具に使う場合、注意が必要です。

今のように機械化されていない時代の技術では、エルム材を乾燥させることはとても難しく、家具に使う木材には適さないと思われていて、使われることはありませんでした。

そんなエルム材を使って家具を造り始めたのがアーコール(ERCOL)社の創始者、ルシアン・アーコリーニです。


アーコール社の工場

ウィンザーチェア発祥の地「ハイ・ウィルコム」周辺は、昔からエルム材やビーチ(ブナ)材、アッシュ(タモ)材が多く生育していた地域。

アーコーラーニは、そこで長年受け継がれてきた木材の扱い方を活かし、エルム材をしっかりと乾燥させる方法を編み出すことに成功!

エルム材の特徴を活かし、ウィンザーチェアからヒントを得てアーコールチェアを造り始めます。

その後、機械化でアーコールチェアを大量生産することにも成功!アーコールチェアの座面など、広く使う部分はエルム材、細くて華奢な背もたれ部分はビーチ材を使って造られています。


エルム材のアーコールチェア

チェアは、座面がエルム材、背もたれや脚はビーチ材を使用しています。

アーコール社のエルム材のダイニングテーブル

テーブルは天板がエルム材、脚はビーチ材です。

アーコール社のエルム材のキャビネット

キャビネットは、オールエルム。側板や天板、全てがエルム材の無垢材で造られています。


今は手に入らない貴重なエルム材


かつて英国に多く自生していたエルム材(イングリッシュエルム)ですが、1960年~1970年代にエルム材の病気が英国のエルムの木に蔓延。壊滅状態になってしまいました。

そのため、英国のエルム材はとても少なくなり、現在新しいアーコール家具や椅子はエルム材ではなく、アッシュ材(タモ材)を使用して造られています

現在、エルム材は伐採が禁止されていて入手する事が難しく、イングリッシュエルムの家具を手に入れられるのは、ヴィンテージの家具だけです。


アーコール社の家具

アーコール社では現在も家具や椅子を造り続けていますが、同じように昔、使われていたエルム材はもう手に入らないため、現在、使われているのはアッシュ材(タモ材)です。

新しいアーコールの家具とビンテージの家具の雰囲気が違って見えるのは、このように使っている材料が違うため。


エルム材とアッシュ材

ビンテージで使われているのはエルム材、現在、造られているアーコールには、アッシュ材(タモ材)が使われているので、色も木目も違っていて、同じデザインであっても雰囲気が大きく異なります。

アッシュ材は導管が太いので、木目がとても目立ち、またエルム材に比べて木肌の色が白いのが特徴です。

Handleで扱っているアーコール家具は、エルム材を使って造られた1950年~1970年代のエルム材を使った家具を買い付けています。



item

エルム材家具


エルム材を使ったアンティークの家具は、種類がとても少なく、ほとんどがダイニングで使われてきた家具ばかりです。


エルム材のダイニングテーブル

1970年代 エルム材のテーブル
蝶の羽のように天板が折り畳める、拡張式のエルム材のバタフライテーブル。イングリッシュエルムのキレイな木目が楽しめます。

エルム材のキャビネット

1960年代 エルム材のキャビネット
コーナーにピッタリと置けるエルム材のコーナーキャビネット。お皿が立てられるように、棚に溝が付いているのも、アーコールらしいデザインです。


エルム材のワゴン

1970年代 エルム材のワゴン
いつも人気のエルム材のワゴン。キャスターが付いているので、キッチンだけでなく色々な場所で活躍してくれるアイテムです。

エルム材のチェア

1930年代 エルム材のチェア
背もたれにクロスが入ったチャーチチェア。1枚板のエルム材の座面には、長時間座っていても疲れないようにお尻と太もも部分に彫が入っているんです。



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水野友紀子

いかがでしたか?今、日本でも大人気のアーコールが火付け役になったエルム材

日本ではあまり馴染のないエルム材の家具ですが、一度使ってみると、シンプルで美しい杢目に惹かれてしまいます。

伐採禁止にもなっているので、ヴィンテージでしか会うことが出来ないエルム材の家具。お家で楽しんでみませんか?

水野友紀子

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頑丈で曲げにも強く、バランスの良い木材で、世界中で親しまれている人気のエルム材の家具や椅子をご紹介します。



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水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

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(水野商品館 株式会社)

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