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レリーフとは?職人が語る浮き彫りの魅力
- 水野 友紀子
アンティークらしい装飾の中で、私が絶対に真似ができないと思う「浮き彫り」。実は、お店で婚礼家具を販売していた頃、ウォールナットの端材を彫刻刀で彫って、ミニチュアのチェストを造ったことがあるんですが、あまりの堅さに彫刻刀の刃が欠けたんです!
たった10cm四方でも大変だったのに、あんなに細かい浮き彫りを作るのは、どんなに大変だったんだろう・・・って、見る度に職人さんを尊敬してしまう浮き彫り。
現代、造られる大量生産の家具は、彫ってあるように見えるパネルが貼ってあるものがほとんどなので、アンティーク家具らしい装飾の1つです。
Handle 水野 友紀子
Relief
浮き彫り(レリーフ)とは
浮き彫り(レリーフ)とは、木材などの素材を彫り込んだ立体的な彫刻のことを言います。
手作業でノミなどの刃物を使って彫る浮き彫りは、家具のデザイン様式や木材の種類によってデザインが変化し、大きく分けると浅浮き彫りと高浮き彫りの2種類に分かれます。
浅浮き彫り(ローレリーフ)とは、土台に対してほぼ平らで浅く彫り込んだ彫刻のこと、高浮き彫り(ハイレリーフ)とは、立体的に浮き上がった彫刻のことをと言います。
Low relief
浅浮き彫り/ローレリーフ
堅いオーク材に彫刻する際、用いられることが多かったのが浅浮き彫り(ローレリーフ)です。
16~17世紀頃の「オークの時代」、チューダー様式の家具の装飾で植物やゴシックデザインなどの彫を見ることが出来ます。
High relief
高浮き彫り/レリーフ
オーク材に比べると加工しやすいウォールナット材やマホガニー材の家具に多く用いられた彫刻が高浮き彫り(ハイレリーフ)です。
17~18世紀の「ウォールナットの時代」「マホガニーの時代」の家具の装飾で、植物や果物、動物などが立体的な彫刻を見ることが出来ます。
Pierced carving
透かし彫り/ピアスドカービング
高浮き彫りをさらに立体的に彫り、貫いた彫刻を透かし彫り(ピアスドカービング)と言います。
家具などの木材以外にも、シルバーなどの金属を彫りぬいたものも同じように透かし彫り(ピアスドカーブ)と呼ばれます。
Desigh
「彫」と「木」の関係性
古代ギリシャの神殿の装飾で見かけることが出来るくらい、古くから使われてきた浮き彫り。家具に使われるようになったのは、英国家具の原点と言われるチューダー様式の家具からです。
チューダー様式の頃は、浅浮き彫り(ローレリーフ)だった家具が、だんだんと立体的な高浮き彫り(ハイレリーフ)に変化していった背景には、家具に使われた木材の流行が関係しています。
「浅」浮き彫りと「オーク材」
当時の王、ヘンリー7世(ヘンリー・チューダー)の名前が付けられたチューダー様式は、15世紀末~16世紀半ばに誕生しました。
教会のモチーフなどを使ったゴシック様式で、チューダー家の紋章「チューダーローズ」や教会で使われたモチーフが浅浮き彫りされています。
チューダー様式は「オークの時代」とも呼ばれ、オーク材に彫刻を施した家具が造られました。
ノミやタガネを使って手作業で彫を施しましたが、オーク材はとても堅いため、メダリオンヘッドやチューダーローズ、リネンフォールドなどの、浅く彫り込んだ、浅浮き彫り(ローレリーフ)の装飾が施されました。
「高」浮き彫りと「ウォールナット材」
1660年、芸術にとても関心が強かったチャールズ2世が王位に就き、カロリアン様式が誕生した頃、フランスからウォールナット材の輸入が始まります。
オーク材に比べて狂いが少なく加工がしやすいウォールナット材を使った家具が造られるようになります。
オランダとフランスで過ごして見聞を身につけたチャールズ2世は、ヨーロッパ各地の流行や中国趣味の影響を受けたデザインの家具を作り始めます。
オーク材より彫刻がしやすいウォールナット材を使った家具には、立体的な高浮き彫り(ハイレリーフ)が主流になっていきます。
彫のデザインの変化は、家具に使った木材の堅さとともに変化しました。
\Trivia/
こんな風に作られています
今のように便利な機械がなかった時代、ノミやタガネなどの道具を使って一つ一つ手作業で彫り施していました。
まず土台となる木材に手書きで下絵を描き、その線に合わせて少しずつ立体的に彫刻していきます。
細かく繊細な装飾を作り上げるのに、大小様々な約20本のノミや装飾に合わせた道具を使用していたそうです。
デザインに合わせて少しずつ彫り、立体的にしてようやく完成です。
気の遠くなるような緻密な作業を繰り返し作り出される浮き彫りはまさに芸術品!
手作業で生み出された美しい浮き彫りをぜひご覧になってください。
Relief
こんな意味が含まれています
Linen fold
リネンフォールド
シーツやタオル類を表す「Linen(リネン)」を折りたたむ(fold)しているデザイン、リネンフォールドは、ゴシック様式の頃からヨーロッパの家具や壁面の鏡板部分などに使われてきた代表的な模様のひとつです。
アンティーク家具では、ワードローブやキャビネット、ブランケットボックスなど、木製扉の面積が多い家具に使われています。
比較的、加工がカンタンで、見た目が優雅なので、現代造られているイギリスの家具にも使われることが多いデザインです。
Lunet
ルネット
フランス語で「小さな月」という意味を持つルネットは、名前の通り、半月の形をした浅浮き彫りのことです。
ゴシック様式が盛んだった頃に家具の装飾として使われるようになったルネットは、18世紀中頃から人気が高まり、多くの家具で使われるようになりました。
アンティーク家具の中で見つけるルネットは、半円形の中にお花の模様が彫刻されていることが多いんです。お月様の中にどんな模様が隠れているか見つけてみてください。
Strap work
ストラップワーク
ストラップワークとは、帯や紐が、交差しながら織り交ぜられた、帯状の彫刻のことを言います。
16世紀の中ごろのエリザベス様式に好まれて家具で使われたストラップワークは、とても模様が細かく、凛とした気高い雰囲気を醸し出してくれます。
アンティーク家具では、サイドボードやキャビネット、チェストなどの上部装飾(ペディメント)の彫で使われていることが多いレリーフです。
Greek Kaminarimon
ギリシャ雷文
雷や稲光のようにも見えるギリシャ雷文と呼ばれる浮き彫りは、小アジアを曲がりくねる水路、マイアンドロス川の名前に由来してメアンダーとも呼ばれています。
魔よけと幸福のシンボルとも言われるギリシャ雷文は、18世紀にヨーロッパで流行したシノワズリのガラスキャビネットやサイドボード、ビューローなどのアンティーク家具の装飾で用いられています。
連続した模様は「永遠」を意味することから縁起がいいと言われるレリーフです。
Item
浮き彫りの家具を見てみよう
一つ一つ、手作業で彫った浮き彫りは、流行した時代や使われている木材、さらに造られた国によって、モチーフも様々なので、見比べてみるととても面白いんです。
今までHandleでご紹介してきた浮き彫りの美しいアンティーク家具をご紹介します。
1960年代 イギリス オーク材
扉面にリネンフォールドの浅浮き彫りが入ったキャビネットです。
オーク材の重厚感の中に女性らしさを感じることができます。
1960年代 イギリス マホガニー材
まるで本物の本が並んでいるような、背表紙のレリーフがめずらしいキャビネット。
仕掛け細工のようなレリーフもアンティーク家具らしさです。
1960年代 イギリス オーク材
上部にルネットのローレリーフが入ったコーナーキャビネット。
空いているお部屋の角にピタッと置けて、便利に使えるキャビネットは、日本の方に人気です。
1920年代 イギリス マホガニー材
ストラップワークが彫られたミュージックキャビネット。
上質なマホガニー材に施された上品な彫は、高級感が漂うお部屋を演出してくれます。
1920年代 フランス オーク材
アカンサスや貝のレリーフが入った存在感たっぷりのビューローブックケース。
フランスらしい華やかな彫で見る人みんなを惹きつけます。
1890年代 イギリス マホガニー材
浅浮き彫りと高浮き彫り、さらに透かし彫りで豪華に装飾された最上級のパーラーキャビネット。
職人技が光る、芸術品レベルの家具です。
Room
浮き彫りと過ごす部屋
家具の装飾で浮き彫りが使われている場合、ワンポイントで入っているものから、全体に彫刻されているものまで様々ですが、それも存在感があって華やかな家具ばかりです。
まるで美術館で芸術を触れているかのような気分になれる美しい浮彫の家具をお部屋で使って、ワンランク上のインテリアを楽しんでみましょう。
room1 リビング
フランスらしい華やかな雰囲気の浮き彫りが入った木製扉のキャビネットには、女性心を掴んでくれる華やかなレリーフがたっぷり入ったものが多いんです。
置くだけで、まるでフランス貴族のサロンのような雰囲気を醸し出してくれるキャビネットにプチポワンの椅子をプラスした、優雅なリビングはいかがでしょう?
room2 ダイニング
ゴージャスな浮き彫りがたっぷり入ったキャビネットが主役のダイニングルーム。
カップボードやダイニングチェアも、キャビネットに負けないくらいに美しい浮き彫りのものを選べば、上質なダイニングルームが完成です。
room3 和室
英国のアンティーク家具に使われたオーク材は、日本の北海道から輸入したものが多いので、和室との相性もピッタリです。
ドッシリと落ち着いた色のオーク材に、美しいレリーフが装飾された家具が、和の空間に華を添えてくれます。
room4 書斎
英国伝統のチューダー様式のキャビネットは大人の書斎にとてもよく似合います。
伝統的な浮き彫りのデザインは重厚感があり、存在感も抜群!自分だけの特別な空間で、特別な時間を過ごしてみませんか?
Relief
みんなの家の浮き彫り
間に合わせで購入したホームセンターの家具を何となく使い続けてきましたが、一生大切にできる物と丁寧に生活したいと思い、作り手の手間と愛情が感じられる、美しい彫りのサイドボードを選びました。
実際に対面してみて、思っていた以上の美しさに毎日惚れ惚れしています。家具以上の「芸術品」と出会った気分です。
彫が美しいコンソールテーブル無事到着しました!
この素敵なテーブルを製作した職人、テーブルを使用したと思われるフランス人に思いを馳せて大切に使用したいと思います。
25年前にイギリスに旅行に行った際、ハロッズで買ったRoyal worcester 社のティーカップ達を飾る場所がなくずっと戸棚の中で眠らせていましたが、ようやく収まる場所が出来晴れてお披露目しました!
チャイニーズガーデンというオリエンタル調のカップを飾るのにぴったりと感じ満足しています。
本日、フランスらしい彫が素敵なキャビネット届きました。
イメージしてたより重量感もあり満足です。
丁寧なお仕事有り難うございました。
脚が特徴的で、天板の彫がとても美しいゲートレッグテーブルが我が家に溶け込んでくれています。
このたびはありがとうございました。
お届けいただいた子たちと、愛着もって、毎日一緒に過ごしています。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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第521010008980号