アンティーク家具を買い付けに行くときは、ほとんどロンドンに行くことがないんですが、ロンドンに立ち寄った時に必ず訪れる場所が「Liberty London(リバティ・ロンドン)」
ロンドンの中心部にある、リージェントストリートから少し道を入ったところにある、世界で最も有名なチューダー様式の建物です。
日本でも人気のリバティ百貨店の中を、リバティの歴史をお話ししながらお散歩してみましょう。
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【ロンドンさんぽ】英国老舗百貨店「LIBERTY」
- 水野 友紀子
まずは、リバティ百貨店の建物のお話しから。
オシャレなロンドンの街の中でも一際目につく建物。
この建物は「チューダーハウス」と言う愛称でロンドンの人たちに親しまれているリバティ百貨店の建物です。
地上5階、地下1階のテューダーリバイバル様式でアーツ&クラフツの建築物として、ロンドンで最も代表的なリバティはイギリスの第2種指定建造物(Grade Ⅱ Listed Buildeing)にも指定されています。
スゴイでしょう~広すぎて写真に撮ることが出来ない・・・(汗)
この独特の建物は「ハーフティンバー」と呼ばれる、イギリスで15世紀から17世紀初めごろに流行したテューダー様式の建物です。
柱や梁、筋交いなどの木造骨組みの間を漆喰などで埋めて壁にしたデザインが、ハーフティンバーの特長なんですが、なんともオシャレ・・・
このチューダー様式の店舗が完成したのは1924年。建物の建材には英国海軍の古い戦艦2隻を解体した木材が使われているそうです。
だから、建物の高さと長さは、使われた戦艦HMS Impregnable(インプレグナブル号)と同じサイズなんだとか。なんだかそんな話を聞くだけでロマンがありますよね。
他にも、船にまつわるものを発見!↓
ムーさんの上の方を見て下さい!そう、屋根の更に上!写っているのは・・・風見鶏!
なんですが、風見鶏と言っても鳥のモチーフではなく「船」
買い付けに行くと、よく真鍮のアンティーク雑貨で見つけることが出来る「メイフラワー号」の形をした風見鶏・・・いや、風見船?!なんです(笑)
メイフラワー号は、巡礼者をアメリカに運んだ船なので、いろんなモチーフに使われることが多いんですが、リバティーの上だと小さい・・・(笑)きっと近くで見ると、かなり大きいと思います。
さぁ、中に入ってみましょう!入り口にはイギリスらしいお花屋さんが。
こじんまりとして、そんなに大きくないお花屋さん。スタッフと行ってバラバラに行動した時の待ち合わせ場所は、いつもこのお花屋さんと決めています。
それでは、店内にGO!
外観もスゴイんですが・・・中はもっとスゴイ!!!
ココは1階部分。ここから目線を上に向けていくと・・・
大きな吹き抜け~!
創業者リバティの「自分の家にいるような雰囲気をお客様に楽しんでもらいたい・・・」と言う思いから設計されている店内は
3ヵ所の大きな吹き抜けを中心に、小さなお部屋で囲んでいる造りになっているんです。
地下1階から5階までのフロアはこんな感じです。
5階 家具、美術工芸品
4階 リバティファブリック、手芸、食器、生活雑貨、カーペット
3階 ウェア、シューズ
2階 ウェア、カフェ
1階 バッグ、アクセサリー、ジュエリー、コスメ、お菓子
地下1階メンズ ウェア、アクセサリー
さらに、目線を天井に向けると、こんなガラスの天井!アトリウムになっていて、光が取り入れられるようになっています。
地震が多い日本ではあまり考えられない建物。
ちなみに、2階には「Cafe Liberty」があって、使われている陶磁器は、Handleでも大人気のバーレイ社!
ちなみのちなみに、実は、何度もリバティに足を運んだことのある私ですが、リバティのカフェには一度も入ったことがない~(汗)
オススメはクリームティーらしいので、今度、行ったときは、必ずカフェに入ってみようと思います!
このチューダー・ハウスは、英国の伝統的なたたずまいで、国民的な人気を誇る存在なんですが、その理由のひとつは、リバティの創業者アーサー・ラセンビィ・リバティが思い描いた「家庭的でくつろげるお店」の演出。
外観だけではなく、店内の内装にもとてもこだわっていて、チューダー様式らしい浮き彫りの彫刻でいっぱいなんです。
例えば・・・
大きな暖炉のディスプレイ!この彫!すごいでしょう~
実は建物の完成をリバティ自身は見ることがなかったんですが、彼が亡くなって7年後に出来たチューダーハウスは、彼が思い描いたお店そのまま。
エレベーターが開いて中を見てビックリ!こんな場所まで木製で重厚な雰囲気。英国らしい装飾、リネンフォールドです。
螺旋階段も木製。エレベーターを使うか・・・階段を使うか・・・どちらも使いたくて悩む~
階段の途中には・・・
カエルの彫刻!こんな風に楽しみながら、店内を回れるのもリバティらしさです。
こんな素敵な建物のリバティ百貨店の歴史は古く、1875年にアーサー・サセンビィ・リバティ(1843~1917)が、東洋の装飾品や織物を販売する店舗としてスタートしたのが始まりです。リバティの歴史について、お店の中を紹介しながらお話しします!
イギリスのバッキンガムシャーで服地店を営む両親の8人兄弟の長男として生まれたリバティは、経済的に裕福ではなかったので、16歳でロンドンの「ファーマー・アンド・ロジャース商会」で働き始めました。
ここで、王室御用達の高級品や、東洋からの骨董品に触れたことにより、目が肥えた彼は1875年に独立。「リバティ商会」を設立します。
開業当時、店員は16歳の少女とハラという日本人の少年だけでしたが、リバティの卓越した審美眼によって集められた東洋のめずらしい美術品やファブリック、装飾品は、たちまちロンドンの芸術家たちの間で評判に。
すぐにお店は常連客でにぎわうサロンのような場所へと発展していきました。
実は、リバティに影響を与えたのは「ジャポニズム」と呼ばれる日本の美。
1858年に日本の鎖国が解かれて、浮世絵やキモノの美しさが知られ始めたことで、19世紀末に世界的に日本の芸術ブームが起こります。
リバティも、若い頃に勤めていたお店で東洋美術に触れ、日本の美に深く魅せられた一人でした。
独立後、すぐ日本から絹を輸入販売し、また、1889年には、夫人を伴って日本に3か月間滞在。芸術や文化に触れ、ありとあらゆる美術工芸品を大量に買い付けたそうです。
さぁ!到着です。リバティと言えば、やはりココ!3th(4階)にある生地売り場です。
東洋の優雅なシルクに憧れたリバティは、お店が大きくなるとともに、ファブリックを自社生産し始めました。
輸入した絹布を技術の高い染色業者に染め上げてもらい、インドの模様をモチーフにした小柄の木版で職人がプリントしたものが、爆発的人気になります。
繊細な発色は「リバティ・カラー」、布地は「リバティ・シルク」と呼ばれ、リバティは大きく発展していきました。
いろんな生地があって、どれもこれもステキ!なので、悩んでしまうんです。
Handleオリジナルロイドルームチェアのクッションに使っているのも、リバティプリント。そう!ここ「LIBERTY」のオリジナルファブリックです。
8色のオリジナルカラーのロイドルームに似合う模様も、ココでじっくり選ばせてもらいました(笑)
彫刻がたっぷり入った重厚な扉の向こうは・・・
私達の知っている可愛いリバティとはまた違った雰囲気の現代的でオシャレなインテリアゾーンです。
はいっ!ひょっこりはん(笑)
このソファ、素敵でしょう~!リバティは、生涯を通じて多くの芸術家たちをサポートしていたので、よくある百貨店と違って、独創性が高い商品がいっぱい~!!
もちろん、インテリアコーナーも充実しています。
なんと、アンティーク家具も売っているんです。どれも素敵なものばかり・・・!
LIBERTYといえば、やっぱりお花の柄が有名なのですが、他にもいろんなデザインがいっぱい~!インテリアコーナーにもLIBERTYの生地で作られたグッズがいろいろあります。
伝統的な柄はもちろん、毎年、新しい柄がデザインされるファブリックは、鮮やかな色使いと大胆な柄がとっても華やか!アールヌーヴォー柄も多いんです。
アール・ヌーヴォーとは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、世界的に大流行した装飾様式や芸術運動のこと。日本や東洋の美術に影響され、花や植物のモチーフに、自由な曲線を組み合わせたスタイルが代表的です。
リバティは、当時、世界的芸術運動、アール・ヌーヴォーの中心的存在でした。
そして、リバティ・ファブリックを象徴といえば・・・「タナローン」
Handleのロイドルームのクッションでも使っているタナローンは、ツヤツヤしたシルク・・・に見える、実は綿なんです!
まるでシルクのようなツヤと手触りを持つコットン、タナローンは、1920年代のシルク価格の高騰がきっかけで誕生しました。
誰もが使える価格で、絹のような感触の生地として開発されたタナローンという名前は、スーダンのタナ湖付近で採取された超長綿を使われてることに由来しているそうです。
これは、10月中旬に訪れた時の店内。もう、すでにクリスマス一色でした。ディスプレイも勉強になります・・・
お土産コーナーも充実しています。
見ているだけでも楽しめるリバティ百貨店。
いかがでしたか?何度訪れても、ほっこりしたぬくもりの店内で癒されるLIBERTY。
こんなうらばなしを頭に入れて訪れると、また違った目で楽しめると思います。ロンドンに行かれる際は、ぜひ立ち寄ってみて下さい。
住所:210-220 Regent Street, Soho, London W1B 5AH
電話番号:020-7734-1234
HP:http://www.liberty.co.uk
アクセス:オックスフォード・サーカス駅、ピカデリー・サーカス駅から徒歩3分
営業時間:10:00-20:00(月曜~土曜)/11:30-18:00(日曜)*日曜の販売は12:00~
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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