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ビンテージとアンティークの違いとは?
- 水野 友紀子
~ 目次 ~
1.そもそもビンテージとは? 2.アンティークとビンテージの違いは? 2-1 アンティーク家具とビンテージ家具 3.ビンテージに似た言葉 4.北欧ビンテージとは? 5.英国のビンテージ家具メーカー
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そもそもビンテージとは
日本語で「ビンテージ」または「ヴィンテージ」と書く「vintage」の語源はフランス語の「vendage」。
ビンテージと聞くと、なんとなく「古いモノ」というイメージが強い方も多いと思いますが、vinはワイン、ageは年齢という意味。もともとはワイン用のブドウの収穫年を表しています。
ワインの完成度はブドウの品質に左右されるので、特に上質な葡萄が収穫できた、いわゆる「当たり年」がしっかり明記されたワインだけが「ヴィンテージ」と呼ばれるようになりました。
ヴィンテージと名乗ることが出来るワインということは、品質も保証されているということ。
そこから、ワイン以外にギターやジーンズ、家具など、年月が経っていて高品質のものは「ビンテージ」と呼ばれるようになりました。
ただ単に古いだけのものは、ビンテージとは呼ばれません。
高品質で価値があり、実用的に使える古いものがビンテージと呼ばれますが、アンティークとはどう違うんでしょう?
ここからは、アンティークとビンテージの違いについてお話します!
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アンティークとビンテージの違いとは?
アンティーク(Antique)はフランス語で古美術や骨董品のことで、ラテン語で古いものを意味する「Antiquus(アンティクウス)」が語源になっています。
アンティークの定義については、アメリカの関税に関する法律で「製作されてから100年経ったもの」と決められています。
そこから「アンティーク=100年以上経ったもの」というのが一般的な定義とされていますが、あくまでアメリカの関税に関する法律での取り決め。
実際にアンティークが生活に根付いているヨーロッパでは、実はアンティークの定義に年月は関係ありません。
100年経っているという時間より、大量生産で造られたものでないこと、デザインの歴史が継承されていることの方が重要視されているので、造られてから100年経っていないものでもアンティークと呼ばれています。
それに対し、ビンテージには製造後100年以下と言うこと以外、明確な定義はありません。
アンティークが100年以上と定義されたことにより、100年以下のものはガラクタを意味するジャンクやごみを意味するラビッシュになってしまうため、100年経っていなくても、価値が高いものを区別してヴィンテージと呼ぶようになりました。
なので、一般的にビンテージとは、20~30年以上前に作られた高品質で価値のあるもののことを言います。
アンティーク家具とビンテージ家具
アンティーク家具と呼ばれる家具と、ビンテージ家具と呼ばれる家具では、造られた時代背景の影響でデザインが大きく異なるため、見た目のデザインで区別されることも多いです。
一般的にアンティーク家具と呼ばれる家具が普及した頃は、富裕層に向けて装飾が華やかでデコラティブな家具が流通した時代です。
当時は家具に使う高級木材も豊富で、ウォールナット材やマホガニー材、オーク材を使った装飾的な家具が主流だったので、高級木材を使った見た目が華やかな家具がアンティーク家具とされます。
ビンテージ家具と呼ばれる家具が普及したのは、第二次世界大戦後の高度経済成長期の頃。
当時は戦争による物資不足により、政府から高級木材を使うことや装飾が華やかな家具を造ることが規制されました。
装飾的で華やかな家具の代わりに、大量生産することが可能なシンプルな北欧デザインの家具がチーク材で造られ、戦争で破壊された都市部で失った家屋を立て直した際、流通しました。
Handleでは1950~70年代に造られた北欧スタイルのシンプルなデザインの家具のことをビンテージ家具と呼んでいます。
実は、アンティーク家具もビンテージ家具も、明確な決まりというものはないので、扱う人によって考え方が違います。
私は、アンティークやビンテージという言葉の定義より「昔、手作業で造られた高品質の美しいもの」という点を重要視しています。
上質な素材を使って高い技術力で造られた家具は、きちんと修復してあげることで、長い年月の経た現在でも、安心して実用的に使って頂けます!
ビンテージに似た言葉
ビンテージやアンティークのように、古いものを表す言葉は他にもいろいろあるので、混乱しがちです。
よく聞く言葉をピックアップしてみたので、実際にどんな風に違うのか、違いを比べてみましょう!
01 ブロカント
フランス語でブロカント(Brocante)とは「美しいガラクタ」という言葉が語源。古道具や古物商、ガラクタのことを意味します。
上質な素材を使った高品質で価値があるアンティークに対し、ブロカントはガラクタに近い古い道具のこと。市場価値があまりない古道具のことです。
他の人から見ると、何の価値もないガラクタ。ですが、自分にとっては大切な思い出が詰まった、宝物のような存在の古いものがブロカントです。
02 レトロ
レトロの語源は英語で回顧を意味する「retrospective」。一般的には、20年近く前のもののことを言います。
レトロには「懐かしい」という意味もあり、あまり古すぎるものはイメージから外れてしまうので、古くても懐かしさが感じとれるくらいのものに使われます。
日本では「昭和レトロ」のように、昭和のちょっと懐かしい雰囲気が漂っているものを表すことが多いのですが、最近では20年以上経ったことで「平成レトロ」という言葉も使われるようになってきています。
03 リプロダクト
リプロダクトとは、本来、正規メーカーが過去に生産や販売を終了させた商品を、再び同じデザインで新しく作ったもののことを言います。
いわゆる復刻版や再生産品のことです。
ところが日本では、意匠権が切れた人気のデザインを、別のメーカーが模倣して作ったものもリプロダクトと呼ばれることが多いため、非正規品やレプリカというイメージが強いようです。
優れたデザインを安価で手に入れられるという利点もありますが、本来のメーカーとは造りも違うため、日本でリプロダクトを購入する際は、販売元やメーカー名の確認が必要です。
04 ジャンク・ラビッシュ・ユーズド
そのほか、古いものを表す言葉には「ジャンク(Junk)」「ラビッシュ(rubbish)」「ユーズド(used)」があります。
ジャンクはそのまま使える見込みがない故障品のガラクタを意味します。本来の製品として利用価値がないものです。
ラビッシュはゴミのこと。
ユーズドは中古品のこと。年代も質も全く関係なく、新品ではないものや使用済みのものに対して使われます。
いずれも、100年以上経過したアンティークと区別するために使う言葉ですが、どれも商品として価値がないものをさし、価値があるビンテージとは少し違う意味で使われています。
まとめてみると、古いものを表現する言葉でも、少しずつ意味が違います。
・高品質で価値があるものの中で100年以上経ったものがアンティーク。
・100年以下のものがビンテージ。
・商品価値はないけれど、大切な思い出が詰まったものがブロカント。
・なんとなく懐かしい雰囲気が漂うものがレトロ。
明確な決まりはありませんが、なんとなくこんな感じです。
それでは、次に、過去のデザインを参考にして新しく作られた、ビンテージ風やアンティーク風についてお話します。
05 ビンテージ風(アンティーク調)
ビンテージやアンティークのような家具や雑貨を、現在の技術を使って新しく作ったものも最近人気です。
シンプルなデザインのビンテージを再現したビンテージ風は、わざと一部の塗装をはがしたり、ダメージ加工を施したりと、新品のものに使い古したような風合いを加えることで味を出しています。
アンティークには、伝統あるデザインが特徴的なので、アンティーク風のものはあえて古く見せる加工は施さず、当時の装飾やデザインを美しいまま再現されています。
デザインがシンプルなビンテージ風は、製造もしやすく安価なものも多いのですが、アンティーク風は、再現するためにかなりの技術を必要とするため、製造できるメーカーも限られています。
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北欧ビンテージとは?
ビンテージと呼ばれるものにも種類があり、代表的なものが「アメリカンヴィンテージ」と「北欧ビンテージ」です。
アメリカ系ビンテージは、少しダメージが入ったようなデザインが特徴的。
木材+アイアンの組み合わせのものが多く、男性的でラフな印象なので、DIYでビンテージ風の棚や家具を作る方も多く、気軽に取り入れやすいところも人気です。
北欧ビンテージは、シンプルで洗練されたデザインに機能性を兼ね備えた家具などのことを言います。
「北欧」と呼んでいますが、実は北欧で造られたものより、イギリスで造られたものの方が数が10倍ほど多いんです!
理由は、第二次世界大戦により物資が不足したこと。国の製作で規制がかけられたことで、コストや手間がかからずに大量に生産できる、北欧で作られていた家具が英国の家具メーカーで造られるようになりました。
家具造りの歴史が長く、家具職人の技術力も高い英国で造られた、北欧デザインの家具は、細部までこだわった丁寧な造りが特徴。
現代までずっと使い続けることが出来るビンテージ家具として受け継がれています。
英国のビンテージ家具メーカー
英国生まれのビンテージ家具は、いろんなメーカーによって作り出されてきましたが、中でも特に人気の2社をご紹介します。
G-PLAN
1898年創業の大手家具メーカーのE.Gomme社が1952年に作った家具ブランド「G-PLAN」
創業者の三代目ドナルド・ゴムが、北欧スタイルのシンプルなデザインを取り入れたG-PLANの名前には「何年もかけてプランを立てて、買い足していく家具」という想いが込められています。
名前の通りお部屋全体をトータルコーディネートできるよう、いろんなシリーズのお揃いのデザインでたくさんのアイテムが作られています。
→G-PLAN商品一覧はコチラ
アーコール(ERCOL)
イタリア出身の家具デザイナー、ルシアン・アーコラーニが1920年に創業した英国老舗家具メーカーです。
シンプルさの中にも曲線的なデザインを取り入れた、柔らかな印象のアーコール社の家具や椅子は、現在も新しいものが作られ続けています。
ビンテージでしか手に入らない素材や、年月を経た艶のある木目が支持され続けています。
→アーコール商品一覧はコチラ
いかがでしたか?アンティークとビンテージの違いについて、分かって頂けたと思います。
言葉の定義も大切ですが、やっぱり一番大切なのは「品質の高さ」です。
上質だからこそ、現在も大切に使われ続けているビンテージ。ぜひお家に取り入れて、ビンテージのある暮らしを楽しんでみませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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