最近になって、個人的にめちゃくちゃハマっているアンティークの椅子があります。
それは、今さらですが・・・ベントウッドチェア。
今まで、何も考えずに買い付けの度に何脚も何脚も見つけて日本に連れて帰ってきていたんだけれど、正直言うと・・・つい最近まで、それほど興味がなかったんです(苦笑)
ベントウッド(bentwood)とは曲げ木のこと。一本の棒を蒸気で蒸してグニュッと曲げちゃう技法のことなんです。曲げ木のイスは、昔、飛騨高山の家具工場で製法を見た時から大好きだった私。
曲げ木で有名な椅子と言えば、今人気の英国生まれのアーコールチェア。特にぐにゅっと曲がっているクエーカーチェアが大好きで自分用に使っていたんだけれど、なぜか元祖、曲げ木の椅子「ベントウッドチェア」だけには、そんなに興味がなかったんです・・・(汗)
それが!最近になって、急に気になって仕方がなくて、自分でもビックリするくらい買い付けの度に探し求めている私。もちろん、理由があります!
まずは・・・軽い!
ある日、撮影中に、どうしても脚立が必要になったんですが・・・取りに行くのが面倒(汗)そう思った時に、目の前にあったのがベントウッドチェアでした。ズボラな私が脚立代わりに持ち上げてみたら・・・
「軽い!」
今まで、何度も持ち上げることはあったのに、普段の生活で使うように、何気なく片手で持ち上げてみたら、すっごく軽いことに気が付いてビックリ!
しかも、背もたれに手を掛けて座面に乗ると、安定感があって安心して乗れる脚立として使えたんです(笑)
それからは、私の脚立は・・・ベントウッドチェア!
ちょっと脚立が欲しい時は、まずベントウッドチェアを探すようになりました(笑)
次に、脚立としてベントウッドを使っていた私が気づいたこと。それは・・・
座面の模様の美しさ
同じだと思っていた座面、一つ一つがいろんな模様だということに気が付いて調べてみると、もともと籐が貼られていたベントウッドチェアの座面は、ロンドンで爆発的に人気になったことで、コストカットを考えて合板に代わったことを知りました。
でも、ただ単にコストカットしただけではダメと当時の職人さんが思ったのか、合板の座面に、華やかなお花の模様の浅浮き彫りや、ちょっとオシャレなストライプ、お星さまの模様にパンチングで穴を空けたデザインが作り出されたそうで、いろんな模様がいっぱい!
さらに、背もたれもいろんなデザインがあり過ぎるぐらいあるので「ベントウッドチェア」と呼ばれているものでも、デザインが全く違っていて、同じベントウッドと呼ばれるものに思えない!(笑)
中でも私が買い付けに行った時に一番多く見つける背もたれの形が、二つのループが弧を描いた「ダブルループ」と呼ばれるもの。
ちょっと立ち寄ったパブや日本のおしゃれなカフェでも、よく見かけるデザインです。
普段の生活に溶け込みすぎてしまっているから、本来の良さに気付く事ができなかったんだな・・・と、改めて気になって仕方がないベントウッドチェアは、クールで、なんともスマートな雰囲気がカッコいい~!まるで英国紳士のような雰囲気で佇む軽いステキな曲げ木の椅子に、私はすっかり虜です。
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ビクトリア期に生まれたアンティークチェア、ベントウッドチェアのおはなし
- 水野 友紀子
ベントウッドチェア(bentwood chair)
ツーバータイプ
初めて「ツーバータイプ」って名前を聞いた時「名前のままじゃん!」って、思わず吹き出しそうになっちゃったツーバータイプと呼ばれているベントウッドチェア。
まさに名前の通り2本のバーが平行にデザインされた背もたれのベントウッドチェアです(笑)
実は、他にも呼び名があって、はしご(ラダー)に似ているから「ラダーバック」とも呼ばれるとか。いずれにしても見たままの名前です(大笑)
ダブルループもそうなんだけれど、このツーバータイプも、いろんなカフェやパブでよく見かけるデザイン。普通に使われているから、気が付けば馴染み深いカタチの椅子なんです。
だからこそ、アンティークチェアの中でも「アンティーク」と構えず、抵抗なく使えるんじゃないかな?と思っているんで。でも、よく考えたら、あのカフェやパブで使われているベントウッドチェアは、一体、何年前から使われているんだろう??
日本では、残念だけれど家具は古くなったら使い捨てる方が多いから、壊れたりキズがついた時、捨てて新しいものを揃えるのが当たり前。でもイギリスやフランスでは家具を捨てると言う考えがないんです。
古くなったら、修理して使うのが当たり前!特にベントウッドチェアは、ビクトリア時代に大量生産が出来る構造を考えて作られた、かなり画期的な椅子。
ノックダウン方式になっていて、バラバラのパーツを組み立てて作れる構造なので、当時は壊れたパーツだけ取り替えることが出来たんです。
例えば、脚が折れたら脚だけを取り替えて、座面が割れれば、座面だけ新しいものを入れ替えることが出来る椅子だったので、修理しながら長い間使い続けられてきたベントウッドチェア。
そんな画期的な椅子は、当時から大量に椅子が必要なカフェやパブで大人気!それが21世紀になった今でも使い続けられているって、なんだかステキなことだな・・・って。
しかも、イギリスやフランスでは気分転換にペイントするのは当たり前。なので、個人のお家で使われていたんだろうな・・・と思うベントウッドチェアは、ペイントされているものも多いんです。それがまた、お部屋のアクセントカラーになってオシャレなんですよね。
ツーバータイプの背もたれも2本のバーが平行に並んでいるだけのデザイン。なんだけれど、よーく見てみると微妙な曲線の曲がり具合の違いや、座面の模様が、いろいろあって、見つける度に新しい発見があって、ベントウッドの奥深さを物語ってくれているな・・・って気がしています。
そんなツーバータイプのベントウッドチェアは、初めてのアンティークチェアとしてもピッタリ!馴染いデザインは、どんなお部屋にもスッと馴染んでくれるから、使いやすさNo.1です。
興味がなかったベントウッドチェアの中でも、特に興味がなかったのがパネルバックタイプと呼ばれるベントウッド(笑)
その頃は、背もたれの浅浮き彫りの模様が鱗のように見えて魅力を感じなかったから、見つけてもほとんど買い付けてくることがなかったんです。
今、その頃の自分は、アンティークの良さがちっとも分かっていない子ども・・・いやいや、生まれたてのヒヨコだったんだなと思って猛烈に反省中。
というのも、ベントウッドの良さに気が付いてから、それまで鱗に見えていた模様が驚くほど美しく見えて仕方がない~。今ではこの彫の細かさを眺めているだけでワクワクするくらい!自分でも驚くくらいの変貌にビックリしています(笑)
ベントウッドチェアは、それまで一点一点手作りしていた椅子を、初めて大量生産が出来る構造にしたもの。だから、業務用の椅子として、いろんな場所で同じ形がたくさん使われていたはずなのに、このパネルバックタイプだけは、同じデザインのものをめったに見つけることが出来ないんです。
それどころか一脚を見つけるだけでも大変。背もたれと座面がお揃いのデザインで造られているものもあって、パネルバックタイプのコレクターの方がいるって言うのも、なんだか納得です。
あんなに興味がなかったのに、今になって欲しい!と思うと、めったに出会うことが出来ないパネルバック。もっと早く気が付いていたら、もっといろんなデザインのものを集めてくる事が出来たかもしれない・・・と、今さらながら、もっと早くベントウッドチェアのよさに気付いておくべきだったと後悔しています。
いろんなアンティークの家具や椅子を見てきた中で、ここまで私の価値観を変えてくれた椅子って他にはない!って自信を持って言える、特別な魅力を持つパネルバックタイプのベントウッドチェア。見つけた時にはぜひ、ゲットして欲しいな~。
「この子を見つけた時は、宝くじに当たったくらい嬉しい!」と思う、肘掛け(アーム)の付いたベントウッドアームチェアです。
ベントウッドチェアの仲間?のハズなのに、ベントウッドチェアと比べると、見つかる確立が全然違う!ベントウッドチェアを100脚見つけたとすると、その中にアームチェアがある確率は・・・1脚!それくらいの確率でしか見つからないから、見つけた時には宝くじに当たった気分で、走って行って状態をチェックするんです。
多分、もともと造られた数が少ないんだろうな・・・と納得しちゃうアームの形。確かに面倒くさそうだから造りたくなかったんだろうなって思うんです。だって、アームチェアって、いろんなデザインがあるけれど、ベントウッドアームチェアは、肘掛けの部分も曲げ木!
一本の棒を蒸気で蒸してクニュッと湾曲させてピッタリのサイズで肘掛けを作るなんて・・・私には無理(笑)でも、曲げ木で造った肘掛けは、見た目の曲線カーブはもちろん、木の繊維を断ち切っていないので丈夫!木に粘りがあって長持ちするところが魅力です。
他のアームチェアで見ることがない曲げ木の肘かけ。近くで見て実際に座ってみると、なぜ、もっとたくさん数を作らなかったんだろう?と不思議になるくらいの安定感がある、ドッシリと落ち着いたアンティークらしい雰囲気を漂わせているんです。
めったに見つからないベントウッドのアームチェア。HandleのHPでご紹介した時には、みなさんも「宝くじに当たった!」って思って見て欲しいなって思っています(笑)
アンティーク家具には様式があって、モチーフやデザインに由来があり、定番で決まっているものも多いんだけれど、その中で、特に好きなデザインがあるんです。
それがバンブー!(Bamboo)。名前の通り「竹」をモチーフにしたデザインなんですが、ベントウッドチェアの中にも、背もたれに竹をモチーフにしたデザインがあって、初めて見つけた時、かなり興奮したな~って(笑)
日本だと竹って日常的にあふれているから、珍しくもないし、なんとなく和風のイメージが強くて、最初、私もそんなにオシャレに思えなかったんです。でもでも、ヨーロッパに行くと違う~!
私たちにとっては、日常にありふれている竹も西洋の人にとってはめずらしくて奇抜なデザイン。ポコポコっとした竹の節がなんとも独特な雰囲気で、オリエンタルな空気感がおしゃれに映って見えているんだってことに気が付きました。
思い出してみると、私が大学を卒業した頃、有名なブランドのカバンで人気があったシリーズの持ち手部分もバンブーだ!って(笑)ヨーロッパには竹がないから、逆に、あの節がめちゃくちゃオシャレに見えるみたいで、バンブーをモチーフにしたいろんなアンティーク家具を見つける度に、それまではオシャレに見えなかったバンブーが好きで好きで仕方がなくなってきた私(笑)
なんだか不思議な感じがするのと同時に、日本の竹が世界で認められている気がして、日本人として勝手に誇らしい気持ちになっています(笑)バンブーの背もたれは、竹が下から上にスーっとしなやかに伸びて、グングン上を目指している姿がカッコよく、もちろん和室との相性もバツグン!
ちなみに、ベントウッドチェアのデザインは、デザイナーの中でも巨匠と呼ばれる人たちが、参考にしているものが多くて、ル・コルビジェやイームズなども、機能的で、余計なものを排除したベントウッドチェアのスマートな美しさに惚れ込んで使いながら、自分たちのデザインの参考にしていたそう。
そんな話を聞くと、ますます惹かれてしまうのは、私だけではないハズ!(笑)ヨーロッパの人から人気のバンブーデザインのベントウッドチェア。ヨーロッパの人のような感覚でおしゃれなデザインをお探しの方におススメの椅子です。
ベントウッドチェアに全く興味がなかった私が、ベントウッドチェアとは知らずに、後ろ姿を見て「カッコイイ!」と思ったのがカフェタイプのデザインです。
本当はもっと違う名前が付いているのかもしれないんだけれど、最近、買い付けに行くと、特にフランスのオシャレなカフェでよく見かけるんです。イギリスだったら「パブタイプ」って呼んだ方がいい気がするんだけれど、フランスで見かけるから私の中では「カフェタイプ」(笑)
日本でもよく見かけるんですが、お国柄、お揃いの椅子をズラーっと並べて使っているお店が多くて、お店に入った瞬間、カッコイイ後ろ姿が並んでいるのを見るだけで、ゾクゾクしちゃう~(笑)
そもそも、ベントウッドチェアを初めて造ったのはトーネット(THONET)社。一般の家庭で使える安価で質のいい家具をという思いを込めて作られた椅子です。
その想いの通り、一般家庭、特にビクトリア時代に産業革命で富を得たミドルクラスの人たちに受け入れられて普及していったのと同時に、大量生産できる構造だったことからカフェやパブなどで業務用の椅子として同じデザインでたくさん作られました。
だから今ほど機械化されていない時代でも、同じものをたくさん作って、施設でズラ~っと並べることが出来たんだな~って。
ちなみに、ベントウッドチェアと呼ばれているのに、曲げ木の部分が少ない!って最初思ったのですが、目線を下に移動させると・・・発見!
座面したのフレーム部分に、曲げ木が使われているんです。しかも、よく見ると、こんな部分もいろんな形の曲げ木になっていて、集めたくなるくらい面白い~!
カフェタイプは、腰のあたりをキュッと支えてくれるジェントルマン的な形なので、女性として支えられたい感が・・・(笑)
そんなイギリス紳士のように支えてくれるベントウッドチェア。たまらなく気に入っています!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
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