エリザベス1世が咲かせたイギリスルネサンス「エリザベス様式」とは?

水野友紀子
水野 友紀子
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エリザベス1世の治政時代に流行したエリザベス様式とは?
イギリスルネッサンスとも呼ばれる、女性らしくて華やかなデザインエリザベス様式について分かりやすくお話します。

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Elizabeth style

エリザベス様式とは?


エリザベス様式の部屋

エリザベス様式とは、チューダー朝の最後の女王、エリザベス1世の治政時代だった1558~1603年の間に流行したイギリスの建築や家具のデザインのことです。

イタリアで発生したルネサンスの影響を受けた、ゴシックスタイルに優雅な装飾が施されたエリザベス女王好みの女性らしく華やかなデザインは、イギリス・ルネサンスとして花開きました。


エリザベスアマルダ海戦

25歳で王位についたエリザベス1世は、長く続いていた宗教問題を解決。さらにアマルダ海戦でスペイン海軍を衰退に追い込み、東インド会社を設立したことで、イギリスは世界帝国への道を歩み始めます。

それに伴い生活が安定したイギリスでは多くの人が家を持つようになり、たくさんの家具が造られるようになります。


エリザベス様式のダイニングテーブルセット

王侯貴族たちは、富と権力の象徴として、装飾的で重厚なデザインの家具を家具職人に依頼するようになり、職人たちの技術も向上。

この頃は寝室がなかったので、就寝時に独立した空間を作る天蓋付きのベッドが登場し、天蓋を支える支柱に華やかな彫刻が施されたバルボスがデザインされました。


エリザベス様式の寝室

また、それまでは家の中心にあった火を焚く場所が、暖炉が造れることになって壁面に移動したことで、部屋の中心にダイニングテーブルを置くようになりました。

それに伴い、テーブルに合わせる背もたれ付きのダイニングチェア食器棚が造られるようになりました。

テーブルや椅子の脚に、天蓋ベッドと同じバルバスがデザインされるようになり、テーブルや食器棚の天板下の幕板部分にストラップワークが施されたことから、家具が装飾的で華やかになっていきました。


Architecture

エリザベス様式の 建築物


エリザベス様式のマナーハウス

「私はイギリスと結婚した」と自ら言い放ち、生涯、独身を貫いたエリザベス1世。

自らお城は建てず、地方巡行と言う名目で夏の間は避暑を兼ねて、貴族たちが所有するマナーハウス(カントリーハウス)に滞在して回りました。

そのため、貴族たちの間では女王を迎え入れるためのマナーハウスがとても重要視されます。


エリザベス一世と家臣

貴族たちは、女王に気に入ってもらうため豪華な邸宅を建て庭園を造り、増改築を頻繁に行い、富の象徴となる豪華な家具を造るようになります。

当時、エリザベス1世が移動する際、一緒に引き連れる家来の人数は100人以上!全ての人を受け入れることが出来るよう王侯貴族たちは多額の財を投じることになります。

そんなマナーハウスがあちらこちらで建設されましたが、実は、これはエリザベス女王の作戦の一つ。財政的負担を強いらせることで、貴族たちの力を抑制しました。

エリザベス様式の代表建築
ハードウィックホール


ハードウィックホール

エリザベス様式の代表的な建築物の一つが、ダービーシャーに建てられたハードウィックホール(Hardwick Hall)です。

当時、エリザベス1世に次いで権力と財力を持った女性「ベス・オブ・ハードウィック(シュルーズベリー伯爵夫人)」のために建てられた建物です。


ハードウィックホールの長い回廊

典型的なエリザベス様式の美しいマナーハウスは背が高く、それでいてコンパクト。ホールやギャラリースペースの豪華絢爛な内装。美しいタペストリーの数々。散歩するために造られた長い回廊もエリザベル様式の特徴です。

そして「壁よりもガラスが多い」と言われたほど、当時は高価で贅沢品だったガラスがふんだんに使われていて、まさにベスの権力と富の象徴になっています。


Characteristics

エリザベス様式の家具の 特徴

エリザベス様式の代表的な装飾は、なんと言っても挽物細工のバルボス

アンティークの家具や椅子、テーブルの脚や支柱だけではなく、建物の柱などにも使われている華やかなバルボスは、ルネサンスの影響を受けてエリザベス様式で彫刻が彫られるようになりました。

エリザベス様式の家具の特徴を3つのポイントにまとめてみました。

1.バスボス

エリザベス様式のバルボスレッグ

バルボスレッグが誕生したのは12~15世紀頃。それまでは球状で表面がツルンっとしていましたが、エリザベス様式で豪華な彫刻が施されるようになりました。

「繁栄」を意味する葡萄や「長寿」の象徴であるアカンサス(葉あざみ)など、縁起の良いデザインが多く使われました。


2.ストラップワーク

エリザベス様式のストラップワーク

平らな帯や革紐が交差したり、織り交ぜられたようなデザインが帯状に彫刻されたストラップワーク

16世紀中頃のエリザベス様式で好んで使われたデザインです。


3.華やかな装飾

エリザベス様式の豪華な装飾

チューダー様式の中でも、女王の時代エリザベス様式では、女性らしい装飾性の高い彫刻や豪華な柱などが多く使われるようになり、より重厚で華やかなデザインになりました。

家具の扉の彫やテーブルや椅子、家具の脚に至るまで、とても華やかです。




furniture

エリザベス様式の 家具

チューダー様式から続く「オークの時代」のエリザベス様式の家具には、女王の時代らしく豪華な彫りが入っていてとても華やかな雰囲気です。
エリザベス様式の代表的なアイテムをご紹介します。


Item.1ドローリーフテーブル

エリザベス様式のドローリーフテーブル

英国アンティーク定番もあり、エリザベス様式の家具を代表する、バルボスレッグのドローリーフテーブル

天板に収納された左右二枚の天板を引き出すことによって、3通りに大きさを変えることができる便利な伸長式テーブルは、エリザベス朝後期に誕生しました。 華やかな彫が入ったバルボスレッグが、さらに重厚感を足してくれます。

Item.2 ダイニングチェア

エリザベス様式のダイニングチェア

エリザベス朝に入り、生活が安定したことで使用人たちも自分たちの家を持つようになります。
それに伴い、家庭用の家具もたくさん造られるようになりましたが、その中の一つがダイニングチェアです。
それまでは、壁を背もたれにして使っていた椅子に、背もたれがつくようになり、テーブルに合わせてダイニングチェアが造られるようになりました。


Item.3 カップボード

エリザベス様式のビューロー

16世紀末になって、それまであまり見かけることがなかった家具が、家の中で使われるようになりました。その中の一つが食料品や食器を入れる棚

上部と下部の2段になっていて、上部の扉の中に食料品を入れて使われていました。バックパネル部分を支える支柱も、よく見ると脚とお揃いのバルボスデザインになっています。

Item.4 サイドボード

エリザベス様式のサイドボード

バフェット(Buffet)と呼ばれるサイドボード。上部のバックパネル部分も天蓋状になっていて、脚とお揃いのバルボスがデザインされています。

エリザベス朝初期の家具のデザインの多くは、天蓋ベッドの支柱のバルボスと調和するように、同じデザインのバルボスで造られていました。


Elizabeth Room

エリザベス様式の お部屋

エリザベス様式のアンティーク家具や椅子を使ってコーディネートしたお部屋をご紹介します。

01.ダイニング

エリザベス様式のダイニング

エリザベス様式の代表、美しい彫が入ったバルボスレッグのテーブルと、お揃いのダイニングチェアを組合わせた、重厚感漂うダイニングセット。

同じくバルボスレッグのサイドボードと、キャビネットを組み合わせて、エリザベス様式の家具で重厚感の中に華やかさが感じられるダイニングです。


02.リビング

エリザベス様式のリビング

アカンサスの彫がたっぷり入った、バルボスレッグのセンターテーブルをソファの前に置いたリビング。

パッと目を惹く、華やかなバルボスレッグは注目の的。オーク材の家具を合わせたチョコレート色の中に、明るい色の張地のソファを組合わせることで、印象も明るくなります。


03.書斎

エリザベス様式の書斎

バルボスレッグが目立つライティングデスク。休憩用に準備した1本足のサイドテーブルの脚もバルボスなので、小さくても存在感が抜群です。

仕事も趣味の時間も、自分だけの特別な空間を楽しめます。


04.寝室

エリザベス様式の寝室

ビックリするほど大きなバルボスレッグ足のローテーブルと一人掛けのパーソナルチェアを置いた寝室。

重厚感のあるオーク材で揃えた寝室は、一日を終わり、夢の中に入る時間に心も体も落ち着かせてくれます。




【エリザベス様式の家具】

イギリス・ルネッサンスとも呼ばれる、重厚感の中に華やかさが足されたエリザベス様式の家具をご紹介します。



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水野友紀子

水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)

1903年創業

【店舗&倉庫】
〒910-0019 福井市春山2-9-13

【南青山オフィス】
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-41

古物商 福井県公安委員会許可
第521010008980号



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