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ペルシャ絨毯の歴史と魅力、選び方とおしゃれな使い方
- 小澤 真弓
ペルシャ絨毯と聞くと高級品というイメージが強くて、なんとなく近寄りがたかったんですが、ディーラーにすすめられてペルシャ絨毯を敷いてみたら!まるでお部屋の中にお花が咲いたみたいに一気に華やかな雰囲気に。
しかもアンティーク家具にめっちゃ似合うので、ぜひ試してもらいたい~!と思うようになりました。
今回は、私のようにペルシャ絨毯を知らなかった初めての方に分かりやすく、ペルシャ絨毯の魅力について詳しくお話します。
~ ペルシャ絨毯の目次 ~
1.ペルシャ絨毯とは 2.ペルシャ絨毯の魅力 3.ペルシャ絨毯の歴史 4.ペルシャ絨毯の作り方 5.ペルシャ絨毯のデザイン・模様 6.ペルシャ絨毯の産地 7.ペルシャ絨毯の使い方
PERSIAN RUG
ペルシャ絨毯とは
ペルシャ絨毯とは、旧ペルシャ(現在のイラン)で伝統的に織られている、手織りの絨毯のことです。
世界にはいろんな絨毯やカーペットがありますが、ペルシャ絨毯の一番の魅力は「繊細」であること。「繊維の芸術」といわれるほど美しいデザインと高い品質を誇る、世界的に人気な美術工芸品の一つです。
そもそもペルシャ絨毯は、伝統的に嫁入り道具として持たせるために織られてきたものです。大切に手織りされた絨毯は、今では土地や金と同じような価値がある財産として、投資の対象としても売買されています。
Charm
ペルシャ絨毯の 魅力
世界中から支持されるペルシャ絨毯の魅力をまとめてみました。
01.手織り
今は機械織りされている安価なものもありますが、昔ながら工法で織られるペルシャ絨毯は、全てが手織り。
機械織りではパイル糸(結び糸)を縦糸に結ぶことができないため、V型に乗せて合成糊をつけて作ります。なので、簡単な構図のものしか織ることが出来ません。
手織りの場合、パイル糸(結び糸)を縦糸に結ぶことが出来るので、とても綿密なデザインの絨毯を作ることができます。
また、現代、模様を織り出すジャガードの技術では、限られた数の糸しか使えたいため、色も限定されますが、手織りの場合は無制限であるため、微妙な色の違いの表現も可能。芸術性の高い絨毯が織られてきました。
02.素材
ペルシャ絨毯は、羊毛や絹糸、綿などイラン国内で生産される素材で作られています。イラン高原で育つ羊の毛の繊維は、他の国の羊の毛と比べるととても太く、踏んだり押し付けた時の回復力が早いので、とても絨毯に向いています。
また、本来のペルシャ絨毯の魅力である美しい色は、草木染めで染められたもの。草木染の原料に使う植物が豊富だったことで、芸術的な色使いの絨毯が織られ、ここまで発展してきました。
03.価値が上がる
ペルシャ絨毯で使われている羊毛は、使い込むほどに柔らかくなって艶が出て味わい深くなります。
また、草木染めで染められたものは、使い込むほどにますます色に落ち着きが増します。
ヨーロッパを中心にたくさんいるペルシャ絨毯のコレクターには、特に年月を経たアンティークの絨毯が人気。
年月を経たことで柔らかく艶が出て、落ち着いた色に変化した古いペルシャ絨毯は、購入時より価格が上がっているのが特徴です。
Histry
ペルシャ絨毯の 歴史
実は石器や骨のような硬いものとは違って、作られた当時のものが残っていないペルシャ絨毯は、歴史の始まりを証明できるものが文献しかありません。
現在、世界最古の絨毯と言われているのが、凍結された状態で見つかった、ロシアのエルミタージュ美術館に所蔵されている「パジリク絨毯」で、約2500年前に作られたものと推定されています。
その文様はペルシャで最初の王朝「アケメネス王朝」のペルシャ絨毯に似ていることから、それ以前にペルシャ絨毯が存在したと推定されます。
ギリシャ神話や聖書などいろんな文献から、現在、ペルシャ絨毯の発祥は紀元前10世紀!なんと3000年以上前と推定されているので驚きです。
ちなみに、実在する最古のペルシャ絨毯は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に所蔵されている「アルデビル絨毯」。
ペルシャ絨毯の黄金期といわれる16世紀頃のサファビー朝時代のものです。
この16世紀から18世紀初頭の200年間は、ペルシャ絨毯3000年の歴史の中で最も重要だと言われている期間。
シャー・アッバス1世の時代に都がイスファハンにうつったことでルネッサンスの影響を受け、今のような美しいペルシャ絨毯のデザインの基本が完成しました。
How to make
ペルシャ絨毯の 作り方
世界中から憧れるペルシャ絨毯。どういうところが支持されるのか、特徴をまとめてみました。
01.素材
ペルシャ絨毯に使われている素材は、絹、羊毛、木綿の3種類。特に、古いものは地元のイランで育まれた良質な天然素材だけが使われています。
絹(シルク)
養蚕に向いているカスピ海沿岸のマザンダラン地方や、中央イラン北部からカシャーン近郊までの地方で産出された絹(シルク)が使われています。
良質で光沢に富んだ、細くしなやかなシルクを使って、ペルシャ絨毯が織られています。
羊毛(ウール)
ペルシャ絨毯で使用されているのは、寒暖差が大きく降雨量の少ない乾燥地帯、ホラサン地方やクルデスタン地方で飼育されたペルシャ羊の羊毛(ウール)が使われています。
ペルシャ羊と子羊の産毛からとれる柔らかくて軽い良質なコルクウールを使って作られたペルシャ絨毯は、毛足が長く弾力性に富み、起毛力に優れています。
木綿(コットン)
コットンの材料になる綿花は砂漠地帯でも育つため、オアシスのいたるところで栽培されているので豊富に手に入れることが出来ます。
ペルシャ絨毯の地組織といわれる縦糸や横糸に使われています。
02.染色
ペルシャ絨毯の美しい色を出すために使われる染料は、イランで自生する植物を原料にした天然素材。草木染で染色されています。
草木染はとても繊細で、配合の微妙な違いや気温差、日によっても色が異なるので、経験と熟練の技が必要です。
なので最近は、安価で使いやすい化学染料を使って織られている絨毯も多いですが、ペルシャ絨毯の最大の魅力の一つでもある美しい色彩は天然の草木染だから出すことが出来る色です。
古いペルシャ絨毯は、化学染料が使われていない頃のものが多く、草木染で染色されているものなので、色がとても美しいことも特徴です。
天然の染料に使われる素材
赤…インドあかねの蔦草の根、コチニール(貝殻虫)
黄…葡萄の葉
赤みのある黄…モクセイソウ、ザクロ、イスペレク
茶…アカシア、樫の木
黒褐色…カシワの葉、黒い羊の毛
キャメル…胡桃の革
青…マメ科の印度藍
白…白い羊の毛、絹
03.織り
ペルシャ絨毯の織り方は、全てが昔ながらの手作業です。方眼紙に描いた下絵に基づいて、構造糸である木綿の縦糸に、起毛しているパイル糸を結びつけ、一目一目結び目(ノット)を作ることで織りあげていきます。
一列結び終えると、固定するための横糸(締め糸)を入れ込み、鉄櫛で叩いて締め付けます。
一列、一列、この工程をひたすら根気よく、長い時間をかけて続けていくことで、美しいペルシャ絨毯が完成します。
絨毯の結び方にも種類があり、大きく分けるとトルコ結びとペルシャ結びに分かれます。
トルコ結び
イラン西部で多い結び方。かぎ針を使って結ぶのでペルシャ結びに比べると製作時間を短縮することができ、パイルも強く固定出来ます。
左右対称結びとも言われ、結び方が規則正しいので、直線模様や鋭角な模様に向いています。
ペルシャ結び
イラン中部・南部・東部で用いられる結び方。パイルを密に結びつける事が出来るので、トルコ結びと比べると、結び目(ノット)数が多くなります。
なので、流れるような曲線のような、美しく繊細な模様を描くのに向いています。
04.仕上げ
織っただけだと、絨毯は手触りも硬く、色も悪いので模様も不鮮明な状態です。なので、最後に仕上げを行います。
まず、絨毯についている汚れや余分な毛を、大量の水を使って取り除き、鍬のような道具を使って水分をとります。
その後、天日に干し、乾いたら模様がキレイに見えるよう、刃物を使ってパイル(結び糸)の長さを整えて、表面を平らにカットしていきます。
カット後にフラッシングをし、クリーナーを使って細かい糸くずを取り除いてから、最後にアイロンを使って光沢を出します。
こうして、数カ月から数年の長い年月をかけ、気が遠くなるような作業を行い、やっとようやく一枚のペルシャ絨毯が完成します。
気が遠くなるくらい、たくさんの工程を経て、長い時間をかけて織られたペルシャ絨毯。
キレイな理由に納得デス。
ここからはペルシャ絨毯について、初めての方でも分かるように、詳しくお話していきます。
PERSIAN RUG
ペルシャ絨毯のデザイン・模様
ペルシャ絨毯は、フィールドと呼ばれる中央部と、それを囲んでいるボーダーと呼ばれる周辺部で構成されています。
フィールドの部分のデザインを、大きく分けると
・メダリオン(中心柄)
・オーバーオール(総柄)
・メヘラブ(一方向柄)
・ピクチャー(画柄)
の4種類に分類されます。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
メダリオン
ペルシャ絨毯の代表ともいえる「メダリオン」とは、円やひし形、お花模様など、大きくて目立つメダル模様を絨毯の中心に配置し、シンメトリー(線対称)にデザインされた模様のことです。
クラシックで格式高い雰囲気を作り出してくれるメダリオン。都市部で作られたものは比較的、曲線を使った優美なデザインが多く、遊牧民が作ったものは、直線的で力強く描かれたものが多い傾向にあります。
ちなみに、フィールドの四隅にコーナーピースが配置されるものは「メダリオンコーナー」と呼ばれています。
オーバーオール
(オール・オーバー)
「オーバーオール」や「オールオーバー」と言われる模様は、メダリオンやコーナーピースがない、総柄デザインのこと。
フィールド全体に、美しい曲線で草や花などのモチーフが描かれているデザインのことです。
アフシャンデザインとも言われ、ペルシャ絨毯の中で最も古く、最も人気のあるデザインの一つです。
「絨毯の中心」がないので、お部屋のどの位置においても気にならず、家具の配置もしやすいです。
メヘラブ(メヘラビ)
「メヘラブ」や「メヘラビ」(Meherab)と呼ばれる模様は、モスクで最も重要な、メッカの方向を示す壁の部分「ミフラーブ(Mihrab)」がデザインされた模様のことです。
ミヒラーブに向かってお祈りする事から、他の絨毯とは違い、上下の方向が明確に決まっています。宗教的な意味を含むデザインもあります。
宗教的な意味が含まれるデザインの中に、花柄や、樹木、メダリオンなど室内の装飾品が織り込まれているものが多く、個性的でおしゃれなものが多い絨毯です。
ピクチャー
絵画的模様と言われるピクチャー模様は、狩猟や饗宴、動物闘争や樹木など、写実的に描かれたデザインのことです。
イスラム教では偶像崇拝が禁止されているので、人物・動物の姿を描くことは禁止されていますが、イスラム以前から独自の芸術文化を持つペルシャでは、自然や動物が文化や伝統の一部として受け入れられたため、抽象的または装飾的に描くことで宗教的な制約を回避しながら受け入れられてきました。
肖像画のように特別注文されたものも多く、どちらかといえば芸術的作品として作られたものなので、敷物としてより壁にかけて飾る装飾品として使われる事が多いです。
Pattern
ペルシャ絨毯の 模様
ペルシャ絨毯には、世代を超えて伝えられてきた伝統的なモチーフがいろいろ描かれているんです。
それぞれ、いろんな意味が込められているので、よく見かける人気の模様をご紹介します。
狩猟
ペルシャ絨毯の中で最も古い模様の一つ、ハンティング・パターン。狩猟中の様子が樹木や草花、動物と描かれ、楽園の象徴とされてきました。
庭園模様
スクエア型に区切られた一つ一つの枠の周りは豊富な水が流れる水路。豊富な水で育つ、美しい植物が描かれた庭園の模様は、砂漠の中の楽園のデザインです。
ヘラーティ
ペルシャ絨毯の中でも特に有名な伝統的な模様「ヘラーティ(Herati)」とは、中央の薔薇の花(ロゼット)の模様を菱形や四角形で囲み、それぞれの頂点に花を配置して繰り返し連続させた模様のことを言います。
シャーアッバス
アッバス1世の統治下で出来た「シャーアッバース」模様の一番の特徴は「シャー・アッバスの花」
中心の大きなお花のモチーフを囲むようにパルメット(蓮の花や薔薇、ユリなどの断面図)がデザインされた、全体的に優雅な印象のデザインです。
エスリム
エスリム(イスリム)デザインは植物を抽象的に表現したデザインのこと。
名前の由来になっているイスリミ=曲線的を象徴するように、植物の蔓や枝が絡み合って途切れることがなく螺旋を描くデザインは永遠と無限の愛を表現しています。
ボテ(ペイズリー)
ボテとは、しずくや涙、松かさの形ををしたデザインの事。ペイズリー模様の起源になったデザインです。
先端がカーブして曲線を描き内側を向いているので、柔らかな雰囲気。フィールド全体やボーダーに繰り返し使われることが多く、生命や繁栄、永遠などを象徴しています。
ロゼット
ロゼット(Rosette)は、花を抽象化した幾何学的なデザインのことです。
バラや百合、向日葵などのお花の花びらが中心から放射状に広がっている形が幾何学模様でデザインされた、調和と生命力の象徴。
メダリオン部分やフィールドからボーダーまで、いろいろな部分に取り入れられています。
動物
勇気や力の象徴であるライオン、優美さや純粋さを表す鹿やガゼル、平和の象徴になっている鳩のような鳥など、具体的な描写で描かれることが多い動物模様。
装飾性を重視して抽象的なデザインで描かれたり、花や木、草原などの自然のモチーフと組み合わした風景画として絨毯に織り込まれているものもあります。
雲のリボン
15世紀に中国や中央アジアの影響を受けてデザインされたと言われる雲のリボン(Cloud Band)。ペルシャ語では雲の結び目「ギリ・アブリ(Giri Avri)」とも呼ばれます。
まるで空に漂う雲を表現しているような柔らかな曲線や渦巻の形は、16世紀のサファイヴァー朝時代のペルシャ絨毯で人気で盛んに使われました。
花瓶
絨毯の中心に大きく描かれることが多い、楽園を象徴する花瓶は、砂漠で生活してきた人たちにとって、非常に人気のあるデザインです。
左右対称に描かれることが多く、調和が強調される花びん。水がたっぷり入った花瓶からあふれる花は、豊穣や自然の恵みの象徴として、豊かさと繁栄を表しています。
アラベスク
アラベスク(Arabesque)とは、つるや葉、お花など、自然界の植物を抽象化したデザインのこと。「ドラゴンヘッド」とも呼ばれるように、二股に分かれた鋭利な花模様のことです。
繰り返しや連続性が強調され、まるで無限に続くように錯覚してしまうデザインが特徴。イスラム教に置ける神の無限性や永遠性が表現されています。
生命の木
ペルシャ絨毯の中でも特に高級な絨毯の産地、カシャーンやクムなどで見かけることが多い「生命の木」。
ペルシャ文化では楽園を「永遠の庭」とイメージすることもあるので、生命の木はその中心的存在になる要素です。始まりと終わりのない循環を表す、永遠の命の象徴です。
パルメット
西アジアで古くから使われている「パルメット」とは、花の断面を描いたデザインのことです。
蓮の花や百合の花のような草花やつぼみが左右対称で描かれています。お花の断面を描いたパルメットに対して、真上から描いたものがロゼットです。
糸杉
まっすぐに天に向かって伸びる形が特徴的な糸杉のデザインは、天に向かって成長する姿として生命と繁栄の象徴になっています。
楽園の風景の象徴として、小川や花壇とともに描かれたり、中心部分に大きな糸杉が単独で描いて視覚的に見せ場を作っているもの、またボーダーや背景として繰り返し描かれたものなど、いろんなところで使われています
ペルシャ絨毯の 産地
ペルシャ絨毯は産地ごとに特色があります。ここからは産地別に詳しくお話しします。
ペルシャ絨毯には、世代を超えて伝えられてきた伝統的なモチーフがいろいろ描かれているんです。
それぞれ、いろんな意味が込められているので、よく見かける人気の模様をご紹介します。
ペルシャ絨毯は産地ごとに特色があります。ここからは産地別に詳しくお話しします。
ペルシャ絨毯には、世代を超えて伝えられてきた伝統的なモチーフがいろいろ描かれているんです。
それぞれ、いろんな意味が込められているので、よく見かける人気の模様をご紹介します。
①アルデビル
アルダビールやエルデビル、アルタヴァットとも呼ばれることがあるアルデビルとはイラン北西部、カスピ海近くに位置するペルシャ絨毯産地です。
デザインの特徴は、主に幾何学模様。色の幅が広く、いろんな色を組合わせて織られていることが多いです。
アルデビル産の絨毯は、綿の経糸に丈夫でしっかりした堅めのウールで織り込んだ、しっかり密集していますが、パイルが比較的短いので、厚みがそれほどなく薄手で弾力性があります。
②イスファハン
エスファハーンとも呼ばれるイスファハーンはイラン中央部に位置する大都市であると同時に、イランを代表する観光地の一つです。
ペルシャ絨毯の中でも品質の高さは群をぬいていて、6㎡を織るのに2人で1年半かかるくらい(1㎡あたり70~90万ノット)細かく緻密に織られているので、他ではマネが出来ない美しく詳細なデザインの絨毯が織られ、世界中から支持されています。
特にシルクを使って織られた絨毯も多く、光沢と繊細さが際立っています。
③カシャーン
イラン中央部、イスファハン州にあるイランで最も古い都市の1つであるカシャーンは、シルクロードの重要な交易地でした。
カシャーンの絨毯は、ペルシャ絨毯の中でも高い評価を受けていて高級絨毯の題名にしもなっています。主に高品質のウールが使われ柔らかくて耐久性があるのが特徴です。
中央に大きなメダリオンが配置されたデザインが、カシャーンの絨毯の一番の特徴。メダリオンの周りに花や蔦模様が繊細に描かれたシンメトリーなデザインが特徴的です。
④ケルマン
イラン南中部、ルート砂漠の辺縁高地にある、ペルシャ絨毯の産地「ケルマーン」。
何度も多民族に支配され、サファービー朝の創始者シャー・イスマイルが再建した際に絨毯を作り始め、盛んになっていきました。
ケルマンの絨毯の特徴は、お花のモチーフ。ヘサルゴン(千の花)と呼ばれる、無地のスペースがほとんどないようなお花柄や、生命力や繁栄を象徴する「生命の木」や「花瓶」のモチーフがデザインに取り入れられることが多く、ヨーロッパで特に好まれているデザインです。
⑤セネ(サナンダジ)
イランの北西部クルディスタン州に位置するセネとは、クルド人が住んでいた旧サナンダジュのこと。
クルド人が作るセネの絨毯は織りがとても細かく、非常にきつく紡いだ上質のウールを使用しているので、とても丈夫で耐久性があり、薄く柔らかいのが特徴です。
デザインはクラシックパターンが多く、色は濃い青と赤が主流。中央に大きなダイヤモンドやひし形のデザインが多く使われています。
⑥タブリーズ
イランの北西部、東アゼルバイジャン州のにあるタブリーズは、ヨーロッパとアジアの交易地として栄えた町です。
昔から王侯貴族のために絨毯を作ってきたので、デザインもバラエティに富んでいますが、魚の形をした「マヒ柄」と呼ばれるヘラティ模様が特徴的です。
タブリーズの織りの基本はトルコ結びで、ノットではなく“ラージ”で織りの細かさを表現しています。
⑦ナイン
ナインはイラン中央部の砂漠地帯、イスファハン州にある地下水路が発達した小さなオアシス都市です。
もともとウール織物業が盛んでしたが、19世紀末からイスファハンの影響を受けた絨毯の製作が始まり、ベージュやクリーム系を基調とした高品質で実用的な手織りの絨毯を作る産地として世界的に有名になりました。
結びはペルシャ結びで、ナインの絨毯はパイルを絡ませる経糸の本数によって品質ランクを表します。
「4La(チャラ4本)」「6La(シシラ6本)」「9La(ノーラ9本)」…と言う感じで分類されますが、最上級の4Laは一番細かく、1㎡の中に約90万ノット、6㎡を織るのに2人で約2年かかる細かさで織られています。
⑧ハマダン
イラン西部の商業の中心地、ハマダーンはイラン最古の歴史ある都市です。
ハマダンは絨毯の生産量が非常に多い地域で、とても丈夫なことからイランの中では最も一般的に日常品として使われています。
デザインは伝統的なモチーフが多く、赤と青を基調にし、幾何学的なパターンや花柄がデザインされています。
ハマダンで開かれるバザールでは、マライヤー、セネ、ビジャー産の絨毯やクルド族の絨毯などハマダン以外で織られた絨毯も集まり、大トレードセンターになっています。
⑨マシャド
イラン北東部に位置する、イランで2番目に人口が多いマシャド(Mashhad)。
19世紀末から20世紀の初めてにかけて多くの工房が作られ、絨毯生産が盛んになりました。
花柄と暖色系の色調が特徴的で、ホラサン州の高品質のウールをコチニールで染めた、独特のえんじ色を使った暖色系の色が人気です。
芸術性の高いお花の模様やクラシックな曲線でデザインされているものが高く評価されています。
⑩ヤズド
イラン中央部に位置する、砂漠都市ヤズド(Yazd)は、歴史を通じて、品質の高い絹織物と絨毯で知られる織物工業の中心地です。
他と比べるとそれほど生産量は多くありませんでしたが、1940年代以降、ケルマンからデザイナーや職人を呼んでケルマン風の絨毯を多く生産するようになりました。
その後、需要に伴ってカシャーンをモチーフにしたデザインの絨毯を生産するようになり、オープンフィールドデザインや花柄のボーダー、大きなメダリオンが入ったデザインの絨毯が多く織られています。
⑪クム
イラン北部に位置しているクム(Qum)は、1930~40年代に絨毯を織り始めた比較的新しい産地です。
なので、伝統的な柄などはなく、いろんなデザインを取り入れたバラエティに溢れる模様も魅力の一つですが、なんと言っても最大の特徴は素材。
クムの絨毯は「クムシルク」と呼ばれるほど、高品質なシルクで織られているので、ペルシャ絨毯の中でも最高級品の一つとされ、その美しさと繊細さ、品質の高さで広く知られています。
⑫バルーチ
バルーチ(Baluch)とは、土地の名前ではなくイラン、アフガニスタン、パキスタンの国境地帯で暮らす遊牧民族バルーチ族と、彼らが織る手織りの絨毯のことです。
バルーチ族は遊牧民が多く、生活様式を反映した絨毯が多く作られています。
家庭用の実用的な絨毯が多く。素朴なデザインや幾何学模様のものが多くみられるのが特徴です。
Q&A
Q1.ヨゴれていませんか?室内で使えますか?
Handleのペルシャ絨毯は、お嫁入道具用に持たせたりお金に替えるために織った、使っていないデッドストックを買い付けているので、時間は経っていますがほぼ新品です。
日本に届いた時点で、絨毯専門業者でクリーニングも行っているのでとてもキレイな絨毯です。
Q2.ホットカーペットや床暖の上に使えますか?
使えます!
通気性がよく、保温効果もいいので、温まるまでに時間が少しかかりますが、保温性が高くオススメです。
Q3.洗えますか?
水洗い出来ます!
基本はウールなので油分があり、汚れが付きにくく、タオルで水拭きするだけで汚れが落ちます。
気になる汚れは、中性洗剤を薄めて部分洗いして下さい。
ウール用の洗剤で洗えますが、家で洗うのが大変な場合、専門業者でクリーニングしますのでご連絡下さい。
※絹(シルク)のものは、専門業者でクリーニングをオススメしています。
Q4.色落ちしませんか?
草木染めなので、色落ちは基本しません。
まれにお湯で染めたものだけ、お湯がかかった場合、色落ちする可能性があるので、注意が必要です。
PERSIANRUG
ペルシャ絨毯を使ってみよう
ペルシャ絨毯は、アンティーク家具との相性がとてもよく、一緒に組み合わせることで、お互いの魅力が倍増します! 百聞は一見に如かず。実際に、敷く前と敷いた後で、お部屋の華やかさの違いをお見せします。
ペルシャ絨毯は、いろんなデザインがありますが、工業製品とは違い、全て手作業で織られたものなので、キレイなシンメトリー(線対称)ではないものがほとんど。
また、ミフラブ文様で織られているものは、ラグの向きを変えるだけでお部屋の雰囲気をカンタンに変えることが出来ます。
リビングのソファに座って、家族みんなで落ち着きたい場合は、ペルシャ絨毯をソファに平行に敷いてみましょう。
ソファに座る度、パッと目を惹く鮮やかな絨毯が目に飛び込んできて、華やかな気分になります。
デスクに平行な位置に絨毯を敷くと、デスク周りに仕切りが出来たようにまとまりが出来て、リビングの一部と切り離した書斎コーナーを作ることが出来ます。
ラグの向きや敷く位置によって、お部屋の印象をカンタンに変えることが出来るので、ぜひ試してみて下さい。
ペルシャ絨毯のある「リビング」
大きなペルシャ絨毯をリビングの真ん中にドーンと敷いて、リビングチェアとローテーブルを組合わせてみました。
フレンチスタイルの華やかな装飾的な家具や椅子に負けないくらい美しい絨毯が、お部屋を華やかに彩ってくれます。
ペルシャ絨毯のある「ダイニング」
大きな北欧スタイルのシンプルなダイニングテーブルとこちらも北欧スタイルのアーコールチェアを組み合わせたダイニングセットの下に、ペルシャ絨毯を敷いて仕上げた、贅沢なダイニングルーム。
いつもの食事中も、大人気のビンテージ家具と、ラグの伝統的模様がコラボした食卓で、ちょっとリッチな食事の時間が楽しめます。
ペルシャ絨毯のある「寝室」
寝室に作った、ベッドの横に敷いたのは女性らしいお花の模様がたくさん描かれたペルシャ絨毯。
絨毯の柄を楽しめるように、テーブルやイスからちょっとだけズラして敷くことで、床を彩るアートと一緒に、華やかな気分でくつろげる空間が完成です。
ペルシャ絨毯のある「和室」
和室の畳にも、ペルシャ絨毯はとてもよく似合います。
華やかな赤い絨毯に低めの座面の椅子、「ナーシングチェア」を合わせた和×洋の空間が、独特のオシャレな雰囲気を作り出してくれます。
床に飾るアートとして人気の絨毯は、単調になりがちな畳の上でも華やかに空間を彩ってくれます。
ペルシャ絨毯のある「玄関」
玄関は、お家に来られたお客様が全員通る場所。
ペルシャ絨毯を敷くだけで、一気にお出迎えムードになります。お家も格上げしてくれる最強のアイテムです。
いかがでしたか?アンティーク家具を初めて知った時と同じように、ペルシャ絨毯を知って、久しぶりにワクワクしている私。
敷くだけであっという間にお部屋の中が華やぐペルシャ絨毯を使って、素敵なお部屋作りを楽しんでみませんか?
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小澤 真弓
アンティークショップHandle店長
短大卒業後、住宅メーカーで勤務。お客様と話をしているうち、もっと身近なインテリアが提案したくなり、Handleへ。
4人姉弟の長女と言う立場から、気が付くといつもまとめ役。
探求心が強く、いろんなものに興味を持つ性格から、インテリアに関する基礎知識から、家具のこと、さらに住宅のことまで、幅広い情報を配信している。
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アンティーク家具Handle
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