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ウィリアムモリスも愛したアカンサス模様
- 水野 友紀子
イギリスやフランスで買い付けて来たアンティークの家具や雑貨で見かける植物の模様のほとんどが、実はアカンサスだった!ということを知って、急に興味を持ち始めた私。
日本ではあまりなじみがないアカンサスですが、実は、ヨーロッパで一番長く使われてきている文様なんです。
意識して見ると、家具の装飾はもちろん、シルバーや陶磁器、ミラーや照明などなど、いろんなアンティーク雑貨の中に隠れているアカンサス。ぜひこの話を読んで、アカンサス探しを始めてください!
Handle 水野 友紀子
Acanthus
アカンサス模様とは
古代ギリシャから現代まで
最も長く用いられた意匠
ヨーロッパで、最も長く受け継がれてきているアカンサスのモチーフ。
ギリシャの国花として親しまれるアカンサスは、古代ギリシャ時代から神聖な植物として愛され続けてきました。
アカンサスの花言葉
「芸術・技巧・巧みさ」
そもそもアカンサスとは、地中海沿岸が原産の多年草のことで、日本ではハアザミと呼ばれる花の一種です。
他の植物とは違って、装飾に使われるのは、花の部分ではなく葉の部分。
深く入ったギザギザの切り込みが特徴的です。
古代ギリシャ時代に柱のモチーフで使われたことから、「芸術」「技巧」「建築」などのちょっとめずらしい花言葉がついていると言われています。
ルネッサンス、バロック、ロココ様式・・・と、その時代の様式に合わせて、様々なデザインに形を変えながら使われてきたアカンサスの模様。
建築物だけではなく、内装や家具、絨毯や雑貨、壁紙やファブリックなど、いろんなものの模様として使われてきました。
19世紀に入ると、ゴシック・リヴァイバルの中でウィリアムモリスが壁紙などのいろんな模様にアカンサスを使ったことで、再び大人気に!
古代から現在に至るまでヨーロッパの代表的な装飾模様として親しまれています。
~ アカンサス誕生の伝説 ~
アカンサスの模様がコリント様式に用いられるようになったきっかけについて、語り継がれているお話しがあります。
古代都市「コリントス」で亡くなった少女の死を悲しんだ乳母。バスケットの中に少女が大切にしていたおもちゃを入れてお墓にお供えをしました。
春になり、少女のバスケットにはアカンサスの若葉が絡みつきました。
たまたま、それを見つけた建築家のカリマコスが、あまりの美しさに魅了されて、柱のモチーフに使ったことがコリント様式の始まりと言われています。
その後、ローマのパンテオン神殿で見かけるような、アカンサス模様の柱がいろんな場所で使われるようになりました。
History
成長を続けるアカンサス模様
コリント様式
アカンサスの装飾は、時代の移り変わりに合わせて、様々に形を変えながら、発展していきました。
始まりは、紀元前5世紀。古代ギリシャ時代のコリント様式の柱頭で、アカンサスの模様が使われたことが始まりと言われています。
このコリント様式の柱のモチーフは、照明や家具など、いろんなもので見かけることが出来ます。
ルネッサンス様式
イタリアで誕生したルネッサンス様式では、古代ギリシャや古代ローマに影響された、古典的な華やかで精巧な意匠が用いられ、アカンサスの模様も多く使われました。
人や動物と植物が融合した「グロテスク文様」という幻想的な装飾が誕生し、建築や家具、絵画や壁画など様々なもので見ることができます。
バロック様式
ルネッサンス様式を継承しながら、さらに豪華で煌びやかなバロック様式で、アカンサスは華やかな形に変化し、この時代を代表する文様の一つになりました。
ルーブル美術館に展示してある、バロック様式時代を代表する家具、「アンドレ=シャルル・ブールの箪笥」の扉にも、象嵌で美しく華やかなアカンサス文様を見ることができます。
ロココ様式
フランスで誕生したロココ様式では、女性らしい曲線を活かした繊細で美しいデザインが好まれました。
この時代のデザインの特徴は、S字形とC字形の曲線。
S字形曲線の代表、家具の脚「カブリオールレッグ」に対し、C字形曲線の代表として使われたアカンサスの葉をモチーフ。家具の扉など、いろんな装飾で使われています。
19世紀に入ると、アーツ&クラフツ運動の中心となった、モダンデザインの父、ウィリアム・モリスが、ゴシック・リヴァイバルの中、多くのデザインでアカンサスを用いました。
代表的な壁紙のデザイン「アカンサス」はモリスが40歳の時にデザインしたもの。
最近は、日本でも有名になって大人気のウィリアムモリス。彼がデザインしたアカンサスは、壁紙はもちろん、カーテンなどファブリックでも人気があり、いろんなもので見つけることが出来ます。
\日本で見つけた/
アカンサス
ヨーロッパで使う装飾のイメージが強いアカンサス模様ですが、日本でもいろんな場所で見つけることが出来ます。
古典主義様式の最高傑作として高く評価されている、東京・丸の内にある重要文化財「明治生命館」。
アカンサス文様の発祥と言われているコリント様式の柱頭をリバイバルした柱が使用されています。
皇居外苑、二重橋に作られたブロンズ製の高欄(手すり)の模様もよく見ると、アカンサスの葉と花の模様になっています。
他にも賞状やいろんな建物の装飾など、身近な場所でアカンサスの装飾を見ることができるので、ぜひ探してみてください。
Item
いろんな家具のアカンサス
今までHandleでご紹介してきたアカンサス模様の装飾が施されたアンティーク家具をご紹介します。
アカンサスはデザイン性も高く、同じアカンサスでも、形をいろいろ変えて、様々な家具の装飾に使われています。
どこにアカンサスが隠れているか、探してみてください。
1920年代 イギリス マホガニー材
象嵌と透かし彫りが施された豪華で美しいセティの背もたれに、アカンサス模様が隠れています。
1900年代 イギリス マホガニー材
エリザベス様式に作られたバルボスレッグの脚には、アカンサスの彫が隠れています。
1890年代 イギリス ウォルナット材
楕円形のミラーが特徴的なドレッシングテーブル。いろんな彫にアカンサス模様が隠れています。
1930年代 フランス オーク材
フランスらしい優雅なドローリーフテーブルの脚の付け根と幕板にアカンサスの彫が隠れています。
1930年代 フランス オーク材
キャビネット全体にアカンサスの彫がたっぷりと施されたフランスのカップボード。
フランスらしい曲線がアカンサスで表現され、華やかで豪華なデザインです。
1890年代 イギリス マホガニー材
キャビネット全体をアカンサスの葉が縁取っているようなデザインのパーラーキャビネット
アカンサスの優雅な彫が、パーラーキャビネットをより高級に魅せてくれます。
ITEM
\ココにも発見!/アカンサス模様の雑貨
アカンサス模様は家具の他にもシルバーアンティークや陶器の食器など様々な雑貨の模様として使われています。
ぜひチェックしてみてください。
シルバープレートのサルヴァで見かけるアカンサスの模様。ゴージャスで高級感もたっぷりです。
ミラーの縁取りでも見かけるアカンサスの模様。ロカイユを中心にグルっと囲んでいます。
陶磁器の模様の中でも、高級感漂うアカンサスの模様を見つけることが出来ます。
Room
「アカンサス」コーデの部屋
アカンサス模様は、いろんな家具の装飾で使われているので、お部屋全部をアカンサスでトータルコーディネイトすることが出来ます。
いろんな部屋を見てみましょう。
room1 リビング
サロンチェアの背もたれ、コーヒーテーブルの脚、ドレッシングチェストにアカンサス模様が入った家具でコーディネートしたリビング。
様々な模様のアカンサスのコラボが女性らしく華やかな雰囲気です。
room2 ダイニング
脚にアカンサス模様の入ったバルボスレッグが豪華なダイニングルーム。
一緒に組み合わせたキャビネットのアカンサス模様とバルーンバックの足の付け根のアカンサス模様で、統一したダイニングルームが完成です。
room3 和室
意外に畳の敷かれた和室とも相性がいいフランスの家具。
キャビネットとコーヒーテーブルに施されたアカンサス模様が落ち着いた和室に華やかと軽やかさをプラスしてくれます。
room4 玄関
お家の顔になる玄関には、アカンサス模様のが装飾が入ったコンソールテーブル。
玄関でお出迎えしてくれるアカンサスの模様が、お家を格上げしてくれます。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
【店舗&倉庫】
〒910-0019 福井市春山2-9-13
【南青山オフィス】
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-41
古物商 福井県公安委員会許可
第521010008980号