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Handleオリジナルソファ「Marie」の製造工場見学会
- 水野 慎太郎
世界的に有名なインテリアショップのソファを作っている、ボクがずっと憧れていた日本でも有名なソファ工場。
デザインも品質も、最高ランクのソファ工場で、今回、なんと!Handleのオリジナルソファ「Marie(マリー)」を造ってもらえることになりました。
なかなかカバーの中身を見ることが出来ないソファですが、今回、特別に撮影許可をもらったので、職人さんの手作業で一台一台、造りだされるソファ作りの工程を、ボクがご紹介します!
まずは、ソファのベースになる木工作業場から。
やっぱり土台がしっかりしていることはソファ作りの一番、重要なポイント!
見えない部分がどうなっているのか、お見せします。
ここは、家具職人のボクも納得する道具が揃っている、木工の作業場です。 企業秘密があるので、これ以上はお見せできません(汗)
枠組みは全て木製です。当たり前のように思われがちですが、実は、価格を抑えるため、枠の部分にしか木を使っていないソファも多いんです。
ちなみに木材は、寒い地方で育ったヒノキを使っています。
木工専門の職人さんが型に合わせて、一つ一つ手作業でビス打ち。こういう部分が日本品質。しっかりしたソファになる基礎の部分です。
ソファのクッション材にはいろんなものがありますが、Handleのソファは、土台の部分にウェービングテープと言う、太いゴムを職人さんが手作業で貼っています。
通常は直線に貼りますが、Handleのソファの座面のウェービングテープは斜め。
1本を斜めに張った後に、もう一本を綾織のようにかませて、ダイヤ型に貼っていくことで、座面の強度が増し、ウェービングテープが伸びません。
また、かませていることで、どこに座っても同じ沈み込みになります。
次に、ウェービングテープの上に布を被せて固定します。
コストを削減するため、布を貼らないソファが多いんですが、布を敷くことで、上に乗せるクッションのウレタンがウェービングテープにめり込まないので切れにくく、耐久性がよくなります。
布をピンッと貼らず、ゆるく固定するのもポイント。ピンっと張ると、ウェービングテープのしなりが活かせないので、職人さんの経験上の感覚が重要なんです。
こんな風に、見えない部分の小さなこだわりのおかげで、とても丈夫で掛け心地のいいソファが出来上がります。
ソファのベースの基礎部分が完成です!
普段、ソファの中を見ることは出来ないけれど、しっかりした基礎の部分が自慢なので、ぜひ見てください!
ちなみに、背もたれの曲線部分が、マリーの形になっています(笑)
土台が完成したら次はクッション!
背もたれや座面にウレタンを貼り付けて、掛け心地のいいソファを作り出していきます。
まずは、のりづけ作業です。スプレーでのりを吹き付けていきます。
のりを全体に吹き付けたら、少し薄めのウレタンを背中の部分に貼っていきます。
ウレタンにはいろんな種類があって、固さもいろいろ。
どのウレタンを、どの部分に、どんな風に貼るかで、座り心地も、耐久性も違います。
次に分厚いウレタンに、ノリを吹きかけて、背もたれの部分に貼り付けていきます。
実は、このノリ、季節によって使うものが違うんです。
冬だとなかなか乾かないので揮発性がいいものを、夏は揮発しすぎてしまうので、乾きにくいものを使っているんだそうです。
のりを付けたウレタンを手作業で付けていきます。
しっかり、きちんと固定できるように、すべてが職人さんの手作業です。
マリーは曲線が多いので、少しでもズレると形が整いません。面倒な作業、ありがとうございます!
「これは何??」
なんだかカラフルな色をした、いびつな形をした物体。
きっと捨てるゴミ!・・・だと思ったら、違いました~!!
実は、とっても硬いウレタンです。わざわざカットして作ったフクザツな形・・・
実は、アーム(ひじ掛け)の上の部分のウレタンでした。
いろんな色が混じったこのウレタンは、普通のものと比べて硬め。
背もたれのカーブした角は、一番、形がつぶれやすい部分なので、硬いウレタンを使って強度を増しています。
両方のアーム部分のウレタンが付きました。
さっきまでと比べて、柔らかい印象になり、だんだんと形が見えてきました!
でも・・・実は、これだけじゃないんです。
さらにもう一枚、少し柔らかめのウレタンを貼り付けていきます。
ここもしっかり固定するようにのりを付けてから、先ほどの硬いウレタンの上に貼っていきます。
ここからが腕の見せ所。背もたれ部分と背中の部分を手作業でつなぎ合わせていきます。
ここがきちんと接着しないと、後から困ったことになってしまうので、ゆっくり丁寧に留めていきます。
これで完成!・・・じゃないんです(笑)
最後に、ふわふわした柔らかい綿のシートを貼り付けていきます。
薄いから、そんなに重要そうに見えないんだけれど、これで座った時のふわっと感が全然違うんです。
最後に座面にも薄いウレタンを丁寧に貼り付けていって・・・
やっと本体部分にクッションが付きました!
クッション材を貼り付けて、ソファの形が見えてきました!
次に、布のカバーを被せてヌードソファに仕上げます。
通常、ヌードソファと呼ばれる、ソファの本体部分は、クッション材の上にカバーを被せた状態のことを言います。
カバーで固定してしまうと、ソファの中身は見れなくなります。
ソファに縫製したカバーをかけますが、ヌードソファの場合は、ピッタリ隙間なくしないとダメなので、形が複雑なマリーの背もたれは、職人さん泣かせ(汗)
マリーの曲線部分にピタッと合わせるのが、とてもムズカしいんです。
ピシッと引っ張って、たるまないように脇から布を固定していきます。
ちょっとでもズレると、しわしわになってしまうので、気を付けながら、本体にピッタリ布が沿うように引っ張って、タッカーで・・・バチン!
背もたれと座面の間の境目も、キレイに仕上げたいので、面倒ですが別々の布を使います。
座面と背もたれの境目から布を引っぱり出して、座面の裏側から固定します。
これで布がズレにくく、キレイに固定されます。
やっとヌードソファが完成です。
背もたれと座面の部分で微妙に色が違うのが分かりますか??
実は、座面はクッションを乗せるので、わざわざ滑りにくい生地を使って、背もたれとは違う生地を使っているんです。なので、色が違います。
次は、マリーのこだわり、キレイにカーブしたアーム(ひじ掛け)部分を作っていきます!
マリーのひじ掛けのクルッと丸い曲線ラインのデザインは、どうしてもゆずれなかった部分。
英国アンティークのウィングバックチェアをイメージして、曲線ラインでデザインしました。
デザインはいいんですが、この丸いカーブに、木をカットするのはもちろん、ウレタンを貼るのもとても大変・・・(汗)
まずは、基本のウレタンを貼ります。
次に、カラフルな硬めのウレタンをアーム部分に巻き付けていきます。
硬いので、巻き付けるのもすごく大変そう・・・(大汗)ありがとうございます!
細かい部分ですが、サイドの部分もさりげなく薄いウレタンを貼ります。
ベースの部分が全て木枠なので、丈夫な分、固い!!
しっかりウレタンを貼り付けて、クッション性を高めていきます。
最後に、アーム全体を覆うように柔らかめのウレタンを巻き付けて、柔らかい綿のシートを貼り付けたら、アーム部分が完成!
アーム部分は、本体より力が加わる部分なので、硬めのウレタンと柔らかめのウレタンを交互に入れてしっかり仕上げます。
ベースの部分と同じように、アームの部分もそれぞれ布で包んでいきます
まずは、布がずれないようにひじ掛の真ん中で固定します。
次に、布をひっくり返して、ピンッと引っ張るように被せていきます。
これまた、ひじ掛けの丸いカーブの部分が・・・ムズカシイ・・・
キレイに入れて固定し、糸が出ているところをチェック!
カットして、アーム部分の完成です!
こちらも、座面部分は生地が違うので、生地の色が違っています。
裏側から、アーム部分をビスでしっかり本体に固定すれば・・・
やっとヌードソファの完成です!
ここまでくるのに、かなりの手間。
ですが、もう少しだけ作業が残っています。
でも、見えない部分にもこだわっているので、もう少しだけガンバロウ!
最後の最後は・・・ソファの裏!
見えない部分も丁寧に仕上げることで、完成したときの美しさも違う!と、職人さんのこだわりが見える部分です。
ソファをひっくり返すと・・・
裏側が丸見え!ここに生地を貼ります。
ソファの底面の形にピッタリサイズにカットした不織布。
これを、底にピタッと合わせます。
当たり前のように見えますが、最近は、大きな布を広げて、先に貼ってしまった後に、余分な部分をカットするのがほとんど。
その方が簡単ですが、カットしたものを貼った方が、長い間、使っても形が崩れにくく、仕上がりも美しくなるそうです。
でも、ピッタリ合わせるのはすごくムズカシイらしく、見学に行った時も、やり直ししていました・・・(涙)
さぁ、足を取り付ける部分に金具を取り付けます。
いよいよ最終工程!ソファの本体に被せるカバーと座面クッションを作っていきます。
今回はHandleのソファで一番人気のリネンのカバーをご紹介します。
裁断した生地に合わせて、ミシンで縫製しますが、やっかいなのは、やっぱり曲線ライン。
普通は直線で真っ直ぐ縫えばいいカバーも、マリーは曲線なので、かなり熟練の技が必要です。
顔はお見せできませんが、縫ってくれているのは、工場で一番腕のいい職人さんです。
しかも・・・こだわったリネンのカバーは、生地にハリがないから、とんでもなく縫いにくい~(大汗)
そんな縫いにくい生地を曲線で縫い、さらにHandleのロゴが入ったタグも一緒に縫い込んでもらっています。
感謝しかありません!!
座クッションの中身は、長く使って頂きたいので、ヘタリにくい、質のいいウレタンを使って、3層構造で仕上げています。
一番下が硬質で、上にいくほど柔らかいウレタンになっています。
座クッションも、本体と同じように布を被せてヌードクッションにします。
クッションに被せた時、隙間がないよう、ピッタリのサイズで縫製してあるので、ものすごい力で押し込みます。
ファスナーで留めた後、ジャマにならないよう、頭を押し込みます。
いよいよ、ヌードクッションに、リネンのカバーを被せていきます。
手にシリコンを付けて滑りやすくしてから入れていくのですが、座クッションは直線でラクなので、新人さんが対応してくれました。
お家の洗濯機で洗えるように、座クッションは、マジックテープで取り付けできるようになっています。
ソファの本体にカバーを被せて、形を整えながらマジックテープに抑えていくだけで取り付けOK!誰でもカンタンです。
さぁ、ココからは、本体にカバーを被せていきます。
まずは背もたれのカーブ部分。ここを先に被せてからピーンと張っていきます。
本体のカバーもマジックテープで留めれるようになっているので、ご自宅でもカンタンに取り付け出来ます。
座クッションを本体に乗せれば完成です!
Handleのソファの工場見学はいかがでしたか?
工場の中は企業秘密も多いので、なかなか中を見せてもらえる機会がないんですが、今回、見学させてもらえたことで、1台のソファが出来上がるまでに、こんなにたくさんの人の手が加わっているんだということを実感。
座り心地のためなら、手間暇をおしまない、職人さん魂にも感動しました!
いろんなこだわりがつまった、Handleオリジナルソファ「Marie(マリー)」。自信を持っておススメします!
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水野 慎太郎
創業明治36年、1903年から続く老舗家具屋4代目。
アンティークショップHandleオーナー。小さい頃から囲まれて育ってきた、家具に対する知識と修復技術力は誰にも負けない自信がある。
30年後に日本の10人に1人がアンティーク家具を使っている文化を作ることを目標にし、日々、アンティーク家具の修復に奮闘中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
【店舗&倉庫】
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〒107-0062 東京都港区南青山5-4-41
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第521010008980号
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