手編みの宝石「アンティークのレース」とは

水野友紀子
水野 友紀子
アンティークのレース アンティークのレース

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気軽に楽しめるアンティークとしてオススメのアンティークのレース。

今みたいに機械がない時代、手編みで編まれたレースは、ヨーロッパ王族貴族の中では富の象徴として、宝石よりも重宝された高級品でした。

確かに、気が遠くなるような細か~い編み目を見ていると、一体、どれくらい時間をかけて編んだんだろう・・・って。とても真似できない・・・(汗)

手作業で紡ぎだされるので、一つ一つ表情が違うところも魅力のアンティークレースについて詳しくお話します。

Handle 水野 友紀子


Lace

アンティークレースとは?


アンティークレース

レースとは、透かし模様のある布製品のことを言います。

糸で縫ったり結んだり編んで作られることから、ラテン語の「結んでできる輪=Laqueus」が語源になった透けたレースは、16世紀頃に誕生しました。

誕生当時のレースは、全てが手作業で作られていたので、超高級品。

ヨーロッパ王侯貴族の間では、富の象徴として宝石よりも重宝されていました。


カギ編みのレース

透けて見えるレースはもちろん、布に刺繍を施したものや色を絡めて織り込んで模様を描くものなど、一言でレースと言っても形は編み方は様々。

レース作りが発展した土地や作られた時代によって、いろんな技法が誕生しました。

一目一目、手編みで編み込まれたレースはとても丈夫。

女性の仕事として親から子へ、子から孫へと受け継がれ、自分たちが使うために大切に手編みされたレースが年月を経て今、アンティークとして手に入れることが出来ます。


アンティークレース歴史

レースの歴史はとても古く、古代エジプト時代に魚を捕まえるための網として編まれたものが始まりと言われています。

現在のように装飾品になったのは16世紀。特別な儀式に着るローブの細工に使うため、修道院ではレースが編まれました。

それが各国に広まり、ルネッサンス時代のベネチアでは、金銀の刺繍糸を使った華やかで装飾的な布製品がたくさん作られましたが、エスカレートし過ぎたことで、贅沢禁止令が出されることに!


幾何学模様の刺繍レース

その結果、白い糸だけを使ったレースが編まれるようになり、白一色だけで寂しすぎると表現技法が多様化し、ニードルポイントレースと呼ばれる、現在の刺繍レースに発展していきました。

描かれたモチーフは、幾何学模様から草花や鳥などの自然モチーフまで多種多様。

その作り方を掲載したパターンブックが出版されたことでヨーロッパ中にレース作りが広まっていきました。


自然モチーフの刺繍レース

今は女性らしさの象徴になっているレースも、昔は富や権力の象徴。王侯貴族たちの間で大流行しました。

フランスでは、ルイ14世や王侯貴族の男性に愛用され、熟練の職人が何カ月もかけて作ったレースの襟にあわせて、カフスやスカーフ、ハンカチをコーディネートするほど大人気だったレース。

さらに、カーテンやベッドなどの室内装飾にまで取り入れられるようになり、レースの消費はドンドン加速していきました。


ボビンレース

高価なレースが手に入りやすいよう、一般の人たちが自分たちで編み始めたことで、いろんな地域で独自のレース作りが発展していきます。

その結果、17世紀末にはレース編みが子どもの教育に取り入れられ、学校が設立されるほどの人気ぶりに発展。

18世紀に入ると、ボビンと呼ばれるピンに巻き付けた糸を交差させながら、模様を描いて編み上げるボビンレースが誕生し、手編みレースは黄金期に突入します。


機械レース

たくさんの細い糸で模様を描くボビンレースは、糸の宝石と呼ばれるほど繊細なデザインのものがたくさん作られました。

ところが、18世紀末には状況が一変。

シンプルなスタイルが流行し始めたことで、男性の衣服にレースが使われることが少なくなります。

また、この頃のイギリスは・・・産業革命!


ハンドメイドのレース

それまで全て手作業で作るのが当たり前だったレースを製造する機械が開発されていきました。

細かな作業によって目を酷使するレース作りは、作り手の視力の衰えや体の不調、賃金の安さなどの問題もあり、急速に機械化が進んでいきましたが、自分たちが使うドイリーやテーブルクロスなどは手作り。

母から子へ、子から孫へと伝えられ、一目一目、大切に編まれたものを、今はアンティークとして手にすることが出来ます



Lace

レースの種類


ハンドメイドレースを大きく分けると3種類の技法に分かれます。

①針と糸を使って模様を描く刺繍レース ①刺繍で模様を描くニードルポイント・レース
②糸を交差させる組みひも形式のボビン・レース
③カギ編みで作るクロッシェ・レース

同じ技法でも、いろんな種類があるので、それぞれの技法に分けて、いろいろなレースをご紹介します。


レースの始まり刺繍レース

装飾品レースとして最初に作られ、全ての基盤になっているレースが刺繍レースです。

刺繍レースとは、ベースに使った生地やネットに、針と糸を使って作ったレース模様のことで、エンブロイダリーレースとも呼ばれます。

修道士たちが着るローブの装飾から始まった刺繍レースから、様々なレースの技法が生み出されていきました。


Cut work

カットワーク

カットワークの刺繍レース

土台になる生地を切り抜いて穴を空けて、その縁に刺繍を施しながら模様を描く刺繍レースのことを「カットワーク」と言います。

リネンやオーガンジー、綿、絹など、薄くてほつれにくい生地が使われ、16世紀のヨーロッパで流行したニードルポイントレースの原点になりました。

衣服の袖や襟、枕カバーやシーツなどの寝具にも使われた立体感のある白糸の刺繍は、19世紀に入ると、宣教師が持ってきたテーブルクロスを上流家庭が使うようになり日本でも浸透していきました。



Drawn work

ドロンワーク

ドロンワークの刺繍レース

布地から糸を何本か抜いて出来たスペースに、模様を描いた刺繍レースのことを「ドロンワーク」と言います。

生地には目の粗い手織りのリネンが使われることが多いドロンワークは、白いと刺繍を代表するステッチですが、赤や黒など絹の刺繍糸も使われていました。

カットワークとともに、現在の装飾用のレースのもととなった技法で、13世紀のドイツでは修道院で作られた聖器を覆うものに使われていました。




ニードルポイントレース

カットワークやドローンレースが発展した「ニードルポイント・レース」とは、名前の通り、ニードル(needle)=縫い針だけで1本の糸をかがって作るレースのことです。

ボビン(糸巻き)を使わず針と糸のみを組合わせてつくる、透かし穴飾りレースなので、とてもきめ細やかで繊細です。


Punto in Aria

プント・イン・アリア

刺繍レース

空中ステッチとも呼ばれるプント・イン・アリアとは16世紀のイタリアで生まれた初期のレースのことです。

布の上にステッチするのではなく、糸だけを使ったことで、自由なデザインを作ることが出来るようになりました。

それまでは幾何学模様ばかりでしたが、図柄を描いた羊皮紙などを土台にし、刺繍を施すプント・イン・アリアはエレガントなデザインのものが多く、大人気に。ニードル・レースが大きく進歩するきっかけになりました。



Tulle Lace

チュール・レース

チュールレースの刺繍

「チュール・レース」とは、フランス中央部のリムーザン地域のチュール市で誕生した、六角形の網目の薄い生地「チュール」の編み目をすくって、絹や綿、リボンなどで刺繍を施したレースのことです。

18世紀に入って機械化が進み、マシン・レースとして繊細な編み模様が描けるようになると、チュール・レースの人気も上昇。
現在でも、ウェディングドレスやベール、リボンやハンカチなどに使われています。



Filet Lace

フィレ・レース

フィレレースの刺繍

フランス語で「フィレ(filet)」とは、網目細工のこと。

もともとは漁業や狩猟で使われていて網目を埋めて模様を描いたことから始まって、装飾用のレース「フィレ・レース」として発展しました。

イタリアのトスカーナ地方の漁師の妻が作りはじめたと言われるフィレ・レース。四角やひし形の網目に別の糸を通すことで図柄が描かれます。

17世紀に入ると、上流階級の女性の間で流行したことで、繊細で美しいデザインが生まれていきました。



Chemical Lace

ケミカル・レース

ケミカルレースの刺繍

1883年に誕生したケミカル・レースは、レースの歴史の中でも比較的新しい種類のレースです。

絹や綿などの布地を土台にして刺繍を施し、布の部分だけを化学薬品で溶かし、透かし模様を作り出したことから、化学的(chemical= ケミカル)レースと呼ばれています。

糸の太さや重ね具合によって立体的なモチーフも描けるケミカル・レースは、手軽なことから、今でも定番の刺繍レース。

現在では、お湯に溶ける水溶性の特殊な素材が刺繍の土台に使われています。



Carircmacross Lace

キャリックマクロスレース

1820年代にアイルランドのキャリックマクロス(Carrickmacross)という土地で誕生した刺繍レース「キャリックマクロス・レース」

チュール・レースの下地に、薄いリネンやモスリン生地を重ねて縫い付けることで模様を描いていく、とても手間がかかる技法です。

手間がかかり過ぎるため衰退し、18世紀後期にはほとんど作られることがなくなってしまいました。

現在では、伝統工芸や個人の趣味の範囲で楽しまれており、ダイアナ妃やキャサリン妃のウェディングドレスに使用されたことから注目を集めました。




ボビンレース

ボビンレースとはボビンと呼ばれる糸巻きを複数使って、糸同士を交差させながらピンで留めて固定していくことで模様を描くレースのことです。

組み紐の技法を使って織りこんでいくボビンレースは、糸の宝石とも呼ばれ、図柄が描かれた型紙の上で、多いときは数千本以上ものボビンを使って糸を組んだり、ねじったり絡めたりしながらモチーフを描いていきます。

中には数十年かけて1枚のレースを織りあげることもあるくらい手間がかかりますが、デザイン性が高いことから、いろんな地域で様々なデザインのボビン・レースが作られました。


Torchon Lace

トーション・レース

トーションレースの刺繍

ヨーロッパの各地で作られていた、歴史の深いレースのひとつ。

「ボビン・レースと言えばトーション・レース」と言われるほど、ヨーロッパの各地で作られていた定番のレース。

太めの麻糸や木綿糸で編まれたものも多く、使われるボビンの数が限られているので、大きな網目で作りやすいことから手芸としても人気の高いレース編みです。

1801年にフランスの発明家が開発したジャカード織機で製造できるようになったことから、現在も小物や衣服の装飾として使われます。




その他のレース


Crocheted Lace

クロッシェ・レース

クロッシェレースの刺繍

かぎ針と糸を使って編んでいく手芸レースのひとつ「クロッシェ・レース」

古くから親しまれている技法で、長い歴史の中で様々な網目やモチーフを描く技術が生まれました。

現在、レース編みというと、このクロッシェ・レースを指すことが多く、特に19世紀のアイルランドで発展したアイリッシュクロス・レースは有名です。

日本でも趣味で楽しまれる方も多く、手芸としても人気の高いレースです。



Hairpin Lace

ヘアピン・レース

ヘアピンレースの刺繍

ヘアピンのような形をしたU字の編み機を使って編まれることから名前が付いたヘアピン・レース

編み機に糸を巻くことで下地を作り、かぎ針やレース針を使って糸を編み込みながら模様を描いていきます。

比較的大きなレースを作ることが可能なので、ヘアピン・レースで形作ったモチーフを繋げて組み合わせたものなど、様々なデザインで作られました。



Battenberg Lace

バテン・レース

バテンレースの刺繍

幅1cm程度のリボン状に編んだリボンテープでデザインの輪郭を描き、テープとテープのすき間を糸でかがることで模様を描く「バテンレース」

テープレースとも呼ばれるバテンレースは、19世紀頃に作られるようになった比較的新しいタイプのレースです。

一般的に、手作業で作られた目の細かいレースは衣服の襟やカフス用、機械で作られた目の粗いレースはテーブルクロスなどの室内装飾としても使われます。





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Lace

アンティークレースの使い方


アンティークのレースは日常の生活用として作られたものなので、形も大きさも様々です。

四角や丸からお花や星のような形のもの、コースターのように小さいものからテーブルクロスに使う大きなサイズまでいろいろありますが、特に気軽に使えると人気なのが、ドイリーと呼ばれる小さなもの。

17世紀後半、服地商人だった考案者のドイリーさんの名前を取って呼ばれるようになりました。

もともとは食事用のナプキンや食卓に置くフィンガーボールの下に敷くものとして考案されましたが、今はいろんな使い方で楽しまれているアンティークレースの使い方をご紹介します。


01.コースター

コースターとして使うドイリーレース

ドイリーにもいろんなサイズのものがありますが、コースターとして使う場合、直径10~15㎝がオススメです。

とは言え、上に置くものに対してドイリーが小さすぎる場合、レース部分の模様が隠れてしまい、楽しむことが出来ないので注意しましょう。

また、立体的なレース刺繍が入っているドイリーは、上にものを乗せた時に不安定になってしまうことがあるので、コースターには向いていません。

真ん中の部分が生地になっているものを選ぶようにしましょう。



02.ディスプレイマット

ディスプレイマットとして使うドイリーレース

フラワーベースや雑貨などの下に敷いて、ディスプレイとして使うドイリーは、少し大きめの直径20~30cmくらいがオススメです。

もちろん、上に乗せるものの大きさによっても違いますが、このくらいサイズがあれば、大きめのものを乗せても映えるのでオシャレに使うことが出来ます。

よりレースの模様を楽しみたい方は、上に乗せるものを小さめにすることで、まるで舞台の上に乗せたように華やかに!

テーブルも明るめより濃いチョコレート色の方がレースの模様がハッキリわかるのでおススメです。



03.テーブルセンター

テーブルセンターとして使うドイリーレース

なかなか見つかりませんが、細長い長方形のドイリーが見つかった時は、テーブルランナーがオススメです。

テーブルの上に白いレースのランナーが入ることで、お料理を並べたときはもちろん、何も置いてないときもパッと華やかな印象になります。

また、テーブルの真ん中にラインが入ることで、お料理をテーブルに並べるときの位置の目安にもなるので、テーブルコーディネートも整えやすくなります。



04.テーブルクロス

テーブルクロスとして使うドイリーレース

大きめのアンティークレースは、テーブルクロスとして使いましょう。

特に個人的におススメなのは、丸型のオケージョナルテーブルに四角いクロスを掛けること。

テーブルの下に垂れ下がることで、とっても華やかな雰囲気になり、高級感が漂います。

アンティークレースのテーブルクロスの上でお茶を飲むだけで、英国アフタヌーンティー気分が楽しめます。



05.ほこりカバー

ホコリ除けとして使うドイリーレース

敷き物以外に実用的な使い方として、ドイリーをホコリ除けとして家電や家具、ボックス収納にカゴなどに掛けて使ってみましょう。

炊飯器やポットなどのキッチン家電、PCやテレビ、ミシンなど…被せるだけでホコリが被るのを防ぐのはもちろん、見た目も上品になります。

もともとヨーロッパでは、アフタヌーンティー用のティーポットやカップ&ソーサーなどにドイリーを被せて使っていました。

お客さま用のティーセットに被せておけば、ティーパーティーもワンランクUPします!



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いかがでしたか?アンティークレースは全て手作りなので、とっても丈夫!今のものとは手触りも全然違います。

何より、気軽に楽しめるので、初めてのアンティークにもおススメ!見て楽しむのはもちろん、実用的に暮らしに取り入れてアンティークのある暮らしを楽しんでみませんか?

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【ご紹介したアイテム】

イギリスやフランスから直接買い付けたおしゃれなドイリーやアンティークレースをご紹介しています。



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水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)

1903年創業

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