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英国ミッドセンチュリーの名品、ネイサンのビンテージ家具
- 水野 友紀子

実は、私が家でテレビボードとして使っているのが「NATHAN(ネイサン)」のビンテージボード。
実際に使って、使い心地はもちろん、極限までムダを省いた美しいデザインに魅了されてしまったネイサン(Nathan)社についてご紹介します。
Handle 水野 友紀子
What is Nathan?
ネイサン(Nathan)とは
ネイサン(Nathan)とは、1916年に創業した英国の家具メーカーのことです。
ロシア生まれの創業者バーネット・ネイサン(Barnet Nathan)が、ロンドン郊外の小さな工房で家具を手作りしたことから始まりました。
今は、ネイサンと聞くと、北欧スタイルのシンプルでおしゃれなデザインのミッドセンチュリー家具の代名詞的存在!

ですが、創業当時は英国家具らしいクラシックスタイルの家具から始まった会社です。
とはいえ、創業当時の1916年は、第一次世界大戦の真っ只中!家具を造る代わりに戦争で使う爆弾箱やテントなどを作って会社を経営していましたが、終戦後の復興期に入ってから、創業当初に造っていた、英国クラシックスタイルの家具を造りを再開します。
ところが、当時のイギリスは第二次世界大戦による物資不足が続いている状態。英国政府は物資不足を補うために「ユーティリティ・スキーム」と呼ばれる規制を行います。
一般市民の日用品に対して、質と価格を抑えて統一した実用的な商品が販売されることになったため、高級木材を使った華やかな装飾の英国らしいクラシックスタイルの家具を造ることも規制されたネイサン社は経営の危機に陥ります。
そんな危機的状況の最中、1952年に創業者の息子、ジェロイドとクライブ・ネイサン兄弟が会社経営に携わることを決断。ネイサン兄弟がまず重視したのは家具のデザインでした。

それまでネイサン社が造っていたクラシックスタイルの家具から、シンプルで洗練されたスカンジナビアデザイン、いわゆる北欧デザインの家具の開発に取り組むことを決め、父を説得。
特に戦後、家屋がなくなった人たちのためが使う、ダイニング系の家具のデザインに力を入れることを決めました。
それから2年後の1954年。ニューヨークで行われた家具の展覧会でネイサン社は「トラーコレクション(Tola collection)」を発表!
真っ黒な脚と、独特なトラー材の木目を活かしたツートーンカラーがとても斬新で、スタイリッシュなデザインの家具は注目を集め「イギリスを代表するデザイン」と高く評価されたことで、世界中に「NATHAN」の名前が広まっていきました。
Tola
G-PLANのトーラ材

「トーラコレクション」のトーラとは、トーラ材やトラー材とは、木材のこと。
独特な木目が特徴的なアフリカ産の「アフリカン・マホガニー」と呼ばれる木材のことです。
ちなみに、ネイサン社のトラーコレクションと同じようにトラーで有名なのが、G-PLANの「トラー&ブラック(Tola&Black)」

当時、EGOMME社のブランド「G-プラン」を一躍有名にしたのが1958年に発表された「トーラ&ブラック」でした。
日本ではG-PLANの方が有名なので、なんとなくネイサンのトーラコレクションが二番手のようなイメージですが、実際にはネイサン社がトーラコレクションを発表したのはG-PLANより4年前。実はネイサンのデザインの方が先でした。
世界中に名が知れたNATHAN。ネイサン兄弟は北欧デザインを勉強するためにスカンジナビアの国々を回り、デザイン哲学を学び研究に励みました。
そして1963年に新シリーズ「citadel collection(シタデルコレクション)」を発表!
「Scandinavian design by NATHAN」を宣言し、無駄を極限まで削ぎ落とした北欧スタイルのいろんなデザインの家具を、1960年代後半から1970年代にかけて発表します。

シンプルでおしゃれなデザインでありながら、堅実で丁寧な造りに英国の家具職人魂が感じられるクオリティが高い家具として、G-PLANやA.H.マッキントッシュと並んで、イギリスを代表するミッドセンチュリー家具メーカーの地位を確立したネイサン社。
特にネイサン社の代表的デザイン、私も大好きなクラシックレンジシリーズ「チークコレクション(Teak collection)」は、英国伝統のジャコビアン様式とチーク材がコラボした時代を超越したデザインとして大人気になります。

しかも見た目だけではなく、モジュール式家具として70種類以上のアイテムが造られたので、単体の家具として使うのはもちろん、好きなアイテムを自由に組み合わせて、使える所も人気のポイントでした。
当時、特にロンドンのように限られた都市型の居住スペースに住んでいた人たちの支持を得て、実用性と美しさを兼ね備え、「家庭のリビングルームに革命をもたらした」と言われるほどの人気ぶりでした。

ところが、1980年代に入って海外からの安価な家具が流入し始めたことで、英国の家具業界は経営が厳しい状態になっていきます。
ネイサン社もその中の一社。1981年にイギリスの老舗家具メーカー「パーカーノール(Parker Knoll)」の傘下に入ることで、ブランドの一つとしてネイサンの家具は継続して製造することが出来るようにはなりましたが、シリーズやアイテムも減少。
そのため、今、ビンテージとして残っている、デザイン性が高い高品質のネイサン社の家具は探している人は多く、とても希少で人気があります。
label
ネイサンの証

経年で取れてしまっているものもありますが、NATHANの家具にはいろんなデザインのタグがついています。
可愛い水玉模様のタグは1960年~1970年代初めに造られたもの。また、長方形のタグには「Nathan The Master Craftsman」と書かれていて、職人魂が感じられるデザインです。
1981年以降に造られた家具には、買収されたParkerknollのタグが付いています。
Nathan's collection
ネイサンのデザイン
スカンジナビアデザインを追求した、究極にスタイリッシュなおしゃれなネイサン社の家具の代表的なシリーズをご紹介します。

Tola collection(トラ-コレクション)
1954年にニューヨークの家具展覧会で発表したトーラコレクション。
ネイサン社を一躍有名にしたデザインは、黒い脚とトラー材の個性的な木目がコラボした、ツートーンカラーのおしゃれなデザインです。

citadel collection(シタデルコレクション)
「Scandinavian design by NATHAN」を宣言した後、北欧スタイルのデザインだけに絞ったネイサンが1963年に発表した新シリーズ「シタデルコレクション」
英国の家具職人の技術と、北欧スタイルのシンプルなデザインが融合されたクオリティの高さが認められた家具です。

corinthian collection(コリントコレクション)
彫り込みの取っ手のデザインがおしゃれなコリントシリーズ。
本体の部分はチーク材が使われているのに対し、実は取っ手の部分にはローズウッドが使われていて、色と質感が違うところに職人さんのこだわりが見えます。

camelot collection(キャメロットコレクション)
削り出した取っ手がデザインになっているキャメロットコレクション。
直線的でスッキリした、究極なまでにシンプルなデザインの中で、取っ手から遊び心が感じられるサイドボードに仕上がっています。

Circle’s sideboard(サークルズサイドボード)
実は、わが家でテレビ台として使っているサークルズサイドボード。
デザイナーのパトリック・リーがデザインした扉の丸いデザインが印象的です。

Teak collection(チークコレクション)
私が大好きな十字模様の扉デザインが特徴的なチークコレクション。
ネイサン社を代表するクラシックレンジシリーズはモジュール式家具として造られたので、単体で使うのはもちろん、いろいろ組み合わせて使えるので、少しずつ集めて楽しめます。
ネイサンのテーブル
天板と脚だけで出来ているテーブルのデザインも、ネイサン社のものはスタイリッシュでおしゃれ!よく見かけるものをご紹介します。

ローテーブル
ツートーンタイプのローテーブル。雑誌などを収納する棚もついて機能的です。

エクステンションテーブル
まん丸のテーブルを広げると、オーバル型の6人掛けテーブルに大変身する便利さが魅力です。

コーヒーテーブル
ガラス天板の丸いテーブルの下に、スツールとしても使える小さなテーブルが3台収納できちゃうコーヒーテーブル。

ネストテーブル
大・中・小の3台を重ねて使えるネストテーブル。脚のデザインがスタイリッシュで見ているだけで美しい・・・

テレフォンベンチ
椅子は椅子でも昔懐かしいテレフォンベンチ。収納棚と椅子が一体化した便利な椅子です。

ダイニングチェア
ネイサン社で一番人気のあったダイニングチェア。ゆったり座ってくつろげる大きな座面が魅力です。
coodinate
ネイサンと 暮らす
英国ミッドセンチュリーを代表するネイサン社の家具を使ったおしゃれなお部屋のコーディネート例をご紹介します。
ROOM 1 ダイニング

ユニット家具を組み合わせた食器棚に、ゲートレッグタイプの伸長式テーブルを合わせたダイニング。
大きな座面で座りやすいネイサン社の椅子を組み合わせた、居心地のいいダイニングルームです。


ROOM 2 リビング

ネイサン社の代名詞「チークコレクション」を組み合わせたリビングルームに、同じ時代に作られたアーコールの椅子をコラボさせたリビングをコーディネートしました。
同じデザインの家具を一つずつ足して組み合わせれば、もっと大きなキャビネットに大変身。そんな楽しみも兼ね備えています。

同じくチークコレクションのローボードをテレビボードに使ったリビング。
G-PLANのワードローブと組み合わせてもとても相性がよく、英国ミッドセンチュリーの世界を楽しんで頂けます。


ROOM 3 和室

ネイサンのキャビネットに、フランスのアンティークチェストやプチポワンチェア、さらにツイスト脚のゲートレッグテーブルに日本の畳…いろんなスタイルミックスさせた和室のコーディネート。
ムダをそぎ落とした美しい北欧デザインは、どんなお部屋にも合わせやすく、すんなり馴染むのでおススメです。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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