パレ・ロワイヤル(Palais-Royal)とは、ルイ14世が幼少期に過ごした王宮だった場所のことです。
パリを訪れた人が必ず行くルーブル美術館を北に少し歩いたところにありますが、一歩、足を踏み入れると、とっても静か。なんだかタイムスリップしたような空気が流れる場所です。
今はとても静かですが、18世紀末にはパリで最も人が集まる場所だったパレ・ロワイヤルは、パサージュの原型にもなっています。お散歩しながら時代背景とともにお話します。
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パレ・ロワイヤルで楽しむ歴史と現代アート
- 水野 友紀子
もともとパレ・ロワイヤルは、三銃士にも出てくるルイ13世の宰相であり、カトリック教会の機卿でもあったRichelieu(リシュリュー)が、ルイ13世が住むルーブル宮のすぐ近くに1624年に建てた住居でした。
なので当時は枢機卿リシュリューの宮殿を意味する「パレ・カルディナル(Palais Cardinal)」と呼ばれていましたが、1642年にリシュリューが亡くなり、遺言でルイ13世に譲られることになります。
ところが、リシュリューが亡くなった翌年にルイ13世も亡くなってしまったので、王妃アンヌ・ドートリッシュが、まだ5歳だったルイ14世と弟フィリップ・ドルレアンを連れてルーブル宮殿から移り住むことに。
それをきっかけに「王宮」=パレ・ロワイヤルと呼ばれるようになり、今も「ベルサイユ宮殿を造った太陽王、ルイ14世が幼少期を過ごした王宮」として有名な場所です。
ちなみに、現在は国務院=最高裁判所として使われているので、建物の中に入ることは出来ません。
ここはパレ・ロワイヤルの中での一番人気の写真撮影スポット、通称、ビュランの円柱(Colonne de Buren)です。
もちろん、建てられた当時からこのストライプの円柱があったわけではなく、1986年にフランス人のストライプ柄を使った作品で有名な現代美術の芸術家、ダニエル.ビュラン(Daniel Buren)の作品、
レ・ドゥー・プラトー(Les deux Plateaux)として制作されました。
ちなみにストライプ柄は、ビュランのポリシー。ストライプ柄を使用したインスタレーション作品で有名な芸術家だそうです。
後で知ったんですが、白と黒のストライプの円柱は・・・ピレネー山脈の大理石で出来たもの!!しかもなんとその数!260本!
もっと早く知っていれば、もっとしっかり見たのに・・・(汗)
ピレネー山脈の大理石の上に気軽に乗って、こんな風に写真撮影を楽しむことが出来ます(笑)
この作品の意味は「2つの平面」
1つ目の平面は、普通の地面。そして、もう一つの平面は・・・円柱のてっぺん。
地面から出ている高さが違う円柱ですが、実は、260本の円柱の高さは全て同じで、地面の下の深さが違っているようです。
円柱が少しだけ見える所は、地面がすごく深く、円柱が高い所は、地面が浅い場所だそうです。
ちなみに、ここは「水が流れるのを聞く噴水」だそうで…
そうやって聞くと、高さが違う円柱が噴水に見える!と思ったんですが、実は、地面をよくみると灰色の金網が貼ってあって、この金網の下は、水が流れているんです。
正直・・・全然、覚えていない・・・(大汗)
目に見えるものだけが全てじゃない、五感を研ぎ澄まされそうな「芸術の都・パリ」らしい作品です。
古い建物と、新しい現代アートが融合されている場所は他にも。
ここはビュランの円柱のとなりにある、ベルギーの彫刻家Pol Buryの作品「ポルボリーの噴水(Fontaines de Pol Bury)」です。
真ん中にたくさんある球体はステンレスのボール。芸術は、奥が深い・・・(笑)
もちろん、ここも記念撮影OKです!
さて、もう少し歩いていきましょう。
噴水らしい噴水を発見!この噴水の周りには、椅子が準備されていて、パリっ子の憩いの場所になっているようです。
ここでは、読書をしたりと、ワインを飲んだり・・・みんなが自由に楽しめるようになっています・・・が、今は、日本からやってきた親子と、疲れすぎたトダマンの疲れを癒す場所になっています(笑)
ちなみに、ベンチには、1個ずつメッセージが書かれているそうなんですが・・・覚えていない~(大笑)
もちろん、お庭も素晴らしい!季節の花々は色とりどりの花を咲かせて、ちょうどいいお散歩コースになっています。
お花畑の隣は並木道になっています。
さて、話を戻して、ルイ14世が王宮をヴェルサイユに移した後、1692年にパレ・ロワイヤルはルイ14世の弟、オルレアン公フィリップの所有になります。
その後、息子のルイ・フィリップ・ジョゼフ(第5代オルレアン公)に譲られましたが、浪費家の彼には、かなりの借金が(汗)
パレ・ロワイヤルを手放さなければいけない状況になったジョセフは、悩んだ結果、なんと!中庭を改築して回廊を作って商店街にしてしまいました!!
これがなんと・・・大当たり☆
雨が降っても、雨に濡れずに歩ける回廊(ギャルリー galerie)には、高級ブティックやカフェ、劇場や賭博場ができ、庶民の娯楽場としていろんな人たちの集いの場所になりました。
上の写真の回廊は、中庭の西側にモンパンシエ回廊(Galerie de Montpensier)
よく見ると、2階、3階がありますが、住居やオフィスとして使っているそうです。
1780年に造られた回廊は、中庭の庭園を囲むように西側にモンパンシエ回廊、中庭を挟んで向かいの東側にヴァロワ回廊、そして、ボジョレ回廊と三面に設置され、お店が並んだので、まるでアーケード式の商店街のような感じだったようです。
パリ中から人が集まる場所になり、とってもにぎわう場所になっていきました。
中は警察の立ち入りも禁じられた場所だったので、革命家や娼婦たちのたまり場にもなっていきました。
この写真、実は、フランス革命の時の絵画に出てくる場所なんです。
パサージュの中に、当時「カフェ・フォワ」というカフェがあり、フランス革命時に出来た政党「ジャコバン・クラブ」の集会所として使われていて、思想家やジャーナリスト、芸術家たちが集まって政治を議論しあっていた場所でした。
1789年7月12日に常連客だった青年弁護士、カミーユ・デムーランが、カフェ・フォアのテーブルの上に仁王立ちし、ピストルを持って「武器を取れ!」と民衆に演説。
7月14日にバスチーユ監獄襲撃事件が起こり、フランス革命へと発展したと言われています。
そんな歴史的な回廊の中に入ると、こんな感じ。とっても広いんです。
向かって左側が庭園で右側がお店。天井も高くて、ここだったら雨に濡れることもないのでお買い物しやすそう~
めちゃくちゃオシャレなアーケード商店街です。
現在もお店になっていて、おしゃれなブティックや画廊、アンティークショップなどが並んでいますが、どこも高い・・・(苦笑)
ウィンドウで眺めるので精いっぱいですが、中に入ると一気にタイムスリップした気分になるので、行った際はぜひ「Bon jour」と一声かけて中に入ってみてください。
回廊に使われていた素材もステキなんです。上を見上げるとランタン型のシャンデリアがたくさん並んでいます。
当時はここにロウソクを入れて使っていたのかな?
足元を見ると、こんなにオシャレなモザイクタイル。パッサージュの床で見かけるようなオシャレな床です。
そういえば、以前、パサージュをご紹介した時、パサージュの原型は1786年に開業したパレ・ロワイヤルの「ギャルリ・ド・ボワ(Galerie de bois)」だというお話をしたんですが、覚えていますか??
「ギャルリ・ド・ボワ」は、残念ながら今は残っていない、木製の回廊のことです。
アーケード商店街で大成功したフィリップ・ドルレアンが、さらに拡大しよう!と、モンポンシエ回廊とヴァロワ回廊を結ぶ4番目の回廊を南側に作りました。
それが、ギャルリ・ド・ボワです。
もともとは、他の回廊と同じように石で造る予定でしたが、土台と床が出来た段階で、資金と時間が足りない・・・(汗)
そこで1786年に仮設で作られた木の回廊「ギャルリ・ド・ボワ(Galerie de bois)」が出来上がりました。
仮設だったのですが、両脇にブティックが並び、回廊の屋根の一部にはガラスが使われて、自然光が差し込んでとても明るい回廊だったギャルリ・ド・ボアは大人気!さらに、いろんな人が詰まる場所になりました。
ところが、フランス革命により、パレ・ロワイヤルは国家のものになり、所有者がかわって1827年にオルレアン家の相続人、ルイ・フィリップが木造の回廊を取り壊し、1829年1月には、すべての店舗が撤去。1830年に賭博や娼婦禁止をしたことで、パレロワイヤルはどんどん衰退していきます。
その後、パリ大改造に乗り出す前、並行する2本の公道を結ぶ抜け道を買い占めた投資家たちが、ギャルリ・ド・ボワのガラス天井を思い出して、買い占めた抜け道(passage)に風雨にさらされないガラス天井を設けて出来上がったのがパサージュ。
なので、ギャルリ・ド・ボワがパサージュの原型と言われています。
昔からずっと営業を続けているお店も実は残っています。パレ・ロワイヤル商店街が完成した時に開店したカフェがココ!
今は、ミシュランガイドで3つ星を獲得している有名なレストラン「ル・グラン・ヴェフール Le Grand Vefour」です。
1884年に「カフェ・ド・シャルトル CAFE de CHARTRE」としてオープンしたので、中庭に面している側には、「CAFE de CHARTRE」と書かれています。
今も昔も、各界の著名人が通うレストランとして有名なんですが、その中にはナポレオンと最初の妻ジョゼフィーヌも!有名な人が座った席のテーブルにはネームが付いているそうです。
中に入れないので、外側を見て満足のジャンプ!(笑)
見どころたっぷりのパレロワイヤル。ぜひ、ルーブルに立ち寄った帰り道に、訪れて歴史に触れてみてください。
今回は、パレ・ロワイヤルで見つけたガーデンチェアを使ったスタイリングをご紹介します。
やっぱり、アイアンで優雅な形に造られたフランスのアイアンのガーデニング用品って、素敵なんですよね。
お家でも気軽に楽しめるので、ぜひ、チャレンジしてみてください。
パレ・ロワイヤル
・住所:Place du Palais Royal 75001 Paris
・電話:+33 (0)1 47 03 92 16
・開館時間:
【10月~3月】7:30~20:30
【4月~5月】7:00~22:15
【6月~8月】7:00~23:00
【9月】7:00~21:30
・閉館日:無休
・入館料:無料
・URL:http://www.domaine-palais-royal.fr/
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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