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【パリさんぽ】オランジュリー美術館で日常から癒される
- 水野 友紀子
パリにはたくさんの美術館がありますが、その中でも年間77万人もの来訪者が訪れるオランジュリー美術館(Musee de l'Orangerie)はフランスのパリにある印象派とポスト印象派の美術館です。
小ぶりで優雅な静けさがあるオランジュリー美術館は、何と言っても印象派の巨匠モネの大作「睡蓮」の大プレートをパノラマ展示するために構造された睡蓮特別展示室が有名な美術館。
世界的にも「行ってみたい!」と人気が高いオランジェリー美術館の中を散歩してみましょう。
オレンジ栽培用の温室だった建物
光にあふれる小ぶりなオランジェリー美術館は、名前の通り1852年にナポレオン3世が建てたオレンジの栽培用の温室として造られた建物(オランジェリー)です。
太陽光をいっぱい取り入れた作りが、モネの希望する「睡蓮」の展示に適していたので、1927年にモネの『睡蓮』の連作を収めるための美術館として整備されました。
大改造のおかげで、オランジュリー美術館は、モネが希望した通り、楕円形のガラス天井から自然光が入り、優雅なカーブを描く壁全面に睡蓮が咲き乱れる空間を作り出していることが、小さなオランジュリー美術館に世界中のファンが惹きつけられる理由の一つ。偉大な絵画が正しい方法で展示されているところに大きな魅力があります。
さぁ、到着です
エントランス部分に到着です。早速中に入ってみましょう。
オランジュリー美術館は、モネ以外にもセザンヌ、マティス、モディリアーニ、ピカソ、ルノワール、シスレー、スーティンなどの作品を収蔵している印象派の絵画の美術館としても有名です。
入ってすぐに「睡蓮」を発見!
ありました!入口ホールの壁を囲うように展示されているのは、モネの睡蓮です。
2つの展示室に表現された8枚のパネル。
大迫力の絵画です。ドキドキしたのですが、写真撮影も自由!周りでたくさんの人がゆっくり睡蓮を楽しんでいるのでパノラマ写真を撮るのはなかなか勇気が要りますが、こんな風に記念写真は撮る事が出来ます。
モネの正真正銘の芸術上の遺作になった大作は、1914年から亡くなる1926年まで人々を癒すために考え続けられた作品となりました。
戦争が長く続き、モネはパリの人々に永遠に描かれた自然の前で、安らぎの場を提供することを望んだのですが、悲しいことに、モネの死から数ヵ月後に大衆に公開されたとき、批評家達に認められることはなかったそうです。
第二次世界大戦後、睡蓮の中に抽象芸術の根源が認められ、オランジュリー美術館に多くの観衆が足を運ぶようになり、現在、大人気の作品になりました。
晩年、家族を相次いで失い、自らの画家としての命運を握る視力をも失う危機状態にあったモネは、「光」に執着した作品を遺しているのですが、その中でも特にこだわった睡蓮。オランジェリー美術館の自然光の中で美しく輝いています。
そもそも印象派とは?
印象派絵画の大きな特徴は、光の動き、変化の質感をいかに絵画で表現するかに重きを置いていることです。
時にはある瞬間の変化を強調して表現することもあり、それまでの絵画と比べて絵全体が明るく、色彩に富んでいるのが特長です。
また当時主流だった写実主義などの細かいタッチと異なって、荒々しい筆致が多く、絵画中に明確な線が見られないことも大きな特徴。それまでの画家たちが主にアトリエの中で絵を描いていたのとは対照的に、屋外に出かけて描いた絵が多いんです。
それまでと違って、自由で気ままな筆使いの印象派のスタイルは、モダンライフの同義語にもなりました。
睡蓮だけじゃありません。
もちろん、オランジェリー美術館には他にも著名な作品がたくさんあります。
ポール・セザンヌ セザンヌ夫人の肖像(1890年)
パブロ・ピカソ 水浴の女(1921年)
オーギュスト・ルノワール 風景の中の裸婦(1883年)
ピアノを弾くイボンヌとルロル(1897年)
ゴーギャン 『風景』
などなど。一度テレビや本などでも目にしたことがあるような有名な絵画がたくさんです。
居心地がよくてずっと座っていられる
とにかく明るく居心地のよい空間が人気のオランジェリー美術館。
モネが、自分の作品のピッタリな空間を求めた通りの姿を再現した睡蓮の間は、壁に塗りこまれた自然の美しさにうっとりと心を奪われ、ずっと座って眺めていたいくらいです。
立地もよく、1区のコンコルド広場の隣、テュイルリー公園内にセーヌ川に面して建っているので、観光ついでに訪れやすい場所です。オランジェリー美術館の目の前は、もう、こんな感じでコンコルド広場が見えます。
ちなみに、パリには「ミュージアムパス」という便利なチケットがあります。美術館・博物館、歴史的建造物などの入場がフリーになる、このパスを持っていれば、混雑することの多いそれぞれのチケット売り場にも、入場口にもほとんど並ぶ必要がなく、スイスイと入場が可能。もちろん出入りは何度でも出来るので、興味のある方は、ぜひ活用してみてください。
最後に補足・・・「印象派」の背景を知りたい方へ
最後に、せっかくなので印象派について調べてみました!
印象派は4人の画家から始まった画期的な技法です。
19世紀中頃は、皇帝ナポレオン3世がパリを改造する一方で、戦争に突き進むなど変化の多い時代でした。フランスの美術界は芸術アカデミーが支配していて、伝統的なフランス絵画のスタンダードを継承し、歴史的な題材や宗教的なテーマ、肖像画が価値あるものとされ、慎重に仕上げられて間近で見てもリアルな絵画を好んで評価していました。なので風景画や静物画は軽んじられていた時代です。
1860年代の初めに4人の画家、モネ、ルノワール、アルフレッド・シスレー、フレデリック・バジールが出会うことから印象派の時代が始まります。
彼らは当時あたりまえとされていた歴史的または神話的な情景よりも、風景やその当時の生活を描きたいという共通の思いがありました。なので、アトリエから飛び出し、田舎へ出かけ自由に外で絵を書き始めたんです。
でもまだ印象派が認められていない時代だった当時、審査会で評価されることはありませんでした。
ところが、落選作品を観たナポレオン3世は、人々が自分で作品を判断できるようにすると宣言し、落選展を作ります。
多くの見物客は冷やかし半分にやって来ましたが、それでも新しい傾向のアートの存在に対する関心が巻き起こり、落選展には通常のサロンよりも多くの見物客が訪れたそうです。
残念ながら個々のアーティストが印象派展で金銭的に報いられることはほとんどありませんでしたが、それでも作品は次第に人々に受容され支持されるようになり、サロンでもついに当たり前になったそうです。
そんな印象派の作品を見ることが出来るオランジェリー美術館、ぜひ足を運んでみてください!(ちなみに、スタッフのむーさんは、オランジェリー美術館に行くのが夢。なのですが、行こうとするとミヤマンがジャマをして行けません(笑)今回は、憧れのオランジェリーに行くことが出来るでしょうか?!乞うご期待!
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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