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家具の基礎知識!家具の塗装とお手入れの違いについて
- 水野 友紀子
実は、家具にはいろんな塗装があるってご存知でしたか??
私は家具屋に嫁に来るまで、家具の塗装に違いがあるなんて、考えたこともありませんでした・・・
実は塗装の違いで、家具の雰囲気は大きく変化します。
また、使っている木材や作り方によっても塗装の方法が違いますし、さらにメンテナンスの方法も違うので、家具を選ぶ上で「家具の塗装」を知っておくことは意外に重要です。
ということで、家具選びの参考にして欲しい家具の「塗装」を、私、水野友紀子がお話しします。
今日のTOPIC
塗装の役割は2つです。
1つめ保護するため。
2つめは美しく見せるためです。
塗装をしていない木地の状態のままだと、水分がそのまま染みこむので汚れの原因になったり、キズが付いてしまったり、日光に当たる事で日焼けして変色します。
例えば塗装をしていない木の上にお醤油をこぼすと、染みこんでシミになってしまいますし、上からものを落とすとキズがついてしまいます。
これではかなり気を使わないといけないので家具としては使えません。
また塗装をするとツヤが出て木目を美しく際立たせてくれるので、木を保護して家具として使いやすくするために塗装が必要です。
最近、家具屋さんで販売されている家具に使われている塗装は、主に4つです。
1.ウレタン塗装
2.UV塗装
3.ラッカー塗装
4.オイルフィニッシュ
また、私たちが扱っているアンティーク家具は
5.シュラック二スとワックス
で塗装しています。
家具屋さんに行くと、販売されている家具で一番多いのはウレタン塗装の家具です。
ツルツルテカテカとした印象の塗装で、家具以外にフローリング材などにも使われています。
ポリウレタン樹脂という化学的な硬い塗膜を吹き付けて、表面を覆ってしまう塗装なので、例えると、木の家具の表面にピッタリとラップを巻いたような状態です。
なので、木製の家具でも触ったとき、木のあたかい手触りではなく、ヒヤッと冷たいポリウレタン樹脂の手触りです。
ウレタン塗装の家具は、どんなメリットがありますか?
メリットにもデメリットにもなるのですが、木の呼吸を止めてしまうので、反りや割れが起こりにくいです。
また、キズや汚れ、熱や水に強いです!
詳しく説明しますね。
木は切ってからも呼吸をします。
呼吸をすることで、お部屋の中の余分な湿気を吸ってくれまし、乾燥しているときは、湿気をはいてお部屋の湿度を調整してくれる効果があります。
家具に形を変えてからも木は同じように呼吸をするので、本物の木で造られている家具は、お部屋の乾燥で割れることがあります。また湿度によって反りが起こる可能性があります。
ウレタン塗装を施すと、分厚く硬い塗膜を巻くことで木の呼吸を止めてしまうので、割れや反りが起こりにくくなります。
また分厚い塗膜に守られるので水に強く、キズや汚れが付きにくいので取り扱いがラクです。
ウレタン塗装は塗膜が分厚く硬いので、プリント合板などの家具は、強度を持たせるためにウレタン塗装が多く使われています。塗装費用も安価で大量生産の家具に向いています。
逆に、ウレタン塗装のデメリットはありますか?
キズが付いた場合、修理が難しいこと。
手触りに木の質感がないこと。
見た目がツルッとしていて人工的なことです。
ウレタン塗装の家具は専門の工場じゃないと塗装することが出来ません。
また化学的な樹脂で作られる塗膜は分厚く、剥がすことはとても困難。時間もお金もかかります。
キズは付きにくいですが、逆に出来てしまったキズは目立ち、カンタンに直すことが出来ません。
一枚板など無垢材を使って木目を楽しむ事を重視して造られた高額な家具でウレタン塗装の家具を選ぶ場合は、キズが付いた時に修理をしてもらえるお店であることを確認してから購入する事をオススメします。
ウレタン塗装は塗膜が分厚く硬いので、プリント合板で作られた大量生産の家具に強度を持たせるために使われることも多いです。
安価な家具の場合は、直す価格の方が高額になってしまうため、ある意味、使い捨ての家具になってしまいます。予め了承の上で購入するようにしましょう。
「UV」とは、日焼け止めなどでよく耳にする「ulyraviolet rays」(ウルトラバイオレット・レイズ)の略で紫外線のことです。紫外線を照射することで瞬間的に塗膜が硬化する樹脂塗料で塗装を行います。
ウレタン塗装と同じように呼吸を止めてしまうため、木の家具の割れや反りを防ぎますが、紫外線を当てるので無垢材の家具には向いていません。
逆に言うと、無垢材で造られている家具にUV塗装のものはありません。
塗膜が分厚く、さらに硬度が高くて熱にも強いので、ウレタン塗装よりもさらに強度があります。もちろん傷も付きにくいので、デスクの天板やキッチンの扉等に多く使用されています。
見た目がピカピカツルツルとしていて輝いていて、本物の木で作られた無垢材には使うことが出来ないので、自然でナチュラルな雰囲気を出すこと無理です。
また、キズが付いた場合の修理はほぼ不可能!
修理が出来ないので、例え高額であっても使い捨ての家具です。ご注意ください。
ラッカー塗装とは、樹脂などを揮発性の高い溶媒(アルコールやシンナー)に溶かした塗料を使った塗装のことです。
塗装する際、今まで紹介してきた塗装のように化学反応を起こすのではなく、樹脂を溶かしたアルコールやシンナーが揮発して、木の表面に薄い膜を作る塗装方法です。
ラッカー塗装は塗膜がとても薄く、薄い塗膜を何枚も重ねて塗膜を作ることで、耐水性や耐油性があり、表面のキズを防ぐ塗装になります。
ウレタン塗装を1回分の厚みの塗膜を作るのに、ラッカー塗装だと約25回分塗り重ねる必要があり、手間ヒマがかかりますが、木の肌触りが残ったままで気持ちよく、独特のツヤがあり高級感が出ます。
もともとアルコールやシンナーなどに溶かしているので、市販されているアルコール消毒を使うと、塗装が溶けてしまうため使えません。
逆にこれを利用して、キズなどが付いてしまった場合は、アルコールで塗装を簡単に剥離して補修することが出来ます。
なので、家具を代々受け継いで使うヨーロッパの家具では古くから修復が出きるラッカー塗装が使われてきました。
オイル塗装はオイルフィニッシュ仕上げとも言います。
植物性のオイル(油)を木の表面から導管に染み込ませて内部に浸透させ、オイルが内部で固まることで塗膜の代わりにする塗装のことを言います。
表面に膜を張っていないので、木の本来の風合いをそのまま生かした塗装です。
木の表情をしっとりと浮かび上がらせてくれるので、木の質感を大切にした無垢材を使った家具に使われます。また、塗膜もないので、触った時の感触は木が持っている本来の触り心地をそのまま感じることが出来ます。
オイル塗装では植物油を使っているので体にも優しく、木の呼吸を止めないので、家具自体がお部屋の調湿をしてくれます。
呼吸をしているので、ウレタン塗装と真逆で割れたり反ったりする可能性があります。
割れてもそのまま置いておけば、また湿気を吸って膨らみ、もとの戻ることもあります。お部屋の環境に慣れるまでにも時間がかかるので、購入後2~3年様子を見て、気になる場合は購入したお店で直してもらいましょう。
オイル塗装は塗膜がないので、キズや汚れが付きやすいですが、お家で簡単にメンテナンスすることが出来ます。また、水拭きを繰り返すとオイル成分が抜けてくるため、定期的に1~2年おきにオイルを塗りこむ必要があります。
手間暇がかかりますが、だんだんと艶が出てきたり自然の風合いが楽しめるのがオイル塗装の家具です。
ここまでは、家具屋さんで販売されている家具の塗装についてお話しをしました。
ここからは、アンティーク家具の塗装のお話しをします。
アンティーク家具が修復できる大きな理由の一つが塗装です。昔ながらのシュラック二スとワックスを使って塗装しています。
アンティーク家具で使われるニスは「シュラックニス」「シェラックニス」「セラック二ス」などと呼ばれ、古くからヨーロッパでは家具やバイオリンなどに使われていました。
シュラック二スとはカイガラムシの分泌物で作られる自然素材のニスで、具体的に言うと、チョコボールの周りのテカテカしている部分!もちろん口に入れても害がない自然塗料です。
アルコールに溶かしたシュラックを何度も何度も塗ることで家具の上に塗膜を作っていきます。
昔、手作業で作られていたアンティーク家具の塗装はシュラック二スが使われますが、ラッカーよりもさらに塗膜が薄く、より回数を重ねて塗膜を作る必要があり、時間や手間暇がかかることから、現代の家具で使われることはほとんどありません。
塗膜が薄いので耐水性や耐熱性はそれほどありませんが、ツヤがあり、とても風合いがよく仕上がるので、本物趣向の方にはおススメの塗装です。
シュラックはアルコールに溶かして使うものなので、逆に言えば、アルコールで塗装を剥離することができます。
手間と時間はかかりますが、キズや汚れが付いた家具の塗装を、もう一度剥離して再塗装することで、私たちは100年以上経った家具をピカピカにしてお届けすることが出来るんです。
シュラック二スだけだと耐水性や耐熱性がないので、カバーするために使うのがワックスです。
私たちが家具で使っているワックスの主成分は蜜蝋と言ってハチミツベースのものが多いです。
ワックスが塗膜を作るので、シュラック二スで塗装するアンティーク家具はもちろん、先にお話ししたオイル塗装の家具でも使います。
とても伸びがよく、気軽に誰でも塗ることが出来るので、木の家具、本来の手触りや風合いを楽しみたい方におススメです。
→「WAXを使った家具のお手入れ方法について」はこちら
いかがでしたか?
「家具の塗装」と言っても、実はいろんなものがあって、使う材料、使う人の好み、使い方によって選ぶ必要があります。
まずは、塗装の特長を知って、自分に合った塗装の家具を選んでください。
アンティークの修復について→
Handleで実際に行われてる修復・修理・加工の様子をご紹介
あなたもアンティーク博士!→
Handleのアンバサダー大使を募集しています。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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