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アイアン家具の魅力と使い方、特徴について
- 水野 友紀子
最近は、シンプルでクールな雰囲気のお部屋にアイアン家具を使う方が増えています。
アイアンとは鉄のこと。鉄というと、なんだか機械的で、日常生活に馴染みがなさそうなイメージですが、身近なインテリア雑貨や照明や家具、お家の表札や階段の手すり、カーテンレールなど、お家の中をぐるっと見てみると、いろんなところでインテリアの一つとして取り入れていることが多いんです。
お家の雰囲気をカッコよく引き締めてくれるアイテムとして注目の素材「アイアン」についてお話します。
Handle 水野 友紀子
iron
アイアンとは
アイアン(Iron)とは鉄のこと。 最近、インテリア業界でもクールなスタイルのお部屋でアイアン家具が使われることが多くなってきたので、いろんなものを目にする機会も増えたと思います。
鉄の歴史は古く、紀元前3000年以上前に鉄が発見され、武器や装飾が作られ、さらに紀元前1200年頃から家具やインテリアの素材として使われるようになったと言われています。
ヨーロッパを旅すると、窓格子やドアの装飾、ベランダなど、いろんな場所で「アイアンワーク(Iron Work)」と呼ばれる鉄で出来た美しい装飾品を見かけます。
アイアンワークとは、真っ赤に熱した鉄をハンマーで叩き形を造る技法のこと。
削ることなく叩くだけで作り出される独特の鉄のフォルムがとても美しく、ヨーロッパの自由鍛造は、美術品や器具、建造物などの装飾に使用されてきました。
その中で、ヨーロッパで生まれ伝統的に培われた鍛鉄技術、さらに造られた家具や照明、門扉や階段の手すり、窓枠などは「ロートアイアン(Wrought Iron)」と呼ばれています。例えばココ↓
チェスター大聖堂
木枠にアイアンで作られた戸棚
シャーロックホームズ博物館
アイアンの手すりと外灯
ヴェルサイユ宮殿の門扉もロートアイアンです。ロートアイアンとは、ヨーロッパで発展した「手工芸鍛造」のこと。
型に入れて冷やし固める「鋳造(ちゅうぞう)」とは違い、赤くなるくらいまで熱した鉄を叩いたり、伸ばしたり、曲げてねじりを入れたりしながら形成する工程「鍛造(たんぞう)」を経て作られた物のことを「鍛鉄(ロートアイアン)」とい言います。
ロートアイアンは中世ヨーロッパの教会や城などの建材やインテリアの装飾としても使われ、歴史を重ねながら進化しました。
職人が一つ一つ手作業で鉄をデザインするため、時代とともに様々なデザインや紋様のロートアイアンが作られましたが、第二次世界大戦時に軍事用品にするため、残念なことにたくさんのアイアンワークが溶かされてしまいました。
今、現在も残っている美しいアイアンワークはとても貴重なものになっています。
ヴィクトル・ユゴー記念館
アイアンの手すりと照明
メトロポリタン アベス駅
エクトル・ギマールデザインのアール・ヌーヴォー様式の入り口
アイアンは水にも強いので、ガーデン用のチェアやテーブルなど、外構用のインテリアとして使われることも多く、 アンティーク家具でもウォッシュスタンドやゲート、ガーデンテーブルや椅子などで見つけることが多いです。
また、イギリスのパブで使われている、パブテーブルの脚も、水を撒いて床掃除をした際、脚が傷まないよう、アイアンワークが使われているものが多いです。
iron
アイアンVSスチール
今は、シンプル系のクールなインテリアが人気だというコトもあり、無機質でカッコいいイメージが強いアイアン家具をお部屋に取り入れることも多くなってきました。
とは言え、最近造られる家具や照明などで使われているものと昔のものでは、含まれている成分が違います。
現代、使われているものは「アイアン(鉄)」ではなく「スチール(鋼)」と呼ばれ、鉄に炭素を合成して強度と耐熱性を高めたものです。
アンティークに使われているような純度の高い鉄に炭素を加えて鋼=スチールにすることで家具や小物を作っています。
最近造られたものは、同じように「アイアン」と表記されていても、ほとんどが「鋼」。なので、重厚感が違います。
昔、建てられた建物の装飾や、アンティーク家具で使われているアイアンは、鋼ではなく鉄。
純度が高いため、アイアンの特性を活かし、ぐにゅ~っと曲げてエレガントなデザインに仕上げたロートアイアンや、さらにその上からいろんな色にペイントを施して、可愛い雰囲気で仕上げたものなど様々なものを見つけることが出来ます。
さらに年月を重ねたことで、アイアンそのものの経年変化や錆びや塗装の剥がれなど、味わいとして感じることができ、新しく造られたものには出すことが出来ない、アイアン独特の重厚な雰囲気を楽しめます。
point
アイアンの特徴
point01 曲線ライン
熱を加えて形を形成しやすいアイアン家具は、鉄をぐにゅっと曲げて描いた美しいカーブを使って、様々な装飾が作り出されてきました。
形成した後に上からペイントで色付けした、エレガントで女性らしいスタイルのものも多く、お家の中の家具やインテリア雑貨から、外で使う門扉やガーデン家具まで、いろんな場面で使えるものが造られています。
point02 重厚感
不純物を混ぜていないアイアン家具は、素材感が違います。独特の重厚感が感じられ、また経年変化によって多少の錆や変色、塗装が剥がれたり・・・と、自然に味わい深い印象に変化していきます。
昔、作られたアンティークのアイアン製品は、すでに年月を経たことで趣のある雰囲気に変化していますが、新しく造られたものも、使っているうちに風化して味が増していくので、自分でアンティークを育てながら楽しめます。
point03 耐久性
アイアンは非常に頑丈で耐久性が高く、壊れにくいのが特徴です。
基本的に、溶接をして作られているので、頑丈で丈夫に作られています。
今は機械で作られていますが、アンティークのアイアン家具が造られた頃は、機械化がそれほど進んでいなかった時代。
「伸ばす・たたく・曲げ・溶接」など、すべての作業が一つ一つ手作業で丁寧に行われてきました。
そのため、歴史を重ねた今でも壊れることなく使い続けることができます。
item
アイアンのアンティーク
アイアンは、昔からいろんな家具や雑貨に使われてきました。水に強いという特性から、屋外の家具や椅子、照明などにも多くアイアンが取り入れられてきました。
歴史を重ねてきたからこそ出る味わい深いアンティークのアイアン製のアイテムをご紹介します。
1930年代 ウォッシュスタンド
アイアン製のウォッシュスタンドです。フランスらしい華奢なフォルムので鮮やかなブルーペイントがおしゃれです。ガーデニングアイテムとしてもおすすめ。
1950年代 ガーデンテーブル&チェア
大人気のアイアン製のガーデンテーブル&チェアです。屋内外で使えるアイアン製の家具は、テラスやお庭などに置いても素敵です。
1930年代 パブテーブル
アイアンのどっしりとした素材を感じさせないほど繊細なデザインの足のパブテーブルです。アイアンの重厚感と美しい曲線のラインが魅力です。
1950年代 シャンデリア
アイアンの曲線のラインが美しいシャンデリアです。アンティークのシャンデリアでも一番人気のアイアン製のシャンデリアは、お部屋を素敵に彩ってくれます。
1940年代 プラントホルダー
アイアン製のプラントポットホルダーです。ホワイトペイントに経年変化で少し錆びた部分もおしゃれに見えるのもアイアン製ならではの魅力です。
1950年代 ウォールミラー
アイアンで作られた縁取りのお花&葉っぱのデザインが可愛いウォールミラーです。無骨な素材にくるくるとカーブするアイアンが可愛いお部屋のアクセントになってくれます。
いかがでしたか?よく見てみると、実はわが家でも気付かないうちに、いろんな場所でアイアンのものを使っていることに気が付きました(笑)
経年変化でドンドン味わい深くなっていくアイアンは、錆びまでもおしゃれに見えるから不思議!
お部屋の中でも外でも活躍してくれるアイアンのインテリアグッズの表情の移り変わりを楽しみながら使ってみてください。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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【南青山オフィス】
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古物商 福井県公安委員会許可
第521010008980号