クイーン・アン様式とは?女王時代の英国家具の魅力

水野友紀子
水野 友紀子
クイーンアン様式とは

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クイーンアン様式とは、1702~14年のアン女王の治政時代を含め、1680~1760年にかけて流行したインテリア様式のことです。

12年間という短い期間でしたが、女王の時代らしく華やかでありながら、機能的で使いやすいデザイン様式「クイーンアンスタイル」は多くの人に支持され、今でも根強い人気です。

今回は、そんなクイーンアン様式の人気のヒミツについて、分かりやすくお話します。

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クイーンアン様式とは?


アン女王

1702~14年のアン女王の治政時代を含め、1680~1760年頃に流行したクイーンアン様式とは、デザインがシンプルで実用性が高いインテリアスタイルのことです。

それまで人気だった豪華絢爛な装飾を省いてシンプルなデザインに変化しつつも、ロココ様式をベースに曲線的なカブリオールレッグを使って繊細な彫刻が施された女性らしさが魅力のデザイン様式です。


クイーンアン様式の部屋

派手な装飾が少なくなった分、高品質の木材を使って家具が造られるようになりました。

また、王政が安定したことで国民の暮らしも安定。特に中流階級の家で使う家具の需要が高まったことで、コンパクトサイズで機能的に使える実用性が高い家具がいろいろ造られました。

特にクイーンアン様式を代表するデザイン「クイーンアンチェア」は、今も世界中で支持されています。


クイーンアン様式の代表クイーンアンチェア

クイーンアンチェア

クイーンアン様式の代表は、なんと言ってもアン女王の名前がついた椅子「クイーンアンチェア」です。

当時、東西交易によって中国から伝わったデザインをモチーフにした、シノワズリスタイルのシンプルなデザインのダイニング用の椅子です。

おしゃれな見た目はもちろん、長時間でもラクに座っていられるよう高品質な木材を使い、座面や背もたれに工夫が施されました。


クイーンアンチェアの 特徴

クイーンアンチェアの特徴を3つのポイントにまとめてみました。

1.座面

クイーンアンチェアの座面

それまでは板座だった椅子の座面に、初めて分厚いクッションがついたのがクイーンアンチェアです。

おかげで長時間でも快適に座っていることが出来るようになりました。

また、座面の貼り替えやクッションの交換も簡単に出来るよう、座面の部分だけが取り外しできる構造で造られました。


2.背もたれ

クイーンアンチェアの背もたれ

この時代、東西交易が盛んになったことで、憧れのシノワズリスタイルを取り入れた、シンプルなデザインの椅子の背もたれの真ん中部分に、花びんやヴァイオリンをモチーフにした背もたれ板がついています。

また背もたれを横から見ると、長時間ラクに座っていられるように、座る人の体のラインにフィットする曲線ラインになっています。


3.カブリオールレッグ

クイーンアンチェアのカブリオールレッグ

脚のデザインはロココ様式の影響を受けた曲線のカブリオールレッグですが、クイーンアン様式では英国独自でデザインされたシンプルなカブリオールが誕生しました。

脚の付け根の部分に、アカンサスの彫刻が入っているのも特徴。

この時に誕生したカブリオールが、その後の英国家具の基本の脚の形として使われるようになったと言われています。


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時代背景から見るクイーンアン様式の特徴

1702年にウィリアム3世が亡くなり、37歳で王位に就いたアンは、1707年にイングランドとスコットランドが統合したグレートブリテン王国の初代の女王になりました。

クイーンアン戦争

スペイン戦争やアン女王戦争など重なる戦争で勝利を収めイギリスを飛躍的な発展へと導いていったアン女王のおかげで、王政が安定します。

それとともに、英国国民の生活も安定し、特に中流階級の人達の生活水準が向上し、家やインテリアの需要が高まっていきました。


クイーンアン様式の 建築物

クイーンアン様式の建物は、この時代にオランダから伝わったと言われる赤レンガが使われた、左右対称のシンメトリーデザインが特徴的です。

また、背が高い窓が取り入れられるようになり、窓の高さが目立つよう、窓の周りを白い窓枠で囲んだことで、赤レンガと白い窓枠のコントラストが美しい建物です。

Hanbry Hall
ハンブリーホール

ハンブリーホール

玄関ホールが造られるようになり、玄関の入り口や屋根の上に、小さな屋根「ペディメント」が設けられるようになりました。

クイーンアン様式の建物の代表、ウェスターシャ―州にあるハンブリーホールも、赤いレンガ造りでシンメトリーなデザイン。

白い窓枠が、窓の高さをより強調しています。


Winslow Hall
ウィンスローホール

ウィンスローホール

バッキンガムシャーにあるカントリーハウス、ウィンスロー・ホール(Winslow Hall)

建物の中に入れる家具のデザインも建物とバランスがとれるようデザインされました。

背が高い家具やトップの部分にペディメントがデザインされた家具、さらに生活スタイルに合わせて暖炉の前で使うウィングチェアやカードゲームを楽しむためのゲームテーブルが造られるようになり、シンプルで使い勝手がいいクイーンアンスタイルが確立されていきました。


実は、日本人なら誰もが知っている東京駅もクイーンアン様式の建物。赤レンガと白い窓枠が印象的なシンメトリーデザインの建物です。

クイーンアン様式の東京駅

東京駅を設計した建築家、辰野金吾は、イギリスに留学した時に学んだクイーン・アン様式を自分流にアレンジし、東京駅のデザインに取り入れたと言われています。

ちなみに、ビクトリア時代に誕生したアメリカのクイーンアン様式は、英国のクイーンアン様式とは、ほぼ関係がありません


クイーンアンスタイル誕生から150年後、スコットランドの建築家リチャード・ノーマン・ショーが自分の建築作品の名前に「クイーンアン」と入れたことで定着したもので、本来、本当の意味のクイーンアン様式とは、全く違うものです!

クイーンアン様式の 家具

クイーンアン様式の建物に合わせて誕生した、クイーンアン様式の代表的な家具をご紹介します。


01.トールボーイ

クイーンアン様式のトールボーイ

クイーンアン様式のお家に、高さのある窓や暖炉が取り付けられるようになったので、バランスがとれるように背が高い家具が造られるようになりました。

そこで流行したのが背が高いチェストトールボーイです。

チェストの上にもう一つチェストが乗っている見た目から「チェストオンチェスト」とも呼ばれています。

02.パーラーキャビネット

クイーンアン様式のパーラーキャビネット

同じく、天井が高いリビングの飾り棚として造られたのがトップの部分にコーニスペディメントが付いたカップボード、パーラーキャビネットです。

クイーンアン様式では、豪華絢爛な装飾は省かれましたが、コーニスやペディメントが一番トップにあることで、とても華やかな雰囲気。

また電気がない時代、大きな鏡はお部屋を明るくするために、太陽の光やキャンドルの灯りを反射させて使われていました。


03.ゲームテーブル

クイーンアン様式のゲームテーブル

クイーンアン様式に誕生した家具の一つ、ゲームテーブルとは、当時、大人気だったトランプカードを楽しむために造られたテーブルのことです。

クイーンアンスタイルのゲームテーブルは、長方形で両サイドが折り畳み式の天板。さらにクイーンアンスタイルのカブリオールレッグ脚が特徴的です。

04.ウィングチェア

クイーンアン様式のウィングチェア

お家に暖炉が取り入れられるようになったことで、暖炉の前で過ごす時間が増えたため、ひじ掛けが付いた一人掛けの生地張りの椅子が造られるようになりました。

暖炉の熱で顔や頭が熱くならないよう、背もたれの両側に羽のような飾りが突き出ているデザインのカブリオールレッグの椅子はウィングバックチェアと呼ばれ、大流行しました。


クイーンアン様式の お部屋

クイーンアン様式のアンティーク家具や椅子を使ってコーディネートしたお部屋をご紹介します。

01.ダイニング

クイーンアン様式のダイニング

クイーンアン様式を代表するクイーンアンチェアを使ってダイニングをコーディネートしてみました。

シンプルなデザインでありながら、高級な雰囲気が漂うクイーンアンチェアは、どんなテーブルと組み合わせてもすんなり馴染むところも魅力。 女王の名前が付いた椅子だけに、どんなインテリアにも合わせることが出来る包容力のある椅子だな・・・と惚れ惚れです。


02.応接室

クイーンアン様式のリビング

とってもめずらしいクイーンアンチェアのセティとアーム付きのクイーンチェアを使って、応接室スタイルのリビングをコーディネートしました。

スッキリとしたシノワズリデザインのクイーンアンチェアセットが、上質な応接室に彩ってくれます。


03.書斎

クイーンアン様式の書斎

クイーンアン時代に流行した背が高いチェスト、トールボーイと、まるで兄弟のようなローボーイでコーディネートした書斎。

クイーンアン時代に多く使われるようになったウォールナット材のアンティーク家具で組み合わせた高級感たっぷりの書斎です。


04.リビング

クイーンアン様式のリビング

あっという間に大きく広がるクイーンアン様式の伸長式ゲームテーブルを広げて、カードゲームを楽しむリビングをコーディネートしてみました。

クイーンアン時代の人と同じようにカードゲームを楽しむもよし、作業台に使うもよし!自分だけの特別な場所で自分だけの特別な時間が楽しめます。


【クイーンアン様式の家具や椅子】

クイーンアン様式に流行したイギリスで買い付けたアンティークの家具や椅子をご紹介します。



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水野友紀子

水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)

1903年創業

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〒910-0019 福井市春山2-9-13

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第521010008980号



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