ミッドセンチュリーで誕生|トーラ材とアフリカンマホガニーの関係

水野友紀子
水野 友紀子
トーラ材

▶トーラ材 商品一覧

名前はもちろん、木目や家具のデザインもとても個性的な「トーラ材」「トラー材」と呼ばれるアフリカンマホガニー材

今回は、なぜトラー材と呼ばれるようになったかの歴史からトーラ材を使った家具のコーディネートまで分かりやすくお話します。

Handle 水野 友紀子


Tola wood

トーラ材とは

トーラ材とは、アフリカンマホガニー材と呼ばれる、アフリカ産の広葉樹木「サペリ」を使った、1950~60年代にイギリスで造られた家具のことです。

アフリカンマホガニーとは、名前から想像できるようにアフリカから輸入したマホガニー材・・・ではなく、マホガニー材に似た木材のこと。

本来は「サペリ」と言う名前で、アフリカの熱帯雨林に広く生育しているセンダン科の落葉広葉樹のことです。


アフリカンマホガニー材

日本ではあまり聞いたことがないサペリと言う名前の木材の特徴は、光沢のある赤茶色のまっすぐな美しい木目。

その木目がマホガニー材の木目によく似ていることから、1946年に輸出を禁止されて手に入れることが出来なくなった、本来、マホガニーと呼ばれる南米産の木材の代替品としてイギリスで造られる家具用の木材に使われるようになりました。

その際、アフリカからやって来たマホガニー材と言う意味でアフリカンマホガニーと呼ばれるようになりました。

・・・が!そうなると、なぜアフリカンマホガニー材ではなく「トーラ材」と呼ぶようになったんでしょう??

Midcentury

誕生の裏に ミッドセンチュリー

アフリカンマホガニー材からトラー材へと呼び名が変わった理由は・・・ミッドセンチュリーの家具の誕生が関わっています。

戦後、物資不足が続くイギリスでは、英国政府が「ユーティリティスキーム」と呼ばれる規制を行ったことで、一般市民の日用品の質と価格を抑え、統一した実用的な商品が販売されるようになります。

それに伴い、英国らしい美しい装飾の入った、高級木材を使った家具は造られないようになります。

代わりに、大量生産が可能なシンプルで実用的。それでいておしゃれな北欧デザインの家具に注目が集まるようになり、英国の家具メーカーは北欧デザインを真似たシンプルなデザインの家具を造り始めるようになりました。

当時、北欧のデザイナーたちが使った木材はチーク材だったので、同じようにたチーク材を使った家具が造られる中、北欧のデザインを研究しまくったNATHAN(ネイサン)社が、1954年のニューヨークで行われた家具の展覧会で発表した家具に使っていた木材は・・・アフリカンマホガニー材☆

ネイサン社 トーラコレクション

真っ黒な脚とアフリカンマホガニー材の独特の木目を活かした、ツートーンカラーの斬新でスタイリッシュな北欧デザインの家具「Tola collection(トーラコレクション)」は世界中から注目を集めるようになります。

旧イギリス領だったアフリカ諸国から大量伐採が可能で、安定して供給できる輸入材という事で、家具の材料として重宝されるようになったアフリカンマホガニー材を使って、トーラコレクションの発表から4年後、E-GOMME社のG-PLAN「Tola&Black(トーラ&ブラック)」シリーズを発表します。

Gプランとネイサンのトラー材のチェスト

どちらの名前にも「Tola(トラー)」が入っていたことから、「Tola Collection」で使われている木材ということでアフリカンマホガニー材は「トーラ材」や「トラー材」と呼ばれるようになり、今では本当の名前より定着してしまったようです。


point

トラー材の特徴


ここからは、トラー材の特徴についてお話します。

point.01 リボン杢

トラー材のリボン杢木

トーラ材の一番の魅力は美しい木目。

マホガニー材の「リボン杢」と呼ばれる木目によく似ているストライプ模様の木目が特徴的です。

とても高級だったマホガニー材とよく似た木目の家具を手に入れることが出来ると人気でした。


point02 加工しやすい

トラー材を使ったサイドボード

マホガニー材と比べると価格がお手頃と言う点で、戦後の復興期の英国の家具に使われるようになったトーラ材。

安価なことはもちろん、加工がしやすいという点でも家具に使われるのにもってこいの木材でした。

美しい突板に加工し、戦後、機械化で大量生産できる家具に人気でした。


point03 色

トラー材の色

トーラ材は、マホガニー材のように高級感が漂う美しい赤茶色の木肌が特徴的です。

当時人気だった北欧デザインの家具がチーク材で造られていたのに対して、トラー材を使ったミッドセンチュリー家具には、落ち着いた木肌に似合う真鍮製の足先や取っ手が使われることが多かったため、ゴールド色がアクセントになって重厚感が漂うデザインの家具に仕上がっています。


furniture

トラー材家具


デザインされてから70年経っても斬新でおしゃれなミッドセンチュリーの英国ビンテージ家具は造りがいいという点で今も人気です。
今までHandleでご紹介したトラー材を使った家具の一部をご紹介します。


Gプランのトラー&ブラックのダイニングテーブル

1950年代 G-PLANのダイニングテーブル
G-PLANのトラー&ブラックシリーズのダイニングテーブル。めずらしい丸い形のテーブルです。

Gプランのトラー&ブラックのサイドボード

1952~1965年 G-PLANのサイドボード
扉が折れ戸タイプのサイドボードは、G-PLANの中でも特に人気の高かった家具です。


Gプランのトラー&ブラックのチェスト

1950年代 Gプランのチェスト
どこにでも置けるロータイプの使いやすいチェスト。同じデザインでサイズ違いのものも造られました。

Gプランのトラー&ブラックのデスク

1950年代 G-planのコンソール
誰もが目を惹く個性的なデザインのコンソール。脚がキラッと輝くゴールド色のバーがアクセントです。


Gプランのトラー&ブラックのドレッサー

1960年代 G-PLANのドレッサー
三面鏡なので実用的に使えるドレッサーです。足元だけじゃなく黒く塗られた引き出しもカッコいい☆

Gプランのトラー&ブラックのワードローブ

1960年代 Gプランのワードローブ"
ワードローブとドレッサーが一つになったデザイン。引き出しからミラーが飛び出す細工になっている遊び心満載の家具です。


Gプランのトラー&ブラックのチェア

1960年代 ダイニングチェア
背もたれのトラー材の木目がアクセントになったダイニングチェア。少しカーブしているので掛け心地もバッチリです。

ネイサンのローテーブル

1970年代 ネイサンのローテーブル
天板と脚が2トーンカラーになっている、クールな印象のコーヒーテーブル。天板の下には棚板があって便利に使えます。



▶トーラ材の家具商品一覧


水野友紀子

いかがでしたか?そもそも、サペリと言う名前がアフリカンマホガニーに代わり、その後、商品名からトーラ材と名前を代えるなんて・・・

そんなトーラ材も、今はとても希少になって高額になっているため、なかなかこの美しい木目が使われた家具を見かけることが出来なくなってきました。

美しいストライプ模様のリボン杢のトーラ材の家具で、ミッドセンチュリーなお部屋作りを楽しみませんか?

水野友紀子

【トーラ材商品一覧】

ストライプ模様の木目が美しいトラー材のビンテージ家具をご紹介しています。



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水野 友紀子

空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。

大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。

アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)

1903年創業

【店舗&倉庫】
〒910-0019 福井市春山2-9-13

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第521010008980号

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