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スラ~ッと伸びた長い脚「テーパードレッグ」
- 水野 友紀子
正直、超シンプルなデザインだから、最初は全く興味がなかったテーパードレッグ(笑)でも、アンティークを知れば知るほどに、ドンドン好きになってしまう魅力的な脚です。
私のように、まだこの魅力に気付いていない方に、このシンプルな脚の本当の美しさ&魅力をたっぷりご紹介します!
Handle 水野 友紀子
TAPERED
テーパードレッグとは
脚の付け根から先にかけてだんだん細くなる、四角いシンプルな脚はテイパードレッグやテーパードフッドと呼ばれています。
「テーパード(Tapered)」とは「次第に細くなっていく」という意味。足首にかけて細くなる「テーパードパンツ」など、ファッション用語にもよく使われています。
アンティーク家具で見かけるテーパードレッグは、とても細くて長く美しい脚。でも、ここまで細いのに家具として強度を持ちながら支えることが出来るのは、使われている素材が良質だからです。
この時代でしか手に入らなかった上質なマホガニー材で造られているものを見つけることが多いです。
HISTORY
誕生の時代背景
曲線から直線へ
テーパードレッグは、18世紀中頃、新古典主義(ネオ・クラシック様式)に流行しました。
18世紀半ばから古代ローマ遺跡の発掘が始まったことをきっかけに、もう一度、古典的なデザインが見直されるようになり、誕生したネオ・クラシック様式。
それまでは、バロック様式やロココ様式のように、優雅で華やかな曲線と、豪華すぎるデザインが特徴的でしたが、その反動から、過剰な装飾を排除され、古典的なシノワズリやゴシック、古代ギリシャ・ローマ様式の装飾が再び使われるようになりました。
その際、それまでのガッチリした脚の代わりに、直線的でスッキリしたテーパードレッグに進化し、流行しました。
フランスでネオクラシック様式は、ルイ16世時代に始まりました。
王妃だったマリーアントワネットの部屋も、ロココ時代のような曲線ではなく、落ち着きのあるネオクラシック様式らしい直線的で品のある家具が中心となっています。
派手な装飾はなく、控えめながらも理性とスタイリッシュな美しさが際立つ脚は、縦に溝が入った「フルーティング」と呼ばれるテーパードレッグが使われています。
誕生!4人のデザイナー
ネオクラシック時代、家具デザイナーが誕生し、イギリスでは家具の黄金期を迎えます。
それまでデザインから製作まで、お抱えの家具職人が手掛けていましたが、家具デザイナーが誕生したことで、それまで貴族達が直接、オーダーしていた家具をアレンジして、実用的に使える家具のデザインを次々に生み出します。
4大デザイナーと言われる「トーマス・チッペンデール」「ロバート・アダム」「ヘッペルホワイト」「シェラトン」の登場により、直線的なテーパードレッグが使われた家具が、中流階級を中心に広く普及していきました。
Thomas Chippendale
トーマス・チッペンデール
世界初の家具デザイナーと言われるイギリスの家具職人トーマス・チッペンデールは、1754年に「紳士と家具師のための指針」を出版し、イギリスだけではなくヨーロッパに影響を与えました。
ロココと中国趣味やゴシックなどを調和させた彼のデザインに基づいた家具は「チッペンデール様式」と呼ばれ、今も愛され続けています。
Robert Adam
ロバート・アダム
建築、インテリアから家具のデザインも手がけたアダム兄弟の一人、ロバートアダムは、古代ギリシャやローマの意匠を取り入れた古典的なデザインを生み出しました。
椅子の背板にも古典のモチーフを取り入れ、楕円や楯形のものが多く、また、神殿をイメージした「フルーティング」と呼ばれる、縦に溝を入れたような脚のデザインは、「アダムフルーテッド」とも呼ばれるくらい有名です。
George Hepplewhite
ジョージ・ヘップルホワイト
ジョージ・ヘッペルホワイトは、一部の富裕層を中心に造られたトーマスチッペンデールやアダムのデザインを、より実用的にし、中流階級の生活に適したデザインに発展させ、幅広く一般の人に広めました。
盾形やハート形の背もたれの椅子や、直線的な足の先端にスペードフットを使ったデザインを流行させました。
Thomas Sheraton
トーマス・シェラトン
トーマス・シェラトンは、アダムやヘッペルホワイトのデザイン様式を受け継ぎ、調和させた家具デザイナーです。
1791年に出版された「家具、家具装飾の図面集」のデザインをもとに、18世紀後半に多くの家具職人が家具を製作し、ヨーロッパだけではなくアメリカにまで広く影響を及ぼしました。
TYPE
いろんな形のテーパード
フルーティング
古代ギリシャ神殿の支柱をイメージしてデザインされた「フルーティング」と呼ばれる、縦に溝の彫が入った脚のデザイン。
ロバートアダムがデザインしたフルーティングの上部には、花や植物などの彫刻が入っていたり、ボールから脚が伸びたとようなデザインのものになっていたり、いろいろありますが、どれも美しいです。
スペードフッド
テーパードレッグの脚先に、まるでトランプのスペードを反対にしたような形の装飾が施してある「スペードレッグ」
トーマスチッペンデールがよく用いたスペードフットは、ネオクラシック様式の代表的なデザインです。
セイバーフッド
ネオクラシック様式がさらに発展したリージェンシー様式で、テイパードレッグがさらに変化し、流行したデザインが「セイバーフット」です。
足先が少し湾曲し、外側に張り出したデザインが、西洋の剣(セイバー)に似ていることから、セイバーフットと呼ばれ、リージェンシー様式の椅子でよく使われました。
ITEM
スラーッと伸びる上品な家具
今までHandleでご紹介してきたテイパードレッグのアンティーク家具を見てみましょう。
マホガニー材やローズウッド材が使われたネオクラシック様式を代表する細くて長い脚の家具は、どれもスタイリッシュで上品な雰囲気が特徴的です
1900年代 イギリス ローズウッド材
前足はスペードフット、後足はセイバーフット、両方の脚が一度に楽しめる贅沢な椅子です。
1910年代 イギリス マホガニー材
前足も後ろ足も、両方セイバーフットになっているセティ。背もたれの透かし彫りも加わって、より上品な雰囲気です。
1910年代 イギリス マホガニー材
シンプルなテイパードレッグの足先にキラッと輝く金色の靴を履かせたようなオシャレなコンソールテーブルです。
1930年代 イギリス マホガニー材
スラーっと伸びた長い脚のテイパードレッグは、お部屋の隅に置いても美しく、目立ちます。
1970年代 イギリス マホガニー材
フルーティング脚のコーヒーテーブルは、どこに置いてもなんだか神秘的。とってもオシャレです。
1900年代 イギリス マホガニー材
足先がスペードフットのガラスキャビネットは、シンメトリー。ネオクラシック様式の代表的なデザインです。
STYLING
テーパードと一緒に気品あるお部屋作り
スラーっと伸びた脚がスタイリッシュで美しいテーパードレッグの家具。現代の家具の原型にもなる脚のデザインは、どんなお部屋にも合わせやすく、
スマートでオシャレ、さらに高級感もアップさせてくれます。
マリーアントワネットから庶民まで、幅広く親しまれてきたテイパードレッグの家具は、美しさだけではなく機能性も高く、使いやすいものばかりです。
ぜひお家で楽しんでください。
room1 リビング
スラーっと伸びるテーパードレッグの家具でリビングをトータルコーディネイトしてみました。
足元がスッキリしていているので、狭い部屋にたくさん並べても圧迫感が出ず、とても上品な雰囲気のお部屋になります。
room2 ダイニング
テーパードレッグは、現代の椅子の原点にもなっているデザインです。なので、北欧スタイルのビンテージ家具でも見つけることが出来ます。
北欧デザインであれば、少し太めなので強度が保て、毎日出し入れするダイニング用の椅子としても使えます。スッキリとカッコいい食卓を楽しみましょう。
room3 玄関
長い脚の椅子を壁に沿って置くと、脚の長さと美しさが、より際立って見えます。
玄関に並べて置くだけで、とっても美しい玄関が出来上がります。ガラスキャビネットを中心に、2脚をシンメトリーに置いて、ネオクラック様式をお家で楽しんでみませんか?
room4 書斎
スーッと伸びた脚のデスクとチェアがあればそれだけで特別な書斎が完成します。
自分だけのお気に入りの場所で仕事をしたり、読みかけの本を読んだり・・・テーパードレッグは女性的でも男性的でもあるので、書斎にはピッタリです。
VOICE
みんなのテーパードレッグを見てみよう
埼玉県 Tさま
背もたれの象嵌と彫刻が華やかで、脚のシルエットも美しく、座面の布も他の家具と合わせやすく、とても素敵な椅子です。
この椅子をほしいと思い、ホームページで象嵌細工を作る過程の説明を読んで感心しました。時間と労力をかけて作られた美しい家具を、我が家で使えることを思うと、改めてアンティーク家具の素晴らしさを実感します。
鹿児島県 Tさま
ヴァイオリンを収納する小振りのキャビネットをずっと探していたのですが丁度ピッタリ収まりました!
ヴァイオリンだけを収める為のアンティークのキャビネットは、ちょっとだけ贅沢な空間になり、心も贅沢な気分を味わっています!
栃木県 Nさま
写真で見ていたより何倍も素敵なキャビネットでした。リビングの角に置いたその瞬間から、そこは特別な空間になりました。
一緒に購入したカップや両親の写真、お気に入りのグラスを飾って
1日に何度も「う~ん、やっぱり素敵」とニコニコしています。
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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アンティーク家具Handle
(水野商品館 株式会社)1903年創業
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第521010008980号