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ミッドセンチュリーインテリアとは?魅力と家具選びのコツ
- 水野 友紀子

ミッドセンチュリーインテリアとは、第二次世界大戦後1945年から1960年代にかけてデザインされた、シンプルで機能的なインテリアスタイルのことです。
20世紀の真ん中をさすミッドセンチュリー(Midcenury)とは、インテリア業界では第二次世界大戦の影響を受けたことで、戦後の復興と大量生産技術の進化に伴って誕生したた新しいデザインのインテリアのことを言います。
新しいライフスタイルがを誕生させた、シンプルカッコいいミッドセンチュリーの家具やインテリアについて分かりやすくお話します。
Handle 水野 友紀子
~ ミッドセンチュリー目次 ~
ミッドセンチュリーインテリアとは?
そもそもミッドセンチュリー(Midcentury)とは、直訳すると、世紀(century)の真ん中(middle)と言う意味。
なので、19世紀の真ん中、1950年代を表する単語でしたが、そこから発展し、第二次世界大戦が終結した1945年から1950~60年代の戦後の復興期に誕生した、新しい素材を使った大量生産可能な、シンプルでおしゃれな家具やインテリアのことを意味する言葉になりました。

シンプルでおしゃれなデザインは、美術館で鑑賞するアートと言うより、一般家庭で使われる実用品としてデザインされたもの。
「美しい家具を一般の家庭へ届ける」という思想のもと、特にインテリアの分野では、戦後の復興と大量生産技術の進化とともに、戦争が終わって開放的になった家庭に浸透し、新しいライフスタイルが誕生しました。
この時期に生まれたデザイン様式や家具などのインテリア全般のことを「ミッドセンチュリー家具」や「ミッドセンチュリーインテリア」と呼ばれるようになり、デザイン史に大きな影響を与えた時代として、世界中で高い評価を受けています。
ミッドセンチュリーの 特徴
ミッドセンチュリースタイルは、誕生した国や工場によってコンセプトが違うものの、全体的な特徴はよく似ています。分かりやすくまとめてみました。
01 シンプルで機能的

一番のポイントは、余計な装飾を全て排除したシンプルで機能的な幾何学デザイン。
バウハウスの影響を受けて、情緒や感情など余計な装飾を全て排除した、使い勝手がいい機能的なデザインなので、どんなお部屋にも似合います。
02 素材

それまで家具造りの素材として使うことがなかった、ブライウッド(積層合板)やFRP(ガラス繊維強化プラスチック)など、軍需産業から生まれた加工技術で造られるようになった新しい素材が使われています。
新素材は大量生産することが可能だったので、一般家庭に広く普及していきました。
03 大量生産

それまでの家具は一点一点、職人さんが手作業で造ったものでした。
ミッドセンチュリーの時代に入って誕生した、新しい素材を使うことで大量生産することが可能に。
同じデザインの家具を大量に造ることが出来るようになったことで、価格も安価に抑えて造れるようになりました。
誕生の時代背景
ミッドセンチュリーの家具と言うとアメリカで誕生したものと思われがちですが、第二次世界大戦が終わって開放的になったことや復興が急速に進むようになったのは、世界中の国が同じ。
アメリカ以外の国々でも、同じ時期にそれぞれに国の特徴を活かしたミッドセンチュリーの家具が誕生しました。
そもそも、ミッドセンチュリーのきっかけを作ったのは、1919年にドイツで設立された美術学校「BAUHAUS(バウハウス)」です。

バウハウスのデザインの特徴は「合理的でシンプル、かつ機能的」。
無駄な装飾を排除し、芸術性と機能性を融合させて大量生産することを目指したモダニズム運動が、バウハウスを中心にヨーロッパで始まりました。
工業的な大量生産を前提に、それまで家具造りでは使ったことがないガラスやスチール、合板のような素材を使った新しい価値観を提案しましたが、ナチスからの弾圧により閉校することに。
そこでデザインを学んだ芸術家やデザイナーたちの多くは、ドイツを離れてアメリカに移住します。
アメリカのミッドセンチュリー
第二次世界大戦終わると、アメリカでは軍需産業から生まれた加工技術で新たにプライウッドやプラスチックなどが造られるようになりました。
バウハウスで学んだデザイナーたちの影響を受け、木材の代わりに新素材を使ったシンプルなデザイン性が高い家具が造られるようになります。
新素材は大量生産に向いていたので、アメリカンスタイルのミッドセンチュリー家具として、アメリカ国内で爆発的に普及していきます。
1954年から1957年にかけてニューヨークで家具の展覧会「Design in Scandinavia」が開催されたことで、アメリカ=ミッドセンチュリー家具=北欧デザインというイメージがどんどん強くなっていき、アメリカのミッドセンチュリースタイルが確立されていきます。
アメリカのデザイナー
この時代、家具メーカーが家具を作って販売すること以外に、デザイナーがデザインした家具を家具工場が造って販売する、いわゆるデザイナーズ家具と呼ばれるものが誕生します。
チャールズ・イームズ
(Charles Eames)

アメリカンミッドセンチュリーを代表する、チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻。
代表作の「イームズ・ラウンジチェア」や「シェルチェア」は、軍需産業の技術を発展させた新素材「プライウッド(積層合板)」や「FRP(ガラス繊維強化プラスチック)」を使ってデザインされました。
新素材を使って家具の未来を切り拓いたパイオニアだったイームズ夫妻は、家具と建築の境界を超えた総合的なデザインの実践者でもあり、映画やグラフィックなど多岐に渡って活躍しました。
エーロ・サーリネン
(Eero Saarinen)

アメリカで活躍したフィンランド出身の建築家・デザイナー、エーロ・サーリネン。
代表作は、形がチューリップに似ている事から名前が付けられた「チューリップチェア」。
一体成型の脚部と座面で構成された革命的なデザインの椅子は、それまでの「椅子は4本脚」という常識を覆しました。
曲線を用いた20世紀中期を代表する未来的なデザインは、彼の建築作品である「TWAフライトセンター(ニューヨーク)」にも表れています。
北欧のミッドセンチュリー
もともと日照時間が少ないデンマーク、ノルウェー、フィンランドなど北欧のスカンジナビア諸国では、家の中で過ごす時間が多いので、飽きがこないシンプルなデザインの家具が使われていました。
特にデンマークでは、バウハウスを中心に始まったモダニズム運動の影響を受け、独自に進化していきます。
そこで、「北欧モダン家具デザインの父」と呼ばれるコーア・クリントは伝統を守りながら、真摯に向き合い、より良いものを生み出す「リ・デザイン」を提唱。
「古典派我々よりモダンである」とシンプルな中にあたたかみが感じられる北欧らしい家具のデザインを確立します。
第二次世界大戦後の復興で、破壊された家屋を建て直す際、大量生産が出来るシンプルなデザインでありながら、ぬくもりが感じられる北欧家具のデザインが、モダン家具デザインの中心的存在になりました。
北欧のデザイナー
デザインの国、北欧諸国には、一度は名前を聞いたことがあるような有名な家具デザイナーがたくさんいます。その中でも特に有名なデザイナーをご紹介します。
アルネ・ヤコブセン
(Arne Jacobsen)

「セブンチェア」「アントチェア」「エッグチェア」など、現在でも人気の高い作品をたくさんデザインしたデンマーク出身の建築デザイナー、アルネ・ヤコブセン。
トータルで設計することを重要視し、建物や家具はもちろん照明やカトラリー、ドアノブに至るまでインテリア全体をトータルコーディネートした「トータルデザイン」のパイオニアです。
ハンス・ウェグナー
(Hans J. Wegner)

「マスター・オブ・ザ・チェア(椅子の巨匠)」と称される、デンマークの家具デザイナー、ハンス・ウェグナー。
家具職人からデザイナーとなった彼の椅子は芸術品であると同時に実用品として愛され続けています。
生涯で500脚以上、デザインしたシンプルで死産素材を使った椅子には、北欧家具デザインの本質が息づいています。
英国のミッドセンチュリー
第二次世界大戦後、物資不足の影響が大きかった英国では、政府による規制「ユーティリティ・スキーム」が行われたことで、高級な木材を使った装飾が凝った、英国らしい家具を造ることが規制されます。
その代わりに誕生したのが「ユーティリティ・ファニチャー(Utility furniture)」と呼ばれる、質と価格を抑えた大量生産が出来る家具でした。
そこで、英国の家具メーカーたちは、大量生産が出来るシンプルなデザインの家具として当時、パイオニア的存在だった北欧家具のデザインを取り入れ造り始めます。
高い技術力を持つ英国の家具職人たちが造る、シンプルでおしゃれな北欧デザインの家具として、イギリス独自のミッドセンチュリースタイルが確立されていきました。
英国の家具メーカー
スカンジナビアデザインの流れを汲んで英国でも大人気になったミッドセンチュリーの家具は、北欧とは違いデザイナーというより家具工場によって、造りやコンセプト、デザインなど違いがあります。
英国ミッドセンチュリー家具の代表的なメーカーをご紹介します。
G-plan

1898年創業の英国老舗家具メーカーE.Gomme(イー・ゴム)社が、北欧スタイルのデザインを取り入れて作った家具ブランドが「G-PLAN(ジープラン)」です。
戦後の復興の中で、いち早く家具の大量生産に成功したE.Gomme社は英国で最も大きな家具メーカーに成長しましたが、1987年に会社を売却。今はイングランド西部で「G-Plan Upholstery」がソファ、スコットランドで「G-Plan Cabinets」がキャビネットを作り続けています。
Ercol

イタリア出身の家具デザイナー「ルシアン・アーコラーニ」が1920年に創業したイギリスの老舗家具メーカー「Ercol(アーコール)」。
独創性のあるシンプルなデザインに、丸みを帯びた優しいシルエットが特徴的で、どんな場所にも、どんなスタイルのインテリアにも似合うオシャレさが人気です。
NATHAN

英国ミッドセンチュリー家具の代名詞的存在が、1916年にイギリスのロンドンで生まれた「NATHAN(ネイサン)」。
1954年にニューヨークで開催された家具展覧会でイギリスの家具を代表するデザインに選ばれたことで、一躍脚光を浴びました。
モジュール式家具として70種類以上のアイテムをお部屋の広さに合わせて自由に組み合わせて使える所も人気のヒミツでした。
Mclntosh

1869年にスコットランドのKirkcaldyに設立された家具のメーカーマッキントッシュ社(A.H. McIntosh & Co. Ltd.)。
英国国内のハイクラスな人に向けて、高品質の家具を造って大成功!今でもブランド価値が下がらず、高品質なビンテージ家具を求める方から支持を得ています。
現在は公共施設や学校などで使われる家具の製造元として知られています。
Turnidge of London

1933年にロンドンで創業したターニッジオブロンドン(Turnidge of London)。
他のメーカーとは違って、ダイニングテーブルや椅子は一切造らないキャビネット専門の家具メーカーとして、ショーケースや本棚、バーカウンターの製造を専門にしていました。
造る家具の種類を絞り、広告費を抑えた分で良質な家具作りに回すといった堅実な経営をしたメーカーです。
Avalon

英国サマセット州で創業した家具メーカーAVALON(アヴァロン)。もともと産業革命時代にチャーチチェアや学校の机を造っていましたが、1960年代に入って、チーク材やオーク材を使った英国ミッドセンチュリーのモダンスタイルの家具を造るようになります。
シンプルでスタイリッシュな北欧デザインの家具に、まん丸の取っ手を組合わせたアバロンの特徴的なデザインが支持され、英国ミッドセンチュリーを代表する家具メーカーとして人気を誇っています。
Jentique

1930年代にイギリス・ノーフォーク州ディアラムで創業したジェンティーク(Jentique)。
おもちゃ職人だったジェフリー・ボウマン・ジェンキンス(Geoffrey Bowman Jenkins)が妻のエディスと一緒に始めた家具メーカーです。
他の家具メーカーと比べると、ふんわり柔らかい優しい雰囲気で女性らしさを感じるデザインの家具が多く、独特の魅力が感じられます。
ミッドセンチュリーインテリアの 部屋
英国ミッドセンチュリースタイルのヴィンテージ家具や椅子を使ってコーディネートしたお部屋をご紹介します。
ROOM 1 ダイニング

英国を代表するビンテージ家具メーカー、G-PLANのテーブルと椅子、キャビネットを組合わせてミッドセンチュリースタイルのダイニングをコーディネートしてみました。
大きなキャビネットはアーコール社のもの。同じような色のチーク材のビンテージ家具を組合わせたので、まるでお揃いのよう。
テーブルの黒い脚がアクセントになっておしゃれ度をUPしてくれています。
ROOM 2 リビング

ネイサン社のキャビネットを壁面全体に置いて、カッコよく仕上げた北欧スタイルのリビング。
大きなトライバルラグを敷いて、アクセントをプラスしたことで、さらにカッコよさが増しました。
ROOM 3 書斎

アーコールのコーナーキャビネットを本棚にしたミッドセンチュリースタイルの書斎。
同じチーク材で造られたビンテージ家具を並べるだけで、仕事が出来るオトナのオシャレ書斎が完成です。
ROOM 4 寝室

英国ミッドセンチュリーを代表する、ネイサンとG-PLAN、アーコールの家具をコラボさせて、カッコいい寝室をコーディネートしました。
毎日、眠りに就く時間が楽しみになるおしゃれな寝室で素敵な夜の時間を過ごしませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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