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トライバルラグの魅力とは?おしゃれな部屋のコーディネート術
- 水野 友紀子
アンティーク家具に似合うラグが欲しいな・・・と思っていた私の目の前に現れたのが、トルコ人のディーラー、イシュクさんが持ってきたトライバルラグ。
「トライバルラグって・・・なに?!」と、何も知らなかった私ですが、一目見た瞬間から魅了されっ放し!(笑)まるでアンティーク家具を初めて見た時に感じた気持ちと、同じ気持ちになりました。
アンティーク家具との相性はもちろん、知れば知るほど好きになる、広げるだけで華やかなお部屋を作ってくれるトライバルラグについて、詳しくお話しします。
TRIBALRUG
トライバルラグとは
英語で「部族の」という意味を表す「トライバル(tribal)」。直訳すると「部族の絨毯」トライバルラグとは、トルコやイラン、アフガニスタンなどの国々で暮らす少数部族の人たちが、自分達が使うために家庭で織った毛足が長い絨毯のことです。
工房や工場などで販売目的で作られた絨毯とは違い、家で使うために織った絨毯なので、古いものだと1940年代、新しいものでも20年以上前に織られた、アンティークやビンテージのオールド絨毯。新品のものはありません。
絨毯は、作られた地名や部族、柄などで名前が決まり、使っている糸も異なりますが、家庭で使うために丁寧に手織りされ、大切に使ってきた絨毯の総称がトライバルラグなので、ギャッベやトルコ絨毯、イランやアフガニスタン、一部のペルシャ絨毯など、いろんな絨毯が含まれています。
そのため、生活の中で生まれた親しみあるデザインから、まるで写真や絵画のような繊細なデザイン、さらに芸術的なものまで、さまざまなデザインのものを見つけることが出来ます。
年月を経ていい感じに変化した、新しいものでは作り出せない色もトライバルラグの魅力の一つです。
部族によって絹やウール、綿など使う素材は様々ですが、そもそも絨毯とは、経(タテ)糸に短い緯(ヨコ)糸を結びつけ、模様を描きながら、毛足を作った織物のことです。
絨毯を織り始める前に、描き出す模様の設計図を準備し、一目一目、設計図に合わせながら、ヨコ糸の色を変えて結び付け、丁寧に模様を描いていきます。
私だったら、とても出来ないと思うくらい気が遠くなるような作業を繰り返し、織り上げた糸の毛先を切りそろえることで、絨毯の美しい模様が浮かび上がってきます。
膨大な時間をかけ、手作業で丁寧に模様を描いていく絨毯は、一般的に使われている素材より、ヨコ糸(パイル糸)の結び目の数によって、同じサイズでも値段が大きく異なります。
結び目の数が多ければ多いほど手間がかかっているので、より高価。1cm四方の中に1000以上の結び目がある超高級絨毯もあるんです。
一つ一つ、時間をかけて手作業で仕上げてある分、とても丈夫で模様が繊細で美しい絨毯が出来上がります。
01.ギャッベ
南ペルシアの遊牧民族が作るギャッベは、トライバルラグの中でも毛足が長く、厚みがあるのが特徴です。
遊牧生活で一緒に暮らしている羊たちから紡いだ糸を使った、草木染めの絨毯は、大自然の中で生まれたぬくもりのあるラフなデザインが人気です。
欧米では絨毯として床に敷くのはもちろん、絵画のように壁に掛けてアートとしても楽しまれています。
→ギャッベ商品一覧はコチラ
02.ペルシャ絨毯
高級な絨毯の代名詞にもなっている、誰もが一度は名前を聞いたことがあるペルシャ絨毯とは、イラン周辺で織られる絨毯のことです。
1本のタテ糸にパイル糸を巻きつけて隣のタテ糸にくぐらせる「ペルシャ織り」で織られているので、とても細やかな織りで、美しく繊細な模様が描かれています。
床に敷くだけでなく、壁飾りやテーブルクロスとしても多様な使い方で楽しまれています。
03.トルコ絨毯
トライバルラグの中で一番多いのが、様々な部族の手によって、いろんなデザインの絨毯が織られたトルコ絨毯です。
トルコ絨毯とペルシャ絨毯の違いは産地だけでなく、絨毯を織るときのパイル糸の結び方。
トルコ結び(ギョルデス結び)とも呼ばれ、2本のタテ糸に1本のパイル糸を巻き付けています。
絹や綿などの素材によっても違いますが、トルコ結びで作るトルコ絨毯の方がペルシャ絨毯より丈夫とも言われています。
トルコで作られる織物として、もう一つ有名なキリムは、タテ糸にヨコ糸を上下交互にくぐらせながら織り込む平織りで作られています。
表と裏が同じ見え方をし、絨毯とは違って毛足がないため、古いものが見つかってもトライバルラグではありません。
軽くて加工しやすいキリムは、床に敷くためだけでなく、タペストリーやクッションなどの加工品としても人気の織物です。
芸術作品としても人気のトライバルラグ。いろんな産地がありますが、やっぱり数が多いのはトルコ絨毯です。
ここからはトルコ絨毯について、もう少し詳しくお話していきます。
TRIBALRUG
トルコ絨毯とは?
絨毯の歴史は古く、現在、世界で一番古い絨毯と言われているのは、今から2000年以上前の紀元前4~1世紀に作られたバジリク絨毯と言われています。
南シベリアの氷の中から、ロシアの考古学者によって発見されたパジリク絨毯で使われていた技法は・・・トルコ結び!
なので、世界最古の絨毯はトルコで作られたのではないかと言われているくらい、トルコは有名な絨毯作りの産地です。
長い歴史を持つトルコ絨毯は15世紀頃になると、その美しさと質の良さ、さらに実用性の高さから人気になり、ヨーロッパにも輸出されるようになりました。
1923年にトルコが共和国になると、経済の発展から機械化に進みかけましたが、政府の保護によって手織りの技術は受け継がれ、現在でも、一般的に使用されているのは、幾何学模様や草花で、礼拝堂のアーチ型のモチーフを描いた伝統あるデザインが継承され続けています。
人や動物はコーランが許可していないため、描かれていません。
トルコ絨毯の鮮やかな色づかいはフランスの画家、ゴーギャンが「色について学びたければ、トルコ絨毯を見ればいい」という言葉を残しているほど定評があります。
色には意味が含まれていて、赤は富や幸福、緑は天国、青は高貴さ、黄色は魔除け、黒は悩める心の浄化などを表しています。
作る産地によって糸を染める染料も違い、先祖代々受け継がれてきた独自の草木染の染料が使われてきましたが、最近では発色がよく作業が簡単な化学染料を使うことが多くなってきているので、トライバルラグのように草木染で作られた古いものは、ますます人気です。
色を選びながら丁寧に手織りされたトルコ絨毯は、使い込むほど結び目が堅く丈夫になり、上質な絨毯になっていくとされているので、時間が経たものほど貴重で価値が高くなります。
トルコ絨毯を 産地別に見てみましょう!
トルコ絨毯は産地ごとに特色があります。ここからは産地別に詳しくお話しします。
イスタンブールのすぐ左にある、トルコの中で最も有名な絨毯作りの町、ヘレケは、スルタン宮殿に調達する絨毯を織るために、宮廷直属の工場が建てられ、シルク100%で目が細かいヘレケ絨毯の技術が開発されました。
古典的なペルシャのデザインが特徴的で、細かい草花模様。チューリップやカーネーション、バラのつぼみなど草花が咲き誇る華やかなデザインが特徴です。
最高級のシルク絨毯の代名詞として世界中に知られていますが、近年この地域は何度か地震に会い、絨毯産業を停止しているため、最近はコレクターから非常に切望され、価値が大幅に高騰しています。
古くはカッパドキア王国の首都だったカイセリは、何世紀も昔から絨毯の産地として大きな役割を果たしてきました。
ヘレケと並んで上質なシルクの豪華な絨毯を作ることで知られていますが、いろんな素材を使って、多種多様な絨毯が作られています。
花模様やメダリオン、幾何学的なモチーフが特徴的です。
トルコで最も絨毯作りの歴史が古い、セルジュク帝国の首都だったコンヤ。
最も古い絨毯の町らしく、コンヤ産のものをアンティーク絨毯の中から、たくさん見つけることが出来ます。
一番の特徴は落ち着いた渋い色。長年愛用できる草木染めのものが多く織られています。
メダリオンの模様や、セルジュク時代の幾何学模様の絨毯が特徴的ですが、コンヤは絨毯だけではなくキリムの生産地としても有名です。
トルコ南部の地中海沿いの街、アンタルヤから約40㎞ほど北にあるドシェメアルトゥ地区に住んでいる、トロス山脈の遊牧民部族によって作られていたドシェメアルトゥの絨毯。
かつて遊牧していた人たちが定住するようになった地域で織られる絨毯は、昔ながらの伝統的な織り方を守っている所が魅力です。
遊牧民が作った絨毯なので、遊牧民らしい伝統的なデザインが多く、動物や星、花など、ルリの遊牧民のデザインによく似ています。
柔らかい色の手作りが多く、サイズが小さいものが主流です。今は織り手がほとんどいないので、新しいものは手に入らなくなってきています。
中央アナトリアにあるマラティアは、クルド人が多く住んでいる、キリムの産地として有名な地域です。
荒く結ばれた絨毯とクルド人の部族によって織られた、幾何学的なデザインで、特に派手な赤や青を使ったユーリックと呼ばれる遊牧民のキリムは有名です。
トルコ北西部の山間の村で純粋なウールだけを使って作られたヤージュベディルの絨毯。
非常に高品質で、はっきりした赤と濃い青を使った、幾何学的なモチーフが特徴です。
昔からアルメニア人とトルコ人が住んでいたシワス。
手先が器用なアルメニアの人達が作る絨毯は、高い品質を誇ることで有名で、中世のアラブやヨーロッパに輸出される高級絨毯として有名です。長方形のメダリオン柄が特徴的です。
アナトリア中部のカッパドキア近くの町ヤフヤルはアナトリアのモチーフに似た原色(赤、黄、青)で織られたラグを敷いています。
赤いフィールドにペンダントが付いた六角形、またはひし形のメダリオン柄が含まれている模様が多いです。
トライバルラグの デザイン
トライバルラグには、世代を超えて伝えられてきた伝統的なモチーフがいろいろ描かれているんです。
それぞれ、いろんな意味が込められているので、よく見かける人気の模様をご紹介します。
砂漠民にとって水の入った花瓶の花は豊かさの象徴。
モスクの中の壁面にある礼拝用のアーチ型デザイン。
ミフラーブの中に織られる吊りランプを表した模様。
ペルシャ絨毯のガードに使用されることが多い模様。
金運UPの願いが込められたダイヤモンドの模様。
Q1.ヨゴれていませんか?
Handleのトライバルラグは、お嫁入道具用に持たせたりお金に替えるために織った、使っていないデッドストックを買い付けているので、時間は経っていますがほぼ新品です。
日本に届いた時点で、絨毯専門業者でクリーニングも行っているのでとてもキレイな絨毯です。
Q2.ホットカーペットに使えますか?
使えます!
通気性がよく、保温効果もいいので、温まるまでに時間が少しかかりますが、保温性が高くオススメです。
Q3.洗えますか?
水洗い出来ます!
基本はウールなので油分があり、汚れが付きにくく、タオルで水拭きするだけで汚れが落ちます。
気になる汚れは、中性洗剤を薄めて部分洗いして下さい。
ウール用の洗剤で洗えますが、家で洗うのが大変な場合、専門業者でクリーニングしますのでご連絡下さい。
Q4.色落ちしませんか?
草木染めなので、色落ちは基本しません。
まれにお湯で染めたものだけ、お湯がかかった場合、色落ちする可能性があるので、注意が必要です。
TRIBALRUG
トライバルラグを使ってみよう
ここからは、トライバルラグをおしゃれに使うコツやポイントについて、実際にお部屋に置いて、分かりやすくお話しします。
Point
01. 床を飾る
まずは、基本中の基本、床に敷いてみましょう。
日本ではラグを敷くというと、ローテーブルやテーブルの下に敷くイメージですが、あえて家具を乗せない使い方もオススメです。
トライバルラグの華やかな色と模様は、海外では芸術品として好まれるもの。リビングの扉を開けて一番最初に目に飛び込んでくるスペースや廊下に敷いて、目で楽しむように使われています。
もともと壁や床に色を使うことが少ない日本のお家に、この使い方はピッタリ!アートとして床からお部屋全体を飾ることで、お部屋全体が格上げされます。
Point
02. 壁を飾る
大きな絨毯に挑戦するのは不安・・・という方は、小さめの絨毯をお部屋のアクセントとして壁に使ってみましょう。
デザイン性の高いトライバルラグをワンポイントとして追加するだけで、一味違うオシャレな雰囲気を作り出すことができます。
絵画や掛け軸のように、壁面に取り付けるだけで、一気に華やぐので、ちょっと寂しく感じるお部屋や玄関正面の壁、リビングなど、主要なお部屋の壁に使ってみましょう。
Point
03. 空間を分ける
小ぶりで使いやすい小さなラグを敷いて、お部屋の中の空間を仕切るのに使ってみましょう。
例えば、寝室のベッド脇や、ドレッサーやデスク、書斎の机などの下に小さなラグを敷くことで、パーテーションがなくても空間を分けることが出来ます。
見た目がオシャレになるだけでなく、気持ちの切り替えや作業も集中しやすくなるのでおススメです。
トライバルラグは、アンティーク家具との相性がとてもよく、一緒に組み合わせることで、お互いの魅力が倍増します! 百聞は一見に如かず。実際に、敷く前と敷いた後で、お部屋の華やかさの違いをお見せします。
トライバルラグには、いろんなデザインがありますが、工業製品とは違い、全て手作業で織られたものなので、キレイなシンメトリー(線対称)ではないものがほとんど。
また、モスクの形のミフラブ文様が織られているものも多く、ラグの向きを変えるだけでお部屋の雰囲気をカンタンに変えることが出来ます。
リビングのソファに座って、家族みんなで落ち着きたい場合は、トライバルラグをソファに平行に敷いてみましょう。
ソファに座る度、パッと目を惹く鮮やかな絨毯が目に飛び込んできて、華やかな気分になります。
デスクに平行な位置に絨毯を敷くと、デスク周りに仕切りが出来たようにまとまりが出来て、リビングの一部と切り離した書斎コーナーを作ることが出来ます。
ラグの向きや敷く位置によって、お部屋の印象をカンタンに変えることが出来るので、ぜひ試してみて下さい。
トライバルラグのある「リビング」
大きなトライバルラグをリビングの真ん中にドーンと敷いて、リビングチェアとテーブルを組合わせてみました。
英国の装飾的な家具や椅子に負けないくらい美しい絨毯が、お部屋を華やかに彩ってくれます。
高級感のある英国スタイルにも、シンプルなビンテージ家具にもどちらにもよく似合います。
トライバルラグのある「ダイニング」
大きなゲートレッグテーブルとパーソナルチェアを組み合わせたダイニングセットの下に、トライバルラグを敷いて仕上げた、贅沢なダイニングルーム。
いつもの食事中も、落ち着いたチョコレート色の木目の家具と、ラグの伝統的模様がコラボした食卓で、ちょっとリッチな食事の時間が楽しめます。
トライバルラグのある「寝室」
寝室に作った、ドレッサー脇の片隅のサロンコーナーには、女性らしいお花の模様がたくさん描かれたトライバルラグを敷いて華やかに仕上げました。
絨毯の柄を楽しめるように、テーブルの位置を真ん中からちょっとだけズラして敷くことで、床を彩るアートと一緒に、華やかな気分でお茶が楽しめる空間が完成です。
トライバルラグのある「和室」
和室の畳にも、トライバルラグはとてもよく似合います。
華やかな赤い絨毯にセティを合わせた和×洋の空間が、独特のオシャレな雰囲気を作り出してくれます。
床に飾るアートとして人気の絨毯は、単調になりがちな畳の上でも華やかに空間を彩ってくれます。
いかがでしたか?アンティーク家具を初めて知った時と同じように、トライバルラグを知って、久しぶりにワクワクしている私。
敷くだけであっという間にお部屋の中が華やぐトライバルを使って、素敵なお部屋作りを楽しんでみませんか?
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水野 友紀子
空間スタイリスト。
アンティークショップHandleバイヤー。大学で小さい頃から好きだった化学実験が出来る薬学を専攻。薬剤師となり、製薬会社で研究職に就く。 結婚を機に、休日は嫁ぎ先の老舗家具屋の手伝いをすることに。
家具のことを学びながら、そこで得た知識と固定観念にとらわれない主婦目線での女性らしい提案が、お客様に喜んでもらえることが嬉しくなり、薬の研究を辞め、インテリアの研究に没頭することを決める。
アンティーク家具に出会い、それまで知らなかった世界に感動。 家具やインテリアに対して伝えたいことや、自らが買い付けてきたアンティークに対する想いを「買い付けうらばなし」や「まいにちハンドル」に綴り、日々配信中。
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