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一般的な家具とアンティーク家具の違いについて
一般的な家具とアンティーク家具の違い
「家具」と言っても、いろんな家具がありますが、僕たちが扱っている「アンティーク家具」と「一般的な家具」は、どう違うでしょう?
両方の家具に携わってきた、老舗家具店4代目の僕が説明します。
1.「素材」
当たり前ですが、家具は木材で作られています。
一般的な家具もアンティーク家具も、「無垢板」もしくは「突き板」で家具に加工されます。
無垢板とは、丸太から切り出したままの厚みのある一枚の板のことを言います。突き板とは、木材を薄くスライスしたものを言います。
どちらの家具にも、両方、使われていますが、使い方に対する考え方がアンティーク家具と一般的な家具では、大きく違います。
突き板を一般的な家具で使う理由は、コストを削減するため。アンティーク家具で使う場合は木目を模様として使うためです。
一般の家具で突き板を使う場合は、無垢板より安価で大量に均一のものが作れるという理由で、ベニヤ板などを使って組んだ板状の芯材に、薄くスライスした突き板を貼り、無垢板のように加工して使います。
こうすることで、本物の木の木目を活かしながら、材料費を削減することが出来ます。
突き板よりも安価に仕上げるために誕生したのが「プリント合板」です。
機械化の発達により、木目を紙に印刷して、まるで木目のように見せることが出来るようになりました。これを突き板の代わりに貼ったものがプリント合板です。
木のように見えますが、木ではなく紙。なので、突き板よりプリント合板の方が、さらに安価に造れるため、使い捨て感覚の安価な家具に使われていますが、このプリント合板の誕生により、日本では「無垢材=本物の木の家具」「突き板=ニセモノの安価な家具」と言うイメージを持つ方が多いようです。
アンティーク家具が造られた時代には印刷する機械がなかったので、プリント合板の家具はありません。
アンティーク家具で突き板が使われる理由は「木目」です。
デザインの美しさを考えて造られたアンティーク家具は、美しい木目=デザインと考えられています。
なので、安価に仕上げるために突き板を使っているのではなく、美しい木目をデザインとして使うために突き板を使っています。
と言うのも、時々、驚くことに高級木の無垢板の上に、わざわざ突き板を貼って仕上げているアンティーク家具をよく見かけます。
現代の家具では見かけることがない、あまりにも贅沢な使い方なんですが「突き板だからダメな家具」と思ってしまう日本の方にはなかなか伝わらないようです。
一般的な家具の突き板は、量がたくさんとれるように丸太をそのまま薄くカットしていくため、木目は「板目」と呼ばれる真っ直ぐな模様になります。
ところが、アンティーク家具で使われる突き板の「杢」と呼ばれる美しい部分は、樹木のこぶのような所をスライスすると現れるものなので、一般的な家具のようにカットして大量に採れるものではなく、木を桂剥きのようにカットして、表皮に近い部分だけを使っています。
分かりやすく例えると、大きなマグロの中でほんの一部だけの脂がのった極上大トロの部分がアンティーク家具の突き板に使われているという感じです(笑)
また、いろんな樹種で家具が造られていますが、同じ名前で呼ばれていても、アンティーク家具が造られた時代とは厳密に言うと、樹種が違っているものも多いんです。
例えばアンティーク家具で使われているマホガニー材はワシントン条約で伐採が禁止されているので、現在、アンティーク家具で使われていたマホガニー材と同じマホガニー材を使った家具が造られることはありません。
今「マホガニー材の家具」と呼ばれているものは、ワシントン条約以降に植林された木を使ったもの、もしくはマホガニーとよく似た色の赤い色をした木材、もしくは、木にマホガニーの色を塗布して似せて造ったもののどれかです。
本当の意味で、美しいマホガニー材の家具を手に入れることが出来るのは、まだ伐採を禁止されていない時代に作られたアンティーク家具だけです。
他にも、アンティーク家具のオーク材といえば、当時はとても目が詰まったミズナラが使われていましたが、現在は希少なので代替品としてホワイトオークやレッドオークが使われていたり、ローズウッドなどは、現代はもちろん、アンティーク家具としてもめったに見かけることがない木材。そんな高級で美しい杢の木材が使えるのも、アンティーク家具だけです。
2.「デザイン」
やっぱり一番大きく違うのは見た目。「デザイン」です。
そもそも、アンティーク家具が生まれたヨーロッパと日本では、家具に対する考え方が大きく違うと僕は思います。
日本で家具は、機能性や収納力など実用性を重視しますが、ヨーロッパでは、インテリアとして部屋に置いた時、どれくらい美しいか見た目の方が重要です。
だから、日本のようにお部屋の大きさや、収納量を考えるのではなく、見た目の美しさを最優先に考えて家具がデザインされてます。だから、ヨーロッパの家具はデザインがステキで華やかなんです。
例えば一番分かりやすいのが「脚」のデザイン。あまり意識してみることがない家具の脚ですが、意識して見てみると、一般的な家具は一度にたくさん作ることを考えてデザインされているので、均一化できる直線的でシンプルなデザインの脚がほとんどです。
さらに生活様式が違うこともデザインに大きく影響しています。
家の中では靴を履かず畳の上で生活していた日本の家具には脚はありません。和室で使いやすいよう「台輪」と言って台にのっているものが主流。昔、英国から家具が輸入された際は、家具の脚をカットして使われたほどです。
それに対して、靴を履いて生活する西洋のアンティーク家具には、昔から使われてきた伝統的なデザインを基に作られた脚のデザインがたくさんあります。いろんな意味が込められた脚のデザインはどれも凝っていてとても優雅です。
たかが脚のデザインですが、脚だけ見てもこんな風に違うんだなと思いながら見ると、なかなか楽しいです。
脚以外にも、アンティーク家具は手作業で造られているものが多いので、手間と時間をかけて造られた彫や象嵌、先ほどお話しした杢目などを使って、現代の家具では見ることが出来ないデザインを見つけることが出来ます。
3.「作り方」
現代、造られる家具は、どんなに「手作り」と言っても、1点だけを作るとコストがかかって高額になってしまうので、ロットを組んで生産されます。
オーダー家具であっても、脚の部分など共有できる部分は、最低でも10~20本、安価な大量生産の家具だと何百本から何千本単位でロットを組んで造られることがほとんどです。
ロットを組んで一度にたくさんの数を造る現代の家具は、最新の技術を使って機械で作られているため、同じデザインの家具を、一度に大量に手に入れることが出来ます。
それに比べてアンティーク家具が造られたのは、まだ機械化が発達していない時代。ほとんどの家具が面倒な作業を、一つ一つ手作業でこなしてきました。
特に1920~30年代に作られた家具は、デザインの完成度が一番高く美しい家具が造られたと言われる時代です。全てがセミオーダーの一点一点が手作りの家具。オーダーする人が自分の好きなデザインを集めて1つの家具をデザインし、その人のためだけに造られた家具です。
なので、同じデザインのものを見つけることは難しく、例え、同じデザインの家具が見つかったとしても、手作業で造られているために均一性がなく、全てが一点もの。
全く同じものは見つからないので、どんなに気に入っても同じものを手に入れることは出来ません。
なので、均一性を持たせてお部屋全体を全く同じ家具で統一させたい方には、一般的な家具がおススメです。アンティーク家具は向いていません。
「塗装」
アンティーク家具が修復出来る理由の一つが「塗装」です。
家具の塗装方法はいろいろありますが、一般的に販売されている家具の塗装は、ウレタン塗装が一番多く、次いでラッカー塗装、オイルフィニッシュ仕上げが使われています。
一般的な家具に多いウレタン塗装は、木の表面に化学的なウレタン樹脂を吹き付けて塗膜で覆う塗装です。
木の表面に塗膜を作ることで、木が呼吸するのを止めるため、反りや割れがおこりにくく、水や汚れにも強いので取り扱いがラクです。
ウレタン樹脂=プラスチックのようなものなので、長期間使うことで塗膜が傷つき、劣化が起こってきた時に修復は困難なので買い替えをすることを考えなければいけません。いわゆる使い捨てになってしまう家具です。
アンティーク家具に使われている塗装は、昔から使われてきたシュラックニスと言う自然素材のニスです。
自然素材のニスなので、熱や水に弱いのですが、木が持つ本来の風合いが楽しめ、使うごとに自然な色艶が出てくるのが特徴です。
キズや汚れが付いても、何度でも塗装を剥離して修復することが出来るので、100年近く経った家具もピカピカにすることが出来ます。
家具の塗装は、それぞれに長所と短所があります。僕たちは、使い続けてもらうために、昔ながらの塗装方法にこだわっています。
一番大きく違う部分は・・・
こんな風に一般的な家具とアンティーク家具にはいろんな違いがあります。どちらの家具も見てきた僕が思う、一番大きな違いは「実用性」ために作られた家具なのか、「見せる」ために作られた家具なのかということです。
いろんな違いはありますが、やはり「家具」をどんな風に考えているかが一番大きな違いだと思います。日本では実用性重視で考えられる家具ですが、ヨーロッパではインテリアとして重視されています。
家具を置く事でお部屋の雰囲気がステキになり、居心地のいい空間を作って、そこで過ごす時間が贅沢になる・・・
そんな風に造られたアンティーク家具をぜひ使ってみてもらいたいなと思っています。