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アンティークが初めての方に伝えたいアンティークの魅力
老舗家具屋4代目の跡継ぎとして生まれた僕が、幼い頃、いつも遊んでいたのは家具だらけのお店の倉庫でした。
思い返してみると、どうやら親父の英才教育?だったようで、いろんな家具に囲まれ、たくさんの家具を見て育ったおかげで養われた「家具を見る目」だけは、誰にも負けない自信があります。
大学を卒業してから修行に出て、日本国内はもちろん海外も含め、さらにいろんな家具を見て目を肥やしましたが、家具屋を継いで10年目に、それまで見たことがなかった家具に出会い、ものすごい衝撃を受けました。それが「アンティーク家具」です。
今まで見たことがない美しい杢目。
置いた瞬間、部屋の中の空気を変えてしまうくらい高級感漂う凝った装飾や美しいデザイン。
そして何より、僕が驚いたのは、修復して使い続けることが出来るということ。
日本では、まだまだアンティーク家具を使っている人は少なく、現代の家具との違いや魅力を知っている方が少ないと思うので、僕がすっかり魅了されてしまったアンティークの魅力についてお話ししようと思います。
アンティーク家具の「魅力」
1.「木材」
アンティーク家具には、今では手に入らない、もしくは手に入れることがとても困難な、贅沢な木材が使われています。
ローズウッド材やマホガニー材、ウォールナット材、オーク材を使った家具は、現代でも造られていますが、アンティーク家具が造られた頃と、呼び名は同じでも、厳密には違う木材です。
ローズウッド材やマホガニー材は、ワシントン条約で取引が制限されているので、現在は手に入れることが出来ません。
現在、ローズウッド材、マホガニー材と呼ばれている木材は、ローズウッドに木肌が似ている木や、マホガニーによく似た赤い色の樹木なので、本来、ローズウッドやマホガニーと呼ばれていた木材を使った家具は、ワシントン条約で制限される前に造られたアンティーク家具でしか手に入れることが出来ません。
例えば、マホガニーは、ワシントン条約で取引が制限されているので、アンティーク家具で使われているマホガニー材と、今の家具で使われているマホガニー材は違うもので、本当の意味での「マホガニー材の家具」はアンティークでしか手に入れることが出来ないんです。
ウォールナット材はとても堅いので、現在はダイニングテーブルで人気ですが、アンティーク家具のウォールナット材とは木目が全く違います。
ウォールナット材はもともとは家具の装飾として、美しい木目が「模様」として使われていました。
なので、アンティーク家具にはウォールナット材の中でほんの少ししか採れない「珠杢」と呼ばれる芸術的に美しい部分だけが使われています。
また、英国のアンティーク家具に使われているオーク材の多くは、高級な北海道産のミズナラです。
なかなか手に入らないタイガークランクと呼ばれる「虎斑」を模様として贅沢に使っているアンティーク家具を見かけますが、現在、ミズナラはとても高額なので、北米産のホワイトオークやレッドオークが代替品として使われています。
こんな風に、今では手に入れることが出来ない、究極に贅沢な素材が使われている家具がアンティーク家具です。
2.「装飾」
装飾が付いた家具はいろいろ見てきましたが、アンティーク家具の装飾は、それまで見てきたものとは比べものにならないくらい桁違いに美しい!
まずは脚。畳の上で生活していた日本の家具には、脚がついているものが少なく、脚が付いていてもシンプルな棒状のものがほとんど。
ところが、アンティーク家具の脚は基本的に長く、いろんなデザインのものがあり、どれも美しいんです。
また、いろいろな彫があるんですが、特にピアスドカービングと呼ばれる透かし彫りは、驚くほどに美しい!
とっても堅い木に、まるで紙細工のように施された細かい透かし彫り。まだ機械が発達していない時代に工具だけで、一体どれくらいの時間をかけて、彫ったんだろう・・・?と不思議になるくらいです。
さらに、僕が気になったのは「象嵌細工」
象嵌とは、異なる素材を組み合わせて、家具の表面に模様を描く細工ですが、ここまで美しい象嵌を見たことがない!と驚くくらい、まるで手描きした絵のように美しい象嵌にビックリ。
手作業でしか作り出せない美しい象嵌が出来るまでに、一体、どれくらいの時間と、どれくらいの作業をかけて作りあげたんだろう・・・
想像するだけで気が遠くなる時間と手間暇がかかっている細かい象嵌細工が入った家具は、アンティークでしか手に入らないと思います。
3.「価格」
ある日、腕利きの家具職人さんでもある家具メーカーの社長さんが、うちの倉庫に遊びに来たときのこと。
初めてアンティーク家具を見た社長さんの感想は・・・
「これはスゴイ!うちの工場では、こんな細工の細かい家具を、こんな価格ではとても造れない~」
確かに!!もちろん、大型家具店などで販売されている安価な家具と比べれば高額ですが、今、もし、アンティーク家具と同じような木材を使った、同じような装飾の家具を造って手に入れようとすると、僕は手が出せないくらい高額な高級家具です。
アンティークであれば、そんな高級な家具を、僕でもガンバレば手に入れることが出来る・・・
高級だけど、手にすることが出来る価格。それもアンティーク家具の魅力です。
4.「定番」
日本では、実用性や機能性、収納力など機能性を重視して家具を選びますが、ヨーロッパでは、お部屋を彩ることを重視して家具を選びます。
だから、ヨーロッパの家具は機能面よりデザインやフォルムなど見た目が重要!
なので、アンティーク家具は、長い歴史の中で美しいと支持されたデザインだけが融合されて出来上がった、流行を追わない「タイムレス」デザインです。
洋服に例えるとトレンチコートやポロシャツのようなもの。時代によって、多少、変化があったとしても、基本の形はずっと変わらず、オシャレであり続ける流行を追わない定番のデザインです。
どんな家具でも、一度買ってしまうと気軽に買い替え出来ないから、流行に左右されることもなく、今までも、そして、これから先も、いつまでも飽きることなく使い続ける定番デザインの家具。それも、アンティークの魅力です。
5.「修復」
僕は子どもの頃からプラモデルやラジコンなど、モノ作りが大好き。よく夜ふかしして、いろんなものを作っていました。
そんな僕がアンティーク家具の修復現場を見た時、子どもの頃のプラモデルを思い出しました!一度作ったプラモデルをバラバラにして、いろんなパーツを組み合わせて、もう一度、色を塗ってピッカピカに組み上げる・・・
ボロボロのアンティーク家具が修復されて、まるで再び息を吹き返したようにピカピカになる姿は、まるで僕が大切にしていたプラモデルのようでした。
そもそも、造られてから100年近くの時を経たアンティーク家具が、今もキレイに使えることがスゴイ!
でも、どんな家具でも100年経てばアンティークになれるかと言うと、そうではありません。
使い捨て感覚で作られた安価な家具や、大量生産品として造られた家具は、修復することが出来ないので、100年後にアンティークとして形を残しておく事は出来ないんです。
本物の素材を使って、きちんとした工程で手作りされ、さらに大切に使われてきたものだけが「アンティーク」となって形を残すことが出来ると僕は思います。
僕がアンティークを買い付けてくるイギリスやフランスなどヨーロッパでは「古いものを大切にする文化」があります。
良質な素材で造られたものは、自分が必要なくなると日本のように捨てるのではなく、次に大切にしてもらえる人の手に渡り、修復してまた使い続けられる・・・それが当たり前。
そうやって時を経たことで出来上がったものがアンティークです。
日本ではまだアンティーク家具と言うものに馴染みがなく、使い捨て感覚で簡単に安価な家具を選ぶ方も多いのですが、ボロボロになって捨ててしまう家具ではなく、修復しながら使い続けることが出来る本物の家具が醸し出す風格を、僕はもっと多くの方に伝えたいと思うようになりました。
「大切にする」ということ
誰かが大切に使っていた家具を、自分が使って、子どもに譲って、孫に受け継がれる・・・
機能面や価格面では、現代の家具には敵わないかもしれないけれど、やっぱり本物。
ヨーロッパのように、良質な家具に自分たちの思い出を刻み、メンテナンスしながら大切にあと100年使って欲しい家具。それがアンティーク家具です。
モノを大切にすることを教えてくれる。それもアンティーク家具の魅力です。
6.「一点もの」
当たり前ですが、アンティークに新品はありません。例え、全く同じデザインや形のものが見つかったとしても、木目や色、キズの付き方などが1つ1つ全て違っています。
世界中探しても同じものが見つからない「一点もの」それがアンティークです。
そんなアンティークを、僕は人の顔と同じだなと思っています。
一人一人の顔が違うように・・・
肌の色が白い人や黒い人がいるように・・・
僕みたいにホクロが多い人もいれば、何もない人がいるように・・・
素敵に年を重ねた人の顔には、笑いシワが出来ていくように、年を重ねることで、だんだんと風格が出て、それまで過ごしてきた自分の時間が歴史になって刻み込まれていきます。
家具も人と同じで、大切に使っているうちに出来たキズや汚れなどが、年月を経ることで風合いに変化します。それこそが、新しく造られた家具が持てないアンティークだけの「魅力」です。
世界中を探しても、同じものを見つけることが出来ない、とても贅沢な「一点もの」。
こんなに魅力的なアンティーク家具との出会いの場をHandleで作っていきたい・・・これが僕の願いです。